假面の告白 初版本完全復刻版

著者 :
  • 河出書房新社
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (279ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309010793

感想・レビュー・書評

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  • 再読。
    30年ぶりくらいの再読なので内容をほぼ忘れていて、初読の気分で読み進めた。

    なかなか攻めている小説なのであった。
    それは、三島が自伝的な内容を隠さずに描き切っている赤裸々さ、だけではない。
    中盤、ときに観念的な内面と思考の過程を、徹底的に突き詰めているその攻め具合である。
    尖っているのだ。

    ざっくり言うと三島の「ヰタ・セクスアリス」である。
    4章で構成。第1章は幼年期。第2章は高校時代(旧制中学)。第3章は大学生となった青年期。

    青年期に到り、三島は自身の嗜好が「異形」であることの自覚を積み重ねてゆく。
    一方で、園子という女性と過ごす時間に、ある種の心地よさを感じることを自覚。
    この二つの状況のせめぎ合いに対して、三島は自身を徹底的に追究してゆく。
    自分は異性(女性)に対する肉欲を抱くのか、試したりする。
    あたかも、自らの観念や嗜好を解剖する如し、である。
    自分自身の内面を、徹底的に腑分けしてゆくさまは、客観的、科学的な様相すら感じさせる。
    ヒリヒリするような切実さ、峻厳さ、凄みで迫ってくる。

    さらには、小説の時代背景は、終戦間際で空襲が繰り返される東京である。
    その死の日常も「私」の思考に絡みつく。
    自身がやがて戦死することで、その煉獄のような状況から解放されることも夢想する。
    この断章が「私」の思考にさらなる重層的なものを与えている。

    文も巧い。
     思考や事象を、形而上で捉え直すためか、新鮮な表現がいくつもある。例えば…

    「雪景色はいわば新鮮な廃墟だった。
      (中略)この贋の喪失の上に…」

    そう。例えば、喪失感にしろ、失意にしろ、徹底的に腑分けする。表層的なフェイクな仮構の失意なのか、あるいはもう一段深層での本質的な根源的な失意なのか。
    または、同性を求める嗜好の地平での観念と、異性愛という「正常な」価値観を仮構するうえでの判断なのか。それらを精密に解剖するごとく峻別し記述してゆく。

    ちなみに、
    本書は「初版本完全復刻版」なるもので、刊行時の付録もついている。
    そこに、担当編集者の一文も載っている。
    「仮面の告白」を書かせた編集者は坂本一亀氏である。
    本書を読んでいて、期せずして坂本龍一氏の訃報にふれた。
    その関連記事で一亀氏は有能な編集者として高名であり、龍一氏の実父であったことを、初めて知った。

  • 孤独な人。

  • もう一度読む。

  • 正に三島由紀夫の
    ヰタ・セクスアリス。

  • ホモうほー!文豪のホモは格別すなヽ(○・∇・)ノ 
    「三島作品には真実がない」と言われて書いた半自伝のこの作品。
    その経緯もあって、高評価。

    初恋のショタホモエピソードは淡くて甘酸っぱくて素敵だし、
    仮面をつけて付き合った清楚可憐なお嬢様のやりとりも
    とても好感がもててニヤニヤする、
    どの人物がしずしずとしていて可愛い半自伝でした。

    幼少の主人公は軟弱な自分への劣等感が屈折して、
    屈強な同級生の男子に初恋し、
    脇毛!( ゚∀゚)o彡゜脇毛!( ゚∀゚)o彡゜とハッスルする主人公。
    脇毛に関してフェチズム全開の三島さんカワユイ♥
    どんな作家も、自身のフェチズムになるとけっこうしつこいんだなw
    読者はそんなに脇毛に関して読みたくないよ!

    早く夏にならないカナー裸がみたいなー、と待ち焦がれていたのに
    いざ目の前にすると恥ずかしくて直視できなかったり、
    街でガチムチな男を見て記憶して、こっそり夜のおかずにしたり、
    戦争が自分を殺してくれると厨ニ思考で期待するも、
    死にそうになるとびびって生きる道にすがりついたり、
    徹底的にすごくヘタレで。
    ナルシスト男尊女卑の漢、文豪三島さんへのイメージが変わった。
    ただ繊細で偏屈なホモだった。

    主人公はなんでもかんでもごねるし、言い訳と建前ならべて武装する。
    そして毒吐き不幸ごっこが趣味で、ねじまがった加虐妄想にふける。
    ああ、メンドクサクていみじき人!めぐし愛し!

    一つ気になったのは。
    純粋無垢なお嬢様と付き合っている時に
    仮面をかぶって他人を騙し、自分の気持ちまでも騙しているんだと
    何度も何度も述べているけれど、違う気がした。
    美しい、愛しい、汚したくない。そんな感情は生産できない。
    あれだけ心に強く彼女を思っているのに、この気持ちは仮面と言って、
    かといってホモにも走らず目で追うだけで・・・
    ただ傷つくのに怯えていたり、深い所へ潜る勇気がないだけでは?
    肉欲を感じ無いけれど、好きっていう概念がものすごく異常な時代だったのか。バイが普及してなかったのか。
    ただ作者がとにかくツンデレツンだったからか。

  • 一度は読むべき。

  • ホモと処女 

  • 二度目。今読むと部分部分の文章は稚拙。しかし、全体としては脅迫的で面白い。

  • 読み途中

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著者プロフィール

本名平岡公威。東京四谷生まれ。学習院中等科在学中、〈三島由紀夫〉のペンネームで「花ざかりの森」を書き、早熟の才をうたわれる。東大法科を経て大蔵省に入るが、まもなく退職。『仮面の告白』によって文壇の地位を確立。以後、『愛の渇き』『金閣寺』『潮騒』『憂国』『豊饒の海』など、次々話題作を発表、たえずジャーナリズムの渦中にあった。ちくま文庫に『三島由紀夫レター教室』『命売ります』『肉体の学校』『反貞女大学』『恋の都』『私の遍歴時代』『文化防衛論』『三島由紀夫の美学講座』などがある。

「1998年 『命売ります』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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