脳科学からみた「祈り」

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  • Amazon.co.jp ・本 (126ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784267018916

作品紹介・あらすじ

「前向きな心、感謝、人を思う祈り」が脳を活性化し免疫力を高める。

感想・レビュー・書評

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  • 「科学者として、人々の幸福に貢献したい」

    「本当に幸福な生き方とはどのような生き方か?」

    テレビにも度々出演し、著書も多数ある日本を代表する脳科学者の一人でもある著者は、この二つの問題意識を持って本書を出版した。

    「よい祈り」を続けると、人生はよい方向に変わるのだと。

    「祈り」と言っても宗教的なものだけに限らない。

    親が子を慈しむ。

    先輩が後輩を育てていく。

    たくさんの人と関わりを持っていく。

    その「利他的な行動」のなかで、「脳内快感物質」のドーパミンやベータ-エンドルフィンが分泌され、恋愛感情すら上回る「幸福感」が得られるのだという。

    人からほめられる、よい評価をされるだけでなく、自分で自分の行動を「素晴らしい!」と思うだけで、持続的な幸福感に結びつくのだと。

    認知症の症状がある人に、何らかの役割や責任を与えるだけで、その症状が改善する例も多いのだと。

    「自分は誰かの役に立っている」「愛されている」という実感が幸福感となり、生きる力となる。

    ナチスの強制収容所から生還した人は、けっして体力で勝った人でなく、「生きる意味」を持っていた人だった、とも。

    人は一人では幸せになれない。

    「その人の幸せを心から祈れる相手」が増えれば増えるほど、「自己」の範囲は拡大され、その分だけ脳が幸福を感じる機会も多くなるのだと。

    まずは、身近な人に、目の前の出来事に誠実に。

    人のために火をともせば、我が前明らかなるがごとし。

    他人なれども語らひぬれば命にも替るぞかし。


    一番難しくて一番簡単な幸せへの道しるべを示した、手軽に読める一書。

  • フォトリ48。予想外に良かった。祈ることでこんなホルモンが出て…という解説は予想していましたが、「脳科学的に見た幸せな人」の定義が、私が薄ぼんやりと考えていたものとは真逆なことにびっくり。そして宗教や言霊も「非科学的」と否定せず、何とか科学の側から歩み寄り説明をつけようとする真摯な姿勢にうたれました。科学者というのは科学や人の力を傲慢に評価している人種と思っていましたが、そうでない方もいるのですね。

  • 脳科学でわかってきた「社会脳」つまり人間は、本能的に利他行動を志向する。逆境は脳を鍛えるチャンス。脳科学が示す「幸福」な生き方は、他者に愛情を向け思いやりを持つこと、逆境に直面し力を限界まで発揮して乗り越えること。

    祈る側の幸福効果は、具体的物質的にあることがわかりましたが、祈られる側はどうなんでしょう。祈られるような状況こそが逆境、乗り越えれば幸福になるんでしょうけど。

  • 平成16年6月ごろ読む
    感想文ノートを見つけたので、令和元年9月記入

    脳に与える祈りの影響
     ネガティブな祈り「呪い」・・・自分自身に悪影響を及ぼす、逆効果
                    ストレス物質であるコルチゾールが分泌
     ポジティブな祈り・・・祈っている当人の脳によい影響を与え、幸福感を与える。
                脳内快感物質が分泌される。

    幸福な人、不幸な人
     釈迦「人生で一番大事なことは何でしょうか?」の問に「幸せになることです」
     
     幸福な人生とは、何事もない平穏な人生ではない。さまざまな困難が次々と襲ってくる人生の方が、それを乗り越えるたびに深い幸福感を感じる。
     学び続け、成長続け、達成を繰り返すことの中に脳が幸福感を感じる。

     自分一人だけで生きていけばいいと思っている人は範囲が最小となり幸福を感じられる機会もごく少なくなる。
     釈迦、キリストは、人類全体を我が子のように深く思いやることのできた人だから、想像を絶する幸福感だったのではないか。→利己の幸福から利他の幸福へ

  • 文字が大きめで、行間が広いので中高生にも読みやすそうだと思った。特に難しいことは書いておらず、こういうメカニズムで快感脳内物質が出るから、日常でここを意識するのは脳科学的にわかっています、のような。脳の取扱説明書のような。ただ、脳科学的にこうですからこういう感情になるのです、みたいな書き方をされると、なんだかこう少しだけモヤモヤする。脳にコントロールされて生きているかのような、考え過ぎではあるけど。

  • 中野信子さんのこと、TVで見て面白そうだったので、すでに彼女の本を2冊読みました。
    そして実は「著書はあまり面白くないなあ」と思ったのです。

    しかし、この本はとっても面白かったです!
    いろいろな年代の人に読んでもらえるように工夫されていると思います。

    「祈り」なんて非科学的な感じがするんだけど、この本ではいろいろ科学的に説明されていて、すごくためになりました。

    ネガティブな祈り、たとえば「嫌いな人が不幸になるような祈り」などは、自分自身に悪影響を及ぼすそうです。
    ポジティブな祈りは、ベータエンドルフィンやドーパミンやオキシトシンなど、脳内快感物質と一般に呼ばれる一連の物質が分泌されます。
    ポジティブであっても攻撃的、たとえばライバルを蹴落とすとか、そういうのはアドレナリンやノルアドレナリンが出るのですが、血圧や血糖値を上げるので、リスクを高める恐れがあり、出っ放しは危険です。
    そして究極の祈りなんですが、自分が呪いたい人の幸せを祈る、それが自分の幸福につながることもあるのです。ベータエンドルフィンが満ちて、魅力的になった結果です。夫の浮気相手の幸せを祈り成功した例がありました。
    だから、争いごとや勝負にかかわることで行き詰まりを感じたら、まず心から祈ることを試してみてもいいかも。


    「よい祈り」はベータエンドルフィンやオキシトシンの分泌を促すと同時に、そのことが記憶力の向上にも結び付きます。
    脳に適度な刺激を与え、適度に困難な課題を乗り越えていくことが、脳を若く保つに必須なのです。

    そしてたくさんの人とかかわわり、たくさんの人の幸せを願い、逆境に直面したときに「いまこそ脳を鍛えるチャンスだ!」と、そのほうが最高に幸せな人生になりうることを、単なる精神論でなく、脳科学的に結論をだしました。

    ちょっと余談ですが、フランス語で「母」は「mere(メール)」海は「mer(メール)」三好達治の「郷愁」に「母よ、仏蘭西人の言葉では、あなたの中に海がある」という名高い一説があります。海と母という「命の源」……以下省略
    ここは凄く面白いと思いました。

  • 脳科学的にも
    『利他』が
    正しいと再認識

    科学は良いな。

    脳科学は良いな。

    感情や行為を
    数式化できる

  • 文字が大きく行間も広いので少し驚いた。
    人の幸せを願うことで自分も幸せになるという話だった。
    最初の話の浮気されたけれど旦那も浮気相手も幸せを願う話のインパクトが強くてそれに引っ張られたな。この本を読み終わってそのことはさらによくわかるし「不倫」の本を読めばさらに実践の助けにはなりそうだけど怒りとか絶望沈めて無理に祈るのってきついけどな…その精神の動きの過程の方が興味そそられちゃったよ

  • 以前から気になってたので、買って読んでみました。

    心から幸せを祈る時、幸せホルモンであるオキシトシンが出る。オキシトシンは幸福感につながり、自己肯定感が高まる。
    人のことを自分のことのように考える力が人間にはある。そのため人のことを祈り、その人が良い方へ向かったときには自分も幸せに満たされる。
    祈りは自分のとこだけではなく、人のことを祈れるようになるとその祈りの力が発揮されると思いました。

    すごいと思ったことは、夫の浮気相手のことを祈れるようになったとき、夫が浮気相手と別れたということ。祈ることで魅力的な女性自身となった。
    最初は憎しみしかないが、ずっと呪いのように祈り続けるよりも少しずつ良い方へ向かうように祈ることが大切だと思いました。

    南無妙法蓮華経は音韻的にとても良く、意味的にも力強さがあるのには驚きました。

    コロナで悲観的な今、良い方へ向かうように祈っていきたいです。

  • 宗教にハマる人の理由を知りたくて、祈りについて読み始めました。感覚的に本書の祈りと宗教の祈りは毛色が違うと感じたし、意志に近いものを感じた。
    自己範囲を広げるということは某R社の圧倒的当事者意識と同じだし、生物学的や脳科学に裏付けられたビジネスの原理原則ってあるもんだなぁと勉強になりました。

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著者プロフィール

脳科学者、医学博士、認知科学者。1975年、東京都に生まれる。東京大学工学部卒業後、同大学院医学系研究科修了、脳神経医学博士号取得。フランス国立研究所ニューロスピンに博士研究員として勤務後、帰国。現在は、東日本国際大学教授として教鞭を執るほか、脳科学や心理学の知見を活かし、マスメディアにおいても社会現象や事件に対する解説やコメント活動を行っている。著書に『サイコパス』『不倫』(ともに文藝春秋)、『人は、なぜ他人を許せないのか?』(アスコム)、『脳の闇』(新潮社)などがある。

「2023年 『賢くしなやかに生きる脳の使い方100』 で使われていた紹介文から引用しています。」

中野信子の作品

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