Dr.キリコの贈り物

著者 :
  • 河出書房新社
3.38
  • (3)
  • (7)
  • (21)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 57
感想 : 13
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309012841

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • あの頃、まだ思春期だった私も興味深くて覗いてみたい世界だったけど、結局見ることのなかったせかい。
    「確実に死ねる方法」なんて、自殺も他殺も本気で考えてなくたって気になるよね。

    でも実際に自殺をした人、しようとした人達は、自分には全く想像できない壮絶な想いや体験があるんだな感じる。
    若気の至りでは済まされない、もっと根深いものがあるのかな。と、思いながらも、この人達が生きているのは誰か、或いは何かに必要とされているのでは?という気持ちも湧いてくる。
    絶妙なバランスで誰かぎ誰かを惹きつけて保っているような…。

    この事件から早30年近く。
    何故今この本を手に取ったのか…。
    以前心理学を勉強していた時に読みたい本リストに入っていたもの。
    今でも人の心に惹きつけられる。

  • エンジェルダストに代わり青酸カリという名のECカプセルをある条件付きで送り続けた男の実話。

    某ベストセラー本の話も出てきて相変わらず某書の影響力は凄まじいものなんだなと考えさせられた。

  • 本当にあったお話。精神病院で看護師に“非人道的行為”を受けた、札幌の青年が、死なないことを前提に、青酸カリを売る、というお話。青酸カリによって、励まされた、方々ばかりだが、最期のようで、“死なないことを前提”を破ってしまった人がいた。そして、売人本人、青酸カリで自殺する、という簡単な文書で書かれた、些細な揉め事のお話。インターネットがまだ、普及し始めたばかりだから、そんな真似ができたのだろう。

  • ここまで鬱の心理をわかり易く、鮮やかに表現した書始めて。実際に起こった青酸カリ販売、服毒事件。当事者周囲への緻密な取材から書かれた事件の背景。だが、最後の筆者の言葉で安易な同情で読後感を終わらせない工夫もしてある。

  • 自殺とかインターネットじゃなくて、うつ病の話。

    >青酸カリを入手して『いつでも死ねるんだから、もう一日だけ頑張ってみよう』と自分にいい聞かせることによってしか生きていけない病人がいるのだ

    これに出てくる女は、うつ病で自殺しようしようって言ってた人だけど、人の世話を焼いてる時とか、キリコに関わってる時は、生き生きしてるのね。
    人って、そこじゃないかなーと思った。
    ただ、うつ病ってどこからどこまでっていうのが難しそうだから、奥が深そう。

  • 生きていることが辛くなった人たちからは神のように慕われていた男性が、自分が送った薬で命を断ってしまった人が出たために、自らもその薬を使ってしまう。
    かなり印象の強いニュースだったので覚えているが、この本を読んで、彼の人柄や事件の背景が見えてきた。
    ニュースでの死の商人というイメージはなくどちらかというと好青年のように思える。
    薬を送った理由も、真偽は定かではないが、生きる為のお守りとして所有していてほしかったとのこと。
    「死ぬ事より辛い人生を歩むのが善なのか!」という周りの人の言葉が印象的だった。

  • 青酸カリ宅配事件の真実と闇。Dr.キリコ=草壁竜次。草壁竜次はインドを旅していた。享年27歳

  • ん〜、微妙。ドキュメントでもないし、ノンフィクションでもないし。帯にはノンフィクションノベルスって書いてあるんだけどね。青酸カリ宅配事件という、古い事件の本です。
    登場人物は3人。青酸カリを配っていた草壁竜次、草壁から青酸カリを受け取った彩子、父親から暴力をふるわれていたあい。あいにかんしては1章丸ごと独白って部分しかほとんど無いわけだけど。ストーリーテラー的なのは彩子。彩子がネットをはじめる前から、事件発覚後までの話が中心ですね。
    で、著者はどうしてるかっていうと、はじめとおわり、そして精神分析に関してちょこっと書いてるだけだったりします。あとは、草壁竜次が最後に自殺するときのことを詳細に書いていますが、これはフィクションだべ。
    なんか微妙な本でした。これといった感想も出てこないです。
    ただ、精神分析のところで、昔の彼女のことを思い出しましたけどね。

  • 「ドクター・キリコ」なんか異常に懐かしい響きであります。これはどうなんだろう、この言葉から普通は何を連想するんだろう。まぁ普通に考えて、多分2つに分かれると思います。手塚治の「ブラックジャック」に登場するDr.キリコと、ネットで青酸カリを売買して自殺の援助をしたと話題になった、ハンドルネームドクター・キリコ。もちろんこの著書は後者について書かれたものですが、著者は臨床心理士で現役心理カウンセラー。
    この事件が起きたときにマスコミで取り上げられていたことに興味を持ち、事実を元に書かれた内容になっている。
    この事件自体はもちろんよく知っていたし、当時もかなり驚かされたけど、あたし自身はまだネットを使うような環境ではなかった。あんまりよく分からない身近な話として意識してはいなくて、割りと特殊な一つの事件としてしか捉えていなかった。が、今はぶっちゃけ、当時とは状況が違い過ぎる。あの頃より確実に世のネット事情には面倒な世界になってしまっているし、最近はネット心中なんていうもんが流行っていたりするのだ。あたし自身にとっても、もはやネットを媒体とした生活形態に犯されており、他人事として捉えるには逆にリアルすぎなんだよね。

    ただ、この本の内容は青酸カリを使用して自殺してしまった、ということよりも、ドクター・キリコという人物や彼に関わった人たちの中にある闇と自殺願望とカウンセラーとして精神障害者と関わる著者自身の思いが入り乱れた、人間の生き方に対する考え方が、主題として問われているような内容だ。著者はドクター・キリコの行為は単に危険な犯罪だというだけではなく、自殺願望のある人との関わり方に着目し、一対一、もしくは多対一の信頼関係が出来ていたのだと指摘し、また彼が与えた青酸カリは死ぬためではなくむしろ、死なないために送ったのだと書いている。事実、彼から青酸カリを買い取った人物とも、「青酸カリを持つことでいつでも自分の意思で解放することができる、という安心を得ていた」のではないかと言う。それは本人が発言したことのようであるし、この本ではそこが大きなポイントになっている。当時、ドクター・キリコと直接関わりがあったという女性から直接話を聞き、事件に至る様々なやりとりが詳しく書かれている。もちろん、著者のフィクションである部分もあるのだが、基本的には事実に基づいた内容だとされていた。

    今でもドクター・キリコで、検索してみるとたくさんみつかるし、噂の掲示板「ドクター・キリコの診察室」も、保存用が残っているみたいで、読むことも出来る。また、そのサイトを開いた女性の作った「安楽死狂会」や「自殺倶楽部」も現在の更新は無いが、見ることは出来る。どれも自殺志願者同士が、心中相手を求めたり、自殺方法について語り合ったりするのが主旨で、いまだにそういうサイトは後を絶たない。某有名掲示板なんかを覗けば、超盛り上がっているんじゃないかな。
    なんか随分すごいタイミングがいいなぁって思ってしまって。なんで、今これを読んだんだろう。

全13件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1958年東京生まれ。京都大学文学部心理学科卒業。精神病院の相談室長などを経て、現在、西武文理大学講師、桜美林大学アカデミー講師。臨床心理士。テレビ・新聞などでのコメントの機会も多い。著書『依存性パーソナリティ障害入門』(日本評論社、2004年)、『平気で他人の心を踏みにじる人々-反社会性人格障害とは何か』(春秋社、2006年)、『困った上司、はた迷惑な部下』(PHP新書、2007年)、『パーソナリティ障害』(講談社選書メチエ、2008年)など多数。

「2008年 『無差別殺人と妄想性パーソナリティ障害』 で使われていた紹介文から引用しています。」

矢幡洋の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×