発明家たちの思考回路 奇抜なアイデアを生み出す技術 (HARVARD BUSINESS SCHOOL PRESS)

  • ランダムハウス講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784270001189

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  • 発明家=エジソンという短絡的な連想とは異なり、本書はもっと古今東西の多種多様な発明を取り上げている。革新的な技術を生み出した企業も含まれており、「発明家」について知るというより、発明された技術そのものについて学べる、といった内容。

    1章は発明の定義、2章から11章までは革新的な発明が含む要素が紹介されている。全ての発明品や発展技術が2章から11章の要素を押さえているわけではなさそうだが、各章のトピックに該当するエピソードや発明品が紹介されており、あぁ、そういう視点や要素も発明には必要なのね、という感じで読んでいける。

    タイトルにある「発明家の思考回路」を理解できる、というよりは、「革新的な技術にある程度、共通する要素」を網羅できる、というテーマの本。一部の発明家やイノベーターの挑戦の経緯を詳しく読めるので、自分の関心がある分野が見つかったら儲けものか。

  • 発明家達の発想のパターンの紹介。新しいものを生み出すプロセスは、今も昔もそう変わらないのかもしれない。

  • 発明に必要な要旨を章だてしてまとめ、それぞれについて実際の発明家の非凡な実績を紹介した本。
    <メモ>
    ・発明家は新しい可能性を自ら創出する。日頃から可能性を考える練習をすれば習慣となってやめようとしてもやめられなくなり、内から湧いてくる発想力が身に付く。
    ・発明の4タイプ ①既に利用されているものに欠点を見つけて改良する。②人が気づいていない可能性を見つける。③大きな需要がありながら、それまでうまくいかなかった問題に斬新なアプローチで取り組む。④幸運な大ヒット。
    ・発明家は問題の解決がうまいのではなく、発見が得意な人。あらゆる努力を払って自分のもつ知識やスキルにふさわしい課題を探し出す。
    ・問題の分析ではなく問題の見極めに時間をさく。
    ・以下、発明の要素
    ①可能性を創出する
    ②問題をつきとめる
    ③パターンを認識する
    ④チャンスを引き寄せる
    ⑤境界を横断する
    ⑥障害を見極める
    ⑦アナロジーを応用する
    ⑧完成図を視覚化する
    ⑨失敗を糧にする
    ⑩アイデアを積み重ねる
    ⑪システムとして考える

  • 資料ID:80600148
    請求記号:507.1||S
    配置場所:工枚普通図書

  • 『発明』は特別なことではない

    今このときを
    より良くすることを
    どうやったらできるか?
    考えていくこと

    失敗を糧にすること
    失敗から学ぶこと

    何が問題なのか見極める

    基本の考えを読み解くと
    わたしたちの仕事に通じる部分がたくさんあります

    専門的なことが多く
    読みやすくはないですが
    時間をかけて
    読む価値はあります

  • in 08/08/25
    out 08/09/16

  • 開始:20080220、完了:20080220

    "発明"に焦点を当てた本。発明家たちがどういう思考プロセスで
    発明に至ったかに迫っており、大変興味深い。
    本書を読むと結局は、同じものを見ていても、それをどう捉えるかが
    問題だということがわかる。絶えず考え続け、失敗を繰り返し、アナロジー
    で物事をみて、セレンディピティを捉える、そうすることで、人とはまったく
    別の次元でものごとを捉えることができるようになる、ということではない
    だろうか。
    つまりは、発明は問題の解決というよりは、問題の発見、課題設定につき
    るともいえる。本書で出てきた例は、次のようなものである。
    ベルの電話のように問題を別の次元で捉える。ウォーカーはテクノロジーではなく
    人間の習性に着目した。グッドイヤーのセレンディピティ。海藻と皮膚の
    アナロジー。ファラデーの磁力線の視覚化。カーメンの失敗の繰り返しによる
    セグウェイ。システムとしてはジェフリー・バラードの燃料電池、リー・フッドの
    ヒトゲノムによる予防医療。
    しかし、100年以上たっても、いまだに発明といえばエジソンというのは
    確かになぜだろうと考えさせられる。


    以下メモ。
    発明は新しいものすべての本源である。どんな装置も仕掛けも道具もあるとき誰か
    の頭のなかでひらめいたことから誕生した。
    人間の歴史は発明の歴史。
    R&D、InventionのIはどこにいったのか。
    発明は簡単ではないがその管理はもっと難しい。
    マイクロソフトの発明研究所。
    発明はイノベーションの要。発明のアイデアは脳に思いがけない神経回路が
    できた瞬間にひらめくのかもしれない。
    ニック・ホロニャック、GE。半導体は不可視の赤外光エネルギーを出しているという。
    それを聞いて、可視光を発生する回路がつくれるのではないかと考えた。
    同僚は少し頭がおかしいと思った。上司に知られてはクビ。2年間は人目を盗んで研究した。
    そして発明したのが発光ダイオード。
    赤色ができると橙色や緑色や青色ができないか考えた。
    LEDこそ発明の新しいシンボル。人間の創造性を凝縮したのが発明。
    消費者の立場で考えるのをやめなくてはならない。現代の消費社会に生きる
    私達はまずほしいかほしくないかの観点でものを見る癖がついている。
    発明家のように発想するには味方を変えなくてはならない。発明家はこう問うのだ。
    「これはどんなしくみなのか」「どうしてうまく動くのか」「どんな発想をすれば
    つくれるのか」「なぜどこかの誰かがもっと早くつくらなかったのか」「欠点はどこか」
    「どこを改良できるか」「もっと洗練させるにはどうするか」「ほかに必要なものはないか」
    「なぜこうでなければならないのか」
    発明のハードルを高くしている3つのルール。?発明は新しくなくてはならない、
    ?発明はありきたりのものではいけない、?発明は便利でなくていけない。
    孔子の有名な言葉、「聞いたことは忘れ、見たことは思い出し、やったことは忘れない」。
    【1章可能性を創出する】
    みなが文句をいわずに受け入れているのが納得できない。発明家が指摘するまで人はどこが
    おかしいのかさえ気付かない。エルウッド・ウディ・ノリス。
    まだ影も形もないものに目をつけてそこに可能性を見出すのは「何が必要とされているか」と
    問うほど単純な仕事ではない。
    エイプリル・フール賞でばかげたアイデア、レコードプレーヤーに無線発信機を組み込む。
    彼らは最初の発明を細部まで覚えているが、それが重大な発明であることはめったにない。
    ノリスにとっては人の見落としている可能性を見出すコツがわかったと核心できた。
    体内の様子を知るのに音を利用しよう。周波数の高い音波を体に投下させてみる。
    超音波診断の研究。
    発明の4タイプ、?すでに利用されているものに欠点を見つけて改良するタイプ(フラットパネル
    ディスプレイ、携帯用腎臓人口透析器)、?人が気付いていない可能性を見つけてうまれた
    もの(ウォークマン、セグウェイ)、?大きな需要がありながらそれまでの試みでうまく
    いかなかった問題に斬新なアプローチで取り組んで実現するタイプ(電球、飛行機)、
    ?以上の三つのタイプの発明が発明した当人の想像以上に幅広い用途に使われるように
    なる場合(蒸気機関、レーザー)。
    電話はベルのブレークスルーまで40年を要した。これまで電信装置と同じものが
    考えられていた。電話を電信装置の拡張版として考えていた。
    ベルの母親は耳が聞こえなかった。父親は視話法まで開発。
    聴覚障害者の教育にめぐりあった。ピアノの「共振振動」の現象に興味をもった。
    ベルは初めから電話を発明しようとしたわけではない。
    逆に経験ある発明家たちは最初から電話を発明しようとして失敗した。
    ベルは新しい原理を考え付き、その原理をもとにさまざまな可能性を思い絵外た。
    音声を連続的に変化する電気信号に変換するための実験を開始し、やがて電話に
    つながった。ベルは声の変化に応じてガスの炎の形が変化するもので、
    生徒たちになんとかして音を見せようとしていた。さらに死体から耳を
    切り取り、それに向かって話したときの内部の小さな骨の振動を観察したりもした。
    音波が藁を振るわせるほど強いならば、なぜ電流に同じことができないのかと1874年
    の日記に記している。画期的発明をもたらす概念に到達した。
    ベルは連続した電流のパターンを電線で送ることでほぼどんな音も伝えられる方法
    を発見した。ベルの特許の数時間後にライバルが特許をだした。歴史上もっとも価値のある特許。
    疑問は次の疑問を呼び、さらに第三、第四とひろがっていった。
    ベルとノリスの最も奇妙な共通点は音と無関係なところにある。不思議なことに二人とも
    音と無縁に見える分野に方向転換した。
    ノリスは飛行機について、「このおんぼろ飛行機は宙に浮いているためにとんでもない轟音
    をあげます。離陸するにも水面から飛び立つ雁のように2km近くも滑走しなくてはならない。
    なんとも強引なやり方。しかも危険きわまりない。ガタガタと大揺れして頭上から荷物が
    落ちそうになる。車輪は煙をあげる。荒っぽくてぶざまなひどい移動方法だ。21世紀
    だというのにじつに情けない。ところがいまだに重力の基礎的な性質がほとんどわかっていない、
    困ったことです。」
    【2章問題をつきとめる】
    発明家は問題の解決がうまい人と思われがちだが、それよりも問題の発見が得意な
    人と考えたほうがよい。
    ビジネススクール方式ならクスリを飲み忘れないように患者にe-mailを送る。
    あるいは携帯やPDAが一日に2回なるようにする。
    こういうのをよいアイデアだと思うのは問題の捉え方を知らない人間。テクノロジーの
    面からしか見ていない。"人間の習性"は眼中にない。
    ウォーカーは焦点を絞った。問題は患者が服薬しないことではなく、服薬する気に
    ならないことなのだ。
    人間は手ごたえのようなものがなければ何かをしようとはしない。
    人間とはそういうものなのだ。だから本当の問題はクスリを飲んでもメリットがないこと。
    そして、スロットマシン付薬瓶。
    こうした問題を発見するには技術面からではなくまず人間の行動の面から考えていく。
    問題を正しくつきとめるうえで考えなくてはならない重要な側面は、
    成功が期待できる問題かどうかという点。
    エジソンは、人に買ってもらえない発明にむだな時間を費やすな。
    エジソンは時間と努力を投じるかいのある問題を発見した。
    発明家はその才覚で食べている。だから他人の創意工夫に経緯を抱く。
    ウォーカーは問題の発見と解決への関心をたえずビジネスチャンスに
    結びつけようとしている。
    ウォーカーはwwwの可能性。航空券のシステム、値引きパラドックス。
    プライスラインというシステム。
    購入者主導型取引。
    ウォーカー、運だけではなく腕のよさで勝負が決まってもよいスロットマシーンが
    あってもよいのでは。
    ウォーカーは問題によって誰がどんな利益を得ているかを重要な順にあげる。
    犯罪は問題だが、保険会社はそこから利益を得ている。
    犯罪がなければ保険もない。
    貯水池に毒でも投げ込まれたらどうする?
    貯水池に入っても薄まるから危険ではない。
    ちょっとまて、得体の知れないものが入ったバッグを誰かが貯水池に
    投げ込んでもあなたは毒性が薄いから心配ないというのか?その水を
    飲んでもかまわないと。そんな水を飲む人がいると思ったら大間違いだ。
    ウォーカーは人間の習性の側面から問題をみていた。
    スーパーフォースは安全性と安心である。
    そして、USホームガード。監視カメラがの映像を自宅にいる一般市民に
    時給10ドルでみてもらう。不信なものを発見したらボタンをおして
    画像を少数の専門監視員に送る。人間の脳はまたとない優秀なパターン認識。
    市民のすることはきわめて明確で画像に人間が写っていたらそれを専門監視員に
    送るだけ。
    【3章パターンを認識する】
    パターン認識とは発想のツール。フッド、すばらしいアイデアはまずアイデア
    をたくさん考える、そして役に立たないものを切り捨てていく。
    遺伝子がタンパク質を生成するパターンを発見した。
    エジソンが取り組んだテーマは音の記録ではなく音の再生だった。
    エジソンは音響機器に接続した金属板を歯で噛んで音を確かめた。
    エジソンは歯で音を聴いていた。
    エジソンは蓄音機の用途を電話メッセージの記録と再生と考えていた。
    ふつうの人には意味のないように見えるデータに認識すべきパターンが隠れていることがある。
    【4章チャンスを引き寄せる】
    セレンディピティ、セレンディプの3人の王子。王子たちが何かが待ち構えていそうな
    場所ばかりを旅し、知恵を求めていつも目を光らせていたことがわかる。
    「人は探していなかったものを発見することがある」といったのは細菌学者の
    フレミング。ルイ・パスツールは「偶然は準備のできている者だけに訪れる」
    マイヤーソン、とりあえずつじつまの合わないことをメモしておいた。
    IBMで新しいタイプの半導体。大学院生のときにシリコンウエハーを落としたのがすべての
    始まり。デュポンのロイ・J・プランケットはあとで調べるつもりで脇によけておいた
    そのボンベを切断してみると、どういうわけかガスは固体化して得体の知れない
    白い粉になっていた。調べた結果、それがテフロンとなった。
    レーダー研究者のパーシー・L・スペンサーはある日レーダーシステムの心臓部に
    あたるマグネトロン(電子音)のところで立ち止まっていた。逸話によると、
    そのとき胸のポケットのキャンディがとけていることにふと気付いた。
    そのことが気になりマグネトロンから放射されるマイクロ波をトウモロコシの
    粒にあててみた。するとできたてのポップコーンになった。
    レーダーレンジと名づけられた最初の特大の電子レンジは1953年に発売された。
    スイスの技術者ジョルジュ・ド・メストラルは林でオナモミがついていた。
    8年後、ナイロン製の面ファスナーを開発した。
    幸運は迎え入れようと待っていてこそ訪れるのかもしれない。
    数学者のジョージ・ポリアは「発見の第一法則は頭脳と幸運を手に入れること。
    第二の法則はすばらしいアイデアが浮かぶまで腰をすえて待つこと」
    「偶然は洞察力の源」
    世界中の工場でゴム製品が製造されていたが原材料のゴムは夏には軟らかすぎ、
    冬には硬すぎて用途が限られていた。
    科学者ジョゼフ・プリーストリーは鉛筆の書き損じを「こすって消す(ラブ・アウト)」
    のに使えると気付いたことから英語で「ラバー(消すもの)」と名づけられた。
    グッドイヤーはゴムに難点があることをたまたま知った。
    馬車の車輪が夏にとけた。ゴムを硬化する方法をひたすら考えていた。
    それがどれほどの難題かわかっていたなら手を出しはしなかっただろう。
    そのあとに遭遇する障害のことをまったく知らなかったのは、かえって
    運がよかった。身の周りにあるものでゴムを硬化させようとした。
    塩、故障、ちきんスープ、ローション、クリームチーズ、インク。
    下痢の酸化マグネシウムでやってみると効果があった。
    失敗で全財産を失ってしまう。
    セレンディピティを必要としている人がいるとすればそれはグッドイヤーだった。
    10年近くも昼夜を問わずに努力を重ねてきたのに、一つとして成果をあげていなかった。
    常識とはまったく逆の解決だった。「驚いたことに熱いコンロにうっかり
    接触させた実験用のゴムが溶けて川のようになっていた」
    加硫という処理法。熱を加えることで、配合した物質と熱とによって
    ゴムの性質は大きく変化し、日光や人工の熱にあたっても軟化しなくなる。
    また低温にさらされても劣化しない。
    じつは科学的研究の成果ではない。これと見込んだ物質のさまざまな状態を
    観察する習慣を身に着けていればこそ解決への突破口を見落とさず、
    コンロで焼けてできたわずか数ミリの保護膜が重要だと見抜くことができた。
    化学の知識はほとんどなくても彼には並外れた観察力があった。
    幸運の訪れを怠りなく待ちかまえ、それを逃さなかったのである。
    マイヤーソン、まるで戸棚を開けてみて初めて、ずっと前からそこに
    象がいたのを知ったようなものだ。気づいていないだけだったんだ。
    哲学者キルケゴールは、「人生は振り返って初めて理解できるが、前を
    向いてしか生きられない」
    【5章境界を横断する】
    一見して関連のなさそうな二つのアイデアを結合させる。
    ジェームズ・ワットは水の圧力と蒸発と液化の観察から蒸気機関を発明した。
    熱エネルギーと機械が結びついた。
    蒸気機関はタービンになってさらに新しい汎用的な動力源すなわち電気を
    つくるのに利用された。
    本当に生物学を変えたいなら生物学の知識の境界を押し広げるような新しい技術
    開発をしなさい。
    フッドは分子バイオテクノロジーの研究所。
    生物学部と工学部から教授と学生を新しい研究プロジェクトへ。
    読み取った30億文字のDNAの配列はコンピュータのデータベースに保存しなくてはならない。
    【6章 障害を見極める】
    キャスリン・ワイルダー・グアリーニ、IBMワトソン研究所。
    トランジスタを詰め込むのではなく、回路の層を増やせないか。
    3次元集積回路。
    目標は2つの層を一緒に動作させること。
    飛躍的な発明なんてそうめったに生まれるものではない。他人の研究を学び、
    人とは少し違ったことを試みなくてはならない。
    MITのバージン、開発中の再生可能なバイオ燃料。
    特殊な藻を育てて「グリーンフューエル」をつくるというもの。
    光と光合成だけでどこでも繁殖する藻。
    生育の早い豊富な植物である藻を動力源に変えられるとバージンは考えている。
    大量の藻を育てて収穫する低コストで管理しやすい手法。
    ライト兄弟は大学で学んでいないため科学知識をもっていなかったと思う
    人もいるが、2人は大学生よりも熱心に取り組んだ。鳥類学の書物を読んだ。
    他の人はエンジンに気をとられていて飛行機の舵をとることを考えていない。
    ライト兄弟は鳥がどのようにして方向を変えられるのかを観察していたが、
    ほかの人々はどうやって飛び立ち、気流をとらえて滑空するかに着目していたのである。
    2人が気づいた障害は、制御とバランスの維持。
    ライト兄弟が問題を捉え直すまで誰も気づかなかった。いわゆる「たわみ翼」
    主翼の両端を左右逆にねじるという概念は航空機技術の歴史上最も価値ある
    特許のもとになり、のちに特許紛争がもちあがる原因にもなった。このアイデアが
    ある日オービルにひらめいたのは、自転車タイヤのチューブの空箱をいじっていて、
    箱の両端を反対方向にひねったときだ。兄弟はたわみ翼を最新の自作飛行機フライヤー号
    に応用し、1903年12月にキティホークで初の友人動力飛行という歴史的な偉業をなしとげた。
    カール・クロスフォード。CTの(tomo)は「切断」を意味する。
    呼吸をするといった患者のわずかな動きで、画像が乱れたりしずが入ったりしてしまう。
    走査する体の部位が変わるたびに機械を停止させなくてはならない。
    クロフォードはまちがっていそうな仮説を探した。
    CTに関する論文にも論理に興味深い欠点が見つかった。それまでCTの改良にはX線検出器
    を増やすか、検出器をもっと早く回転させるのが解決策だと考えられていた。
    だがクロフォードは問題は別のところにあると気づいた。
    クロフォードの考える理想のCTとは一瞬で体の各部位をスキャンできるものだった。
    X線管球を冷却するのに時間がかかるか、データ帯域に限界があるためだと考えられていた。
    データ取得に制限されるのはそういう理由ではないと仮定してみた。
    間をおいて一枚ずつ断層撮影するのではなく連続して画像データをとる方法を考えてはどうか。
    息を止めている間にスキャンしてしまえば画像がぼやける心配はなくなる。スキャンの合間の
    時間をゼロにすればいい。
    スキャン方式に的をしぼった。
    問題を違う角度からとらえ直すことで考えるべき問題をつくりだした。
    これが、ヘリカルCT。1990年第の販売台数は2万台。100万ドルなので200億ドルの売上げ。
    【7章 アナロジーを応用する】
    発明家はアナロジーの能力を人より二倍も三倍も伸ばさないといけない。
    探していたのはある分野のもので別の分野の問題解決にも役立ちそうなもの。
    ノリスは電気工学の知識のほとんどをアナロジーで理解していた。電気回路で
    生じるのと同じことがメカの共振でもはたらく。それがアナロジー。
    ノリスの疑問は、聴こえない音を混合して聴こえる音がつくれるか。
    ハイパーソニックサウンド。
    生き物をまねる。
    ハーバードのバカンティは、枝のように入り組んだ海藻の構造を観察するうちに、これを
    まねれば培養中の皮膚組織に酸素と栄養素を充分に与えられるのではないかとひらめいた。
    グーテンベルクは興味深いアナロジーをぶどう酒祭りでたまたま目にする。
    お祭り騒ぎのなかで、箱にぎっしり敷き詰めたぶどうをつぶして果汁をそぼるのに
    手回し式の圧搾機が使われていた。それが活字を並べた平台に白い紙をすばやく押し付ける
    手回し式印刷機を思いつくきっかけになった。600年近くたった今もこのアナロジーは生きている。
    メディアのことを英語で「プレス」ともいうのはここに由来があるのだ。
    人工心臓の着想に役立ったアナロジーは心臓を特殊なポンプと見立てたことだ。
    キャノンも偶然に同じ技術を開発していた。はんだの鉄をインクカートリッジに落とした
    技術者が熱でインクに気泡が発生するのを見て同じことをかんがえついた。
    ノリス、ハイパーソニックサウンドをレーザービームととらえセキュリティ。
    群集の中で犯人に1人に警告できる。
    フランスの言葉「人間は歩く機械をつくろうとして車輪を発明したが車輪は
    ちっとも足に似ていない」
    「何に似ているだろうか」と問う。
    アナロジーはとても役立つ道具だ。思いつきさえすればあとはほんの少し手を
    加えるだけで発明できたも同然なのだ。
    【8章 完成図を視覚化する】
    イマヌエル・カント「言葉による思考の前にイメージによる思考がある」
    サーコス・リサーチのジェイコブセンの頭は視覚イメージでしめられている。
    発明品の機能を目に見えるように説明しはじめる。
    フラクタル理論とは自然のなかに繰り返し現れる図形を説明する理論。
    メカの発明品なら何がどうなっているかが目で見られるから、
    現物を使ってしくみを教えることができる。
    ワーノックはゼロックス・パロアルト研究所をやめてアドビを設立。
    ファラデーは電磁石から生じる磁力線を図にした。
    目に見えない磁場が頭のなかではっきりと見えていたからこそ、
    各方向にはたらく磁力の強さを図で示すことができた。
    1831年ファラデーは世界で初めて電気を「誘導」した。
    ジェイコブセンは学生たちにファラデーがしたように電磁石を
    いじらせて力のはたらく場について学ばせる。
    すると学生たちの頭のなかで電磁場が見えるようになる。
    そうして初めてマクスウェルがどのようにして方程式を導いたかが
    本当に理解できるのだ。
    視覚化できれば理解できる。
    ファイマン、父は名称を教えたりしない、何かの名前を知っている
    ことと何かを知っていることの違いを父はわかっていた。
    ジェイコブセン、MEMS。
    アインシュタインは光線にのることを想像した。
    時間が相対的なものだとしたら、時計の進みはゆっくりになるだろうか。
    スティーブ・ジェイコブセンは人体の器官の視覚化からキャリアをスタートした。
    多くの臓器のはたらきを機械に代用させようとした。
    ジェイコブセンはこれまで視覚化したものをすべて実現した。
    【9章 失敗を糧にする】
    ウォズアニックは自分の失敗をあらいざらい披露し、
    どんなに失敗を待ち望んでいるかを得々と話した。
    ウォズアニックは聞いていて面白いことをしたい。
    ディーン・カーメンは「あたって砕けろ」の発明家。
    携帯用小型透析器。
    たくさんのカエルにキスをする。
    カーメン、アイボット。ショッピングセンターに向かう途中
    車椅子の男性が歩道の縁石を超えるのに苦心しているのを
    目にし強く関心をひかれた。
    アイスクリーム店では男性が苦労しながらカウンターに手を
    伸ばしていた。
    カーメンはこの問題を考えつづけた。
    ある日バスルームの濡れた床で足を滑らせた拍子に、カーメン
    の頭に解決策が浮かんだ。バランスだ。
    問題はバランスの取り方にある。転びそうになったときには
    体勢を立て直す。それと同じことを車椅子にやらせればいい。
    10年かけて新型の車椅子アイボットに自動バランス制御機能
    を付加する電子ジャイロスコープの研究。
    アイボットを開発してバランス制御システムができあがるとほかの
    製品にも使えることに気づいた。
    用途を広げ誰でも使えるものにした。赤ん坊が転ぶときには
    お尻か頭をつきだしている。大人も重心が足より前に移ると
    転びそうになるので、そこで片足を前に出すわけだね。
    転倒しかけたところでつま先で踏ん張って体をささえる。
    これが一人用電動立ち乗り二輪車「セグウェイ」の基本原理。
    セグウェイは体の一部になる。人間の体に備わったバランス感覚に
    応じて動くからだ。
    失敗は重要、罰してはいけない。失敗を許せばチームの士気は下がらない。
    発明の世界ではタイミングがすべてだ。早すぎても遅すぎてもさんざんな目にあう。
    エジソンは「失敗ではない、実験あのだ」
    「私は電球をつくれない方法も1000通り発見した」
    ジェイコブセン、最も大切なのは能力は信じる力だ。
    カーメン、中国で8億人が都市に移り住む。全員が自動車にのるのは物理的に無理。
    セグウェイが未来の中国に変革をもたらす。
    死ぬほどのことでさえなければどんなに手痛い失敗も発明の糧になる。
    【10章 アイデアを積み重ねる】
    ロナルド・A・カッツ、小切手の確認のしかたがあまりもばかげていたので関心を
    もった。
    小切手の認証サービス。
    オペレータの手を介さないリアルタイム信用照会端末。
    すでに使っている技術に使用料を払いたがる者がいるはずはなかった。
    特許ポートフォリオに新しいアイデアを加えていった。
    「これには1のボタンを、あれには2のボタンを、それ以外には
    3のボタンを押す。好むと好まざるとに関わらず、それがロン・カッツ
    だ。彼はどこにでもいる。」
    【11章システムとして考える】
    その発明が生き残るか消え去るかはほかの技術とどれだけ調和し社会環境に
    どれだけ溶け込めるかにかかっている。
    エジソンの最も称えられる点は白熱電球を最終目標とせず、そこをはじまりとして
    さらに大規模な発電設備と都市から都市へ伸びる送電設備が必要になるとわかって
    いたことだ。電灯はガス灯をしのぐ大きな進歩だった。
    イギリスは30年ちかくガス灯を守り続けた。
    エジソンはシステム全体の開発を視野に入れていた。
    人々に明かりをとどける手段が必要なのだ。
    スワンは発明した白熱電球を既存のシステムに組み込もうとした。
    だが、そのやり方ではまったくうまくいかなかった。
    エジソンは晩年に最大の発明をきかれて、白熱電球だけでなく「電灯による
    照明と電力のシステム」もあげている。
    フォードは最速の車をつくったのではない。
    複雑多岐な自動車製造の工程をすべて組み入れたシステムを発明した。
    フォードも500を超える自動車メーカーの一つだったが、
    フォードはどこよりも低価格で大量かつ迅速に生産できる方法を考えた。
    フォードは、分業、標準部品、流れ作業、むだの削減という
    4つの経営方針。そして最大の発明がベルトコンベアの組み立てライン。
    ジェイ・ウォーカー、職業聞かれると、「商業システムを発明している」
    とこたえる。例は自動車はシステム、コンピュータはシステム、
    ミシンはシステム、カジノはシステム。だが、梃子はシステムではない。
    ハンマーも違う。新しいものが市場に入り込むには既存のシステムに
    適応しなくてはならない。
    人がテレビを観るときの習慣はそう簡単に変わるものではない。
    アップルのミュージックストア。消費者の行動パターンの変化に
    うまく合っていたため大きな摩擦を生じることなく人気を博した。
    ペイパル。イーベイのシステムに融合。
    テレビを普及させるために初期のテレビメーカーはラジオ店
    を利用して小売店と修理店の巨大なネットワークをつくった。
    テレビの例はセグウェイのヒントにもなる。
    ジェフリー・バラード、燃料電池。
    そのために水素燃料の生産、その流通、そして車両の管理および整備、
    が必要。
    水素を手に入れるためにどのエネルギーを使えばいいだろうか。
    原子力を選びたい。
    目標は自動車を再発明して自動車業界を再発明すること。
    彼の目の前で輸送産業と電力産業が一つになろうとしている。
    リー・フッド、ヒトゲノム。
    これまで医療とは病気を診断して治療することだった。これからはまったく
    逆になる。病気を予測して予防する。遺伝子の塩基配列の解読が一人ひとりの
    生体システムの秘密を解く鍵をにぎっていることはわかっている。
    だから基本的な遺伝暗号を知ることで、健康管理の究極のかたち、すなわち
    個の医療が実現する。
    将来の健康状態を本人に教えることもできる。
    【エピローグ】
    長期的な利益をもたらすもの、そして会社への投資を促すものはただ一つ、
    イノベーションを起こす力があると人々に信じてもらえることだ。byジェフリー・イメルト
    。イメルトは経済学者ジョゼフ・シュンペーターの有名な方程式「発明+資金=イノベーション」
    を信じている。イノベーションを起こすべき分野を的確に見出し、それに
    賭けるのが優秀なリーダーだ。
    GEの新しいコーポーレートスローガンは「イマジネーション・アット・ワーク(想像力稼動中)」
    だ。発明家は次に着目する。
    発明は外へと広がっていかなくてはならない。
    生化学研究者のエイミー・B・スミスは、学生をホンジュラスやサハラのような地域に
    連れて行く。そして、マサチューセッツ州にもどれば1日2ドル以下の食費で一週間
    暮らしてみるという課題をだす。「誰にもできません。でも、たとえ短期間でも
    試してみれば忘れられないでしょう。」
    古くからいわれるとおり、魚を与えれば一日食べられる。魚の釣り方を
    教えれば一生食べられる。
    コースラは貧しい国を豊かな国にする方法として実証済みのモデルが3つあると
    考える。?模倣(アイデアや技術や手法を外国から盗みそれを改良して自国に
    適用する、日本、韓国、中国)、?便乗(コストの低さを活かして製造業と
    サービス業を誘致することで富裕国の経済に乗じている、インド)、?省略(
    不要なテクノロジーをとばして新しいものだけを取り入れる、フィンランド)。
    【あとがき】
    エジソンが蓄音機を発明したのは1877年、電球は1879年、ベルの電話は1876年、
    ライト兄弟の有人動力飛行は1903年。それから一世紀あまりがたった現在
    、私たちの生活はさらに数々の発明によってかつてないほど大きく様変わり
    した。それでも発明というといまだにエジソンが連想されるのはどうしてだろう。
    企業で研究者は発明家とは呼ばれず、発明部という部署も聞いたことがない。
    現代の先進国は医療とセキュリティの分野をのぞけば、生活の基本である
    衣食住の欲求がほぼ満たされている。「必要は発明の母」といわれた時代は
    過去のものになり、かつては必要とされているものを探してそれを満たせば
    よかったのが、いまの世の中は差し迫った必要が見当たらないのだ。
    ウディ・ノリスは数十時間で世界を一周できる飛行機をすばらしいものだと
    は思っていない。彼のめからみればぶさいく。発明家はふつうの人には
    見えないニーズを見つけるのがうまい人たちなのである。
    発明家は決して立ち止まらない究極の楽天家。

  • 発明に必要となる要諦を11項目に分けた上で、過去の発明家の実例を挙げ、それぞれの要点が実際の発明を生み出す場でどの様に機能したのかを説明している。

    最初本書を見た際には、発明の思考パターン、技術を体系的にまとめてあるものかと思ったが、体系的になっていたのは項目分けの部分だけで、過去の偉大な発明家が発明にいたるまでに経緯にページの多くを割いている。

    従い本書はアイディアに行き詰まった人が突破口を求めて辞書的に使うのが正解かと思う。 ただし、その様なアイディアを創出すべく日々思考を凝らしている人々にとっては、思いがけないアイディアと知恵を授かる本ではないかと思う。

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