掏摸(スリ)

著者 :
  • 河出書房新社
3.34
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本棚登録 : 1745
感想 : 287
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  • Amazon.co.jp ・本 (175ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309019413

作品紹介・あらすじ

お前は、運命を信じるか?東京を仕事場にする天才スリ師。彼のターゲットはわかりやすい裕福者たち。ある日、彼は「最悪」の男と再会する。男の名は木崎-かつて一度だけ、仕事を共にしたことのある、闇社会に生きる男。木崎はある仕事を依頼してきた。「これから三つの仕事をこなせ。失敗すれば、お前を殺す。もし逃げれば…最近、お前が親しくしている子供を殺す」その瞬間、木崎は彼にとって、絶対的な運命の支配者となった。悪の快感に溺れた芥川賞作家が、圧倒的な緊迫感とディティールで描く、著者最高傑作にして驚愕の話題作。

感想・レビュー・書評

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  • 山崎ナオコーラさんが好きだと、なにかのエッセイで書かれていた中村文則さんの作品。読むのは初めて。

    「何もかも憂鬱な夜に」を読んでみたかったのだけど、図書館になかったので有名だというこちらの作品を手にとる。

    ゆったりとした純文学とか、物語やキャラクターを通じて社会的なことを考えられる作品が好きなので、ハラハラするような小説は久々に読んだけど、とても面白かった。純粋に楽しめた。

    他の作品も読もうと思います。

  • 「掏摸」という漢字はスリっぽくない。あまり見慣れないせいなのかもしれない。少なくとも私は書けないし、突然出てきたら多分読めない。
    ねずみ小僧のようにお金持ちからしかスらないとい拘りは、読者を見方につける。

  • 「すべてに満たされているのなら、小説は必要ない」
    と、あとがきにあるように、
    小説や物語でしか経験できないことがある。

    掏摸にあったこともないし、あいたくもない、
    そして、けっして、掏摸になりたいとも思わない。

    「男の子」という名前のない登場人物が、
    とても読んでいて辛かった。
    あえて、名前を付けないことに、意味があるのだろう。

    万引きは、ある意味病気の場合がある。
    掏摸の場合は、どうなんだろう・・・

  • 後発作?を読んだので、こちらも読んでみたけど、こっちの方が全体的に好きだった。
    仄暗い空気感も人間離れしすぎていないのもいい。主人公と典型的な親に恵まれなかった子どもとの関わりも良かった。子どもからすると、自分と似た空気感だから、居心地が良かったんだろうな。
    ところどころぎゅっとなる表現もあって、スラスラ読めた。

  • この作者の作品はどれも灰色なストーリーで、感動したりすることはあまり無いのだけれど、感情の底の方をえぐられる思いを味わいたくて読んでしまう。
    読み始めた瞬間からハッピーエンドになる事は無いと分かっている。
    醒めた感情と色の無い世界、諦めた思いで語られる物語。

  • ずっと読みたいと思っていたところ、最近著者の作品が映画化され始めたのを機会に読み始めた。ある天才掏摸師と巨悪とのやり取りであるが、掏摸くんだりでは抗う手段もなく、使うだけ使われて命も危うくなり、最後は何とか命を取り留めたのだろうか。起こっている事件の内容はほとんど分からず、命ずられるままに不可能とも思えるミッションをこなしていくところが見どころであった。続編があると聞くので、何とか反撃するところを見たいものだ。

  • 作中に何度も出てくる「塔」は何の象徴なんだろう?運命や権力など絶対的なものなのか?

    最後にほんのわずかだけど「希望」のようなものが描かれているように感じられたのが良かった。

  • 流れる空気も最高にクールだし、どんどん進むストーリーもすげ〜面白かったんだけど、ラストの暴力的に理不尽な唐突さが嫌だった。読者に考えさせるラスト、ってのが俺は一番嫌いなんだよ!

  • 〈ネタバレ〉救いのない理不尽な状況の中で、静かではあるが、生きたいという強い意志をもって抗う主人公。
    これはまるで私だ、と読者の多くが感じるのではないだろうか。
    個人の力ではどうすることもできない巨大な力に支配され潰されていく私たち。
    それを知りつつも諦めることはできない。
    何の関わりもない赤の他人を救いたいと思い、無意識に温かいものを求めてしまう弱い生き物、それが人間なのだ、と痛みを感じながら読んだ。

  • 「でも、所有という概念がなければ、盗みの概念もないのは当たり前だろ? 世界にたった一人でも飢えた子供がいたとしたら、全ての所有は悪だ」

    「子供の頃から、俺は花火大会が好きだった。貧乏人にただで見せてくれる、最高の娯楽だよ。…全ての人間に等しく、あの火花は空に上がるんだ」

    『当時の僕は選択を目の前にした時、静止よりは動く方を、そして世界から外れる方を選んだ』

    「脅す武器には、日本刀を使う。拳銃ではリアリティがないし、人間を短期間で脅すには、でかい刃物が一番いい。」

    「消えたよ。跡形もない ー 正確にいえば、歯だけ残ってる。身体は焼いて、骨も焼いて白い粉末になった。歯は東京湾のどっかに散らばってるだろう。あれを砕くのはなかなか面倒だから。どこかに死体が埋まってるんじゃない。文字通り、消えたんだ」

    「この人生において最も正しい生き方は、苦痛と喜びを使い分けることだ。全ては、この世界から与えられる刺激に過ぎない。」

    『そんなに深刻に考えるな。これまでに、歴史上何百億人という人間が死んでる。お前はその中の一人になるだけだ。全ては遊びだよ。人生を深刻に考えるな。』

    『世界は理不尽に溢れている。世界中で、生まれてすぐ飢えて死ぬ子供が大勢いるだろ。大地の上でバタバタと。そういうことだよ。』

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著者プロフィール

一九七七年愛知県生まれ。福島大学卒。二〇〇二年『銃』で新潮新人賞を受賞しデビュー。〇四年『遮光』で野間文芸新人賞、〇五年『土の中の子供』で芥川賞、一〇年『掏ス摸リ』で大江健三郎賞受賞など。作品は各国で翻訳され、一四年に米文学賞デイビッド・グディス賞を受賞。他の著書に『去年の冬、きみと別れ』『教団X』などがある。

「2022年 『逃亡者』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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