福袋

著者 :
  • 河出書房新社
3.19
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本棚登録 : 886
感想 : 163
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309018539

作品紹介・あらすじ

私たちはだれも、中身のわからない福袋を持たされて、この世に生まれてくるのかもしれない…直木賞作家が贈る8つの連作小説集。

感想・レビュー・書評

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  • 驚きと、面白さと、怒りと、ドキドキ感が連続してやって来ます。
    福袋
    2008.07㈱大活字発行。字の大きさは…大活字本。2022.03.18~30音読で読了。★★★☆☆
    箱おばさん、イギー・ポップを聴いていますか、白っていうより銀、フシギちゃん、母の遺言、カリソメ、犬、福袋、の8つの連作小説集です。
    人は、得体の知らない福袋をもっています。その福袋が、人を幸福にするのか…不幸にするのか…物語が進んで行きます。

    【箱おばさん】
    葛原33才は、駅ビルの地下にある「味の小径」という食料品店が並ぶ中にある菓子屋で、店長37才と琴ちゃん28才と一緒に働いています。葛原ひとりの時に、小柄なおばさんが強引に段ボール箱を置いていきます。翌日にも引き取りに来ず交番に届けます。その時に中を開けるといろんな靴が入っていました。
    ーーー 段ボール箱を開ける時のドキドキ感が…。テンポよく、軽快に物語が始まります。3/18、音読30分。

    【イギー・ポップを聴いていますか】
    35年ローンで買った建売住宅の真ん中には電信柱があり、そこがゴミ集積場になっています。その集積場と玄関の間に紙袋が置いて有る。妻・日奈子に内緒でそっと自分の部屋へ持ち帰り中を見たら、ビデオテープが6本入っていた。再生していくと、その中に結婚披露宴を写したものが出て来る。それを見ながら、自分と日奈子の披露宴のことを考えると…。
    ーーー そういえば私の披露宴のビデオは、どこに在るのだろうか…。3/19、音読33分。

    【白っていうより銀】
    6年の結婚生活を終えて堀田龍一、生実は、区役所へ離婚届を出した帰りの駅のホームで。生実が、生後3ヶ月ほどの赤ちゃんを見ず知らずの女性からトイレに行かなければならないからと強引に渡される。30分たっても帰って来ない。2人で赤ちゃんをあやしていると、もう一度いっしょに生活してみようと思う気になる。離婚の原因は、6年間どんなに努力しても子供が出来なかった事だった。
    ーーー この赤ちゃんが、運命の赤い糸となるかと思っていましたが、母親が帰って来て別れていく2人に何か余韻のような物を感じます。3/20、音読40分。

    【フシギちゃん】
    私27才は、会社帰りに寄ったバーで同僚の長谷川37才に、同棲している恋人の携帯を調べると、私以外の女とメールのやり取りをしている事を話すと。長谷川は、過去に同棲していた彼の事について全てを知りたくて家探しをし。それでも飽き足らずに彼を尾行したことを話してくれた。その結果、彼には、何も隠し事がないことが分かって別れたことを。
    ーーー 知りたいという気持ちが先に立って、それが満たされると関心がなくなった。3/21、音読35分。

    【母の遺言】
    母が亡くなり兄弟姉妹4人が集まり遺言状(←法に基づいた形式で書いたものでない)を開けると、そこには、おそらく死の間際に書いたのだろう。「ながしのした こめびつのした」と力の入っていないのたくった字が短く綴られていた。米櫃の下には箱が有りその中に未開封のコンドームがびっしりと入っていた。その謎を4人はおもいおもいに考えて…、母の残した預金などを分けます。
    ーーー 死の間際になぜそれを想ったのか…色々な想像が膨らみます。
    ※3月21日の夕食時に舌の先を噛んで、血が出て、穴が開いて、赤い身が見えました。
    このために音読は、少しづつ様子を見ながら行っていきました。
    3/22、音読2分。3/23、音読2分。3/24、音読5分。3/25、音読7分。3/26、音読15分。3/27、音読20分。

    【カリソメ】
    翠33才は、結婚して3年半の夫・友彦35才が、24才のフリーターと一緒になるために2週間前に離婚届に判を押して出て行った。友彦宛に大学の同窓会の通知が来る。翠は、友彦の事を何も知らないのに愕然とする。そこで友彦の代理として同窓会に出席すると。友彦は、東大に入るために仮にすべり止めに大学に入ったので仮の入学だといって4年間を過ごす。そして翠との結婚も仮の結婚であったのでは…と、翠は思えてきた。
    ーーー 現状に満足せず、常にいまを仮の場所だと考える友彦は、今度のフリーターも仮ではないのか…? 3/28、音読46分。

    【犬】
    珠子は、何かに取り憑かれたように他人の飼い犬を可愛がり、飼い主に戻した犬を盗みに行き、そして逃げられます。僕は、この犬を見たときなんとも言えない嫌なものを感じます。犬の闖入(ちんにゅう)によって、僕らのあいだにあった何かは壊れてしまった。それは同時に、別の何かの始まりでもあったに違いない。だけかと共に暮らすということは、恋人が遮二無二によその犬を盗みに行くのを見るような、そんな不気味なことかもしれなくて、けれども僕らはその不気味さを生活になじませていく。不気味さがそこに有るのを忘れるために、洗濯機をまわし食器を洗い、スーパーマーケットに向かい、明日の目覚ましをセットする。
    ーーー この物語は、背中がゾクゾクとします。3/29、音読49分。

    【福袋】
    田辺かよ子40才は、縁を切った兄・田辺泰弓42才が死ねばいいと思っている。兄の恋人・山口三重子39才に引きずられて炎天下の大阪で兄を探している。この兄は疫病神で、高校生の時に中学三年生を妊娠させ、堕胎させた。その後もほかの子を妊娠させる。あれは7年前、私の結婚がまとまりかけた時に兄が詐欺罪で1年間の実刑が。先方の両親が犯罪者の家族とは結婚できないと。それから男性と距離を開けるようになった。私は、なぜ疫病神の兄から離れられないのか…。
    ーーー 縁を切っても、心の中で殺しても引きずられる血のつながり。どうしても断ち切れないものなのか…。3/30、音読44分。

    【読後】
    強引に置いていかれた段ボール箱を。家の前に置いて有った紙袋をと、開けるときのドキドキ感があり。人との繫がり、犬への思いが繋がっていく、そこに非日常があります。面白く、楽しく、そして怒りが、ドキドキ感がたまりません。
    特に「白っていうより銀」と「犬」がよかったです。

    【音読】
    2022年3月18日から30日まで、大活字本を音読で読みました。この大活字本の底本は、2008年2月に河出書房新社から発行された「福袋」です。本の登録は、河出書房新社で行います。㈱大活字発行の大活字本は、第1巻~第3巻までの3冊からなっています。
    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    【令和4年(2022年)3月に読んだ本】

    3月に読んだ本は、18冊です。
    今月読んだ中で特に印象に残った本は、チャーリー・マッケジーさんの「ぼく モグラ キツネ 馬」です。
    読んでいると、心に沁み、その情景が…、絵が、心をいやし、やさしく包んでいきます。
    そして、気が付くと、涙が…出て来ています(涙)
    皆様の応援で3月も楽しく読書が出来ました。
    ありがとうございます(⌒-⌒)ニコニコ...

    今月のベスト本は、下記の3冊です。
    ★★★★★は、下記の1冊です。
    ぼく モグラ キツネ 馬 ――――――――― 著者/チャーリー・マッケジー
    https://booklog.jp/users/kw19/archives/1/4864107580#

    ★★★★☆は、下記の2冊です。
    探花 ― 隠蔽捜査9 ―――――――――――――――――― 著者/今野敏
    https://booklog.jp/users/kw19/archives/1/4103002611#
    恩がえし ― 風烈廻り与力・青柳剣一郎 ――――――――― 著者/小杉健治
    https://booklog.jp/users/kw19/archives/1/4396347685#
    ※令和2年(2020年)1月から、その月の最後に読んだ本に、その月のベスト本をのせています。

  • 短編集です。
    私は短編集があまり好きじゃないのでやっぱりなんか物足りない感を感じつつ読みました。
    ちゃんとしたオチみたいなのがないから余計に尻切れ的に感じてやっぱり短編集は苦手だなと思ってしまいました。
    ただ角田さんの言葉センスとかは好きなので★2に近い★3で。

  • 最近は中身が何なのか最初から分かって買う福袋もあるけど、やっぱり福袋と言えば何が入ってるか分からないというのが面白いと思う。
    開けるまで何が入ってるの?とワクワクして・・・開けた後は大方、ガッカリ。
    だけど、定価よりは安いし・・・と自分を慰める。
    それが醍醐味だと思う。
    この短編集に収録されている8話は、そんな開けるまで分からない人の心や自分の心をのぞいてしまった人たちのお話と言えるかもしれない。

    最初と2番目の話は設定からして正にそんな感じだった。
    1話目の「箱おばさん」の主人公である駅の売店で働く女性は仕事中に見知らぬおばさんからいきなりダンボール箱を渡される。
    そして、中に何が入ってるの?と悲喜こもごもする。

    2話目の「イギー・ポップを聴いてますか」の主人公の男性はマイホームの前に置いてある紙袋を手にする。
    その中身は数々のDVD。
    その中には見知らぬ人の結婚式のもようがおさめられたものが。

    ここまで読んで、「あー、この短編集はこの趣向でいくんだな~」と勝手に読んだら3話目はちょっと違っていた。

    「白っていうより銀」の主人公は離婚したばかりの女性。
    彼女は見知らぬ若い女性に赤ん坊を託される。
    一旦は別れた夫と共に赤ちゃんがいる時間を過ごす彼女。
    その間に見えてきたものは-というお話。

    「フシギちゃん」は「フシギちゃん」と呼ばれるちょっと変わった同僚の女性と成り行きで飲みに行く事になり、彼女の過去の話を聞く事になった女性の話。

    「母の遺言」は遺産の配分の事について書かれていると思った母の遺言を開けてみれば・・・という話。

    「カリソメ」は離婚する夫の同窓会に出席した女性が知る夫の真の姿。

    「犬」は自分と同じ感覚だと思っていた恋人が一匹の迷い犬に関わる事により違和感をもつようになる男性の話。

    そして最後の話はタイトルにもなっている「福袋」
    家族に迷惑ばかりかけて失踪した兄を追う妹の話。
    彼女は知り合ったばかりの嫂と兄を追う中で兄について回想し考える。

    どれも短編らしく読みやすく、何が出てくるの?というワクワク感とちょっとした不安とで読む事ができました。
    やはりタイトルがきいてます。
    うまい!
    個人的には3話目の「白っていうより銀」が好きです。

  • どれもモヤモヤしたものを残したまま終わる短編集。私には主人公たちの奥に隠されたもの?を見るのが難しくて、わかりずらかったです。
    でも、ちょっとした時間に読むには丁度いい量の短編集だと思います。

  • 他人から預かったり届いたモノによって生活が変化していく様子を描く短編集。
    「白っていうか銀」の不妊が原因で別れた奥さんの気持ちが本当につらくて痛いほど分かったし、「母の遺言」の兄弟間のやりとりも面白かった。

  • 私も福袋を持たされて生まれてきたのかもしれない。
    その考え方が妙に腑に落ちた。
    それはただの言い訳なのかもしれないけれど。

    表題作も含めて8話全ての登場人物は、自分の中に潜むひんやりとした闇を扱いあぐねているように見える。
    そしてそれはよくあることなのではないかと思う。
    少なくとも私にとっては馴染みのある感覚だった。

    特別なことではなく、平凡な日常生活にするりと紛れ込む違和感として描いているところに共感する。
    それも福袋の中にあらかじめ入っていたものなのかもしれない。

  • 日常の池にポンと投げられた石が水面に起こす波紋のような短編集。
    中味が何かは開いてみなければわからない。
    福袋とは言うが、それは本当に福なのか。
    うまいタイトル。

  • 8つの短編集。読みやすくて、日常の些細な状況が背景に転がってる非日常さが面白かった。ラスト以降を想像させてくれるのも良し◎

  • いくつかの短編のなかでも忘れ難いのが、
    離婚したばかりの夫婦がうっかり赤ちゃんを預かってしまったひとときを描いた
    「白っていうより銀」。

    この離婚直後のカップル、子どもを授からないことで、夫婦が遮二無二生活の充実を図り、
    そして疲れ、離婚に至ってるわけだけど、
    犬を飼いたくないとか(実際はペット不可だから飼わないんだけど)、
    週末出かけまくってたりとか、
    そういう気持ちの流れ、結構リアルです。分かる!

    でも預かった赤ちゃんを抱いたときに感じるふわふわと温かい感覚、
    それはこの元夫婦にもかつて確かにあった、という展開
    (本が手元にないので曖昧ですが)、うーん、グッジョブ角田!

    アタシたちがあちこち出かけるのは子のいない隙間を埋めるためじゃない。
    ふたりでも、楽しい。
    まだ形のない存在に振り回されて現実の生活がグタグタになるのは勘弁だ。

    時間という薬のせいか、それともアタシの浮足立ちやすい気持ちのせいか、
    落ち込んだり、無意識にひがんだり、二礼二拍手一礼してみたりしていると
    最近「まぁどうでもいいか」という気分になってきたというのも真実。
    姪を抱っこして食べちゃいたいほど可愛いと思うのもホントだけれど
    でもお墓とか跡取りとかの問題も、ないしね。
    結婚したせいで次は子育てと思いこむこと、ないんだよな。

    とはいえ病院にも行き始めました。
    ホントの踏ん切りをつけるために。
    これしきでほどける絆じゃないわい。

    最初タイトルがこれでいいのかな、と思ったんだけど
    やっぱりこれしかないんだな、と昨日あたりから思い始めた。うん。

  • 短編は切り替えがなかなかすんなり出来ずどうも苦手。
    そして読んだそばから忘れてしまう。

    ●白っていうより銀
    もう別れた2人の間に突然やってきた幸福のような赤ん坊
    切なくも救いのような時間を味わった

    ●犬
    狂気じみた珠子に別れの印籠をかざすかと思いきや、欠落感や不気味さを生活になじませていく、不気味さを忘れるために生活をしていくという見方に面食らった。平和な時間、日常の隙間に幾度も思い出すそんなことに耐えられるのか、耐えるのだろう。大人になると色んなことをまあるくしていくものなのかな。

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著者プロフィール

1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部文芸科卒業。90年『幸福な遊戯』で「海燕新人文学賞」を受賞し、デビュー。96年『まどろむ夜のUFO』で、「野間文芸新人賞」、2003年『空中庭園』で「婦人公論文芸賞」、05年『対岸の彼女』で「直木賞」、07年『八日目の蝉』で「中央公論文芸賞」、11年『ツリーハウス』で「伊藤整文学賞」、12年『かなたの子』で「泉鏡花文学賞」、『紙の月』で「柴田錬三郎賞」、14年『私のなかの彼女』で「河合隼雄物語賞」、21年『源氏物語』の完全新訳で「読売文学賞」を受賞する。他の著書に、『月と雷』『坂の途中の家』『銀の夜』『タラント』、エッセイ集『世界は終わりそうにない』『月夜の散歩』等がある。

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