怪談えほん (1) 悪い本

著者 :
制作 : 東 雅夫 
  • 岩崎書店
3.54
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本棚登録 : 1649
感想 : 281
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  • Amazon.co.jp ・本 (32ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784265079513

作品紹介・あらすじ

この世の中のどこかに存在する悪い本。そんな本いらない?でもきっとほしくなる。宮部みゆきと吉田尚令が贈るこの世でいちばん悪い本。

感想・レビュー・書評

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  • この世で一番悪いことを教えてくれる本。それが熊のぬいぐるみの姿をしている。なんか不気味だねえ。宮部みゆきさん!

  • 見返しの絵に、一瞬「?」となるものの、読み終えた後には、きっと、その印象が豹変するだろうし、まるで、ミニシアターで上映している短編ホラー映画のような、一つとして同じ視点の無い独特な凝った絵には臨場感もいや増すだろうし、こういうときは自然の姿も、どこか見放した感を醸し出すようで、その荒涼とした風景は、まさに悪夢といったところだ。


    『悪いことが書いてある本』について、あなたはどう思いますか?

    どうやら、それは、この世の中の悪いことを、この世の中でいちばんよく知っているとのことで、いつか、あなたはその本が欲しくなるそうですが、そもそも『悪いこと』って何ですかね。

    おそらく、それは人によって異なると思うし、頭の中にパッと浮かんだものが、そうなのかもしれないし、浮かばないような空恐ろしいものが、そうなのかもしれないとか思うでしょう。

    それでは、じゃあ、それを是非やりましょうって思います?

    人間って、良いところばかりではなくて、悪いところも当然持っていると、私は思ってまして、それは人生に於いて、私の例で書くと、高校生の頃、机を倒したり、すれ違いざま、悪口を言ってきた相手に、ここでは書けないような事を言ったり、もっと細かい事を書くと、風呂場に出た虫を殺してしまったとか、色々あると思います。

    ですが、人間は、ちゃんと学ぶことの出来る動物だと思うし、生きていく、その時間が長くなればなるほど、自分の中の線引きみたいなものが出来るじゃないですか。

    そして、その線引き同士の兼ね合いとかを、お互いに、ちゃんと慮ることが出来るのも人間だと思うし、これは思わずしてしまったけれど、さすがに、これは絶対にしないとか、決められる意志を持っているのは人間の調子の良さだけれど、素敵なところでもあると思うんですよね。

    だから、本書の文に於いて、ここだけは頭に来た。

    『いちばん 悪いことを おぼえたら
    あなたは いちばん 悪くなる』

    まるで、100%そうなりますみたいな決めつけ方だけど、仮に覚えたとして、全ての人間が悪くなるって、どうして分かるのか?

    人間って、そんな単純な動物じゃないでしょ?
    皆さん、これはある意味、馬鹿にされているのですよ。

    だから、ひと言、言ってやりましょうよ。
    ちょっとした悪いことはしますが、それでも、いちばん悪いことを覚えたとしたって、それをしないだけの心は持っているぞと。


    本書は子どもにとっては、悪いことをすることを躊躇わせる教則本になるだろうし、分別のついた大人にとっては、怪談というより、人生に於ける、自分自身との戦いを支えてくれる、抑止力を持った盾になってくれると思うので、どうしても心が折れそうになるといった不安を抱えている方は、一冊備えておくのも良いかもしれません。読む度に、あの恐怖をまた体験することにはなりますがね。

    • たださん
      まこみさん
      ああ、なるほど(^^;)
      これは本編を最後まで読まないと、実感しづらいと思うので、表紙を捲った後の見返しを見て、本編全て読んだ後...
      まこみさん
      ああ、なるほど(^^;)
      これは本編を最後まで読まないと、実感しづらいと思うので、表紙を捲った後の見返しを見て、本編全て読んだ後にある、もう一つの見返しを見れば、実感していただけると思いますので、是非・・まこみさん、怖いジャンルって、抵抗ないんでしたっけ?
      2023/08/02
    • Macomi55さん
      たださん
      それは興味ありますね。
      私は、ホラーよりサスペンスのほうが苦手です。
      宮部みゆきさんのも3作くらい読みましたが、人が人に(幽霊にで...
      たださん
      それは興味ありますね。
      私は、ホラーよりサスペンスのほうが苦手です。
      宮部みゆきさんのも3作くらい読みましたが、人が人に(幽霊にではなく)次々殺されるのが苦手なんです。
      2023/08/02
    • たださん
      まこみさん
      それは、私もちょっと分かる気がしまして、昔、抵抗無く読めていたものが、今読むと、何か気乗りしない感じがするといいますか・・サスペ...
      まこみさん
      それは、私もちょっと分かる気がしまして、昔、抵抗無く読めていたものが、今読むと、何か気乗りしない感じがするといいますか・・サスペンスというよりは推理ものなのですが(サスペンスは殆ど読まなくて)、幽霊よりも、真に怖いのは人間だといった事を匂わせる物語は、もういいかなと思っちゃいます。分かってますからって。
      でしたら、本書は大丈夫そうですね! 良かった(^^)
      2023/08/03
  • 悪い本は、悪いことをかいてある。
    だれもほしいと思わない。
    だけど だれかをきらいになったり
    なにかが なくなればいいとおもったら
    ページをめくるかもしれない
    悪いことをしれば なんでもできる
    まっている
    わすれない

    大人が読んでもぞぉっとする。
    悪いことから離れなくなるような気がして、
    悪い本が追いかけてくるようでこわいのかもしれない。


  • 「はじめまして わたしは悪い本です
    この よのなかの 悪いことを
    この よのなかで
    いちばんよく しっています」

    語りかけてくるのは、悪い本。
    悪い本と言いつつ、描かれているのは本ではなくクマ。もうすでにそこにゾッとする。
    「いちばん 悪いことを おぼえたら
    あなたは いちばん 悪くなる」
    一体何がいちばん悪いことなのか具体的に書かれていないのに、悪いことの本質を、描いている。そんな気がする。
    「あなたが わたしを わすれても
    わたしは あなたを わすれない」
    そう締め括られるラストは、大人だからこそ、悪いものの存在を知っているからこそ怖いと感じるのかもしれない。
    普段悪いこととは無縁な気でいても、「わたしはあなをわすれない」のだ。
    わすれてくれないし、いつも悪い本はわたしたちの傍らにある。
    真実を簡潔にひらがなで書いているからこそ、ああ、こわいこわい。

  • 2011年発表。


    悪い本のささやきが聞こえる。

    誰もが蓋をする暗い感情を
    呼び覚ます声。


    『いつか あなたは
    わたしが ほしくなる』



    不気味なクマのぬいぐるみと
    呪いの声が
    頭に棲みついて離れなくなる、
    この世で一番悪い本の話。



    宮部みゆき、皆川博子、京極夏彦など
    当代の人気作家5人が
    子ども向けの「怖い」絵本に挑戦する画期的な企画
    『怪談えほん』シリーズの第1弾。




    いやぁ〜怖いっっ!!(≧∇≦)

    人形が動き出し
    喋り出すことを信じてた
    (またそれが見えた)

    子供時代に読んでいたら、
    間違いなく
    トラウマになってたやろうなぁ〜(汗)



    自分は、ルイス・ブニュエルとサルバドール・ダリによる
    フランスの古典映画
    『アンダルシアの犬』の
    あのショッキングなシーンを
    なぜか思い出してしまい、
    芯から身震いしました。



    誰もの内側に
    悪は身を潜め、
    這い出る機会を
    いまかいまかと狙ってる。

    何かの拍子で
    人は簡単に悪に変わるし、

    どんなに爽やかで
    笑顔を振り撒いてる人であっても

    誰もが無意識下では
    『悪いヤツ予備軍』なんだろう。


    だからこそ、
    子供時代に
    ありのままの汚い部分をさらけ出したり、
    恐怖や
    悪の意味を感覚として知ることは、

    「悪い本」に手を伸ばしてしまう状況がいつか来た時に
    (必ず来るのです)

    強い抑止力となり
    意味をなすんじゃないだろうか。



    最近、子どもの本から
    怖い話が消えつつあるらしい。

    こんな本、子供になんか見せられないと言う、
    親たちの顔が目に浮かぶ。

    ではあなたは
    自分の子供を
    無菌ルームに閉じ込めたままで
    一生を過ごせると
    本気で思ってるんだろうか。


    恐怖という感情こそが
    想像力を広げ、
    他人の痛みを理解し、
    考える頭を作っていく。


    本当に大事なのは
    悪いことから
    目を逸らして避けていく人生ではなく、

    目を見開いて
    正しい知識を知って、
    怒りを持って
    『NO!』と言える生き方を
    教えていくことじゃないんだろうか。



    それにしてもあの国民的作家の
    宮部みゆきが
    こういうダークなものを
    あえて絵本として
    発表したというところに
    充分に価値がある作品だと思います。




    最後に一番怖かった言葉を。


    『あなたがわたしをわすれても

    わたしはあなたをわすれない…』






    (夢見るわ!)

  • 中古購入
    シリーズもの

    大人向けであろう怪談えほんシリーズ
    当時だいぶ話題になっていたが
    発売してすぐの時はまだ知らなくて
    たまたま店頭で見かけた
    クマのぬいぐるみが好きなのと
    絵柄が好みなのと
    題名のインパクトで手に取ってパラパラ…
    これ給料日になったら買お!!って思ってたのに
    売り切れてしまったらしく見る影もなし
    それから何年たったのか
    やっとこさ買ってきた

    下の子にはまだ早いかな〜とまずは1人で読んでみる
    大人が読んでも十分怖い
    人間誰しも
    「やってはいけないことをやってしまったら」
    そんな想像をしてゾッとしたことがあるだろう
    なんでそんな想像をしてしまうのか
    その想像のせいでそのことに不安になったり恐怖を感じたりする
    そこを突いてくる
    自分にも可能性があるという不安
    それが恐怖

    これが怖くないという人も勿論いるだろう
    でもそれってどうなのかな?
    私はそういう人にはあまり魅力を感じないかなぁ

    忘れた頃に私の手元にやってきた『悪い本』
    もしかしてこの本が私を…

  • やさしい言葉でささやきかけてくる「悪い本」。「だれかをきらいになり」「いなくなればいいと」思う時、「なにかをきらいになり」「なくなればいいと」思う時、他ならぬ自分の中から「悪」というものが動き出すのです。たぶん、犯罪とか戦争とかにたやすく繋がるようなものも。この世で最も恐ろしいのは人間、しかも自分自身かも、と思い知らされて戦慄します。さすがは宮部みゆきさん。

  • 〝はじめまして。わたしは悪い本です。この世の中の悪い事を、この世の中で一番よく知っています。あなたはいま、悪い事が書いてある本なんか、欲しくないと思っているでしょう・・・でも、それは間違いです。いつかあなたは、わたしが欲しくなる。わたしと仲良くなりたくなる・・・〟人の弱い心に潜りこむ悪魔の囁きは、人間心理の深層を抉りとる<宮部みゆき>さん作、<吉田尚令>さん絵による、心胆おぞける怖~い絵本。

  • インパクトが強い。
    この本が脳裏をよぎって悪いことできなくなる。そんな抑止力ありそうな絵本。

  • この絵本を子供が読んだ時の感想を聞きたい〜。
    かなり邪悪です。笑

    大人は黒い心があるから邪悪な…いや悪い本と思うのかも。
    子供にとっては、「そういうことに」なった時のよりどころの本なのかもしれませんね。
    夢に出てきそうな。
    ねっとりしたこわさを感じる絵本です。
    これを絵本にしたこと自体、すごいなぁ〜。
    内容が気になるのなら、是非!!

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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。87年『我らが隣人の犯罪』で、「オール讀物推理小説新人賞」を受賞し、デビュー。92年『龍は眠る』で「日本推理作家協会賞」、『本所深川ふしぎ草紙』で「吉川英治文学新人賞」を受賞。93年『火車』で「山本周五郎賞」、99年『理由』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『おそろし』『あんじゅう』『泣き童子』『三鬼』『あやかし草紙』『黒武御神火御殿』「三島屋」シリーズ等がある。

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