首輪

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著者 : 佐藤亜有子
  • 河出書房新社 (1998年2月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (124ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309011981

首輪の感想・レビュー・書評

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  • 夜が来る。もう夜を数える必要もない。軽蔑は麻痺に等しい。不安と陶酔とわけのわからない昂ぶり。

    顔のあるべきに顔のない。男に顔がない。


    「葡萄」「黒い月」「接吻」「首輪」思っていた以上に淡々としていて、感情が一切見えない文章だった。読むのは楽だったけど、「彼」「あの人」「ここ」「モノ」など置き換えて読むと、ぼんやりと事態がつかめてくる。

    「夜がこわい」「夜が来る」子どもが「夜」「夜」とたくさん訴え怯える時は要注意。子供が家庭を壊すんじゃなくって、夫婦間や家庭のバランスが崩れて歪んだ時にそれは起こる。基本が基礎から壊れてしまうこわさ。


    自分。身体。心。個。感覚。痛み。笑顔。自由。自分で考えること。など消えてしまう。壊れてしまう。麻痺してなにもわからなくなる。ただ従うだけ。そうすると何よりも楽だから。


    正しいこと悪いこと。普通なこと、おかしなことの区別が付かなくなって、他の人が見向きもしないようなことやものが大事だと感じて、一度大事だと思うと、それは自分の命を懸けても守らないとならない…という異常な感覚になる。



    そこから何とかして抜け出してほしかった。作品が注目されることでさらに追い詰められてしまったのかもしれない。そうだとしたら皮肉なことだ。


    いつか『花々の墓標』を読みたいと思って、『首輪』から読んでみました。私より1歳年上。43歳で死去。岩手県出身。

  • 13/10/05 何のことや。

  • 閉じた世界では感情の揺れは矯められることなく、どこまでも発散していく

  • 短編集。
    葡萄、黒い月、接吻、首輪
    よくわからなかった

  • 夢みたいに感覚だけで進んで、不思議な感じだった。最後の話、「首輪「はかなり具体的な書き方で安心して読み終われる。

  • 【090104】犬も歩けば棒にあたる

    :::::::::::::::::::::::::

    刷り込みというのだろうか。
    子供の頃に何気なく誤って覚えた知識や経験に
    ずっとその後も支配され続けることはないだろうか。
    僕の場合は、それは「ケンネル」だった。

    両親と青山通りを歩いていた幼い僕の目に入ってきたのは、
    「青山ケンネル」
    という看板だった。
    青山学院の前あたりの細いビルに
    青い看板があがっていたのを覚えている。
    そのビルまでいくとショーウィンドウの中には犬がいた。
    僕が母に「ケンネル」の意味を訊ねると犬小屋だという。
    母は僕にこう言った。
    「ほら、犬が寝るおうちでしょ。だから『ケンネル』。」
    母は僕をからかってやろうと思ったのかもしれない。
    それとも、僕が何度も意味を訊ねて煩かったのかもしれない。
    とにかく、母にはそう教えられた。

    それがどうやらおかしいと気づいたのは中学に入った頃だったと思う。
    ご多分に漏れず、小学生の頃、乱歩に狂っていた僕は、
    この時分には本格的な推理小説を読み漁るようになっていた。
    ヴァン・ダインの「ケンネル殺人事件」を知ったときだ。
    原題に“The Kennel Murder Case”とある。
    だまされたと悟った。

    以来、青山通りであの青い看板を見ると胸が痛くなる。
    幼い素直な自分を思うとかわいそうになる。

    だからだろうか。
    我が家で犬を飼ったときも
    この店で何かを購入したことは一度も無かった。
    そう、犬小屋は僕がつくった。
    三角屋根にアーチ型の穴の開いた昔ながらの小屋だ。
    近所の風呂屋で木っ端をもらってきてつくった。
    母は犬がかわいそうだと言ったが
    僕にいわせれば
    犬ごときにはそれで十分だった。
    しかもご主人様の手作りなのだ。

    そうだ、
    僕は犬小屋を作ったほかには
    たいした世話もしなかったと思う。
    そもそも母が知り合いにもらってきたのだ。
    母は名前をつけてかわいがっていたが
    僕にはよく分からなかった。
    そして、その犬は、
    僕が高校に入った頃に死んでしまった。
    母は泣いた。

    あれからもう随分になる。

    先日、僕は犬を飼うことに決めた。
    それで思い立ってあの青い看板の店に行ってみた。
    青い看板の店はまだそこにあった。
    もう胸は痛まなかった。
    むしろ興奮していた。
    僕は店員とあれこれ相談して
    この革の首輪に決めたのだ。
    名前のついたプレートもつけて貰った。

    部屋に戻り
    僕がプレートのついた首輪を見せると
    嬉しいのか身震いしている。
    そのとき、僕は、とても愛しいと感じた。
    やさしく抱いて、うなじに軽く、口づけをした。
    それから首に手を回し、革のバンドを巻きつけた。

    もう一度抱いて、囁いた。

    「誕生日、おめでとう。
     僕からのプレゼントだ。」



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