古書の来歴 (上巻) (RHブックス・プラス)

  • 武田ランダムハウスジャパン
3.71
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本棚登録 : 233
感想 : 29
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784270104095

作品紹介・あらすじ

100年前から行方が知れなかったハガダーが発見された-連絡を受けた古書鑑定家のハンナは、すぐにサラエボに向かった。ハガダーはユダヤ教の祈りや詩篇が書かれた書で、今回発見されたのは実在する最古のものと言われ、ハガダーとしてはめずらしく、美しく彩色された細密画が多数描かれていた。鑑定を行なったハンナは、羊皮紙のあいだに蝶の羽の欠片が挟まっていることに気づく。それを皮切りに、ハガダーは封印してきた歴史をひも解きはじめる…。翻訳ミステリー大賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • サラエボで戦争後に見つかった、中世に作成された美しい挿絵入りのとても貴重なサラエボ・ハガダー。その本に偶然入り込んだ蝶の羽、ワインの染み、署名はなぜできたのか。誰がどのように痕跡をつけたのか。
    現実であればタイムマシンもなく掠れた痕跡を記録から推測することしか出来ないけれど、そこは小説の力、当時に戻ってその時の人物とシーンを再現してくれて、当時の時代背景と人物の感情が生き生きと蘇ってくる。
    ユダヤ人は当時から差別され迫害されていたのか。全然知らなかった。あと、ハガダーの図を冒頭に示してほしい。用語も馴染みがなく留め金などイメージしづらいので。

    本の歴史を辿るミステリー以外にも、サラエボとボスニア人の話、母と娘の確執、恋愛などの要素が盛り込まれていた。じっくり書いてある感じではないんだけど全部がなかなか重いテーマ、でも読み進めやすい。
    下巻でついに1400年代まで辿れる、主人公のお母さんや恋人との関係はどうなるのか、目が離せない。

  • 内澤旬子さんが『捨てる女』(http://booklog.jp/users/junjinnyan/archives/1/4860112482)で紹介していて、おもしろそうだったので速攻購入。1996年に奇跡的に再発見されたユダヤの書物『サラエボ・ハガダー』をめぐる歴史ミステリー。といっても、大半は創作のようですが。冒頭の、製本技術に関する記述が悶絶するほど面白かった!上巻半ばからのユダヤをめぐる歴史物語は私の興味からは逸脱していたので読み進めるのにずいぶん時間がかかってしまいましたが、下巻からはまたまた面白くなってサクサク読めました。

    2014/1/12 上巻読了。
    2014/1/15 下巻読了。(http://booklog.jp/users/junjinnyan/archives/1/4270104104

  • 古書鑑定家ハンナが一冊の古書と出会い、そこから時を越えた物語が始まる。ミステリーだと思って読み始めたけれど、歴史小説としての色合いが濃い。美しい挿し絵入りのユダヤ教の書。その書物に関わった人物たちの悲劇や苦悩に、何度となく胸が押しつぶされるような気持ちになった。第二次大戦中のユダヤ人の少女、19世紀末の製本職人、17世紀初頭の検閲官。それぞれの時代で、なぜユダヤ人があれほどまでに虐げられなければならなかったのかについては自分の知識不足を感じた。下巻ではどんな歴史が語られるのか期待。

  • 面白かった。しかし、ただ楽しんだだけではなかった。これは一冊の貴重な古書をめぐる物語だ。現実に存在するユダヤ教徒の出エジプトを祝う儀式に用いるという歴史的価値の高いある古書が民族紛争に、世界大戦に巻き込まれ、ユダヤ教徒のための本でありながら二度もイスラム教徒に救われたその古書に思いをはせ、想像の翼を大きく大きく広げ高く遠く羽ばたかせて紡いだ物語だ。そう、物語という想像力の賜物だ。
    物語は紛争が終結しようとしている1996年のサラエボから始まる。古書修復師である主人公が紛争中、銀行の貸金庫に隠されていた古書の修復にあたることとなったからだ。そして本のなかに挟み込まれた蝶の羽や塩の結晶、ワインの染みという過去を探る手がかりから物語は時間を遡る。
    ユダヤ教徒の苦悩とはいかなるものかその一端を私は初めて垣間見た。これは古書をめぐる物語であると同時にユダヤ教徒の迫害の歴史書でもある。またユダヤとカトリック、イスラムとの関わりの歴史だ。そして、ある意味で同じ起源をもつ三つの宗教を時代ごとに追い、その時代に生きる人間たちをあざやかに描きだしている。理不尽な迫害に泣き、たしかにこんな時代があったことをかみしめた。もちろんこれは物語だ。たとえ実在する書物を題材としていても空想の産物であり、実際の歴史ではない。しかしだからこそ胸に迫るものがある。この古書がたどった数奇な運命の一つの道を著者は見事に描いた。物語という夢のなかで。
    面白かった。そして泣かされ、もっと知るべきだと思わされた。過去を、過去に生きた人々を。
    上下、2巻。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「もっと知るべきだと思わされた」
      感涙物ですね。
      私は、この話の元になったらしい実話について知りたいと思っています!
      「もっと知るべきだと思わされた」
      感涙物ですね。
      私は、この話の元になったらしい実話について知りたいと思っています!
      2012/07/27
    • りいこさん
      私もモデルになった方々のそのときの気持ちにはとても興味があります。命をかけるほど突き動かされた一番の理由は単に研究者という立場で損なわれては...
      私もモデルになった方々のそのときの気持ちにはとても興味があります。命をかけるほど突き動かされた一番の理由は単に研究者という立場で損なわれてはならない遺産だと考えていたからなのか、信仰など凌駕するほどハガダーのその美しさに魅せられていたというようなことはなかったのか、とか。。調べるのはなかなかに難しそうですが。
      2012/07/28
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「そのときの気持ちにはとても興味があります」
      そうですね、、、
      偶像崇拝を禁じるイスラム教徒(の中でも最右翼?タリバン)の愚行として記憶に新...
      「そのときの気持ちにはとても興味があります」
      そうですね、、、
      偶像崇拝を禁じるイスラム教徒(の中でも最右翼?タリバン)の愚行として記憶に新しいのがバーミヤン大仏の破壊。
      「坊主憎けりゃ袈裟まで・・・」が歴史的に繰り返された事実なので、自らの信仰と異なる遺物を守ったコトに感動してしまいます。
      2012/07/30
  • 感想は下巻に。

  •  現代の研究者と作品成立時の過去の物語のタペストリー。まるで原田マハの世界のようだ。ヘブライの古書サラエボ・ハガダーにまつわる物語。その成り立ちには、精細な絵を描いた細密画家がいて、さらに文章を加えた能筆家があり、冊子に仕立て上げた装丁師や装飾を施した銀細工師がいた。それぞれの時代に体裁が整えられて成立した伝説の古書が、アラブ・イスラムによる迫害、ナチスドイツによる弾圧、そして東欧の民族紛争の中をかいくぐって、奇跡的に現代に伝えられた。オーストラリアの古書鑑定家ハンナによる精査で発見された蝶の羽、ワインの染み、塩の結晶、猫の毛などから、このハガダーの成り立ちと転変のドラマが明らかにされてゆく。物語は、現代のハンナの章と過去のハガダーの章が交互に綴られる。なんといっても時代をどんどん遡ってゆくハガダーの章に生き生きと描かれる昔の人々の数奇な運命のドラマがすばらしい。そしてハンナの章の最後におかれたあっという謎かけ。ミステリとしても秀逸だ。

  • ユダヤの祭事で使うある本の500年の遍歴。100年ぶりに見つかった本には何が隠されているのか。
    ユダヤの世界というのは日本人には遠くてわかりたいけどわからない部分だったんだけど、世界の中で歴史の中でどんな扱いだったのか、少し知れた。
    濃厚!

  • ユダヤ教の古書を鑑定する現代の話と、その本を所有してきた人々の歴史をたどっていく過去の話が交互に進んで行く構成。
    紛争・戦争の時代から遡って行くので、最初は読むのが辛いけど、そんな中にも少しの幸せを感じる所もあって、すぐに上下巻とも読めてしまった。
    鑑定で分かったことと、鑑定でも分からなかった背景が、ドラマティックだった。

  • ミステリ

  • レビューは下巻にて。

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