野川

著者 :
  • 河出書房新社
3.41
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本棚登録 : 677
感想 : 112
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  • Amazon.co.jp ・本 (171ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309019956

作品紹介・あらすじ

両親の離婚により転校することになった音和。野川の近くで、彼と父との二人暮らしがはじまる。新しい中学校で新聞部に入った音和は、伝書鳩を育てる仲間たちと出逢う。そこで変わり者の教師・河合の言葉に刺激された音和は、鳥の目で見た世界を意識するようになり…。ほんとうに大切な風景は、自分でつくりだすものなんだ。もし鳥の目で世界を見ることが、かなうなら…伝書鳩を育てる少年たちの感動の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 河合先生のように、生徒に伝えたいことをすらすらと話せたら良いな。生徒に対しての声かけがとても良いな。
    模範の先生だなぁ 2020.11.1

  •  東京の西側郊外を流れる野川を中心とした物語。関東の地図を開いてみてください、東京と神奈川の境を西の奥多摩から東京湾に向けて、東西に多摩川が流れています。野川は西東京を流れる多摩川の支流。

     多摩川の周辺にはそれとは気づきづらいのですが、何段かの河岸段丘が残ります。東京側の野川の向こうには”はけ”という地形が残る段丘が広がり、周辺には武蔵野台地に浸み込んだ湧水が野川に流れ込んでいきます。

     物語の随所に自転車で走り回った地域が出てきますので、大変馴染みを覚えます。調布飛行場、東京天文台、東京外語大学、まだ緑の多く残る地域です。私のホームタウンは多摩川を渡った逆側の段丘、多摩丘陵です。

     長野まゆみさんの作品は初めてでしたが、皆さんの書評を見ると少し異なる雰囲気の作品なのですね。学校の課題図書ということで、深い伏線もなく素直にサラリとした文章でした。

     家庭の出来事も深く入り込まず、少年の心の中にも踏み込まなかったのは少し残念。あくまでも平静な感情が続きます。雨の日の父親との心の交流部分が唯一高まりを感じた部分。野川と周辺の風景が強く印象に残る作品でした。

    参考) 本棚にもあります
     ・東京の自然史  貝塚爽平 中央公論文庫
     ・追い風ライダー  米津一成
     ・ぼくらは夜にしか会わなかった  市川拓司
     ・耳を澄ませば  スタジオジブリ
     ・だれかのまなざし  新海誠・和紗
     

  • 父の事業の失敗、離婚、母との別れ、転校と、物語が始まる早々、主人公は一気に今までとは異なる環境に放り込まれてしまう。そんななかで、新聞部(とは言え、実際には伝書鳩を育てるのが主な活動)の先輩後輩、そしてちょっと風変わりな国語教師との出会いを通じて、一歩ずつ前に進み始める。あまり良好とは言えなかった父親との関係も一応の和解をみる。
    2011年度の中学入試でも出題の多かったものの一つ。
    長野まゆみにしては、万人向けでさらりとした仕上がり。ただ、個人的にはどのエピソードも中途半端なままで終わってしまったように感じ、読了後にストンと落ちるような安堵感が得られなかった。「物語が閉じていない」感じと言えばいいだろうか。それは「余韻がある」というのとはまったく異質のものだと私は思っている。
    この作品この作者の限らず、どうも最近は、そういう作品が多いようにも感じる。

  • 高等学校の読書感想文課題図書と背表紙に貼ってあるのを見て読み出す。野川は東京に住む我々には身近な河川。出てくる地名、関東平野のでき方などに引き込まれて読み出す。

    主人公の中学生が両親の離婚で転校した中学で出会う教師、部活動の仲間、鳩(?)が皆、いい感じ。

    心の中の世界と実際の世界、上手く折り合いをつけて理解したり受け入れたりして生きていくんだね。ふたつの世界の調和するところが優しくて味のあるポイントなんだね。

    主人公と一緒に涙したくなった。
    普段は、すっ飛ばして読みそうな自然描写自体が大切な要素の物語。
    くどくならない程度に自然が語られている。
    人間関係がサラっとしているようで熱い!
    久々にシンプルに動かされたかんじ。
    星5つ

  • 長編。

    中2の音和おとわは両親の離婚、父の事業の頓挫で転校することに。
    転校先には、変わった国語教師の河井。3年で新聞部の吉岡。新聞部では伝書鳩を育て訓練していて、その中に飛べるのに飛ばないコマメが居る。

    肩に乗って、肩から肩へ移動するコマメが可愛い。
    音和の父親にも同情してしまう。
    お父さんはもっと仕事が出来るのにって思う子供の気持ちとか。
    伝書鳩が野生化したのがドバトって知らなかった。

    主人公に限らず、その親も詳しく描いてあるって前はなかった。気がする。

    意識を変えろ。ルールが変わったんだ。
    河井が転入してきた音和にかけた言葉。

  • 読み終えました。おそらく、これは変わった本だと思います。情景描写が素晴らしいのですが、この著者さんは情景描写に特別に思い入れがあるのだと思います。それで、著者さんが欲しかった、思春期時代の勉強を本にしたのではないかと思いました。よく出来てるとは思いますが、小説はエンターテイメントでなければと私は思っていて、その点で少し足りないかも知れないです。文章を書いていて情景描写の勉強をしたいと思ってる人には話も大変面白いと思いますが、そうでない人にとっては、話が面白くないと、せっかくの素晴らしい情景描写も、情景を思い浮かべるのは集中力がいるし結構疲れる作業なので、だんだん面倒になってきます。最後、情景描写で空をも飛べるという事を知らせたかったのだと思いますが、それだけではエンターテイメント性が少し足りないかな。

  • (過去作品に比べれば、だけど)登場人物が素直で、内容的にも、確かにこれが課題図書に選ばれるのは妥当だと思う。
    ところで、ソラマメは帰ってきただろうか。

  • 想像以上に「野川」でした。
    知っている地名らしきものがたくさん出てきて、楽しかったです。

    この本に出てくる先生のような大人になりたい。

  • 家庭環境が一変した主人公が新たな出会いをする中で成長していく物語。似た話に繋がりそうな場面が多々でてくるので、感想文は書きやすいと思う。影響を受けた先生や友達のこと、体験が重要視されている世の中で体験以上に感じることができた本や映画の話、人から聞いた話などを入れてみよう。飛ぶことができなかったコマメと主人公は重なる部分があるので、コマメとコマメを見つめる主人公の関係を考えてみるとおもしろい展開になりそう。伝書鳩に託す君の言葉を書き出しや結びに書くのもいいかも。

  • 長野まゆみさんの作品を読むのは初めて。両親の離婚によって、父親と一緒にくらすことになった音和少年が、武蔵野の野川という川が流れる土地の中学校に越して来る。印象的な語り口の先生や、先輩の勧誘もあって中学校では、新聞部に入部する。新聞部では伝書鳩の飼育もしていて・・・浮ついたところがなく、とても落ち着いて読める内容だった。自然や地形の表現を頭の中で描けなくて、それは読んでいて苦労したけれど(私にとってなかなかわかりにくかった表現だったので)、その他は淡々としているけれど、読んでいて心地いいものだった。さらっと読んでしまったので、また機会があれば再読したい。

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著者プロフィール

長野まゆみ(ながの・まゆみ)東京都生まれ。一九八八年「少年アリス」で第25回文藝賞を受賞しデビュー。二〇一五年『冥途あり』で第四三回泉鏡花文学賞、第六八回野間文芸賞を受賞。『野ばら』『天体議会』『新世界』『テレヴィジョン・シティ』『超少年』『野川』『デカルコマニア』『チマチマ記』『45°ここだけの話』『兄と弟、あるいは書物と燃える石』『フランダースの帽子』『銀河の通信所』『カムパネルラ版 銀河鉄道の夜』「左近の桜」シリーズなど著書多数。


「2022年 『ゴッホの犬と耳とひまわり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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