- Amazon.co.jp ・本 (177ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309020693
作品紹介・あらすじ
組織によって選ばれた、利用価値のある社会的要人の弱みを人工的に作ること、それが鹿島ユリカの「仕事」だった。ある日、彼女は駅の人ごみの中で見知らぬ男から突然、忠告を受ける。「あの男に関わらない方がいい…何というか、化物なんだ」男の名は、木崎-某施設の施設長を名乗る男。不意に鳴り響く部屋の電話、受話器の中から静かに語りかける男の声。「世界はこれから面白くなる。…あなたを派遣した組織の人間に、そう伝えておくがいい…そのホテルから、無事に出られればの話だが」圧倒的に美しく輝く強力な「黒」がユリカを照らした時、彼女の逃亡劇は始まった。
感想・レビュー・書評
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この頃の著者の筆の乗り具合は凄い。
物語自体はあってないようなものだけれど、神的な位置である木崎の台詞や月の表現など読んでいて吸い込まれていくようだ。
何一つ救いの無い内容だが、読んで救われる人は多いのではないか。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
無駄が無く美しい語り口で物語に入っていけた。
哲学的に内省的な所が良かった。圧倒的な不条理たる木崎とどのように対峙するのか。クライム映画のような裏世界な世界観。
矢田が属していたものは、この社会のなにか概念的なものの比喩で、木崎はその反対にある混沌。だとすると、どちらに属するでもなく、その中で必死に道を探す主人公は、社会に迎合することもできず、ふりきれてそれ自体を楽しむ木崎のようにもなれない人達を表してるのかな。月は木崎が言っていた宗教の神で、足掻く私達を俯瞰して楽しむ性格の悪い存在だと思う。
「長短ではない。肝心なのは、この世界の様々な要素をどう味わうかだ」最悪すら味わえというメッセージは好き。
掏摸も読んでみたいと思う。 -
前に読んだ「掏摸」の兄弟編。
木崎という支配者側に立つ人間が出てくる点と、恐らく掏摸の主人公と思われる男が一瞬だけ出てくるところが共通点で、今作の主人公はユリカという美しき娼婦。
最初はお金のためにホステスから裏社会の危険な仕事を遂行する娼婦に転身したが、その選択が後々ユリカを暗い運命に巻き込んでいく。
支配者はどこまでいっても支配者で、弱者はどこまでいっても弱者という構図はこの作品でも変わらず。都合の良いどんでん返しは起きないという、ある意味物語的ではない現実が描かれている。
何か得るものを楽しむというよりは、犯罪小説の“裏”感とダークな雰囲気にひたすら浸れる内容。
女性が物のように扱われる辺りは同じ女性としては読むのがきつくもあるけれど、その救いの無さがリアルだとも思う。
最後に木崎が変えた判断は果たしてユリカの救いになったのか考えさせられる。
世捨て人のような感覚で生きていたのに、いざとなったら“生”に強い執着を見せた彼女は人間らしく、唯一血の通う温かさを感じるような人物かもしれない。
私には関係のない世界だと思いたい。恐ろしく、暗い。
こんな“王国”に、私は住みたくはない。
でもこの国に生きること自体がもう、“王国”にいる、ということなのかもしれない。 -
「王国」
木崎再び。
この小説は、「掏摸」の続編というよりは兄妹編の位置づけらしい。どちらを読んでもどちらから読んでも楽しめるようにと言う事のようだ。私は、「掏摸」を読んだ後だった為、物語の繋がりを楽しめたが、片一方だけでも物語が成り立っているので、確かに楽しめそう。
物語の繋がりとは、木崎と言う男の事である。実は、木崎が2%程の確率で助けた男も繋がりの一つなのだが、なんと言っても木崎だ。もしかしたら2%とか言いながらも、100%助ける気だったかも知れないし、全て木崎の脚本通りかも知れない。とにかく木崎が世界を回している王であり、その世界は彼の王国だ。
「掏摸」も十分王国感を漂わせていたが、「王国」は更にスケールアップしているのも、ユリカと言う女性を翻弄して、彼女の人生を貪り、嘲り、憐れみ、そして、気まぐれに命を救う木崎の暴君振りがあってこそだと思う。
一体運命とは何か。運命はあるのか。運命を握っているのが、こんな暴君なら絶対に嫌だな。嫌だけど逃げれないな。とか色々考える。
しかし、読了感としては、さっばり何も残らない。これは、いい事なのか。面白くなかったと言う事なのか。どっちかよく分からない。うーん。 -
絶対的な力を持つ「悪」に対して「美」というあまりにもはかない力でもって対決を挑む一人の女。 誰も信用できない状況の中で「生」への執着のみで戦い続けるユリカに女の強さを見た気がする。 不条理な運命を変えることができるのは、自らの力だけなのだ、と改めて思った。
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依然読んでいたようだ。
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高1 ◎
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木崎、やっぱりとんでもない趣味。
あの人が生きてたみたいでよかった、、