カウンセラーは何を見ているか (シリーズケアをひらく)

著者 :
  • 医学書院
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  • Amazon.co.jp ・本 (263ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784260020121

作品紹介・あらすじ

「強制」と「自己選択」を両立させる。それがプロ。若き日の精神科病院体験を経て開業カウンセラーの第一人者になった著者が「見て」「聞いて」「引き受けて」「踏み込む」ノウハウを開陳。

感想・レビュー・書評

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  • 非常におもしろかった
    カウンセラーとして「覚悟」を持ってクライエントに対していることが伝わる
    だからこそ「共感なんてしない」と言い切れるのだ
    本当に相手の気持ちに共感していたら疲れ果ててしまうしプロとはいえない

    「共感」「クライエントとの協業」「解決主体としてのクライエント」
    といった言葉に欺瞞を感じてしまうと書かれていたところにも深く同意する

    著者自身も
    「最初みたときは息をのんだ・・・でも二秒後にはおなかを抱えて笑っていた」
    美しすぎてちょっとエロいカウンセラーの表紙絵もいろんな意味で目をひく

    常識の再定義
    自分の内部ばかりを見つめ「自己肯定感」
    といった言葉にしばられたクライエントは多いものだ
    まず常識という枠組みをいろんな方向から考え直してはどうかということ
    (「全てを疑う、真剣勝負で」にも書かれてある)

    恩師の言葉
    共感なんてできませんよ。人の気持ちなんかわかりません。
    自分がいくつありますか。多ければ多いほど豊かなんですよ。

  • 信田さんの著作はすでに何冊も読んでいるが、本作はご自身のカウンセラーとしての役割や矜持について綴られている。私もカウンセリング経験者なので、改めて自分の受けたものも含めて、考えることが多かった。私を担当して下さったカウンセラーの先生が無表情だなと寂しく感じたあの当時、この本に出会えていたら良かったのにな…。つかみどころがない無表情が、不安で怖かったんだよなあ。

    カウンセリング=共感プラス傾聴と、考えられがちだが、カウンセラーの大きな頷きや同情を表した表情が必ずしも、クライエントの感情をしっかり受け止めているとは限らないとは意外な発見であった。
    テレビなどを見ていると、「共感」至上偏重主義のような雰囲気があるが、カウンセリングが目指すところはむしろ「共有」とのこと。

    クライエントが抱く感情について共感や判定をせず、クライエントの経験に真剣に「関与」して質問を繰り返し、過去の記憶や感覚の奥深くまで入っていく。思い出すのが怖い記憶や感覚は1人では如何ともできない。
    積もり積もった言語化できない感覚や感情は塊と化してしまうので信頼できるカウンセラーが傍に居てくれることは大切なのだと再確認できた。

    挿画の印象が中身と異なって残念だった。

  • 目次
    第1部 すべて開陳!私は何を見ているか(私は怖くてたまらない;私はいつも仰ぎ見る;私は感情に興味がない;私はここまで踏み込む ほか)
    第2部 カウンセラーは見た!(密やかな愉しみ;息切れは気持ちいい;無音劇場;縦ロールとカルガモ ほか)

     プロの臨床心理士として30年以上のキャリアを持つ著者が自らの仕事について語ったもの。

     第1部 すべて開陳!私は何を見ているか
    <カウンセラーとは?>
     「バーのクラブのママ、占い師、新興宗教の教祖を足して三で割り、専門性という装いをまぶした」存在。
     多様なキャラが必要。面談室はドラマの舞台であり、それを場に応じて演じ分ける。演技的だったりオーバーアクションであることも時には必要。
     
    <燃え尽きる?>
     燃え尽きないようには、
     これは彼女の師匠の「ほんとうの私なんてない」「真の自己より、着脱可能な自己を」の教えからくる。
     患者の話は「本を読むようにファイリング」
     
    <カウンセラーの姿勢>
     患者から「ワンダウン」して、「仰ぎ見る」。
     ただでさえクライエントは「自分で考えた末の蟻地獄」にはまっている。
     そこに「上のもの」としてカウンセラーが現れることは主体性の放棄を促す。これがカリスマカウンセラーを生み出すカラクリだがこれはクライエントの依存を促す。
     それを防ぐためにも、カウンセラーの姿勢が実はクライエントによって査定されていることへの畏れと謙虚さは必要。

     感情を特権扱いしない。
     状況も含めた多様なダイナミズムが大事。
     語られた内容をめぐって頭脳をフル回転させる。
     相手の息遣い、空気の流れ、間合い、語る速度までを瞬時の判断で選び、決定しなければならない。
     一種のチューニング。
     極度の緊張と覚醒が要求される。
     
     あからさまな強制はよろしくない。
     それによってコントロール不能な外海に泳ぎ出してしまうより、「自分で選んだ」満足感のもとに、生簀の中で泳いでもらう。そして、生簀ごと望ましい方向に移動させる。
     
     性的マイノリティや、DV、依存は社会の枠組みや家族のあり方と無関係ではない。そのために外向きの視点を与え、問題を再定義し、捉え直す。
     だが、これが難しい。なぜなら自分を見つめるだけの方がラクだからである。
     しかし、このマクロとミクロの視点のバランスを保ち、クライエントが何を言っても「私は決して驚いたり批判したりしません」という姿勢を保つためには、日常生活において、多重・多層的な世界を生き、判断の軸を広げることを厭うてはならない。
     
    <集団療法>
     個人療法とうってかわって、支持や方向性を明確に打ち出し、「家族の危機」を回避する。
     グループでは対個人と違って、カリスマになるリスクが薄まるからである。

    <全てはお金のため>
     1995年に新宿にカウンセリングセンターを設立した。
     心理士のみの相談機関で20年間生き残るのは至難の業だった。
     結局、病院に頼らない「脱・医療」となったが、経営の責任、脱医療の援助の構築が一気にのしかかってきた。
     
    第2部 カウンセラーは見た!
     心筋梗塞を起こし、患者として入院した、入院先の様々な人間模様を綴っている。
     
    <感想>
     特にフェミニストではないのだが、気づくと信田氏の著作を手に取っていることが多い。また、ご本人も一度講演でお見かけした。実際のお姿も、著作の中でも女闘士を思わせる雄々しい発言がめだったが、自身の内側を開陳するこの著作では意外に慎重で、いい意味で計算している姿勢が目立つ。
     だが、男社会の典型である医療から「脱・医療」したように男性社会への反骨も息巻いている。
     第二部の「患者観察日記」は彼女の人間観察眼の鋭さが光り、小説風で楽しく読める。プロだからこその観察眼なのか、この観察眼があるからプロなのか。多分、鶏と卵、もしくは両の車輪みたいなもんだと思う。

  • 借りたもの。
    カウンセラーの生の声が赤裸々に書かれている。
    他者の悩みを聞く、メンタル力を使い心労も多いのでは?と考えてしまっていた。
    しかし読み進めてゆくと完全な共感ではなく、クライアントとの距離を保つ、プロとしての姿勢などがその理由とともに明記され、納得してしまう。
    ボランティアではない。仕事、ビジネスとしてのお金の話も含めて、興味深い話が多い。
    (本人もそう前置きする程)冷徹にも思える、割り切り方……

    私はセラピストでもカウンセラーでもない。しかし著者・信田さよ子女史の姿勢に、私の日常の生活にも心構えとして教訓を得られる気がした。

    「傾聴?……ふっ。」
    キャッチーな帯とコミックイラストが目を惹く。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「私の日常の生活にも心構えとして」
      カウンセラーについての理解を深める本と認識していたのですが、それだけじゃ無さそう。。。
      「私の日常の生活にも心構えとして」
      カウンセラーについての理解を深める本と認識していたのですが、それだけじゃ無さそう。。。
      2014/07/07
    • 亞綺羅さん
      > 猫丸(nyancomaru)さま

      > カウンセラーについての理解を深める
      おっしゃる通りです。
      信田さよ子 女史の頭の中も少...
      > 猫丸(nyancomaru)さま

      > カウンセラーについての理解を深める
      おっしゃる通りです。
      信田さよ子 女史の頭の中も少し垣間見れます。
      心構えというのは、読んでいて自分が友人らの相談を受けた時などと照らしあわせて考えてしまうので。
      2014/07/07
  • 想像していたカウンセラーとは違う像であったが、私はこの方がしっくりくる。一人のカウンセラーとしての苦労もありつつ、事業主としての苦労と経験も豊富。

  • 表紙のインパクトが、、、
    https://twitter.com/sayokonobuta/status/455768169236283393/photo/1
    医学書院のPR
    http://www.igaku-shoin.co.jp/bookDetail.do?book=86259

    原宿カウンセリングセンター所長 信田さよ子のウェブログ
    http://www.hcc-web.co.jp/blog/

    • 亞綺羅さん
      表紙と帯のインパクト、言わずもがなです。
      内容も興味深かったです。
      一見、(本人もそう前置きする程)冷徹にも思える、割り切り方……傾聴を...
      表紙と帯のインパクト、言わずもがなです。
      内容も興味深かったです。
      一見、(本人もそう前置きする程)冷徹にも思える、割り切り方……傾聴をしつつ、一定の距離を保ちクライアントに共感なんてしないと明記する点に、プロとしての潔ささえ感じます。
      2014/06/29
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「クライアントに共感なんてしない」
      冷静に判断するためには、必要不可欠な心構えだと思いますが、、、実際は、グッと堪えていらっしゃるのかも(...
      「クライアントに共感なんてしない」
      冷静に判断するためには、必要不可欠な心構えだと思いますが、、、実際は、グッと堪えていらっしゃるのかも(図書館に予約中、いつ届くかなぁ~)、、、
      2014/07/07
  • カウンセラーはセラピスト(治療者)ではない。冷静に客観的にその人が抱える問題を捉え直し、その人が今どう感じていてこの先どう変化させたいのかをはっきりさせる道筋を共に歩く。それにより本人は「自分で解決に辿り着けた」との成功体験を得られる。

  • カウンセラーの著者が診察中、その前後、若手のころ、自身の入院中などに、何に注目してどんな思考をしているのかが書かれた本。

    なるほどと思うこともあった(後で書こう)が、知りたかったことは今一つ掴み切れなかった。
    カウンセラーの聴く姿勢は、話す側としてはいまひとつ話しやすくなく、いまひとつ心を開けない。カウンセラーがアドバイスをしたり共感をする立場でないことは知っていても冷たく感じてしまうカウンセラーの姿勢を、受け入れて気にせず話せるようになるために、カウンセラー側の気持ちが知りたかった。

    この本で著者が患者をしっかり受け止めようとしていることは伝わった。いいカウンセラーさんなのだろうなとも思った。けれど一般的なカウンセラーに感じる「それにしたってもちょっと話しやすい振る舞いをしてくれても......」と思う気持ちはなくならなかったなぁ。

    ハチの巣構造の話の章にヒントがありそうだから、そのあたりをもう一度読み返そう。


    イラストはない方がよかったなぁ。
    普段手に取らない層を惹きつけるための表紙としてはアリだと思ったけど、挿絵までマンガっぽく現実感のない美人が頻繁に出てきて思考が邪魔されて困った。


    途中、自身の文章に対して「さぁ、どうだ。おもしろいだろう」と言われているような表現がちらほらあり少し鼻についたけれど、そのくらい言語化能力に自信を持っているからできるケアなのだろうということも伝わった。

  • この方の体験談をまとめた本、という印象
    カウンセラーのノウハウ的なものではなかった

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著者プロフィール

公認心理師・臨床心理士、原宿カウンセリングセンター顧問、公益社団法人日本公認心理師協会会長。1946年生まれ。お茶の水女子大学大学院修士課程修了。駒木野病院勤務、嗜癖問題臨床研究所付属原宿相談室室長を経て、1995年原宿カウンセリングセンターを設立。アルコール依存症、摂食障害、ひきこもりに悩む人やその家族、ドメスティック・バイオレンス、児童虐待、性暴力、各種ハラスメントの加害者・被害者へのカウンセリングを行ってきた。著書に、『母が重くてたまらない』『さよなら、お母さん』『家族のゆくえは金しだい』(いずれも春秋社)、『カウンセラーは何を見ているか』(医学書院)、『アダルト・チルドレン』(学芸みらい社)、『家族と国家は共謀する』(角川新書)、『タフラブ 絆を手放す生き方』(dZERO)、『共依存』(朝日文庫)などがある。

「2023年 『家族と厄災』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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