清水幾太郎: ある戦後知識人の軌跡 (神奈川大学評論ブックレット 26)

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  • 御茶の水書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (95ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784275003027

作品紹介・あらすじ

平和運動から核武装論へと変転した知識人の軌跡から、戦後社会の変貌を問いなおす。

感想・レビュー・書評

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  • 清水は東京下町の下層階級出身だから、終世にわたって、庶民に好感を示す一方、管律大学のインテリに対抗意識を持ち続けた。
    こうした庶民思考は彼の平和論にも顕著だった。一方、千五丸山をはじめとした知識人との対利する一因となる。
    スラム街の少年だった。
    日本の大衆や生活者を掲げて西洋から輸入ウした教養を振りかざす知識人を撃つという姿勢は、福田や吉本とも共通したものであった。
    清水が大学に残れなかった一因は下層階級出身の清水を当時の帝大教授との気風があわかなったから。
    清水は人間の意味は自己の内部ではなく、外部との関係にあるという信条を持っていた。西洋的な知識人によって鞭打たれる世界の庶民である日本人を擁護することは、清水の一貫した姿勢であtった。それは平和論と社会主義という形で表現されていた。
    清水の主張は、
    。科学を活用した庶民生活の無期と知識人批判と偶然一体になった反西洋ナショナリズム

  • (2004.07.09読了)(2004.07.03購入)
    1967年に「論文の書き方」(岩波新書、1959年)を読んで以来、1969年に輪読会で「社会心理学」(岩波全書、1951年)を読んだり、「現代の経験」(現代思潮社、1963年)、「精神の離陸」(竹内書店、1965年)、「現代思想」(岩波全書、1966年)、「無思想時代の思想」「日本人の突破口」(中央公論社、1975年)、「戦後を疑う」(講談社、1980年)、「日本よ国家たれ」(文芸春秋、1980年)、「わが人生の断片」(文春文庫、1985年)、等々20数冊の清水幾太郎の著作を読んできた。まだ数冊の積読がある。
    小熊さんは、戦中から1970年代までを対象に、戦後思想を研究し、「民主と愛国」(新曜社、2002年10月)を出版した。取り上げた人物は、丸山真男・大塚久雄・吉本隆明・江藤淳・鶴見俊輔・小田実。テーマは、憲法・天皇制・講話問題・60年安保・全共闘。その際、清水幾太郎についても原稿を用意したが、他の知識人と同列に論ずるのは不適切と判断し、入れなかった。清水幾太郎のみを神奈川大学評論ブックレットとして、公表したのがこの本ということです。
    左翼知識人、平和運動家と思われていた人が、核武装論者に変貌し、転向したと非難されるので、愛読してきた僕としては、このような著作は、あまり気持ちのいいものではない。

    清水幾太郎は、1907年に東京日本橋で生まれている。社会問題に興味を持った清水は、先生の進めにしたがって、社会学を志し、1928年に東京帝国大学文学部社会学科に入学した。1931年大学卒業。1933年大学を離れ原稿料で生活を支えた。1933年に「社会学批判序説」を出版している。1941年に読売新聞の論説委員となっている。
    1932年に唯物論研究会に入会したが、1937年には退会している。「清水にとっては思想は何よりもまず生活の手段であり、思想のために生活を犠牲にするという志向は薄かった。」
    「清水には積極的なテーマはなかった。彼が書いた文章は、戦前も戦後も、外部からの依頼でテーマを与えられたものが多かった。」
    「清水は、何によらず、新しいテーマを示されると、たちまちそれが面白くなってしまう癖があった。」
    1945年8月、敗戦。読売新聞社を退社し、フリージャーナリストに戻った。
    1949年、学習院大学の教授に就任。
    1950年代から60年にかけて、内灘問題や、60年安保問題で先頭に立って活躍したが、70年以降は、右翼論者になったという。1988年、81歳で死去した。

    思想家ではなくジャーナリストだった。与えられたテーマについて庶民感覚を働かせ、時代の雰囲気を感じ取り論を組み立てた。それが生活を支えた。

    著者 小熊 英二
    1962年 東京生まれ
    1987年 東京大学農学部卒業
     慶応義塾大学総合政策学部教員

  • ¥105

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著者プロフィール

慶應義塾大学総合政策学部教授。
専門分野:歴史社会学。

「2023年 『総合政策学の方法論的展開』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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