海のカテドラル 上 (RHブックス+プラス フ 12-1)
- 武田ランダムハウスジャパン (2010年5月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
- / ISBN・EAN: 9784270103302
感想・レビュー・書評
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スペイン版「大聖堂」といった趣き。
14世紀のカタルーニャが舞台。
土地に縛られた農奴だが、あたりで一番豊かなバルナット。
農奴といっても4代前は自由民。支配者が勝手な法律を作って農奴にしたのです。
めでたい結婚の日に、強欲な領主が現れて、祝いの席は一変、初夜権を要求されて無惨なことになる。
美しい花嫁フランセスカは以来、夫に口もきかない…
しかも領主の子の乳母として召し出されてしまい、城へ出向いたバルナットは自分の子が放置されていたのを見つけて連れ出し、バルセロナに逃亡。
妹の嫁ぎ先に身を潜め、バルセロナに1年と1日住めば市民権を貰えるという希望に賭ける。
幼い息子のアルナウは、当初は従姉達と一緒に可愛がられて育つが、悲劇が襲う。
バルナットの妹が亡くなり、夫のプッチが貴族と再婚。
プライドだけは高い貴族の新妻に、逃亡農奴だったバルナット親子は疎まれる。
もっと悲運な育ちをしている男の子ジュアンがアルナウと仲良くなり、ジュアンにもわが子同様に接するバルナットだったが。
バルセロナで蜂起が起き…
海辺に市民のためのカテドラルが建築中というのが美しく、希望を感じさせます。
尊敬されている建築家が、大勢の市民が入れるようにと、広くするために高さはそれほど高くないカテドラルを設計したのだ。
地中海の光を取り入れた大きな窓とステンドグラスが特徴。現存するカテドラルです。
石切場から「海の仲仕」と呼ばれる力持ちの男達が、無償で重い石を運んだのだそう。
アルナウは少年ながら、これに挑戦するのです。
一番小さな石を運ぶのにも一歩ずつよろけそうになって、背中が傷だらけになった少年が、何年かするうちにはたくましく成長します。
スペインは一つの国として統一されておらず、四つの王国の王の権力も安定していない。
ローマ教皇庁も絡んできたり、ユダヤ人差別の問題も大きい。
ややこしいが、それも新鮮。
どう転ぶかわからないので、目が離せない。
基本はドラマチックなエンタテインメントです。
恋愛も豊富というか~全く違うパターンの男女関係がいくつも出てきます。
アルナウは初恋の娘アレディスへの結婚を申し込んでもかなわず、アレディスが老いた親方に嫁がされた後に、彼女から迫られて関係を結んでしまうのですが…
当時は不倫が発覚したら組合を辞めさせられて男性は職がなくなり、女性は生涯幽閉の可能性もあったという。
とんでもない法律がたくさんあったのです。
美しいアレディスは奔放で軽率ですが、それ以上に父親にも夫にも囲いこまれるだけで全く世間知らずにされてしまったがために、堕ちていく…
後半でまた意外な展開に!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
中世スペインの世界を一人の男の生涯を通じて描く歴史小説。
理不尽な世界を懸命に生きていく主人公、成功を収め這い上がっていくが、世界は決して優しくはなく、それでも歩み続けていく姿に心動かされる。
本当に大切なものを手放した時は、かなりイラっとしたが(♯`∧´) -
本当に面白い本を読むと、要約とか感想とか、書く気になれなくなる。
これはそんな本。
半年ぐらい前に読んだけど、どうやってブクレポを書こうか逡巡しているうちに、書く気がなくなった。
面白いです。保証します。ケン・フォレットの『大聖堂』にも匹敵する、大歴史ロマン小説です。 -
14世紀カタルーニャ。ばるナットは息子を守るため、すべてを投げ打ち、自由を手にするため一路バルセロナへ!
人物の掘り下げは甘いかもしれないが、その分テンポよく物語は進んでいく。
当時の生活、社会、歴史の描写などはいきいきとしていていい。
面白い!!! -
生い立ちから悲惨な主人公達、更に追い打ちをかけるように次々と襲いかかる困難や試練。どれもが不条理で納得いかないことばかりだけど、心根がまっすぐなアルナウを思わず応援したくなってページを捲る手が止まらない。「弟」ジュアンの母が彼の幸せを願いつつ最期を迎えるシーンは哀しいけれど暖かみを感じた。バルナットの突然のキレっぷりには、唐突過ぎてアルナウ同様困惑したままとなってしまったのが残念。優しく頼もしいバスターシュに好感が持てる。下巻も楽しみ。
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春の戴冠からロンドンときて、今回はスペインが舞台の本。
最初から衝撃的。それさえ乗り越えればあとはノンストップ。
いつも爆睡する通学の電車で一睡もできなかったくらい、本当に面白かった。
悲惨な生い立ちの主人公に、追い打ちをかけるように次々と理不尽な事件が降りかかる。
抵抗できず屈してしまう場面もあるが、必ず立ちあがって別の方法を探していく姿に、思い通りに生きていくことはできなくとも必死に頑張っていればなんとかなるんだと勇気をもらえる。
階級の低い者の視点で当時のスペインの状況が描かれており、教科書を読むよりも勉強になる。