なみだふるはな

  • 河出書房新社
4.46
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本棚登録 : 125
感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (225ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309020945

作品紹介・あらすじ

いま語られる水俣と福島。時を経ていま共震する二つの土地。その闇のかなたにひらく一輪の花の力を念じつつ目撃者ふたりは語り合う。

感想・レビュー・書評

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  • 水俣の石牟礼道子と福島の藤原新也の対談。美しい言葉と写真が心に沁みます。

  • 水俣と福島。非人道的な企業管理と運営の果ての破局。この対談はその二つの歴史に架かる橋になる。
    石牟礼氏の、うつくしい言葉遣い、土地の言葉。情景がふわっと目に浮かぶ昔語り。藤原氏もいうまでもなく視覚表現と言語表現の具有者であるので、互いが共鳴していることがよくわかる。

    [more]<blockquote>P81 きれいなところというのは、宿命的に狙われてしまうんですね。

    P88 第一次産業で飯を食っている民族というのは、他からやってきたものを神様だと思うということを、ある人類学者が書いています。【中略】チッソというのは、特に光に乗ってご来光のようにポンと来たわけだから、最初にこれが来たというのはまさに神様ですね。

    P114 畑にことづて。【中略】「ことづてはたくさんありますばってん、草によろしゅういうてくだはりまっせ」

    P120 鳥だけじゃなくて、トカゲも雨蛙もいるし、オロチもいるし、サルたちも、キツネも、タヌキも、ウサギもおるし、ネズミもおるし、それを総称して母は「山のあの人たち」「あの衆たち」といっていました。

    P128 「電信柱の影なりと、うちの山を通ってくださいませ」というような気持ちを、どんなふうに捉えているのかなと思って。チッソの人にもわかってもらいたいです。【中略】「単なる交渉ごとですから」って命に値段をつける。庶民の切ないような、一方的な片思い。自分たちが犠牲h片思いをしている、そういう、ある意味では無念さみたいなものをわかってもらいたいです。

    P134 「代わって病みよっとばい」という言葉は、病んでいる人たちの自分に言い聞かせる覚悟だろうと思うんです。それではっとするんですけれどもね。「知らんということは罪」と。それで「あんたたちのおかげでこういうふうになった」とはおっしゃらない。代わって病むとおっしゃる。

    P154 「タチウオが初日ば拝みよっとばい」と。【中略】自分をまるまる捧げものにして、苦難の一生を全部捧げて光明をつくり出しておられる。神話ができつつある世界ですね。それはまさに悪のヤスリが心を磨き上げたという、そういうことでしょうね。

    P189 大地を呼吸できないようにしてしまって。みんなでよってたかって。近代というのは、非常に簡単にいえばそういうことですよね。息ができないようにしてしまったので、大地がふうっと深呼吸したんだろう、それが大津波になったんじゃないかと思ったりしますけど。

    P194 そういう悲劇的なこととか、ダメージみたいなものというのは、必ずしも人間の心を荒ませるわけじゃなくて、逆にきれいなものだとか力強さみたいなものがそこから湧き出てくるような人間の強さといいますか、そういうものがあるのかなと思って。

    P217 小さな命たちがかえって、ものをいいかけている感じがしますね。大きく祈ったりすると、だいたい失敗します。
    </blockquote>

  • いろんな人に読んでもらいたい。
    原発事故のこと、水俣病のこと。関係ないじゃすまされない。
    石牟礼さんの優しくて穏やかな口調がとても心に響きます。
    「知らんということは罪」まさにそうです。

  • 3.11の震災のことを、手触りの感じられないところから眺めている感じのするこの頃。
    この本には、水俣病のことと、震災のことが書かれています。
    80歳を過ぎた石牟礼さんの穏やかで豊かな言葉に守られながら、読み進めることができます。
    昔も今も、一握りの人の欲と得のために、大勢の性善説な人たちがコントロールされ、踏みにじられてきたのだということがわかります。

  • 一日目まで読了。もっと水俣病中心かと思いきや、東日本大震災の原発問題にかなり絡んでいて、正直お腹いっぱい。Amazonではかなり評価が高かったが、『苦海浄土』の生の問題に比べると明らかに方向性が普通の対談。

  • 豊かさとはなんなのだろうか、と改めて思う。水俣病告発で有名な石牟礼との対談集、震災後に発売された本のどれも手に取る気がなかった私が読んだ本。人間が滅んでも地球は痛くもかゆくもないと思う、滅んでもいいではないかと。

  • 「知らなかった」ことが、恥じ入るだけでは済まず、誰かに害を加えていること。
    興味のあることだけを追いかけていてはいけない。
    ちょっと生きづらく感じます。
    でも、生きづらさと真面目に向き合い、いつかこの本で話されている素晴らしい光景を自分の目で見ることができるなら。
    できること、やはり「知る」ことから始めたいと思います。

  • 熊本の水俣病と福島の原発災害。近代化の過程で破壊された自然と、結果発生した致命的な破局。ことここに至り、我々現代に生きる人間とは何のために存在しているのかという命題を突きつける対談集。今読まれるべき1冊です。個人的には宮崎駿の映画を端々で想起しました。

  • ちひさきモノ、愛しきモノたちへの
    愛情を文字にし、写真にしているお二人の
    対談集
    世に信じ難き「水俣病」、「放射線被曝」
    の問題を根本の問題に据えながら
    実に「美しい言葉」を紡ぎながらの
    対談集
    そのおぞましい現実と語り継がれてきた庶民の暮らしが自ずと対比されてしまうのが哀しい
    我々の目指す未来の片鱗が見えてくるような気がする

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著者プロフィール

1927年、熊本県天草郡(現天草市)生まれ。
1969年、『苦海浄土―わが水俣病』(講談社)の刊行により注目される。
1973年、季刊誌「暗河」を渡辺京二、松浦豊敏らと創刊。マグサイサイ賞受賞。
1993年、『十六夜橋』(径書房)で紫式部賞受賞。
1996年、第一回水俣・東京展で、緒方正人が回航した打瀬船日月丸を舞台とした「出魂儀」が感動を呼んだ。
2001年、朝日賞受賞。2003年、『はにかみの国 石牟礼道子全詩集』(石風社)で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。2014年、『石牟礼道子全集』全十七巻・別巻一(藤原書店)が完結。2018年二月、死去。

「2023年 『新装版 ヤポネシアの海辺から』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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