これが論点! 就職問題

制作 : 児美川 孝一郎 
  • 日本図書センター
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  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784284305952

感想・レビュー・書評

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  • この問題は本当に複雑でしかも複合的なため簡単に答えが出せない.
    しかし,児美川先生のリードでうまく論点がまとめられている.
    はっきりとは分からないままではあるが,どうにかしなければならないことではあるのだろう.
    ある種の格差を悪とするか容認するか.
    色々考えさせられるが,大学が多すぎることは間違いないな.

  • 以前よりシューカツ語りが増えて、ニュース、新聞、雑誌、本などいろいろなところで広く目にするテーマとなっている。
    しかし、何が問題か。何が変わったか、就職活動のシステム、大学教育、日本の雇用制度、適職信仰、いろいろなエッセンスをみることができる本となっている。
    学生が何を求めているのか?という部分では、心打たれるものがあり、今あるルールの中で、なんとか仕事を探すよりも、もっと変えなければならないものがあると、感じます。安心した職探し、そして就職してからも満足のいく職場(最低限のレベルで)であること。自分が就職活動をしていたときにはあまり疑問に思わなかったけれど、転職活動してみて、スケジュールなど苦労が多かったので、これは大学生にとっても問題だなと思う。勉強、スポーツ、バイトして生活費を稼ぐ学生もいるし、学生としての生活を優先させて欲しい。
    また、学校の教育面にも関心がある。大学とはそもそも、研究をするところだと思うので、就職活動まで面倒をみるというのは、本来あるべき姿か?と思ってしまうが、今ではそんなことは言っていられないのだろう。就職率で大学の魅力をアピールするところもあるし、学校と職業の最後の橋渡しとして多少の協力は必要なのだろう。いつ、どんな内容で学生とともに職業への移行を考えていくべきなのか。状況は変わってきているのかもしれない。
    大変興味深く、関連文献も読みたい。

  • ≪目次≫
    就職問題とは何か?(児美川孝一郎)
    第1部  「就職問題」のどこが問題なのか?
       「就職問題」のどこが問題か(児美川孝一郎)
    第2部  学生の就活はどうなっているのか?
       就活に追い詰められる学生たち~就活生の七人に一人がうつ状態    (川村遼平)
       賢明な就職活動にむけて~業界・企業に関する情報収集が不可欠    (上西充子) 
    第3部  就職の困難は、誰を直撃しているか?
       不況下の新卒就職の現状と対応(小杉礼子)
       学卒未就職という不条理~大学教育の現場で今できること(居神浩)
       就職活動システムの現代的機能~「失敗」して「成功」する「再配置」   (今野晴貴)
    第4部  「就職問題」の原因はどこにあるのか?
       企業は新卒採用数を大幅源 焦る学生の「就活」奮闘記(石渡嶺司)
       <大激論>超・就職氷河期の真実 日本型雇用がダメなのか 大学   生がダメなのか (海老原嗣生+城繁幸)
       若者の就職難の原因は安定・大手志向なのか 根底にある「人の使   い捨て経営」と非正規化 (竹信三恵子)
       終身雇用が若者の就職難を招く (八代尚宏)
       「就職氷河期再来」の虚像を剥ぐ~新卒採用を自由化・透明化せよ
       (常見陽平)
    第5部  「就職問題」にどう対応するか?
       "適職という幻想”を捨て去る仕事はただの糧と腹をくくれ(宮台真司)
       <超・就職氷河期>のウソ 四大卒も中小企業を目指せばいい
       (海老原嗣生)
       大学「全入時代」の新卒者 就職市場のミスマッチ解消を(太田聰一)
       「新卒一括採用」という遺物  (城繁幸)
       新卒一括採用はもう限界 二七歳まで採用延期しては (山田昌弘)
       就活の早期化、長期化で学生、大学、企業をダメにする 負のスパイ   ラル転換を (辻太一郎)
       大卒就職をめぐる最近の論点~活動開始後ろ倒しと卒後三年新卒    化 (大島真夫)
       「ロスジェネ問題」の延長戦では氷河期の歪みは解決しない~「就職   氷河期」が直撃したロストジェネレーション世代 四〇代にさしかかろ   うとしている彼らの現状から社会を考える (赤木智弘)
       教育の職業的意義を問う~大学・企業は何をなすべきか 
       (本田由紀)
       職務を定めた無期雇用契約を~「ジョブ型正社員制度」が二極化を    防ぐ (濱口桂一郎)
    付論 学生たちは何を求めているのか?~就活生からの就活改革・第一   次提言

    ≪内容≫
    法政大学キャリアデザイン学部の児美川孝一郎教授が編集した、昨今の就活問題の重要論文・対談・提言を収録したもの。
    彼らの論旨を粗くまとめると、「現状の新卒一括採用、終身雇用、年功序列型賃金はすでに破綻を来たしている。それに代わる新しい採用形態を行政・企業・大学は考えなさい」と言うことだろうか?
    現状の就職に関わる形態は、世界的に稀なものだが、それが失業率の低さをもたらしているメリットも見られる。しかし、経済がグローバル化した状況で、ガラパゴス化しているこの労働慣行は、終末を迎えているようだ。
    どの提言も一長一短があるような(どれも似たものになっているが)気がするが、大企業が近視眼で採用し、付焼刃的な対策を講じても、結局は自らの身を傷つける結果になることは明らかだと思う。

  • リーマンショック以降、新卒の就職難が社会問題となっているが、この「就職問題」を正面から取り上げ、20人にものぼる有識者が、様々な角度から「就活問題」を論証している。

    本書の編者である児見川孝一郎氏は、「就職問題」、すなわち若者の就職の困難とは、取りも直さず戦後の日本社会が作り上げ、そこにどっかりと腰を下ろしてきた制度や慣行、システムが機能不全に陥っていることを意味するという。

    にもかかわらず、採用する側の企業も、学生を送り出す側の学校も新たな局面にたいして有効な方策を示すことができていないため、「就職問題」が一向に収まる気配を見せない、というのが本書の多くの執筆者の見解である。
    そして、この問題の原因である企業及び学校の就活に対する現在の取り組みを検証し、改善策を呈示している。

    一方、当の学生(求職者)はどうかというと、彼らの資質や就活への取り組み姿勢にたいして否定的な意見は少なく、むしろ、企業と学校の両者の無策の犠牲者と捉える論調が主流である。
    この点、ゆとり世代等といって、学生側の問題と捉える見解もあろうが、未曾有の不況下にあって、じゅうぶんな対策を講じない学校や非正規雇用を増やしてその場を凌ごうとする企業の姿勢にこそ問題の根源があると私も思う。

著者プロフィール

1963年生。法政大学キャリアデザイン学部教授。法政大学文学部教育学科専任講師、助教授、キャリアデザイン学部助教授を経て現職。専門は教育学。法政大学大学評価室長、日本教育学会理事、日本キャリアデザイン学会副会長。
著書に、『キャリア教育のウソ』(ちくまプリマー新書)、『「親活」の非ススメ──"親というキャリア"の危うさ』(徳間書店)、『若者はなぜ「就職」できなくなったのか──生き抜くために知っておくべきこと』(日本図書センター)など、編著に『これが論点!就職問題』(日本図書センター)、共著に『キャリアデザイン学への招待──研究と教育実践』(ナカニシヤ出版)など多数。

「2015年 『まず教育論から変えよう』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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