文豪の翻訳力 近現代日本の作家翻訳 谷崎潤一郎から村上春樹まで

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著者 : 井上健
  • 武田ランダムハウスジャパン (2011年8月25日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784270006658

文豪の翻訳力 近現代日本の作家翻訳 谷崎潤一郎から村上春樹までの感想・レビュー・書評

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  • ガイブン好きとしてはあまりにも気になる題名だったので、発売直後に手に取りました。でもあまりの厚さと、「文豪モノってあんまり読んでない…」という引け目もあって、買って数週間は、開いてもすぐ閉じる、の繰り返し(苦笑)。

    作家による翻訳を論じた文章をまとめた論文集です。私は外国語研究や翻訳をなりわいとしているわけではない(たまーにまねごともやるけど、部活レベル)けれど、「これは自分だけが気にしてることなんだろうか?」と思っていたことも多々あるので、何かのヒントがつかめるかもしれない、とぱらぱらめくりはじめました。

    個人的に「そうなのか!」と思ったことはたくさんありますが、うまくまとめられないので、素人感想のうち、主なものを以下に箇条書きで。

    ・「作家の翻訳」といっても、自身が100%翻訳しているかといえば、そうはいえないケースも多い。友人・知人の外国語専門家の手を借りている場合もままあり、度合いも「わからないところを教えてもらった」レベルから「ほとんどやってもらった」レベルまでさまざまで、その度合いがわからないものも多い。これは今でもあまり変わらないと思う。

    ・1語1語忠実に訳する「逐語的翻訳」派と、原文のもつ意味と流れを尊重する「創造的翻訳」派のぶつかりは、昔からある。どちらがどうとは言えないが、前者が何らかの形でできていないと、後者が成り立ちにくいことは明白だと思う。

    ・村上春樹の訳と原文を初めて突き合わせて読んだけど、意外と大胆な処理をしているように思った。「誤訳」にうるさい面々があげつらう、ギリギリのレベルを行ってる部分も多いと思う。

    ・漢籍の素養がある作家は、間違いなく翻訳が上手い。漢籍(いわゆる漢文)自体が翻訳文学だから、そこでの慣れが入っているからか、と思う。

    ・芥川龍之介と堀口大學、中村真一郎の翻訳はなんだか別格に感じる。あと、ベクトルが違うけど、吉行淳之介も。

    ・仏語や独語など、名詞に性別がある言語で書かれた文章で、なおかつその「性別」が物語の肝になっている場合(擬人化とか)、それをどう訳文に反映させるか、できるかというのは難所中の難所。考えたことがなかったが、これをやれといわれたら、私は逃げ出すしかない…。

    ・清水訳チャンドラーを例に引き、字幕翻訳と文芸翻訳の視点の違いに言及されているのがフェアだと思った。このあたりのツボの違いを無視して騒ぐ向きもあり、そこを苦々しく思うときもあるので。

    ・まずい訳にも、それなりに意味があったりする(ものもある)。

    じっくり読みだすと、文学論・翻訳の技術論の一覧として面白く、同意する点、不遜にも(ちょっとだけ)反論したくなる点に付箋をぺたぺた貼りながら読み進むという、大学生のような読書スタイルになりました。副題のとおり、谷崎潤一郎(二葉亭四迷も少々)から村上春樹あたりまでの作家と翻訳のかかわり、作家たちの翻訳に対するスタンスを克明にたどることができるので、資料として持っていると面白いかもしれません。

    引用文献の記録が正確なのは論文集として当然ですが、そこに「読書案内」が添えられているので、クラシックぎみの読書ガイドとしても使えます。ほとんどすべてが純文学の作品で、ミステリなどのエンタメにはそっと触れる程度なのですが、ガイブン好きのかたは、騙されたと思って、ちらっとめくってみられてはいかがでしょうか。正直な話、読むのに少々骨が折れますけど(苦笑)。

  • 資料ID:21104001
    請求記号:

  • どの翻訳も、それぞれの作家の思い入れ、独特の技法などがあり、その違いを楽しめた。

    ピアニストがお気に入りの曲のスコアを手に入れると弾いてみたくなるように、作家たちも心の琴線に触れた海外文学を自分の言葉に翻訳してみたくなるのだろう。

    語学力の薄い私も、文豪たちを真似て海外文学を訳してみたら、楽しいかもしれない。そんなふうに興味をそそられた。

  • 最初、思つてゐたのとちがふなーと思つたが、案外おもしろく読めた。気に入つたのは中島敦と耽美派の話と、池澤夏樹とアップダイク、ヴォネガットの考察。

  • まず、これだけたくさんの作家が翻訳にいそしんでいたことが、驚きだった。

    翻訳文学における村上春樹の役割の大きさを知った。私も、無意識のうちに彼の文体を(浅薄に)模倣してしまっている気がする。反省。

    自分でも翻訳してみたくなります。文体と内容のつながりは興味深い。

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村上春樹の精力的な訳業は、二葉亭四迷、森鴎外の「作家翻訳」の伝統を引くものか?文学が行き詰まったとき、転機に差し掛かったとき、現状を打開し新たな可能性を切り拓くものとして、「作家翻訳」は期待され、また機能してきた。作家たちは何を求めて翻訳に挑み、そこから何を獲得したのか?大正期から戦後までの「作家翻訳」の意味と変遷を、多様な視点と綿密な論考でたどった秀作評論。

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