死刑囚 (RHブックス・プラス)

  • 武田ランダムハウスジャパン
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  • Amazon.co.jp ・本 (568ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784270103753

作品紹介・あらすじ

冬の朝、ストックホルムで起きた傷害事件。単純な事件だった…逮捕された男が、6年前にアメリカの監房で死んだ死刑囚とわかるまでは。恋人を殺し、死刑囚となった男だったが、刑の執行を待たずに独房で死んだ…はずだった。男の死刑を見届けることだけを支えにしていた被害者の遺族、男を間近で見ていた看守…6年間止まっていた時が再び動き出す。あの時監房で何があったのか?生きていた死刑囚はどうなるのか?やるせない衝撃の結末が胸を打つ。

感想・レビュー・書評

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  • スウェーデン作家「アンデシュ・ルースルンド」と「ベリエ・ヘルストレム」の共著の長篇ミステリ作品『死刑囚(原題:Edward Finnigans upprattelse)』を読みました。

    『制裁』に続き「アンデシュ・ルースルンド」と「ベリエ・ヘルストレム」の共著の作品です… 北欧ミステリが続いています。

    -----story-------------
    ストックホルム市警 警部「グレーンス」が逮捕した傷害事件の加害者は、生きているはずのない男、生きていてはいけない男だった。
    話題沸騰!北欧ミステリ
    予想もしない展開に静かな衝撃がこだまする――
    スウェーデン推理小説アカデミー
    最優秀犯罪小説賞ノミネート作!

    冬の朝、ストックホルムで起きた傷害事件。
    単純な事件だった・・・逮捕された男が、6年前にアメリカの独房で死んだ死刑囚とわかるまでは。
    恋人を殺し、死刑囚となった男だったが、刑の執行を待たずに独房で死んだ・・・はずだった。
    男の死刑を見届けることだけを支えにしていた被害者の遺族、男を間近で見ていた看守・・・・6年前止まっていた時が再び動き出す。
    生きていた死刑囚はどうなるのか?
    やるせない衝撃の結末が胸を打つ!
    -----------------------

    本作品はストックホルム市警の「エーヴェルト・グレーンス警部」と「スヴェン・スンドクヴィスト警部補」が活躍するシリーズの第3作… 2006年(平成18年)に発表された作品です、、、

    死刑制度に焦点を当てた社会派ミステリー… アメリカ合衆国のオハイオ州で死刑執行前に獄中で病死した死刑囚が、何でスウェーデンで生活していたのか?とか、死刑囚は本当に恋人を銃殺したのか?という謎解き要素があるものの、それを警察が推理・解決することはなく、関係者が自ら告白するという一般的な警察小説、ミステリ作品とは違う異質な展開で、ミステリという皮を被せながら、国家が人命を奪う死刑という制度そのものへの問いかけ、極刑の在り方を読者に訴えかける作品でしたね。


    スウェーデンで暮らすカナダ国籍の男「ジョン・シュワルツ」が暴力事件で逮捕された… ところが捜査を進めると、この男のパスポートは偽造されたもので、6年前にオハイオ州の獄中で死んだアメリカ人死刑囚「ジョン・マイヤー・フライ」であることを示す証拠が出てきた、、、

    もし、死を偽装して逃走した死刑囚であれば、アメリカ政府は引き渡しを要求し、死刑を実行するだろう… だが、EUの一国であるスウェーデンは死刑を廃止しており、死刑制度がある国への死刑囚の送還は禁止されている。

    とは言え、アメリカと良好な関係を維持したいスウェーデン政府は、引き渡しを拒めるだろうか? 死刑制度に反対の「グレーンス警部」たちは、あの手この手で送還を阻止しようとするのだが、外務次官の「トールウルフ・ヴィンゲ」は「ジョン」がロシア経由で不正入国したことから、アメリカではなく、ロシアに強制送還するという方法で「ジョン」を国外に追放しようとする… 一方、「ジョン」の地元、オハイオ州の田舎町マーカスヴィルでは被害者「エリザベス」の父親でオハイオ州知事の顧問である「エドワード・フィニガン」を筆頭に死刑の実行を求める声が高まり、「ジョン」のの引き渡しと死刑の実行は当然のことと思われていた、、、

    「ジョン」の身柄は即刻ロシアからアメリカに移送され、非常に短期間で死刑執行日が決定される… その後は、死刑執行までの日々が「ジョン」や、その家族、逃走に手を貸したマーカスヴィル刑務所死刑囚監房の看守長「ヴァーノン・エリックセン」、被害者家族 等の異なる立場の人物の視点で、彼らがどのような気持ちで日々を過ごしていくのかがリアルに描かれており、胸を締め付けられるような気分になって読み進めました。

    終盤、死刑執行後に、18年前の「エリザベス」殺害事件の衝撃的な目的・動機・真相が一気に明らかになります… 死刑制度に反対するための行為とはいえ、犯人の思考は理解できないし、同情もできませんでしたねぇ、、、

    そして、予想外の結末にも驚かされました… まさか、あの人物が死刑囚として独房に収監されるとは。


    原題の『Edward Finnigans upprattelse』って、直訳すると『エドワード・フィニガンの救済』という意味なんだそうです… しかも、"upprattelse"という言葉には、「不正を正す」とか「補償」、「償い」、「贖罪」というような意味も含まれるとのこと、、、

    結末を読み終えると、このタイトルが深い意味を持っていたんだなぁ… と感じさせられますね。

    『制裁』に続き、読んでいて心が苦しくなる… 胸を締めつけられるような感覚が離れない作品でしたが、この感覚が忘れられない、、、

    次も「アンデシュ・ルースルンド」と「ベリエ・ヘルストレム」の作品を読みたいと思います。




    以下、主な登場人物です。

    「エーヴェルト・グレーンス」
     ストックホルム市警警部

    「スヴェン・スンドクヴィスト」
     ストックホルム市警警部補、エーヴェルトの同僚
     
    「マリアナ・ヘルマンソン」
     ストックホルム市警警部補、エーヴェルトの部下
     
    「アンニ」
     エーヴェルトの元同僚で恋人
     
    「ラーシュ・オーゲスタム」
     検察官

    「トールウルフ・ヴィンゲ」
     外務次官

    「ジョン・マイヤー・フライ」
     死刑囚

    「ルーベン・マイヤー・フライ」
     ジョンの父親

    「エドワード・フィニガン」
     オハイオ州知事の顧問

    「アリス」
     エドワードの妻

    「エリザベス」
     エドワードの娘。殺人の被害者

    「ヴァーノン・エリックセン」
     マーカスヴィル刑務所死刑囚監房の看守長

    「ジョン・シュワルツ」
     暴行事件の被疑者

    「ヘレナ」
     ジョンの妻

  • おもしろかった。。。
    エーヴェルトが真犯人にたどり着くような展開を期待してしまった。前作の流れでそれはないよなぁと感じていたが。



  • 死刑制度が云々よりも、なんかこうスッキリしないというか・・・死刑はよろしくない、廃止すべき、と訴えるために他人の命を弄んでいるように思えるし。看守長はヒロイズムに浸ってるだけのようにも思えるし。だって彼のとった行動ってかつての恋の恨みもあるようにも思えるんだもの。

  • ハヤカワ・ミステリ文庫で読んだので、こちらも読了で登録。

  • 冬の朝、ストックホルムで起きた傷害事件。単純な事件だった…逮捕された男が、6年前にアメリカの監房で死んだ死刑囚とわかるまでは。恋人を殺し、死刑囚となった男だったが、刑の執行を待たずに独房で死んだ…はずだった。男の死刑を見届けることだけを支えにしていた被害者の遺族、男を間近で見ていた看守…6年間止まっていた時が再び動き出す。あの時監房で何があったのか?生きていた死刑囚はどうなるのか?やるせない衝撃の結末が胸を打つ。

    エーヴェルト・グレーンス警部シリーズ三作目。落ちは分かったが、やっぱり後味のよくない結末。でも癖になります。

  • スウェーデンミステリー。エーヴェルトシリーズ3作目。6年前にアメリカで死刑囚だったはずの男が、スウェーデンで逮捕された…。
     ラストに至るまでの過程はぐいぐい読ませる。偏屈なエーヴェルトの心が少し開かれたところも良かったし。最後はこんなのアリ?という感じ。やっぱり読後感悪し。

  • シリーズ3作目。とはいえ、1作目はもともと少女殺人を多面的な視点で描いた作品で、人気が出た故にその登場人物である警部を主人公にすえてシリーズ化したに過ぎない。それでも2作目は人身売買をテーマに捜査に当たる警察がメインで刑事物として読めたが、今作に至ってはまたもや死刑制度がメインとなり、刑事も一つの登場人物にすぎなくなっている。
    しかし、読みごたえはあるし、意外性のあるラストまでの後半の盛り上がりは見事。
    今までの作品を見るとトーンが毎回違うにしろ作品の完成度は徐々に高くなっており、この作品で一つの域に達したような気がする。
    次はストレートな刑事ものにしてほしい気もするが…。

  • 終わりに近づくにつれ、どんどん読むスピードが上がっていく、次のページが読みたくて読みたくて。
    そして、衝撃の結末にたどり着いた時、著者が問いかける根源的な問いを理解する。
    何と壮大に練り上げられたストーリーなんだろう!
    本書を閉じてしばらく経っても、胸の中に広がるこの思いをうまく表現できない、やるせなさ。。
    ぜひ自らの心で味わって欲しい一冊でした。

  • 最悪な読後感。ここまでやるのかって気もするが、死刑制度を撤廃した国の人からすると、死刑はこれ程の狂気と釣り合うということなのか。途中何度もやりきれない気持ちになるが、最後まで読まずにはいられない。この作家の力量は半端ないと思う。

  • 初めて読むスウェーデン製の小説。
    朴訥としていてすり足で歩くように話が進んでいく印象。

    話は素直に面白い。複数の場所・視点が並行して話が進んでいくが、それが程よく絡み合っている。感情移入できるキャラクターはいなかったが、どのキャラもしっかりと個性が立っていて話が進むに従ってストーリーにも厚みが出てくる。

    話の根底にある死刑制度とそれに付随する人間の尊厳の問題は考えさせられる。
    すでに死刑制度が廃止されているスウェーデンからの視点と、そうではない国を代表するアメリカからの視点が描かれる中で、答えを出すのは難しい。

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著者プロフィール

アンデシュ・ルースルンド 1961年生まれ。作家・ジャーナリスト。ヘルストレムとの共著『制裁』で最優秀北欧犯罪小説賞を受賞。

「2013年 『三秒間の死角 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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