夢を与える

著者 :
  • 河出書房新社
3.13
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本棚登録 : 2600
感想 : 515
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  • Amazon.co.jp ・本 (308ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309018041

作品紹介・あらすじ

私は他の女の子たちよりも早く老けるだろう。チャイルドモデルから芸能界へ-幼い頃からTVの中で生きてきた美しくすこやかな少女・夕子。ある出来事をきっかけに、彼女はブレイクするが…少女の心とからだに流れる18年の時間を描く。芥川賞受賞第一作。

感想・レビュー・書評

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  • 綿矢さんは初読みでしたが、読みやすかったです。内容的にはさほど共感しなかったけど、こういうタレントさんいそうだなとちょっとリアルな感じもしました。後半にかけては内容が気になりサクサク読めました。

  • 綿矢りさってこういう物語が描けるようになったんだと。今までの作品とタイトルの付け方も違うし文体も違う。丁寧な描写と生臭さと希望も何も見えない終わり方が強く印象に残った。ただ最後に感じたのは芥川賞でデヴューを飾って一躍文壇のスター的取り上げられ方をされた作者本人の思いのたけとどこかで破滅してしまいたいという願望があったのだろうかとか勘ぐってしまった。多分この作品を生み出すのって苦労したんじゃないかな。

  • 子供の頃からCMに出演していた容姿端麗な女の子が、高校生になって本格デビューし、人気が得られるも、そのうち恋をして…という話。

    残るのは虚しさばかりといった感もあるが、10代で芥川賞を取って時代の寵児となった作者そのものの思い出・あるいは願望が投影されているのだろうか。

  • 「夢を与えられる人になりたい」

    という目標をよく聞くけれど、与える人もそれなりの苦労があるんだね~

    TVで見ている子役に対して、
    いつまでも変わらずに、そのままでいてほしい
    成長するのは喜ばしいのだけれど、子供のままでいてほしいという
    のは、見ている視聴者だけの思いなのであって

    周りの環境の変化、自分自身の変化が激しいだろう芸能界で
    生き残る子役さんたちの苦労も考えずに
    そのままでいてほしいなんて思うのは、ちょっと残酷な気もしましたね


    でもこの本の中に出てくるゆうちゃん、みたいなパターンは
    今まで何例もあったような・・・・・

    でも、こういうスキャンダルをチャンスにして
    また復活出来るのも芸能界。
    やっぱり芸能界って恐ろしいwwwww

  • 最初の5ページほど読んだだけで嫌な予感がしていた。だから読み進められなかった。
    何とか読み終えた今、はあ、気が重い。
    これが出たとき「これは、綿矢さん自身の話なのでは?」と訊かれ(もちろん、それは穿ち過ぎだ)、本人は否定したらしいが、そう読まれて仕方ない部分もある。
    彼女自身、敢えてそこにシニカルに切り込んで、この作品を仕上げたという見方もできるけれど。

    2004年の芥川賞受賞後、出版業界は彼女をヒロインに仕立て、カンブリア村上氏言うところの出版不況好転を願って、「綿矢先生、是非、次の作品はうちで」というオファーがたくさんあったに違いない。
    P46:「この子は日本で一番きれいに咲き誇ることのできる花ですよ」と事務所の社長が夕子に言ったように。
    さすがに
    P144:「綿矢先生(夕ちゃん)は今ブレイクするときなんだ」或いは
    P145:「あなたに来ている波は、今出版界(芸能界)のなかで一番大きな波だ」
    註:()内が原文
    とまでは言わなかったにしても。

    『人の噂も七十五日』とはよく言ったもので、時が経てば経つほど話題性は薄れていく。
    これは芸能界も当時の出版界も同じ。
    結局、この次作を世に出すまでに3年半の歳月を要することになる。
    その間、ストーカー被害に悩まされ、*実りのない恋に激怒し、どこかの誰かに「愛してる」と言われ、狂ったように引越しを繰り返した。(*文藝 2011年 08月号、本人談)
    ところが書けない。
    書いては破り書いては破りの繰り返し。悩み、もがき、苦しみ抜いた3年。
    そして「一人称の限界を感じ、三人称に挑戦」(本人談)。
    だが、そこは出版界も同様。
    3年以上も経ってしまっては話題性も薄れ、そのせいか、内容のせいか、部数も「蹴りたい背中」の127万部に対し18万部と激減。
    もちろん部数が作品の良し悪しを決めるものではないが、この作品が受賞の翌年にでも発表されていたら、少なくとも「蹴りたい背中」の半分くらいまでは届いたのではないか。
    そうすれば河出書房新社もホクホクだったろうに。

    P303:「信頼の手を離してしまったからです。信頼だけは、一度離せば、もう戻ってきません。でも……そうですね、別の手となら繋げるかもしれませんね。人間の水面下から生えている、生まれたての赤ん坊の皮膚のようにやわらかくて赤黒い、欲望にのみ動かされる手となら」
    「でも、今はもう、何もいらない」
    夕子(綿矢りさ)は見えない何かと決別、或いは諦観してしまう。

    結局、次作「しょうがの味は熱い」で、再び一人称に戻すことになる。
    ただし、そこでは、もう一人の男性視点での一人称も加えるという試みに挑む。
    試行錯誤を重ねながらの「しょうがの味は熱い」のラストの場面。
    「この部屋を出て行こう。一人暮らしの自分の部屋に戻ろう」
    明るく開き直り、というか再び決断し、「自分の書きたいものを書こう」という方向へ向かう。
    その結果、次の作品「勝手にふるえてろ」では、存分に弾けまくる一人称視点への回帰。
    こんな時系列を勝手に思い浮かべながら「夢を与える」を読めば、この作品の立ち位置は結構興味深いものがある。
    かなり穿った見方なのは分かっているけれど、ね。

    内容は、芸能界でよくあるチャイドルの転落物語。新鮮味は全くないですね。
    これが発表されたのは2006年ですが、今ではテレビ番組で、昔子役で頑張っていた子が実は裏ではすごいことをしていた、なんて話を暴露するのが当たり前の状況だし。
    実際、芸能界とか、RQの世界とか、こんなものです。
    ストーリーも、次はこうなるよな、だから彼はこうするだろうし、母親と父親はこうなるに決まってる。
    と誰もが思う予想通りの展開。
    唯一、多摩君との話が心を少し軽くしてくれるのだけれど、それも、あっという間。
    救われない物語でした。
    彼女にしか書けない美しい日本語、巧みな比喩はいったい何処へ消えた?
    いくつか所々に散見されるものの、おそらく現在2012年までに発表された彼女の作品の中では最も長い小説にもかかわらず、綿矢さん独特の表現や、話し言葉や、比喩は少ない。
    三人称視点で、なおかつこういったストーリーでは彼女の素晴らしい感性による表現力は発揮できない気がする。
    この文体で、このストーリー展開で、途中に
    「で、夕子の下のふせんも俺が取ってあげるよ、ってか。正気か。」
    などという文章を挟みこめるはずもないし。

    一人称視点の長所は、感情描写がしやすく、語り手への感情移入もさせやすい。
    短所は、読者が語り手に共感できなかった時に拒絶されやすい。
    読者の感情移入しやすい人物が、悩み考えながら何かをする小説に向いている。
    三人称視点の長所は、主人公と関わらない場所でも他の人物も書けるし、他の視点ほど読者を選ばない。

    これを冷静に判断すれば、綿谷さんの作品は、内なる心の葛藤を表現する文章でこそ、彼女独特の感性を発揮し、美しい日本語、巧みな比喩、或いは口語が書けるわけだから、一人称視点に向いているのは明らかだろう。

    彼女の作品を時系列で追っていくと下記の様になります。 
    *◎などは、私の個人評価(未は未読)
    1.◎ インストール              『文藝』2001年冬季号
    2.◎ 蹴りたい背中              『文藝』2003年秋季号
    3.〇 You can keep it .  河出文庫収録 2005年10月
    4.× 夢を与える           『文藝』2006年冬季号
    5.△ しょうがの味は熱い      『文學界』2008年8月号
    6.◎ 勝手にふるえてろ        『文學界』2010年8月号
    7.未 自然に、とてもスムーズに  『文學界』2011年1月号
    8.未 かわいそうだね?     『週刊文春』2011年2月10日号~
    9.〇 亜美ちゃんは美人      『文學界』2011年7月号
    10.未 トイレの懺悔室       『文藝』2011年夏季号
    11.× 憤死       『文藝』2011年秋季号
    あらためて見ると、2011年になって、突然雪崩のように作品を起こし続けているんですね。

    註:初の三人称に挑戦と書いたが、実際は「You can keep it . 」も三人称。ただ、この作品の場合は「インストール」文庫化に当たり、彼女がそれまで書き溜めていた作品を再構築したのではないかと推測される。でなければ、本人が「夢を与える」について語った時、「一人称の限界を感じ」と言わないだろう。

    うーむ、堅すぎて、かつ長すぎてつまらないレビューになってしまった。反省。
    ということで、あまり悩まずに「綿矢さん、書きたいものを書いてください。あなたは時代と日本語に選ばれた天才なのだから」という強引な終わり方にします。

    • マリモさん
      koshoujiさんこんにちは。

      未読だった「夢を与える」を借りてきて、先にkoshoujiさんのレビューを拝見しました。
      一人称と三人称...
      koshoujiさんこんにちは。

      未読だった「夢を与える」を借りてきて、先にkoshoujiさんのレビューを拝見しました。
      一人称と三人称の考察が面白くて、借りてきた本を読み終わる前から「やっぱり綿矢さんは一人称だよね!」と思っちゃいました(笑)。
      まだ20ページ過ぎたあたりなんですが、どうも三人称だと、らしさが消えて、あまりよくない意味で「普通」になっちゃいますよね。
      とはいえ、数少ない綿矢作品、楽しみながら読みたいと思います♪
      2013/01/21
  • アイドル(ん?チャイドルかな?)ていうありそうでなさそうな設定に初めは引き込まれて読んだけど、後半からだだ滑り。バッドエンドだとか後味悪いとか、もはやそういう次元じゃなかった。蹴りたい背中も結局はなにも解決せずに終わるけど、ハツと夕子ではどん底加減が決定的に違うから、とことん救われない。もったいない。リメイクして文庫落ちしないかなあ。

  • ゆうちゃん…おばかすぎるよ。
    読後感最悪でした。
    愛した相手を求めて、信じ続ける気持ちは理解できるけれど、これはいかん。
    素直でいい子だったのに、これでは悲しすぎるね。

  • 最初は毒親の話か……?と毒親育ちの私は警戒しておりましたが、綿矢先生特有の柔らかく、時に激しい文面に惹き込まれ、あっという間読み切りました。
    綿矢りさ作品は殆どあっという間に読んじゃっています。
    夕子の産まれる前の母の執念が恐ろしく……
    そんな母の子だからこそ、愛に生き、そして母にまもられすぎた故に知らなかったこと……
    よく夕子は捻くれず、真っ直ぐ純粋に育ったな……と思います。
    最後の方は悲しい場面が増えますが、読み終えても夕子を応援する私がいました。
    悲しい話ではあるものの、誰かの背中を優しく撫でたくなる気持ちになる話でした。

  • 表現力の素晴らしさから、最初からとても引き込まれた。特に、最初の方の、赤ん坊の可愛さを表す表現!話の展開も、最初の方は、どんな風に転がって行くのか、予想出来ずにワクワクしながら読んだ。18年間?の物語、色々なことがあって飽きなかった。最後にしっかり伏線回収しているのも凄い。作りがしっかりした作品だと思った。

  • 実は初期の綿矢りさ作品を読むのは、これがはじめて。

    ひとりの少女(夕子)が、生まれる前~高校を卒業するころまでを書いた本で、必然的に結構長い。
    客観的視点で書かれているので、夕子がどういう子なのか言い切り型で書いてあるのだけど、恋をするまで夕子の意思というのは殆ど伝わってこなくて、夕子が何を考えているのか謎だった。おそらく、夕子自身も自分が何をしたいのかわからないまま、周囲から求められる仕事にひたすら応じていた、ということなのだろう。
    夕子が恋をしてから(彼のことをなぜ好きになったのかも、よくわからなかったが)、彼と恋への執着で他の人の話を聞かなくなったあたりが妙にリアルなのと、それ以前のふわふわした世界観とのコントラストがはっきりしていたなぁ。

    夕子が恋をしてからの話は読んでてすごくつらくて、本を読み終わったときは「やっと終わってくれた」と思った。求めても求めても得られない物への執着は、他人事であってもつらいのだ。
    ただ、その後も夕子の人生は続いていくから、やはりそれはつらいなと思った。

    芸能人として忙しくなっていく夕子、事務所の人達とのやりとりを読むのは結構楽しく読めた。人気がでて、上向きのところだったからだろうか。
    読みながら、私が子供のときに10代で活躍していたいろいろな芸能人のことが頭をよぎった。
    最近、昔の金田一少年の事件簿(ドラマ)を見たけど、出演していたともさかりえさんは「第2シーズンは自分のつらい顔を見るのがこわい」ということを書いていて、きっとこの頃、彼女にとってしんどい時期だったんだろう、そしてそれは彼女自身が40代になっても忘れられないほどのしんどさだったんだろう・・・と、思った。
    華やかな世界、人から羨ましがられるような世界にいても、当然ながらつらいことはある。そんなこと、誰でもわかっている。でも、そこを目指す人が多いのはなぜだろう?考えてみたけど、私にはわからなかった。

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著者プロフィール

小説家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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