藤沢周平とっておき十話

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著者 : 藤沢周平
制作 : 澤田 勝雄 
  • 大月書店 (2011年4月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (203ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784272612253

藤沢周平とっておき十話の感想・レビュー・書評

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  • 藤沢周平の「とっておき十話」が、しんぶん赤旗に連載されたのは1990年のことである。それからなんと21年経ってこの本がまとめられた。「十話」自体は、既にエッセイなどに触れられている話が多いのだが、私が興味深かったのは、そのインタビューでのこぼれ話をこの本にまとめていることと、藤沢周平唯一の「選挙の応援演説」について書いた「雪のある風景」というエッセイが載っていることである。

    藤沢が後々肺結核療養時代を「私の大学」と呼んでいたが、単に療養所で文学修養が出来ただけではないことが、この本の「インタビューこぼれ話」で明らかにされる。また、幾つか業界編集部を転々した中で、後の藩内の力の駆け引きなども学んだ様子を赤裸に語っている。また、身内の借金踏み倒しで奔走したことも語っている。成る程、これはなかなか死後暫くしても公表できなかった訳だ。そして、藤沢の小説の秘密が少し明らかになるという意味でこれは「藤沢周平研究」には欠かせない本になっているだろう。

    「雪のある風景」(1977)は単行本にも「全集」にも収録されていない。それはおそらく、テーマが藤沢周平にしては珍しく「政治と文学」に関わっていたからではないだろう。そこに書いている初めての「衆議院選挙に立候補した郷里の友人O氏」が共産党の人間だったからだろう、と思う。私はこのエッセイを一読、改めて藤沢周平は「一貫して変わらない信頼できるものがある」と感じたのである。ホントに「誠実」その一言に尽きる人だった。以下少し抜粋する。

    そうは言っても、私は無政府主義者ではないので、よりよい政府が出来、いい政治をしてくれることを期待する気持ちは人後に落ちない。疑いながらも、いつかもっとよくなるだろうと期待しないわけにはいかない。
    そういう期待の支えになるのは、歴史の進歩ということである。複雑怪奇な軌跡を残しながらも、人間集団は少しずつ進歩して来た。もはや奴隷を首切る専制君主は現れないだろうし、封建制度の世の中に戻ることもないだろう。人間が人間らしいゆとりをもって生きられる時代がくるだろうと、それを政治に期待し、望むのは正しいのだと私は思う。昔からそういう望みが、少しずつ人間を解放し、歴史を進歩させてきたのである。こういう人間の望みを汲み上げ、現実に生かして行くのが、政治の原型だろうと思う。私が政治家としてO氏を尊敬するのは、そういうことである。(略)O氏は落選したが、新聞で読んだ彼の敗戦の言葉はいさぎよく、彼に対する私の考えが間違ってなかったことを示していた。彼の中には、彼を知ってから二十数年、一貫して変わらない信頼できるものがある。(145p)
    2012年10月29日読了

  • これも体調が悪く、前半だけ読み積ん読しておいたもの。後半を読む。
    編者はしんぶん赤旗記者。藤沢周平とは血筋にあたる。
    赤旗日曜版に連載された「とっておき十話」と、発表されてなかった講演などが収められている。
    藤沢周平の優しさが、よく伝わる内容。

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藤沢周平の作品

藤沢周平とっておき十話の作品紹介

未公開原稿がつむぎ出す新たな藤沢周平像。和子夫人、長女・展子氏のエッセイも収録。

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