- Amazon.co.jp ・本 (80ページ)
- / ISBN・EAN: 9784265820252
作品紹介・あらすじ
「ひとつの物語を話してあげよう-」世界的に有名なバイオリニストのパオロ・レヴィの秘密はかつてナチスの強制収容所でくり返された悲しい記憶とつながっていた。美しい水の都、イタリア・ヴェニスを舞台に描かれた人間のたましいふれる物語。
感想・レビュー・書評
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楽器が弾ける人を特別待遇するくらい(といってもひどい状況ですが)音楽の素晴らしさをわかっている人たちが、どうしてあんなに酷いことができたのでしょう。
昔も今も、悪の元凶となっている1人を、どうして止められないのでしょう。とても悔しいです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
偉大なヴァイオリニスト、パオロ・レヴィがモーツァルトを弾かない理由とは…。
新米の新聞記者だった「私」が知った真実は、ナチスの強制収容所でパオロの両親が経験した、悲しく辛い出来事につながっていた。
ホロコーストの悲劇は、アンネ・フランクの日記等で知っていた。しかし、まだまだ私の知らないことがあったのだと思い知らされ、愕然とする。
囚人から音楽家を選び、オーケストラ演奏させる。その理由があまりにも惨たらしく、己が生きる道とはいえ、過酷な状況下で音楽を奏でなければならない…その残酷さには言葉も出ない。本書では当時の描写は抑え気味ではあるけど、直接は描かれない悲しみや苦しみが行間から伝わってくるようで、辛かった。
だけど決して本書は悲しいだけの物語ではない。思いがけない再会をきっかけに、封印していた思いが解き放たれる過程には心が揺さぶられた。音楽の持つ力について、深く深く考えさせられた。
「秘密は嘘と同じ」…何度か出てくるこのセリフが印象的だ。
作品を彩るマイケル・フォアマンの絵も素晴らしい。悲しみと喜びが複雑に混じりあった心模様が、背景に見事に表現されているなと思った。
遅まきながらモーパーゴの著作を初めて読んだが、彼のことを知らなかったということが今更ながら勿体ない!是非他の作品も読みたいと思う。 -
ユダヤ人の強制収容所で奏でられた優しいモーツァルトの響き。それを演奏していた人の苦悩が静かに語られます。柔らかな挿絵もストーリーにフィットして、イメージが膨らみ、わかりやすく簡単に読めるけど、読後にしっかり残る一冊でした。
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〝世界的バイオリニストの<パオロ・レヴィ>へのインタビュ-では、決してモーツァルトに関わる質問を行ってはならない〟・・・その理由とは、ナチス強制収容所において、囚人の中から音楽の出来る者が選ばれ、オーケストラの演奏を前に並んでガス室へ送られていった人々がいた。そこでしょちゅう演奏されたのがモーツァルトであったという、悲しい記憶があった・・・。イギリスの児童文学作家マイケル・モーバ-ゴが、水の都ヴェニスを舞台に、音楽を武器に戦争を生き抜いた不屈の魂を描いた感動の物語。
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『ベルリンは晴れているか』で第二次世界大戦後に敗戦国として支配されたドイツで、ドイツ人でも演奏家だけは優遇されていたことを知ったことがきっかけでこの本を読んでみたくなりました。
強制収容所でユダヤ人が演奏させられていたことは知りませんでしたが、中世ヨーロッパで音楽というものがいかに重んじられ特別な役割があったか改めて思い知りました。
楽器の演奏ができることで命をつないだ音楽家たちが経験してきた辛く悲しい時間は、戦後も彼らから音楽を奪ってしまいましたが、勇気づけ再び希望を与えるのもまた音楽でした。
生きて再び出会えたユダヤ人の絆に涙がでました。 -
奇跡のような素敵な物語だった。モーツァルトおとこわりの理由はあまりにも辛い過去の記憶。戦争、ナチスのユダヤ人迫害についてのある側面の物語。
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>父はそう言うと、私がそれまでに聞いたなかでは、もっとも悲しい、そしてもっとも幸せな物語を話しだした。
相反する感情を併せたこの一文に惹かれた。
10代のころに聴講したビブリオバトルでチャンプ本になった本。アンネの日記とかアンネフランクの伝記とか小学生のころ読んでたけど、全然知らなかったなと思った。
先日日本史の教授と話した時に、現在の日本はこんな歴史の上で成り立っているということを知ってほしいと聞いた。
学生時代に歴史は点数を取るために暗記していて、自分とは関係ない「歴史」という別の世界の話な感覚だった。
当たり前なんだけど自分事なんだなあと最近思う。 -
タイトルだけだと、ロマンスか何かのようにも思えます。原題はThe Mozart Question。やっぱり、原題の持つストレートさにはかないません。それでいて、タイトルだけでは何も中身がわからない。じゃあ、邦題は何だったらよかったのという話になりますが、やっぱり、モーツァルトはおことわりがベストかもしれません。翻訳ものの難しさよ。
お話は、とってもシンプルです。世界的に有名なヴァイオリニストに急遽インタビューをすることになった記者の回想から始まり、インタビューまで。
ヴァイオリンと音楽というロマンチックなアイテムと一緒に、ホロコーストの話を描くのは、しかもそれが実話だったからこそ、子どもにも理解しやすい。
歴史上には数々の非道徳的なことがありますが、それを子どもにどう伝えるかは大人の頭を悩ますところ。人間は、性質としてとても残虐で利己的なところがあるということと、それを表面に出していては社会では生き残れないというのが、結局のところ、普遍的なのかもしれません。世界に愛しかあふれていない子どもたちに、どうやってこの世界の不条理さを伝えるべきか。それはこういった絵本が得意とすることなのだと思います。
挿絵がとてもイギリス的で素敵。ガス室の煙しか描かれていなくて、その中でひとがどうなっていくのかなんかは、見る必要がない。だって、そのための想像力なのだから。
たとえ恐ろしいものをたくさん見せられても、やっぱり世界は愛にあふれている、と確信するためにも、汚いものに蓋をするやり方では真理にたどり着けないのかもしれません。
最近、100歳近くで亡くなられたユダヤ人ピアニストの方は、絵本のように音楽を収容所で弾いていたそうです。彼女は、「あの時、音楽がなければ誰も生きていられなかった。たとえ誰に弾かされていたとしても、私はあの時も今も、音楽を愛しているし、音楽に感謝している。私には音楽があったから、今でも胸を張って言える。私の人生は、とても良いものだったと」とおっしゃっていて、涙しました。
本棚に残しておきたい本です。 -
この長さ(短さ)で、これだけの重いテーマを扱いながら、しっかり深いところまで描いたすばらしい作品。マイケル・フォアマンの透明感のある水彩もすばらしい。架空の音楽家であるパオロ・レヴィが、実在の人物のように感じられた。
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「その傷はそれぞれに深く刻まれていたのだ。 」
マイケル フォアマンの落ち着いた絵が、とっても上手く表現している。美しさも悲しさも、、、「その傷はそれぞれに深く刻まれていたのだ。 」
マイケル フォアマンの落ち着いた絵が、とっても上手く表現している。美しさも悲しさも、、、2013/04/26
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