- Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309020747
作品紹介・あらすじ
響き合う幸せを、音楽を愛する人々と分かち合うために。ふたりは、チェロを弾き続けていたんだね。世界的な指揮者の父とふたりで暮らす、和音16歳。そこへ型破りの"新しい母"がやってきて-。母と娘の愛情、友情、初恋。そして家族の再生物語。
感想・レビュー・書評
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図書館の原田マハさんの棚。
何度も見たはずの書棚なのに、初めて見つけたかな。
表紙の絵にやられちゃいました。
チェロ!
マエストロの父を持つ高校生の和音。
離婚した母が突然家を出ていったのは小学生の時。
物質的には恵まれていても、心が不安定な高校生。
そんな和音の目線で物語が語られます。
ボストン交響楽団に着任することになった父。
和音は頑なに日本に残ると言い張り、
そんな和音のもとに「新しい母」と名乗る女性が現れます。
真弓と名乗るその女性の出現で、生活が激変。
実は、真弓にも和音の母にも深い事情があり、
その事実を知ることで、和音の心が開かれていきます。
そして、内向きだった和音が「誰かのために」
やめてしまったチェロを手に、前を向き始めるのです。
まず出てきたのは、カザルスの「鳥の歌」。
かつて国連本部でこの曲を演奏した時、カザルスはこう言いました。
「私の生まれ故郷カタルーニャの鳥は peace、peace と鳴くのです」
そして、ドヴォルザークのチェロ協奏曲、バッハのG線上のアリア。
どれも素敵な曲ばかり。
チェロには個人的な想いが色々あって
何でもないところで涙腺がゆるんで、困った困った!
設定が特異で、気持ちが入らずに読んでいたのだけど
真弓の過去が明らかになるあたりから前のめり。
人って、自分のためには頑張れなくても、
誰かのためなら懸命になれるのですね。
人と人が響き合うことで生まれる音の世界。
原田マハさんには珍しい音楽の話ですが
絵画と同様、心が震えました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
顔つきが似ている、体格が似ているといった外見的な特徴や特定の能力に秀でていることをもって親子を語る時があります。そんな時に登場するのが『遺伝』という言葉。最近の研究では『知能指数』の50%は『遺伝』の影響を受けていると言われています。残りの半分の影響は家庭環境が30%と、交友関係などが20%というこの数字。さらに『遺伝』の中でも『音程』に関する能力は80%、『作曲』になると92%が『遺伝』によって親から子へと受け継がれたものだそうです。家庭環境が30%の影響を及ぼすという数字と足し合わせると、もうこれは音楽一家には必ず音楽少年、音楽少女が生まれると言ってもいいような割合だと思います。この作品にも曲が登場する、誰もが知っているクラシックの父『バッハ』も残された家系図を見ると音楽家ばかりの家系です。生まれ持った素質、生まれ育った環境の行き着く先に待つ運命の必然。でもそうであるが故に、その運命に息苦しさを感じ、その運命から抜け出したいという考えが生まれることもあるのだと思います。大切なのは、『自分にとって、何がいちばんやりたいことなのか。いま、自分が何をいちばんするべきなのか』。その答えを探し求める物語が始まりました。
『小鳥の名前は、「トワ」。私が名づけた』という主人公・梶ヶ谷和音。『深緑色のカナリア、鳴かないカナリアだった』、そして『ある日、どこかへ逃げてしまった』というカナリア。『お父さんだ。お父さんがトワをどっかに逃したんだ。お父さんは、トワが…和音のことが、嫌いだから』という和音の父は、『彗星のごとく現れて、数々の国際コンクールの賞を総なめにした若き天才指揮者』という忙しさもあって、和音とはすれ違いの日々を送ってきました。一方で母は、『名門・国立国際藝術大学でチェロを学び、やはり名門のオーケストラ、日本国際交響楽団の首席チェリスト』。この音楽一家に生まれた和音は小さい頃から母にチェロを学びます。でも『和音の手は、うつくしい音を奏でる手。私の手を握って、あんなに母が言ってくれたのに。私は結局、あきらめてしまったのだ ー チェロを』と学ぶのをやめてしまった和音。そんな中、『母はひとり、遠くまで離れていった。父のもとに私を残して』と夫婦は離婚し父と二人で暮らすようになった和音。そんな時、『小澤征爾以来二人目の日本人音楽監督として、ボストン交響楽団に着任する』ことになった父。『タングルウッドへ来る気はないか?』と尋ねるも『ないよ』とそっけない和音。そんなある日のこと、誰もいないはずの我が家に帰った和音の前に『見ず知らずの人、しかも勝手に他人の家に上がりこんでカザルスを聴き、タバコをくゆらせて』いる真弓という女性が現れました。『あなたのお母さんよ』と唐突に和音に告げる真弓。そんな真弓と和音の二人だけの生活がスタートしました。
原田マハさんというと、キュレーターとして、『美術』というか『絵画』の世界を美しく紡ぐ小説家だと思っていましたが、この作品で取り上げるのはまさかの『音楽』。しかも楽器がチェロ。そして、物語のターニングポイントとなる和音と真弓の出会いの場面で流れる音楽を『パブロ・カザルスの奏でる「鳥の歌」』というなんとも渋い、そして意味ありげな選曲。さらに、『雨音に耳を澄ませば、ショパンやシューベルトの旋律がいつのまにか頭の中で流れ出す。自然と指がその音を追いかけ、和音のチェロが音色を奏で始める』と雨音をピアノ伴奏に見立ててそこに和音のチェロを重ねて、両作曲家のチェロ・ソナタを奏でるイメージを描くなど、選曲の巧みさとその音楽が流れるシーンの絶妙さがとても上手いなぁと感じました。また、実際のコンサートでの演奏場面では『ドヴォルザークのチェロ協奏曲』を、『指と弓とが弦の上を滑る。枝から枝をへとさえずりながら飛び交う小鳥のように。きらめく水面をすれすれに泳ぐ魚のように。まぶしいほどの旋律が包みこんだ』と表現します。クラシック音楽を文字で表現する作品というと恩田陸さんの「蜜蜂と遠雷」がなんといっても有名かつ、私も愛してやまない作品ですが、この恩田さんとも全く異なる原田さんならではの独特な表現。同じように音楽を文字で表現するのにも本当にいろんな描き方があるんだなと改めて思いました。
原田さんならではの伏線完全回収かつメリハリのあるドラマティックな展開から結末へと至るこの作品。ストーリー展開が少し『病気』要因で引っ張りすぎな気がしないではありませんが、一方で天才指揮者の父と天才チェロ奏者の母に、未完の大器である娘という設定を違和感なく自然に感じさせる描き方の強い説得力。音楽に囲まれ、音楽に生きることを定められた者であるからこそ辿ることになる迷いと逃避、そして回り道。そして、その先に続く『芸術を極める難しさと、それでも挑戦』し続ける者たちが切り開いていく未来。和音の歩んでゆく未来の眩しさに、そしてそんな彼女と生きる人々の心からの優しさに、とても幸せな読後感に浸れる作品。『音楽』を描いても原田さんは凄いなあと改めて感じた、そんな作品でした。 -
ブクログ仲間さんに絶賛されていて、気になっていた原田マハさん。
はじめまして♪の作品として、私には馴染み深い音楽の世界を描いたこの本、
『永遠をさがしに』を選んでみました。
音楽のことしか頭にない(らしい)世界的な指揮者、奏一郎を父に持ち
チェロを手ほどきしてくれ、優しかった母からも置き去りにされ
可愛がっていたカナリアのトワさえ知らないうちに外へと放たれて
父からも母からも音楽からも見放された思いに沈む少女、和音(わおん)。
あらゆるものに否定的だった彼女が
カナダのオーケストラの常任指揮者となって旅立つ父が、新しい母として突然連れてきた
打たれ強いティンパニのような豪放な真弓と過ごす毎日の中で
探していた「永遠」は、けっして手が届かないと思い込んでいた彼方ではなく
童話の『青い鳥』のように、和音の傍らにいる家族や友人や、
自ら手放したチェロの中にあり、
過去でも未来でもなく、これから何かを成し遂げようと動き出す一瞬にこそ
隠れているのだと信じ、チェロを再び手にするまでがみずみずしく描かれます。
キュレーターの経歴を持つ原田マハさんのこと、
きっと学術的で冷静な文章を書かれるのだろうなぁと勝手に思い込んでいたので
衒いのない率直な文章と、プリオン病に突発性難聴と悲劇が畳み掛ける後半の
直球ど真ん中とも言えるような展開が意外でしたが
鳴かないカナリアだったトワを、チェロを弾けないのではなく、
頑なに弾かない少女であった和音に重ねるセンスが素敵で
もっと読んでみたいと思わせてくれる作家さんに出会えたのがうれしい1冊となりました。-
まろんさん、はじめまして。
身に余るコメント、ありがとうございました。
私は、もっと書きたいことがあったはずなのに、もっと伝えたいこ...まろんさん、はじめまして。
身に余るコメント、ありがとうございました。
私は、もっと書きたいことがあったはずなのに、もっと伝えたいことがあったのにと、苦戦していますので、内容を的確に表現しながら、穏やかで鮮やかな筆致のまろんさんのレビューはブクログビギナーの私にとって憧れです!
登場人物に、本に、著者に対する温かなまなざしが感じられ、まるで自分も一緒に読んで、「そうそう!ほんとだね!」と語り合っているような気持ちになります。
また、素敵な本を紹介してくださるのを楽しみにしています。
2012/11/18 -
nicoさん、コメントありがとうございます♪
私こそ、そんな素敵なお言葉をいただいてしまっていいのかしらと、
うれしくなったり恥ずかしくな...nicoさん、コメントありがとうございます♪
私こそ、そんな素敵なお言葉をいただいてしまっていいのかしらと、
うれしくなったり恥ずかしくなったり、ひとりでくるくるしています。
nicoさんの本棚を探検するのがとても楽しくて、
でも、ああ、この本についてのレビューも読みたいなぁ!と
思う本がいっぱいあって、これからでもいいから書いてくださらないかしら、と
勝手に思ってみたりしていました。
nicoさんファンがいることを忘れず、もしお時間に余裕があったら
ひとつでもたくさん、素敵なレビューを書いて、読ませてくださいね♪2012/11/18
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とにかく装丁が可愛い。チェロを持つ少女と裏表紙のカナリアに心奪われ手に取った作品。
表紙の少女は日本国際交響楽団のレジデント・コンダクターの梶ヶ谷奏一郎と国響の元首席チェリストの時依の娘・和音。
才能ある音楽家の娘として生まれた彼女は、当然、音楽の英才教育を幼い時から受ける。しかし、カナリア・トワとの別れ、母が自分の元から去り、クラッシックからも遠ざかってしまう。
幼い子供が自ら進んで、ピアノがしたい、チェロを始めたいとは言わない。小学生くらいになると友達が通っている、あるいは友達と一緒に通うからと言うのはあるかもしれない。しかし、もの心つく前の幼き子供がそんなことを言うことはなく、子供たちは親の想いによりその道を歩んでいく。そして、親の想いの大きさとその想いを受け止める子供の関心・興味の箱の大きさにより、道半ばにして諦めるか、モノにするか、はたまた、それ以上になるにはそこに才能の箱が加わる。
両親の離婚、有名な父、大きな家…一般の家庭とはかなり異なる環境で、普通の学校に通う少女は、なるべく目立たないようにと、考えるのも当然で、多感な思春期を孤独に、人との関わることに苦手になるのは、致し方がないことだ。それでも、型破りな(偽の)継母真弓との生活に戸惑いながら受け入れていけたのは、オープンでそれでいて思いやりのある真弓の性格もあったであろうが、和音の擦れていない素直さと人の優しさを感じとる感性と言う箱の大きさにではないかと思う。
そして、原田マハさんならではの展開は、真弓の突然の難聴勃発。私達が認識している音よりもはるかに深く数多い音の世界に住んでいた人間を音のない世界に投げ込こむ。この作品に真逆の世界を共存させることで、神経が震える音がいかなるものかを伝えようとしているように思えた。
はじめは、音楽をテーマのこの作品に少し意外性を感じた。しかし、それは私の原田マハさん=キュレーター=美術なる固定観念である。よくよく考えるとラム酒であったり、ファッションであったりと多種多様なテーマの作品がある。話の展開は、作りすぎている感、こんなのありえない感は、常に感じるのだが、小説の中だからこそ「あり」だと思うし、作品の環境、背景ではなく、登場人物の心の動きが好きなのだと改めて感じた。 -
図書館で見つけた一冊です。
原田さん、いろいろなジャンルを書かれてますね~
主人公は高校一年生の少女、父は世界的な指揮者、
数年前に居なくなった母は有名なチェリストという、音楽が題材に。
母は自分を置き去りにしたのだという屈託と、
家庭をかえりみない父に対する反発が、膨れ上がった矢先に、、
なんとも破壊的な「新しい母」が、訪れます。
どこかお約束のような喧嘩を重ねながらも、
徐々に心が解きほぐされていく様子が優しくて、
そして、そんな優しい大人達が抱える、
それぞれの“大人の事情”が、なんともせつなくて。
音楽などの芸術は、人の心の豊かさをバロメータなぁ、なんて。
キュレーターでもある原田さんだからこその物語と、感じました。 -
指揮者の父親は不在がちで、離婚して元チェリストの母が家を出てから一人で過ごす時間の長かった主人公・和音のもとに、突然現れた義理の母親、真弓。2人の同居生活と、高校の友人の文斗と朱里との日常が温かな筆致で描かれる。
父親と一般的な親子関係を築けずにいる和音。愛情あふれる両親と兄弟のいる家庭に暮らす友人。2人に憧れる和音の姿が切ない。真弓の登場で、今まで人の気配が感じられなかったハウスがホームに変わる様子に心が温まる。
病によって、日常をもぎ取られる真弓。
突然目の前から、姿を消した母親。
高校生たちの将来に対する漠然とした不安な気持ち。
誰もが何等か辛さや痛み、悩みを抱え、投げやりになり、自分を見失いそうになりながら、もがいて苦しんで、ようやく光を見出す。
人はそれぞれ、大きさの違いはあるけれど、悲しみや辛さを感じて日々を送るときもあると思う。いつだって笑っていたいけれど、できないときもある。
それでも、その痛みを認めて、自分が出来ることを精一杯していれば明日は拓けると思わせてくれる。
原田マハ作品は2冊目。
作者の言葉の選び方、情景の切り取り方が好き。
P180の和音がチェロケースを抱えた人が電車からホームに降り立つ姿を追うシーンは何気ないけれど、和音のチェロに対する愛情深さを描いていて、姿が目に浮かんだ。
映画化されるといいな。-
はじめまして。フォローしていただいて、ありがとうございます!まろんです。
「真弓の登場で、ハウスがホームに変わる」
うわあ、こんな風にひと...はじめまして。フォローしていただいて、ありがとうございます!まろんです。
「真弓の登場で、ハウスがホームに変わる」
うわあ、こんな風にひと言で、真弓の温かい存在感を表現できるなんて
素敵だなあ!すごいなあ!と、感動しました。
頑なに遠ざけていたチェロを再び弾くことで
自分をやわらかく解放していく和音がいとおしく、
未来への希望に満ちた作品でした。
nicoさんのレビューは、気負いなく自然な言葉遣いなのに
ひと言ひと言が深く胸に飛び込んできて、もっとたくさん読みたいなぁ、と
ついつい貪欲になってしまいます。
これからも素敵なレビューを心待ちにしていますので、
どうぞよろしくお願いします(*^_^*)2012/11/18
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有名なコンダクターの娘、和音が主人公。
両親共に音楽家のため、生まれたときから
チェロと共に生きてきた。
でも、両親が離婚して母がいなくなってから、
音楽とは離れた生活をする。
高校生になって、父が外国に行くことをきっかけに
元チェリストの真弓と暮らすことになる。
真弓との生活で、和音が音楽に道引かれていく。
これは、中高生に読んでもらいたい本だなー。
途中まで☆4だったけど、途中で困難盛りだくさんで、
最後全て解決されてる感じが、
なんかうまくまとまりすぎてて…。
ちょっと、ひねくれたおばちゃんには
まぶしすぎた本でしたー笑 -
いつもいろんな世界に連れて行ってくれる、原田マハさんの作品。
今回は音楽、チェロの世界だった。
心温まる話。
読み終わって温かい気持ちになれる本。 -
世界的な指揮者の父。幼い頃に家を出て行った母。鳴かないカナリアに自身を重ね、チェロをやめてしまった和音。
父の海外赴任が決まり、”新しい母”真弓との奇妙な二人暮らしが始まって・・・。
母が何も言わずに去った理由や逃げたカナリヤの謎、音楽以外に興味がなさそうだった父の本心など、原田さんらしくやっぱり悪い人は出てこないお話。
病気をテーマにして泣かせる、というのはあまり好みではありませんが・・・ -
久々にアート系ではない原田作品。チェリストの母と指揮者の父のもとで育った娘が、音楽と親と再び向き合うまでの話。音楽ものの小説を読んでいると、自分も楽器演奏にひたすら打ち込んでみたくなる。若い頃にもう少しこういう本を読んでおけばよかったなと思う。
でも、家庭環境で小さい頃からひたすら楽器をやってた人って、実際にはこんな甘いものじゃないだろうなあと思う。と、以前、ピアニストの書いた演奏中に続きが思い出せなくなる恐怖についての本を読んだときのことをふと思い出してしまった。