盗まれっ子

  • 武田ランダムハウスジャパン
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本棚登録 : 82
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (492ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784270006467

作品紹介・あらすじ

何年も待ちつづけてきてようやく人間の子供に戻ったヘンリー・デイ。ある日突然、ホブゴブリン(小鬼)として生きることになったエニデイ。森の中の魔的な世界と現実の世界、子供時代の記憶と大人の時間、幸福と孤独。立場を取り替えられたふたりの少年が過去と決別し、自分の人生を見つけるまでの姿を鮮やかに描き出す。全米で発売後すぐにベストセラーとなった話題のデビュー作。ふたりの少年の成長を描いた大人のためのファンタジー小説。

感想・レビュー・書評

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  • 取り替え子伝説を題材に描いた物語。
    ある日突然ホブゴブリンとして生きることになったエニデイ。
    何年も待ち続けて人間の子に戻ったヘンリー。
    彼らの視点から交互に物語は綴られていきます。
    人間の子に戻ってなお試練と苦悩に苛まれるヘンリーと、森の中で厳しい孤独を生きるエニデイ。
    れまでの記憶や感性が徐々に薄れ、現在の運命を人生を受け入れて成長していく姿は痛々しくも力強く逞しい。

    好きなのは森の魅惑的な世界と奇妙で愛らしい妖精たちの場面。
    おぞましく残酷な物語のはずなのに、温かく煌めきに満ち溢れた自己探求と彼らの成長物語。
    (2011年7月読了)

  • 人間の子供が妖精によって攫われ、妖精と入れ替えられてしまう、
    というヨーロッパの伝説がベースになっている物語。
    日本で言えば神隠しのような、間引きにも通じるところがあるような話。
    この作品では、
    人間の子→コブリゴン(妖精?)→人間の子。
    という様に、妖精が元々人間の子供というのが現実感があるようで非現実的なちょっと変わったファンタジー。
    妖精の、見た目が子供で中身が大人、という設定に、私の中で“えなりかずき”が邪魔をしてイメージしづらかった(笑)
    なので、映画化されたら是非観てみたいです。

  • ヨーロッパのおとぎ話、伝説である「取り替え子(Changiling)」をベースに、小鬼(ホブゴブリン)たちに攫われて人生を取り替えられた人間の子供ヘンリー・デイと、彼と入れ替わってヘンリーの人生を生きるホブゴブリンの人生を交互に描く。

    この物語がちょっと面白いのは、ホブゴブリンたちが人間の子と入れ替わって終わりではなくて、攫われた人間が少しずつホブゴブリンになっていき、そして次の「取り替え子」のチャンスを待ってまた別の子供と入れ替わるところ。

    要は、生粋のホブゴブリンなんていなくて、人間の子供がグルグルと回っているだけなのだ。

    次に囚われる人を見つけないとずっと出られない家、みたいな日本の怖い話を読んだことがあるけど、それに近い。ホブゴブリンとして過ごす呪われた時間をバトンタッチしていくわけだ。

    ヘンリー・デイになりすまして人間に戻ったホブゴブリンが、グスタフというドイツ系移民だったかつての自分を探して旅をしたり、ホブゴブリンとして生きながら人間の気持ちを完全には忘れないヘンリーが、ヘンリー・デイとして生きるホブゴブリン(グスタフ)を探したり、「本当の自分の人生」を探す二人が最後に選ぶこと。

    なんか変な話だったけど面白かった。

  • 取り替えっ子。

    もう一人の人生。
    どうしても知りたい自分のルーツ。
    野生生活がリアル。

  • 妖精(とか小鬼とか)の取り替えっ子の伝承をそのままほんとの話にしたもの。
    さらわれた子供がそのまま今度は小鬼になって、森の中で仲間たちと暮らしながら(一種の煉獄のようだ)、またいつか別の子をさらってその子になりすまし、人間に戻るのを待つ、というシステムが斬新。つまり、さらわれたかつての子どもは現在小鬼で、かつての小鬼(そのまた以前は人間の子ども)は現在人間になりすましている、という複雑な状態。じゃあ最初の小鬼は何だったの?と考えると頭が痛くなりそう。
    人間になりすましても記憶がなくなったりするわけではないので、主人公(元は100年以上前のドイツに生まれた)は常に違和感や罪悪感、そしていつかばれるのじゃないかという不安を感じながら生きている。一方、主人公に人生を取られてしまったもう一人の主人公の少年(まだ少年だったところから始まる)は、人間だった頃の生活を忘れられず、戻りたいと(当然)思っている。
    小鬼に落とされた子供たちも哀れだし、成り代わった方も幸福とはいえずかわいそうだし、途中まであまり救いも見えず、この子たちが主人公(主人公はそれほど感情移入しやすい人でもないのだけど)の生活を脅かすことになるのではないかと不安だった。
    でも、姿がどうなろうと、人間は人間なんだね。同じ境遇になっても、負けてしまう人間もいるし、雄々しく前を向いて進むことができる人間もいる。スタックとか、オリジナルのヘンリー・デイとか、現在のヘンリー・デイとか。この3人の雄々しさが最後に本当に光っていて、出会えてよかったと思えた。

  • 「取り替え子」の伝説をベースにした話。
    人間の子供をさらい、自らがその子供になりすまして人間として生きていく小鬼。
    その小鬼も昔、さらわれて取り替えられた人間の子供、という無限スパイラル。
    成り代わった小鬼と、成り代わられた子供の半生が交互に綴られる、非常に面白い書き方だった。
    主人公二人も、他の登場人物も地に足が着いていて、とても現実感がある。
    先がどうなるのかが気になり、一気に読んだ。
    ただ、中盤まではどちらのサイドも勢いがあったのだけど、終盤が失速したような印象。
    特に成り代わった小鬼側かな…。
    彼の苦悩もわかるけど、あまりに身勝手に思えて私の心が離れてしまった…。
    でも、結末は割に納得の行くものだったので、読後感は良かった。

    設定がとても上手い書き手だったので、以後の小説も期待。

  •  タイトルの通り取替えっ子の物語。チェンジリング。
     興味深く、そして面白い。

     人になったホブゴブリンと、ホブゴブリンに替えられた少年。最終章はほんとにどきどきした。予想と違う方向性だったなぁ。
     現代の物語なので、ホブゴブリンの生活がリアル。ホブゴブリン側に意識が向いてしまう。人の描写が薄い……もすこし人側濃いのも見てみたいと思った。少しずつ人の生を手に入れて味わう描写とか。そういうの。でも、そうすると長くなってくどいんだろうなぁ。

     なかなかに読み応えがあるので、活字中毒者以外にはお勧めしにくいけど面白かった。

  • ヨーロッパに伝わる昔話に、取り換えっ子(チェンジリング)がある。人間の子どもが妖精やゴブリンなどと入れ替えられてしまうという昔話。この本は、その昔話を下敷きに、取り換えられた子と入れ替わった子の双方かを語ることで、二人の成長を描く。
     
     自分自身も過去に取り換えられ、森で同じ運命の子どもたちと暮らしてきた主人公は、ヘンリー・デイという少年と入れ替わりヘンリー・デイとして成長していく。成長とともに、元の自分の記憶や森で取り換えられてしまった仲間たちと暮らしていた記憶は、徐々に薄れていく。大人になるにつれ、自分の過去を知りたいともう一人の自分を探し始める。一方、取り換えられた元ヘンリー・デイも、やはり同じ運命の取り換えられた子どもたちと、次に人間の子どもと取り換えるチャンスを待つ。
     ヘンリー・デイになった者と、ヘンリー・デイだった者。過去を忘れたくない、本当の自分を知りたい、過酷な運命の中で成長していく二人のヘンリー・デイを描きだす。

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