- Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
- / ISBN・EAN: 9784305708236
作品紹介・あらすじ
文学の歴史を書き直すために、何に出会い、どう書くか。
さまざまな切り口がいざなう、近代日本文学研究の可能性。
既存の思考の呪縛のうちにある、「文学研究」を取り囲む〈枠〉と格闘し、どうもがいたか。「空間」「文学史」「メディア」をテーマに、全11章で考えていく書。
【 小説は何をどのように書いてもよいと、鷗外が言ったとき、彼は「夜の思想を以て」と付していた。ここまで私は、文学研究は何をどのように書いてもよいといい、文学研究と隣接領域との交通の重要さを主張したわけだが、しかしそもそも「文学(研究)」の内/外という物言い自体が、既存の思考の呪縛のうちにある。「文学」と「研究」がその姿を変えないまま「外」といくら交渉を重ねても、一時しのぎの意匠が増えていくだけだろう。
本当に新しいものは、見晴らしのきく昼の世界においては見つからない。わかりきったルーティーンの作業と、それに慣れきった思考が支配するのが昼の世界である。鷗外は役所勤めでへとへとになった自分を一度眠らせ、深夜に起き出して原稿を書いた。「昼の思想と夜の思想とは違ふ」(「追儺」五八七頁)。昼の怠惰な明澄さを眠らせ、文目も分かぬ「夜の思想」にいかに分け入るか。そこで何に出会い、どのように書いていくのか。もちろん、夜の冒険は昼の冒険よりも格段に難しい。】……本書「空間・文学史・メディア 何に出会い、どう書いていくのか」より
感想・レビュー・書評
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文学研究は綱領や規約はどこにもない。しかし文学研究は<枠>の中にある。この<枠>を明らかにして「文学」、「文学研究」を縛り付けているものを把握し、文学研究と隣接領域の交通の重要性を指摘する図書。テーマ別としては「空間」、「文学史」、「メディア」に分かれる。
特に「空間」は京都の作品が中心。個人的に気になるのは菊池寛の「身投げ救助業」。琵琶湖疎水等近代化が進む当時の岡崎という空間をとらえつつ、作品を考察している。驚いたのは菊池寛が京都府立図書館に通っていたということ。知らなかった…詳細をみるコメント0件をすべて表示