怪談えほん (3) いるの いないの (怪談えほん3)

著者 :
制作 : 東 雅夫 
  • 岩崎書店
3.98
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本棚登録 : 1888
感想 : 394
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  • Amazon.co.jp ・本 (32ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784265079537

作品紹介・あらすじ

おばあさんの住む古い家でしばらく暮らすことになった。家の暗がりが気になって気になってしかたない。-京極夏彦と町田尚子が腹の底から「こわい」をひきずりだす。

感想・レビュー・書評

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  • おばあさんの家に暮らすことになった僕。古い家の高ーい梁の所に白い顔の少年が。おばあさんに言っても、そうかそうかって感じ。顔はいつの間にか不気味な男の顔になっていて、じいっと見ている。ああ怖い。

  • まず、タイトルがいいですよね。

    『いるの いないの』

    私に聞かれてもって、感じなんだけど(^^;)
    そんなの誰にも分からない気がするし、世の中には理解の範疇を超えた事も起こる気がするし、絶対は無いし・・といった、これは人間の漠然とした不安感と想像力がもたらす、一種の心理戦でもあるような気がしてくるのである(と書いて逃げる)。


    本書は「東雅夫」さんによる、「怪談えほん」シリーズの三作目となり(2012年)、作者の「京極夏彦」さんと、猫絵師「町田尚子」さんのコンビは、四年後に「ざしきわらし(えほん遠野物語)」でも手を組んでいるほどの相性の良さで、おそらく本書で手応えを感じて、再度そうなったのではと思われる気もする。

    その根拠としては、京極さんの、必要最小限しか書かない無駄のない文章の隙間から、嫌でも勝手に脳内補完(あるいは妄想か)してしまう、何とでも捉えられそうな怖さと、町田さんの、壁の中に何か潜んでいそうな、ベッタリと描かれたアクリルガッシュの質感の怖さに加え、高さを充分に活かした視点の多様さが、またそれに輪をかけており、特に斜め視点の多さには、より不安感を煽られるようで怖い。


    そんなわけで、改めて表紙を見ると、少年の視線がもう意味ありげな上に、右手でTシャツの裾を掴む仕種が、また絶妙に不安感を表しているではないか。そして、彼を囲むようにして眺めている猫たちを見て、猫と怪談って何故こんなに相性抜群なのかと思ってしまうが、おそらく、ここでの猫は、その多様な魅力の中の一つであろう、ミステリアスで神秘的な雰囲気が、殊の外、醸し出されているのではないかと推察される。

    それから、タイトル文字のフォントの、「はね」や「はらい」のふにゃふにゃと先が伸びきった、どこか不穏な感じも気になってしまい、その青白い色からして、「い」は人魂のようにも見えてきそうで怖く、更に、表と繫がった裏表紙の絵には、横顔のため表情が一切見えないおばあさんに加えて、何か読み手をじっと見つめている猫も障子の陰に!
    その表情が何か意味ありげで怖いんですけど。

    そして、捲った見返しは、一面、閉じられた障子の絵となっていて、これはまた、粋な計らいを・・・この障子を開けた先は、トワイライトゾーンという一種の暗示か。どうか、無事に帰って来られますように。


    物語は、おばあさんの家で暮らすことになった少年が、その家の玄関でおばあさんに迎えられるところから始まるが、この時点で、見通しの利かない闇に満たされた廊下と、下駄箱が少し開いた隙間から覗く黒猫に、その上に置かれてある日本人形の存在と、既にお膳立ては万全といったところか。

    そして、ちゃぶ台のある畳の部屋に案内された少年は、真っ先に、梁の渡っている、どこまでも高い上の方が気になって仕方ないようで、まずは少年を横から見た少し引いた視点で、部屋の高さを実感させて、次は、少年が上を見た視点で、その梁と僅かに開いた小さな窓だけを描いているが、それでも暗いことへの心細さを表しており、最後はその反対に、梁の上から少年を見下ろしている視点へと変わるが、これがまた、誰かの視点のようで怖い上に、猫が二匹ばかり、少年と同じ方向を見上げているのが、また意味深であると共に、それとも猫が見ているのは私?

    その後も度々、少年は梁の上の暗がりを見ていたようで、あくる日、ついに小さな窓の横に怒った男の顔を見てしまうが、ここでの表現の上手さとして、少年をフォーカスした視点で、それ自体を描いていないことにあり、まだそれが真実なのかどうか分からないということ以上に、どんな顔なんだろうと、またも要らぬ想像を引き起こしてしまうことで、それは、あんぐりと口を開けっ放しにした、能面のような無表情さで茫然自失と化した少年からも覗えて、人は怖いものを見たとき、普段の感情や表情もそいつに奪われるのかもしれないのではといった、妄想も掻き立てられそうで、少年のその後の気持ちと同様、『こわい』のひと言に尽きる。

    それから、家を逃げ出した少年の外の風景での、色褪せた鳥居や(扉絵で小さく見えてた時から密かに気になってた)、庭の柵にぶら下がった赤いゴム手袋もなんか意味ありげで怖く、この本編と関係ない部分での手の込み入った表現もそうだし、少年主観の視点が全く無い、誰かが覗いているような視点も、ここに来て、ますます気になってきて、これはさすがに何かありそうか?

    そして、ついにしびれを切らした少年は、思い切っておばあさんに聞いてみたが、おばあさんは上を見ないで、「みたのかい。じゃあ いるんだね」と答える、その「じゃあ」って何だよと思ったが、その後、おばあさんはや・さ・し・く笑って、

    「うえを みなければ こわくないよ」

    「みなければ いなくなるの?」

    「さあ みないから
    いるか いないか わからないよ」

    この、いるかいないかは全く問題としない、おばあさんの思考法が、ある意味、いちばん怖いと思ったが、ここに来て、おばあさんの表情の見える絵が全く無かったことに気付き、何か嫌な予感に駆られたが、その後、夜に少年が歯磨きをしている絵に、そっと壁に這うヤモリを見つけて、どこか安心感が湧き(家守だけに)、これは気のせいだなと思っていたら、また猫が一匹、洗濯物の籠から半分体を出して、読み手の私をじっと見つめており、極め付けは、その次のページの、おばあさんに抱かれた猫の、まるで全て分かっているぞと言わんばかりの、その読み手に向けたガン見が、そことは正反対の、廊下の突き当たりのドアを開けようとしている少年の行く末を暗示しているようで・・この先は、是非ご自身の目で確かめてみて下さい。とりあえず、私はなんとか生還できたようです。

  • おばあさんの家ってどうしてこんなにこわいのだろう。

    天井がとても高いからなのか。
    はりという太い木がわたっているからなのか。
    気になって何度もぼくは見上げる。
    はりよりずっと上に小さなまどがある。
    はりのくらがりを見ていたら
    おとこのこの顔があった。
    じっと下を見ていた。
    おばあちゃん いるよ。
    みたのかい。じゃあ いるんだね。
    おばあちゃんは、見ないから いるかいないかわからないという。
    見たら こわい
    見なければ いい


    見たくないけど見たくなる気持ちは、わかる。
    子どもの頃は、やっぱりおばあちゃんの家はこうだった。
    だれかが見てるようで
    見なければいいのに 見てしまう。


    絵もこわい。
    上にいる だれかの顔 こわい。

    • なおなおさん
      湖永さん、よく分かります。
      どうしておばあちゃんちは怖いのでしょう。うちの場合父方の田舎の家の離れ。そこに飾られたご先祖たちの遺影…夜はそこ...
      湖永さん、よく分かります。
      どうしておばあちゃんちは怖いのでしょう。うちの場合父方の田舎の家の離れ。そこに飾られたご先祖たちの遺影…夜はそこで寝るんです。ご先祖たちが見守ってくれているんだろうけど、もう布団を被って汗かきながら寝ていました^^;
      2023/06/03
    • 湖永さん
      なおなおさん こんにちは

      遺影ありますねぇー
      和室の仏間から見下ろしてますね
      じっと見られてるような感じ…わかります

      なおなおさん こんにちは

      遺影ありますねぇー
      和室の仏間から見下ろしてますね
      じっと見られてるような感じ…わかります

      2023/06/03
  • 色々な方の書評を読むと「怖い」「怖い」と書いてあるので、おおいに期待して「さあ!怖がるぞ!」と読んでみたのだが・・・不発だった。
    どこをどう怖がれば良いのか、もしや自分が鈍感なのかと何度も読み返したが、あまり変わらない。

    ただ、絵がとても良く、「気配」で感じさせる日本独特の盛り上げ方が巧い。
    丁寧に描かれた田舎の古い家屋と、細かな所帯道具の数々。
    古い日本家屋だけが持つ、空間の暗がり。
    そこに、異次元が広がっていても不思議ではないと感じさせる。
    主人公の男の子が、なぜおばあさんの家で暮らすことになったのか、その背景が一切明かされないところ。
    そしてそのおばあさんは、何故か決して正面を向かない。
    大勢いる猫たちの目が、部屋の暗さのせいか妙に光っているし。

    江戸時代のような家で生まれ育ったせいか、怖さよりも懐かしさの方が先行してしまう(笑)。
    そうそう、そう言えば柱や天井の木の節目が、色々なものの姿に見えたりしたっけ。
    想像することで膨れ上がる怖さというものを、小さな頃にたっぷり味わってしまったからか、後年は生身の人間ほど怖いものはないと思うようになったのだ。
    それにこの本、京極さんは怖がらせることだけを目的にしているため、「オチ」のその先が見えてこない。
    で、それからどうなったの?という私のように「怖さに擦れた」タイプには、物足りないこと夥しい。
    ということで、どなたか私を怖がらせてください。

  • おばあちゃんの田舎の古い家で暮らすことになった少年が、高い天井の暗闇のなかで、怒った顔の男の顔がじっと下を覗き込んでいるのに気づきます。少年はおばあちゃんに「天井のはりのところに誰かいるよ!あれは誰?」おばあちゃんは首をかしげ「さあ 知らないよ。上を見なければ 怖くないよ」「いるか いないか わからないよ」・・・おばあちゃんの家には、猫がうよううよ(14匹?)、大きなイモリが壁を這う、言い知れぬ不気味さのただよう 怪談えほんです。 猫を抱いたおばあちゃんが、いちばん不気味かな。

  • とても雰囲気のある絵と話しにページをめくる度にゾクっときた。
    絵の構成も良く、視点を上から見たり、下から見たり、引いた絵の次には、アップがきたりと、映像のような画面構成で、薄暗い部屋の怖い雰囲気が随所に出ていた。
    また、おばあさんの家にいる沢山の猫たちの内1匹は、必ず読者と視線が合うようになっていて、そういった細かい部分の怖さの演出も面白い構成だと思った。
    話はまさしく、いつもの京極さんの話しという感じで、曖昧さの中にある怖さが、読んでいる内にジワジワっときた。

  • これそのままおばあちゃん家やん、そうかー、いたのかー、と息子と話した。トイレ、行けるかな?

  • 静かな語り口調、穏やかな絵、たんたんと込み上げてくる恐怖…

    家の中の暗い場所…

    ちらっと見えた怖い顔…

    もう一度確かめたいけど、勇気がないの…

    怖いからこそ気になるの…

    ねぇ、そこには、いるの?いないの?

    • 円軌道の外さん

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      シリーズで何冊も出てるけど
      この作品が一...

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      シリーズで何冊も出てるけど
      この作品が一番怖いですよね(汗)

      『怖い』ものを
      子供のうちから
      当たり前に怖く伝えていくことは
      本当に大事なことだと思うし、

      猫好きの自分から見ても
      普段見せない猫たちの表情に
      背筋の凍る思いでした(滝汗)(>_<)

      2012/05/30
    • hinasayoさん
      本屋さんで友達と読みました!
      怖かった・・・
      絵が、穏やかな感じなのにどこか不気味で、恐ろしげでした。
      最後の絵は、決定的・・・
      言...
      本屋さんで友達と読みました!
      怖かった・・・
      絵が、穏やかな感じなのにどこか不気味で、恐ろしげでした。
      最後の絵は、決定的・・・
      言われてみると、語り口調も関係しているのかもしれません。
      2012/07/03
  • 怖さに震えて‥画が浮かびます‥
    他に読むつもりの2冊は止めました‥コワ‥

  • 最初の「おばあさんの いえで くらすことになった。」からもう不穏。読み終わってみると、割と基本に忠実な怖いお話だった。

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著者プロフィール

1963年、北海道生まれ。小説家、意匠家。94年、『姑獲鳥の夏』でデビュー。96年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、97年『嗤う伊右衛門』で泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で山本周五郎賞、04年『後巷説百物語』で直木賞、11年『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞、22年『遠巷説百物語』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『死ねばいいのに』『数えずの井戸』『オジいサン』『ヒトごろし』『書楼弔堂 破暁』『遠野物語Remix』『虚実妖怪百物語 序/破/急』 ほか多数。

「2023年 『遠巷説百物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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