蹴りたい背中

著者 :
  • 河出書房新社
3.07
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  • Amazon.co.jp ・本 (140ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309015705

感想・レビュー・書評

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  • あー間違いない!私も
    蹴りたくなりましたよ。

    なんとまあアホらしい
    背中。

    耳元で囁かれてる気が
    するからと

    片耳だけのイヤホンで
    うずくまる背中。

    アイドルオタクの何が
    悪いのか?と、

    当人からすれば放って
    おいてくれよ!という
    ことなんでしょうけど、

    目の前のそのモッサリ
    した無防備な背中を、

    アイドルと二人だけの
    世界に旅立ってるその
    背中を、

    足蹴にしたくなるこの
    衝動は、

    学生時代から変わらぬ
    感覚と言いますか、

    実際じゃれあいのなか
    友だちの背中を蹴った
    記憶がうっすらと(汗

    あ、学生時代と言えば、
    好きな人を知らず目で
    追って、

    その人が少しでも動く
    とあわてて目を逸らす
    片思いのあるある。

    端から見ればバレバレ
    でした(笑

    そう、ご多分に違わず
    恋ゴコロに気を取られ、

    他人から見えてる自分
    の背中に不注意極まり
    なかった私を思い出し、

    あ、どちらかといえば
    私も蹴られる側だった
    じゃないか、と。

    まあ、もはやすべてが
    時効ということで・・・

  • 中学生の娘が読了。
    普段なかなか読書が進まない娘ですが、この作品はとても読みやすかったようで、1日で読み終わっていました。

  • 蹴りたい、傷付けたい、傷付く顔が見たい。それってどんな感情なんだろうか。愛しいの先にあるものなのか、まったくの別物なのか。
    なんとなく居心地の悪い、でも綿矢さんぽいお話だった。

  • 聞いていた評判より、ずっと素晴らしいと思った。

    女子高校生の主人公の、閉じた主観の世界がストーリーの基調となる。これ自体、リアリティのある描写だが、やや疲れる感がある。

    けれど、そんな小さく閉じた世界から、自分でも知らなかった自分、見えているようで見えていなかった広い世界がチラリと覗く瞬間が、なんとも自然で、みずみずしいのだ。

    茶道が、隠すことで美を浮き上がらせるように、自意識や嫌悪感で埋め尽くされた背景の中に、わずかに生じる真心や無意識的なものが、光を帯びて浮き上がる、その感じがとてもいい。

  • 芥川賞の最年少受賞作とということで、かつて話題になった本作。
    綿矢りささんの小説を読むのは、私はこれが初めてです。
    高校で人の輪に入ることができない主人公。
    主人公は、同じように周囲と打ち解けていない男子と、その男子の好きなモデルのことで交流を持つことになる。しかし主人公のその男子に対する感情は、恋愛感情でもなく、優越感情でもなく。
    とても不思議な感情を描いた作品。
    青春小説だと思って、爽やかな青春を期待すると肩透かしになるかもしれませんが、かといって苦々しい青春でもなく。
    よく分からない不思議な感情が描かれていますが、名状しがたい感情が書かれているところが、芥川賞の受賞につながったのかもしれません。最近はどうか分かりませんが、かつては、よく分からないのが純文学だというような風潮もあったかと思います。
    読後感はすっきりとしないかもしれませんが、個人的には、それなりに面白かったです。学校に行っていても、誰とも話をしたくないと思っている人は、確かにいるのだろうと思いました。

  • なんとも不思議な読後感に浸る作品です。

    感想はうまく言えませんね…なんていえばいいんだろう。

    オリチャンのことしか覚えてないな…。

    蹴りたい背中っていうタイトルも独特な感じですよね。
    綿矢りささんの作品には実に不思議な空気が
    流れていますね。

    • miyabijudiceさん
      花丸ありがとうございました~(*⌒∇⌒*)♪
      レビュ~読んでペタっとしていただくのは何とも嬉しいものです。

      確かに綿矢りささんは、独特の世...
      花丸ありがとうございました~(*⌒∇⌒*)♪
      レビュ~読んでペタっとしていただくのは何とも嬉しいものです。

      確かに綿矢りささんは、独特の世界観がありますよね。
      私はまだこの作品しか読んでませんが、
      これから読みたい作家さんの一人です。

      読書を通じて交流出来たらいいな~と思ってますので、どうぞこれからもよろしくお願いします^^
      2013/01/20
  • あかん、こら名作や。
    どうも話題性先行だったような、そんな当時の印象がおぼろげにある。しかし、これ本当に凄い作品。
    結構王道なテーマ扱ってるのね。もうびっくり。疎外感と共感とディスコミュニケーションとほんの少しの成長がまた見事に描かれてて、確かになあと思わせる質感。
    内容はまあよくあるので、きっと評価点は感性と描写の瑞々しさでしょう。
    たとえば『さびしさは鳴る』っていう文頭。ぱねえ。もう誰も使えなくなってしまったわけです。それだけのインパクト。このレベルの表現、何を表してるんだか一瞬わからないけれど読者に感覚で無理矢理わからせてしまうような絶妙かつ的確な表現を、しかも連発する。もうね。
    ぱねえ。19歳、ぱねえ。

  •  2003年8月に発行され、芥川賞も受賞された綿矢りささんの作品。言わずと知れてますね。

     高校進学後、クラスになじめない、というか人に合わせることの難しさを中学時代に実感し、群れることをやめたハツ。にな川も同じようにクラスで浮いていたが、女性ファッション誌モデルのオリちゃんのファンで、偶然ハツが会ったことがあると言ったことを切っ掛けに、にな川の家に誘われる。
     オリちゃんのことしか考えていないにな川。
     それから中学時代からの友達だけど他のグループに入ってしまった絹代。

     すみません。あらすじがとっても書きにくいです。てか、書けません。(汗)
     ただ、主人公ハツの心の動き、自分を曲げてまでグループに入りたくないというスタンスはもの凄く共感できます。学校の中、普通であることになじめない居心地の悪さを感じる人は多いのではないかと思いますが、それを文章にするというのは難しいのではないでしょうか。ひとりぼっち、孤独感。そういったものを優れた感性で書かれているように思います。

  • 大学生がこれを書いたのかと思うと、その描写力と鋭敏な比喩表現に非凡さを感じざるを得ない。簡潔な文体にして的確。

    僕も高校時代はハツと似たような面があったから、共感できる要素が多かった。ハイティーンに差し掛かる年齢の、クラスのアウトサイダーになりつある少年少女のメンタリティ。自己とその他を区別し、グループ化していくその他を冷めた視線で捉え、嫌悪感すら抱いていく。個性と没個性を強烈に意識するがゆえの不器用さを抱えながら膨らむ自我が揺れ動く。10代の頃に自意識過剰が振り切れる、あの体験に近いかなと。

    そして、にな川というアウトサイダーでありながら全くハツとは異質な思考を持つ異性。思考は違うけれども、どこかでハツと情緒が繋がってしまうのだと思う。ステレオタイプな恋愛感情を飛び越した嗜虐心なのか、彼の背中を蹴りたい衝動が生まれるけれども、その正体はやはり単純な理性では掴めない、ハツの内側から呼び覚まされるプリミティブな暴性とイビツな愛おしさ、その他微細な感情の複合物なのだろうと思う。気になったのは、ハツのにな川への感情の中に性的衝動が微妙にあるのか無いのか分からないない点だ。有無のどちらともとれる表現はあったように思うけれど、明確には示さないという意図なのか、僕の感性では読み取れないだけなのか……。

    アイドル的な人気モデルに入れ込むにな川の生態は、キモオタそのもので笑えた。ハツはそのキモオタ性を気持ち悪いと思っているだろうし、馬鹿にもしているけれど、一方でそこに、にな川のパーソナリティと結合した強烈な個性として愛おしさを感じてしまっているという点で、没個性側(クラスの仲良しグループ)とやはり峻別できてしまう。

    大人びたシニカルな目線と対比的に感情を持て余すハツの未成熟さが顕れるところや、経験の無さゆえに外出時の服や履き物のチョイスに失敗するところなどに10代のリアリティを感じたし、そこはこの作品の情緒的な味わい深さだと思う。

    純文学に重厚さを求める向きには軽い作品かもしれないけれど、年齢性、時代性、感性、情緒性、など、いずれにおいても鋭く過不足なく描き抜く筆力は非凡だと思う。

  • 本を読んでいて、最初の1ページとか2ページ目で引きつけられる、
    その世界の中に入り込んでしまえることを、私は「吸引力の強い本」
    だと感じるわけですが、この本の冒頭

    さびしさは鳴る

    たったこの7文字に引きつけられてしましました(笑)

    余りものと表現された、友達のいない主人公私と、
    やはりクラスの余り者のにな川。
    でも、この私は友達はいなくてもその世界は外に向いているのに対して、にな川は、オリチャンというモデルに向けられている。
    というかオリチャンにしか向いていない。
    似ているようで似てない二人。
    そこには素直に表現できない恋愛感情が隠されてるのかな。
    それで思わず蹴ってしまったのでしょうね。
    そんな二人を、簡単に恋愛というジャンルでくくろうとする友達、絹代。

    ばらばらなんだけど、なんとなくその世界が成り立っているような
    不思議な人間関係。

    この作品は2作目だという作者は、なんと19歳!ぉお(゚ロ゚屮)屮。
    小説の技巧とかテクニックという点では、物足りないかもしれないが
    19歳でこの表現力はものすごいことだと思います。
    只者ではないです。

    普通の高校生だったら、なんかウザいとか、だるい。と
    表現するところを、こと細かく書くと、こういう風になるのかしらね~?


    小説を書くというのは、絶対人生経験豊富な年配の人のほうが
    有利だと思っていた私の考えを、ちょっと軌道修正しなければ、と
    思わされましたね。

    若い感性に、
    この作者のような表現力、それにテクニック
    これがそろえば最強かと・・・(*⌒∇⌒*)♪

    他の作品も読んでみたくなりました

    • koshoujiさん
      「蹴りたい背中」お気に召されたようでよかったです。
      是非、ほかの作品もお読みください。
      講談社で見た彼女の生姿は、ほんとうに美しい方でし...
      「蹴りたい背中」お気に召されたようでよかったです。
      是非、ほかの作品もお読みください。
      講談社で見た彼女の生姿は、ほんとうに美しい方でした。
      あの美貌で、このような作品を書く感性を持っているというのが、
      俄かには信じがたいほど、神々しいまでの美しさでした。
      京都弁が、また何気に可愛くて。
      その様子は、大江健三郎さんとの対談感想ということで、
      下記のレビュー(群像2012年5月号)に書きましたので、ご覧いただければ幸いです。
      http://booklog.jp/users/koshouji/archives/1/B007NLU55E

      仙台は毎日のように雪が降り、寒い日が続いております。
      それでは、よいお年をお迎えください。
      2012/12/29
    • 深雪美冬さん
      初めまして!
      こんな私のレビューにコメントしていただいて、
      本当にありがとうございました!
      びっくりして何度も読み返してしまいました。

      綿...
      初めまして!
      こんな私のレビューにコメントしていただいて、
      本当にありがとうございました!
      びっくりして何度も読み返してしまいました。

      綿矢りささんの本は、おっしゃる通り
      独特な感じですよね。でも私はそれ以外
      どういう表現をしたらいいのかわからず
      中途半端なレビューになってしまいましたが
      このレビューに書かれていらっしゃることは
      まさに私の言いたかったことです。

      「吸引力の強い本」という表現も素晴らしいですね。私も使わせていただこうかな…。

      こちらこそ、ぜび読書を通じて交流させて
      いただけたらとても嬉しいです。
      全体的に下手な文章ですみません。

      勝手ながらフォローさせていただきました。

      またレビュー読ませていただきますね^^
      2013/01/21

著者プロフィール

小説家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

綿矢りさの作品

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