DOWN TOWN/ダウン タウン

著者 :
  • 河出書房新社
3.39
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本棚登録 : 387
感想 : 78
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  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309019659

感想・レビュー・書評

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  • 相変わらずの小路節。
    今回は主人公の高校生が、“ぶろっく”での年長の人々との交流を通してほんの少しだけ大人に近づいていく、というお話。
    何となく温かくて、何となく優しくて、途中で事件が起こっても、最後には落ち着くところに落ち着くんだろうな、という安心感を持って読むことができます。
    70年代後半が舞台なので、時代的にも懐かしさ満載で(NSPとか、久々に思い出しました)、作者と同世代の人ならそちらも楽しめます。

    ただ、主人公の性格もあるんだろうけど、ちょっと淡々としすぎているかな?
    周囲の語る「皆、お前のことを好きなんだよ。サッキに似てるとかそんなの関係なくさ」という主人公の魅力が今ひとつ感じられないのは、一人称小説の限界かも知れませんね(自分で自分のことを褒めるわけにもいかないし)。

    『東京バンドワゴン』がドラマ化されましたが、この『DOWN TOWN』もドラマ化してみたら意外と面白いかも。
    “ぶろっく”に集まる常連客一人ひとりのキャストを考えながら読んでもいいですね。

  • いつものように
    魅力的な 若者たちが出てきてくれる

    読んでいるうちに
    その登場人物たちの姿、形、性格、動き が
    かなりしっかり具体的に思い浮かんできてしまうところが
    さすがに小路さんですね

    最後の最後まで どうなるんだろう
    と 気持ちよく引っ張ってくれます
    そして、もう一度 初めのページに思わず
    いってしまうのは流石です

  • 流れるような文章だ。独白調に近いながらも主述関係が瞬時に分かる。それは当たり前のことかもしれないが、この人のそれはやや頭抜けているようだ。語尾で整えられた調子も気持ちよい。すらすらと読める。

    文章につられて読み進んだが、内容にはどうも入り込めなかった。青春物ではあるが、主人公は失敗も挫折もしない。そこにあるのは行動ではなく傍観と内観だ。子供とはそんなものかもしれないが、ただ受動的なままきれいに羽化していく主人公に釈然としないものもあった。

    登場人物はみなかっこよく現れ、かっこいいまま終わる。主人公もその例に洩れない。自分のピアノの才能や恵まれた人間関係を特別だとほこる様子もなく、むしろそういった世界こそが特別の反対の普通であり、ここから脱却したいと語る。ゴール地点がスタート地点というべきか、そこにどうしてもついていけないものを感じたのは、やはり僕が偏屈だからだろうか。

    さっぱりと食べやすいが人を選ぶ本である。

  • 2010年8月20日 読了。

    物凄い勢いで一気読みした。惹かれる。
    大学生活ロスタイムの今じゃなくて高校時代に出会っていたら、十代の自分はどう感じただろう。

    『東京バンドワゴン』でも思ったが、小路幸也の描く人間は本当に温かい。激しい起伏はあまりないが、じわじわと込み上げてくるような感動がたまらない。

    文章がいまひとつかな……とも思ったが、よく考えたら地の文が高校生である主人公の語りという形を取っているので、もしかしたら故意に多少たどたどしい言葉遣いにしているのかも。

    だとすれば文句なし。中学〜大学くらいの男子には是非とも読んでほしい。

  • 高校生男子の主人公は何不自由ない普通の男の子。その子が、(たぶん)生涯の友に出会い。“ブロック”って喫茶店に出合い。ブロックで様々な大人に出会い。父という大人の男に出会い。自分自身も大人になると云う時期に出合い。そして、それら全てを残して、新しい出会いに向けて旅立つ話。ゆるゆるでサラサラの話だけど、唯一、父と向き合うシーンが良い。男の子は、ある時突然、父親と話すことができるようになる。それが、男の子が男になる瞬間なのかもしれない。その時、話すことに、多くの言葉は要らない。僅かな言葉を交わすだけで全てが伝わるんだよ。お互いに。そんなシーンが描かれていた。あ〜あ。小路さん描いちゃったね。その瞬間のあの感じだけは、女性には内緒だったのに…。

  • 青春と成長。
    バンビさんの場面はドキドキした。
    ぶろっく、行ってみたい。
    あんな場所があればいいなと思った。
    ぶろっくに、あの人たちに出会えたショーゴ、いいなぁ。
    やさしくてあたたかくて、自分の居場所だと思える場所があるって、そういう人たちがいるっていいな。
    後半、お父さんとのやりとりがよかった。素敵なお父さん。
    HOME TOWNのキャラも出てきてうれしかった!

  • あまり覚えていなかったけど、再読。
    私の青春時代と重なる。

  • 【あらすじ】
    高校生の僕と年上の女性ばかりが集うこの場所で繰り広げられた、「未来」という言葉が素直に信じられたあの頃の物語。大人になるってことを、僕はこの喫茶店で学んだんだ。温かくて懐かしい「喫茶店×青春」小説。

    【感想】

  • 人を気遣う心を持っている「僕」。
    それは優しいからなのか、自分が傷つきたくないからなのか。
    たぶん両方なんだろう。
    人との距離感を上手に測れる人がいる。
    一緒にいても心地いいし、妙な気を使わずにすむ。
    それが本作にも出てくる「空気感」なのかもしれない。
    傷つくことを知っている人ほど、あたたかくて優しい。
    踏み込んでいく勇気もときには必要だろうが、それほど親しくない相手には臆病なくらいがちょうどいい。
    「僕」は静かにモカを楽しみながら、徐々に「ぶろっく」に馴染んでいく。
    「ぶろっく」で出会った人たち。出来事。そして別れ。
    「僕」は少しだけ大人になって新しい場所へと飛び立つ。
    あたたかさがじわりと染みてきて、懐かしさと切なさが胸に残った。
    小路さんらしい珠玉の物語。
    大人になるということ、それはどんなことなのか?
    迷いながら傷つきながら、人は一歩前に踏み出していくのだと知ることができる物語だった。

  • ノスタルジックな青春小説でした。ところとごろじんわりします。
    父と息子の会話とか。
    主人公が何も苦労しないところが、なんとなくシャクですが。
    他のかたのレビューにあるように、常連客が魅力的なのでドラマのキャストを色々想像しながら読むと面白そうですね。

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著者プロフィール

1961年、北海道生まれ。広告制作会社勤務などを経て、2002年に『空を見上げる古い歌を口ずさむ pulp-town fiction』で、第29回メフィスト賞を受賞して翌年デビュー。温かい筆致と優しい目線で描かれた作品は、ミステリから青春小説、家族小説など多岐にわたる。2013年、代表作である「東京バンドワゴン」シリーズがテレビドラマ化される。おもな著書に、「マイ・ディア・ポリスマン」「花咲小路」「駐在日記」「御挨拶」「国道食堂」「蘆野原偲郷」「すべての神様の十月」シリーズ、『明日は結婚式』(祥伝社)、『素晴らしき国 Great Place』(角川春樹事務所)、『東京カウガール』『ロング・ロング・ホリディ』(以上、PHP文芸文庫)などがある。

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