ヒバクシャになったイラク帰還兵―劣化ウラン弾の被害を告発する

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著者 : 佐藤真紀
  • 大月書店 (2006年8月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (170ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784272210909

ヒバクシャになったイラク帰還兵―劣化ウラン弾の被害を告発するの感想・レビュー・書評

  • 本書の前半は、イラクで被爆したアメリカ兵のレポートで、ジェラルド・マシュー氏の体験が綴られている。後半は、「劣化ウラン弾被害を告発する」というテーマで日本の弁護士や医師など四人がそれぞれ書いている。その中で田保寿一さんのレポートに触れておく。

    バグダットの30kmほど南にツワイサという町がある。60年代に、ソ連から小型の研究用原子炉を購入し、ツワイサに設置した。放射性物質を使って植物の種の改良実験などの研究が行われた。

    70年代にはフランスから最新鋭の原子炉を購入し、プルトニウムを生産して原子爆弾を作ろうとしていたらしいが、81年6月にイスラエルからの空爆で破壊された。

    それで、80年代後半には残ったソ連製の原子炉で原子爆弾を作ろうとしたが、フル稼働の連続運転をしたため、工場全体が放射能に汚染され、結局、原子爆弾の製造には失敗をした。その時の工場の従業員たちに、手足に異常のある子どもが次々と生まれたらしい。

    そして91年の湾岸戦争でソ連製の原子炉も破壊され、翌年には医療・工業用の工場になった。しかし、核の研究が中止されたツワイサには、濃縮ウランが無造作に放置されていたらしい。また破壊された原子炉から放射能が絶えず洩れていたという。当然、放射能の被害を受けた子どもたちがたくさんいたが、フセイン政権を恐れて、誰にも語ることがなかったらしい。

    またイラク戦争直後には、住民たちが施設から廃棄物を運び出し、業者に売り飛ばしたり、家の建材として使用したらしい。さらに悲惨な事態が引き起こる。住民たちは水を入れる容器が欲しかったので、濃縮ウラン(イエローケーキ)が入っていたタンクをたくさん持ち出したのだ。中身はチグリス川に捨てたという。

    そして戦争後、手のない子ども、足のない子ども、頭がふたつの子ども、頭のない子どもなど、奇形児が生まれる数が増えているらしい。ツワイサの下流のバスラでも同じような子どもが生まれているという。

    このように、イラクは劣化ウラン弾以外の原因によっても広範囲に放射能汚染が引き起こされている可能性が大きい。

    前半の内容に戻るが、本書で取り上げられているもう一人の兵士はサワマに駐留していた。だから、自衛隊の人たちも被爆している可能性が高いと思われる。たぶん緘口令が布かれているのだろう。そんなニュースは全然流れてこないが、それも時間の問題だろうか。いや、民主党は原発を推進しているので、必死になって隠すのだろうか・・・。

  • イラク帰還兵であるジェラルド・マシューは針で刺すような偏頭痛をはじめとした体の不調を来す。また帰還後に産まれた娘は右手の指が無いという先天的な障害を持っていた。ジェラルドはこれらが戦地に於ける劣化ウランの影響だとの疑いを持ち、軍に検査の要請をするが「あなたの娘の障害は劣化ウランとは関係がない」という判で押したような返答が帰ってくるだけだった。軍は劣化ウランの危険性さえも認めようとはしない。2005年9月、8名のイラク帰還兵とその家族がアメリカ合衆国陸軍省を相手に裁判を起こす。劣化ウラン兵器のイラク戦争での使用、劣化ウラン兵器の人体に対する危険性を知りながら、イラクに従軍した兵士に対して何ら警告を与えず、防御の為の措置を講ずることもなく汚染にさらし、帰還後も正確な診断をすることなく適切な治療をおこたったことに基づき、損害賠償を求めた。

    僕は本書ではじめて「劣化ウラン」の存在を知ったのだが、湾岸戦争やイラク戦争で「劣化ウラン弾」という兵器が使用されたという事実を知っている人はどれだけいるのだろうか。その兵器が使用後も放射性を持ったまま放置され、ジェラルドのように前線ではなく武器の回収作業によってさえも被爆する危険性があるということを。そもそもが現地へ派遣される兵士でさえも「劣化ウラン」という言葉を知らない人が殆どだというのだ。いつだって被害を被るのは指揮を執る人間ではなく現場の人間だ。それだけに現場を知る人たちの声こそが、政府やペンタゴンの発表よりも生々しく真実を語っているように思う。政府に反する声を挙げることは多大な困難を伴う。ジェラルドは劣化ウランの訴訟を起こしてから、それまでの友人たちが全く連絡をくれなくなったそうだ。それでも自らの体験をもとに劣化ウランの恐ろしさを伝え続けることが兵器の廃絶につながると信じ、声を挙げ続ける決意をしたジェラルド夫妻に胸を打たれた。

    日本では自衛隊派遣が問題になったが、後方支援として現地に赴いた自衛隊の人たちも被爆している可能性はあるわけで、しかしそういう危険性が論議にのぼることはまず無い。国家としてのアイデンティティだかイデオロギーだか知らないが、そのために犠牲になるのは必ず現場の人たちなのだという想像力を持たないと取り返しのつかないことになる。ウランの半減期は44億6400万年。イラクでは湾岸戦争後、先天性障害を持つ子供が急増しているそうだ。戦争の現場を知る人たちは必ず戦争の恐ろしさを語る。戦争を知らない世代ほど勇ましい。

    ヨーロッパでは同様の帰還兵や家族に対する補償が認められた例が幾つもあり、さらにベルギーでは今年6月に、劣化ウラン弾禁止法が施行された(<a href="http://mainichi.jp/select/world/archive/news/2009/07/27/20090727ddm012030185000c.html" target="_blank">※</a>)。日本は相変わらず様子見、というかアメリカ追従の姿勢を崩さない。日米関係がある以上率先して禁止の旗は振れない、というわけだ。そこまでして保とうとする日米関係って何なんだろう。

  • 戦争は最大の環境破壊であり、環境汚染だ。その言葉が身にしみる。イラクに行った米兵、自衛隊、そして何よりイラクに住む人たちが放射能にさらされている。...じゃぁ自分に何ができるのか?世の中には知らないことが多すぎる。

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