冥土めぐり

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著者 : 鹿島田真希
  • 河出書房新社 (2012年7月7日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (156ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309021225

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冥土めぐりの感想・レビュー・書評

  • 鹿島田真希さんが芥川賞を授賞した作品を収めた「冥土めぐり」を読了。受賞作「冥土めぐり」と「99の接吻」の2編が収められている短編集で、両作品ともに共通するのが心理描写がとても素晴らしいと言う点だ。
     「冥土めぐり」は過去の自分の境遇の華美な部分から落ちぶれた今でもそのイメージにしがみつき離れられない母と弟との切っても切れない息苦しい関係と地方公務員で結婚した後病気になり身障者になった夫との暮らしでのなかで生まれる不思議な救いの時間を描いた作品だが、この決して幸せとは言えない境遇下で主人公が密かに見つける幸せな時間にひたる主人公の心の動きの描写が素晴らしい。
     「99の接吻」では父親が不倫の結果家を出ていった家庭に残った4人姉妹と天然な感じの母親との微妙なバランズの上に成り立っている日々を描いた作品だが、末娘が捉える長女、次女、三女の姉達の描き分けが巧妙で、僕ら男性ではたぶん理解できない女性同士の不思議なコミュニケーションが見事に描き出されていて、それを読むときに感じるわかりそうでわからないむずむずした感じが決して不快ではなかった。
     二つの作品とも読んでいて共感をもってのめり込める世界は決して描かれていないのだがが、「冥土めぐり」では過去の出来事、記憶の中を旅しながらいまの自分を不思議にほっとさせる環境を語る主人公の姿に小さな救いを感じる事が出来たし「99の接吻」では今日、今の出来事に振り回される女性5人の暮らしの中で成長して行くの大人になりかけの少女の二人の主人公から感じた永遠にわかり得ないだろう存在である女性への畏れというものを今一度思い出させてくれるので、読書の楽しみは得られないが人の幸せとはということを考えさせてくれるので読んで損のない作品ではあると思った。
     そんな短いページ数の中で過去、現在、未来へ短時間でワープする感じを持たせてくれる作品を読むBGNに選んだのが
    Arnie Rossの ”Arnie Ross sings with Mulligan"だ。
    マリガンのバッキングが渋い。
    https://www.youtube.com/watch?v=wpuWMzdgjI4

  • 表題作は奈津子が母と弟の愚痴をもろに受けてそれを耐える話だが,夫の太一とのコンビネーションが絶妙だ.太一は障碍者ではあるが天然の大らかさで奈津子を間接的に守っている感じだ.落ちぶれたホテルの旅は前向きであり,後ろ向きでもあるようだ.「99の接吻」は芽衣子,萌子,葉子の行動を私・菜菜子が描写する話だが,Sという男に3姉妹が絡み,母の行動も絡んでくる.女ばかりの家族のやるせなさを書いているように思うが,男の私には良く意図のつかめない内容だ.

  • 小説の良さって、こういう教科書的なものではなく、分かるんだけど、なんかひかれない。

  • 私が未熟なんだろうけど、この作品においての『冥土』がなにか、よく分からなかった。(私が今まで読んだ)この人の作品には母と娘の関係が必ず出てきて、自分と娘を分離できない(別の人間だと認識できない)母親と、そんな母親から離れたいのに離れられない娘の関係がこの人のテーマなんだろうな、と思った。

  • 表題作が芥川賞受賞作品だということで読んでみました。2作品収録されていて、どちらも人間の奥底を見事に描写しています。どちらも女性から見た物語を綴っており、男性の私にとってはなかなか気がつかないというか知りようがない気持ちの動きを描写しています。少し寒気がするからほど上手いです。表題作の「冥土めぐり」はまだほんわかするのですが、「99の接吻」は背筋が凍るほどの恐怖を感じました。男性が理解できない女性のことに対する無知からくるものなんでしょうね。

    以下、個別作品の感想です。

    ◎冥土めぐり
    若干上から目線の主人公である奈津子。母親や弟どれもあまりうまくいってない現実を悲観している。夫は脳に疾患がある身体障害者の太一。ある日、奈津子と太一は旅行に出かける。旅行を楽しむ太一とは逆に夫以外の家族について結局考えてしまってあまり楽しくなさそう。でも、最終的には夫の言動によって救われる。温かい感じがして読んでいて幸せな気分になる。ほんとうの幸せの1つを示してくれたように思える。

    ◎99の接吻
    男性の私にとっては恐怖しか感じなかった。女性の核心を垣間見たような気がする。きっと世の中の女性は、物語に登場する5人のパターンに分類できるのかもと思ってしまった。だとしたら、女性は怖いという結論しか出ないわけで、女性不信になってしまいそうだ。知らなくともいい秘密を知ってしまった感じなので、読んでしまったことに少し後悔している。いや、自分が経験できないこと、実感できないことを知らしめてくれた作者に感謝すべきなのかもしれない。

  • 表題作は過去に例を見ないくらい、障がい者の世界を比較的正確に描けているように思いました。と同時に障がい者の立ち位置には一つの視点を示せていると思います。
    もう一作は、女の性というモノの泥々した感じを否定することなくさらっと書ききっている清々しさを感じました。

  • 母と弟がクズすぎて、クズの話が続き読むのに疲れた。

  • 熱海のホテルニューアカオを連想してしまうのは何故か?

  • 芥川賞受賞作品。鹿島田作品読むの2作目なんだけど、前に読んだ『来たれ、野球部』と全く雰囲気が違ってびっくり。多分こちらが鹿島田作品の本流なのだろうけど。まだ続くと思ってたらあっさり終わってしまった気がするけど、文章が綺麗で読みやすかった。お母さんと弟が屑すぎて主人公が不憫だ。同時収録の『99の接吻』もまた文学の香り高い作品。女が集まるとかしましく、妖艶なのだ。2012/565

  • 2015年2月1日読了。

  • 表題作は冒頭、結構救いのない設定で始まったので、どうなることかと思っていましたが、以外にもポジティブ(?)な結末でほっとしました。

    いつまでもお金持ちのお嬢様気分が抜けず他力本願で楽して生きることしか考えていない虚栄心の強い母親と、そんな母親に育てられたせいで同じく勘違い男に育ってしまった働く気はないが浪費癖のある弟、二人に寄生され搾取されながら無抵抗な主人公。やっと結婚したのに夫が病に倒れ四肢が不自由に。

    そんな踏んだり蹴ったりの不幸体質で、夫の鈍感な感じにも序盤はイラっとさせられるのだけれど、次第にこの夫の「鈍感力」こそが、彼女の救いとなっていることがわかる。無神経なのに無邪気ゆえ意外と誰からも愛されるこの夫のキャラクター造形が秀逸でした。母親と弟のおぞましさも、強烈。

    同時収録の「99の接吻」は、四姉妹の末っ子から見た姉たちの観察記。とにかく姉たちが大好きで、女性としての嫌な部分やずるい部分を見せられても、それすら愛おしくてたまらないという彼女の視点は、奇妙なんだけれど、前提が大好き=肯定なので、まったく不快感がありません。それぞれ個性的な姉たちのキャラクターをもってすれば普通のエンタメ小説を書くこともできそうだけれど、この特異な切り口が新鮮で面白かった。

  • 心理描写が精巧

  • うーん、なんだかよく分からない。
    こういうのもありなのかな・・・・

  • 99の接吻を立ち読みして気に入って購入。どろっとしているけれど地に足の着いていない感じ、これを描くには女ばかりの方が好ましい。冥土めぐりの方は嫌いではないがうまく言語化できない。斜陽を思い出すけれど、斜陽よりももっと卑近でぐちゃっとした感じ、というか。

  • 冥土めぐり」過去にあまりに縛られている母と弟から逃れたくても、自分も「家」に縛られ疲れているときの夫の突然の脳の病気。それは主人公にとって不幸が重なったようにも見えるが、旅を通じ、逆に何にも縛られない夫の姿を見て、自分も過去を清算し自由という選択肢を見つける。しかし、母親と弟があまりに最低な人間で勘弁。「99の接吻」四女から見た3人の姉、母の話。四女はシスコンで、姉に対するこのグロテスクな妄執に自分はついていけない。久しぶりに読んで疲れが出た。

  • 「冥土めぐり」「99の接吻」

    めぐりあわせとは読書も同じで。

  • ゆるやかな不幸。
    Sに振り回される女達は、実際にありそう。泣かされても、泣いてるシーンでも女の強さやしたたかさがでていそうだった。

  • 冥土めぐり

    太宰治の『斜陽』では、過去に囚われる人間を虚しくも美しい人達と感じることができたが、この作品ではそれは痛々しく醜いものにみえた。

    『自分が絵の前を移動するのではなく、絵が、奈津子たちの前を流れているようだった』
    辛いことや悲しいことを捉える時、このように考えることは最良の策だと思う。

    夫の太一の性質をもっと清らかに描写出来たはずなのに、しなかったのはやはり人間らしさや生々しさを出したかったからなのだろうか。個人的にはもっと無知で優しく、穢れたこととは全く無縁の存在であって欲しかった気もする。


    99の接吻

    突拍子もないことだけれど、これは叙述トリックなのだろうかと疑ってしまった。(例えばこの四姉妹は実は人間ではないとか)それくらい、不自然で不気味だった。いい意味で。

    こちらも、この四姉妹をただただ美しく描くこともできたはずなのに、そうしなかった。四人それぞれに女性の嫌な性質が設定されており、Sに振り回される四姉妹の滑稽さをとても虚しく描いている。

    ふわふわ地に足がつかない登場人物やストーリーはもともと好きだが、その中に生々しさや現実味がプラスされている文章もいいなと感じた。

  • メモ

    幽霊たちに囲まれてきた。そこからの再生にはドラマはいらない。安心と日常の繰り返しのみがカウンセリング可能。

    本当は死んだのに、成仏できない幽霊たちとの生活。そのことに気がつかない人たちと暮らす
    わあわあ泣く
    被害者。想像力の欠如。責任の喪失。
    失われた栄光の時間を、生きる。夢見るのではなく、すぐ目前に存在している。
    不幸、とおもうこと。
    金、という幸福の象徴。すべてを金に責任転嫁して生きること。
    醜さを凝縮。
    固いセメントのような海

  • 「冥土めぐり」
    自分の不幸と他人の悪意にからめとられて動けない家族の殻に、不幸にも悪意にも鈍感な人間が穴をあけられたのか。母弟が人としてだめすぎて苛々する。
    「99の接吻」
    下町で暮らす4姉妹の話。優雅で艶っぽい。浮世離れした感じで進むのだけど、姉妹の話というのはちょいちょい共感がもてる。

  • あんな生活、と呼んだ日々。
    かつて裕福で豪勢な生活を送っていた名残を忘れられずにいる母と弟。
    父が脳の病気で死んでから、母と弟は働きもせずに浪費ばかりして、自分に嘘を重ねて生きてきた。

    奈津子とともに母と弟にたかられる運命だった夫の太一は、突然脳の病気になり、彼らの呪縛から運良く逃れた。

    母から何度も聞かされていたかつての高級ホテルは、今ではすっかり寂れて朽ち果てた施設となりながらもなんとか運営している状態で
    体の不自由な太一とともに思い出をめぐった小旅行。

    負の連鎖というのか。そういったものから奈津子は太一の存在によって抜け出せるようなところまできている感じ。

    そういう選択肢もあるのだ、と気づくまでにかかった時間の途方のなさを悲観することはないよね、きっと。

    ほか3人の姉を愛する末っ子の話。

    どちらも読みやすかった。
    しかし末っ子の菜菜子が4姉妹のなかで一番だよ成熟しすぎでしょw)^o^(

  • 太宰治『斜陽』を思わせるけど、もっと痛々しさのある話。
    華やかな過去を持ちながら没落した母親。
    母親に甘やかされ、堕落した生活を送る弟。
    その二人に搾取される主人公。

    今まで母と弟という世界の中でしか自分が見えていなかったのが、夫という場所を得たことによって、全く別の自分の人生が見えてくる。

    夫という人間も、人によっては受け入れられない部分もあるけど、主人公にとってはかけがえのない救世主だった。

  • 家族コンプレックスの話。娘への愛情より過去の贅沢な思い出とお金に執着する母と盲目的で傲慢な弟に嫌悪感を抱き続けてきた奈津子。めまぐるしい負の感情を抱えてきた彼女が、正反対の性格をした夫、太一と母の栄華が刻まれたホテルを旅し、過去を断ち切り、これまでとは違う見方や感じ方を得るという物語。芥川賞って確かに深そうだけどちょっと暗い物語が多いな。言葉もするする入ってくるというよりはひっかかる感じがした。

  • うーん、なんだか凄まじかった…内容的にはつまらないとは全然思わないけれど、再読はしないかなぁ…ということで、★2つ。
    2編が収録されていて、そのうち1編が芥川賞を受賞した「冥土めぐり」。金持ちだった過去から抜け出せず、借金を重ね、主人公に美人局のようなことをさせながら、己れのプライドや生活レベルを維持しようとする母と弟。かなり過酷な状況だけれど、私には、思考停止状態に陥ってしまったかのような主人公に共感したり理解したりできなかった。幼い頃からこんなふうに精神的に虐げられて育つと、自己を確立し状況を打破しようとする気概を持つことは難しいのだろうか…と、そればかりが気になってしまった。
    もう1編はかなりエロティックだった。女性ばかりの家族で築き上げた完結した世界に、「よそもの」たる男性(異分子)が混入してくることによって起こる変化をじっと見つめる主人公。姉たちを異常なまでに愛する主人公。自己に内包してしまっているのか、自己が内包されてしまっているのか…

  • 主人公の視点で読んでいるうち、濁った重たい水のような、「家」という呪縛の中で、もがいても抜け出せず、もがくことさえ諦めてしまったような感覚に陥る。最後には、そこから浮かび上がるためのささやかな希望の光を感じられるので救いはあるのだが、読後感は…。共感はないものの、巧みな心情描写によって胸に主人公の感情がジワジワと入り込んでくる感じが良かった。

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冥土めぐりの作品紹介

あの過去を確かめるため、私は夫と旅に出た――裕福だった過去に執着する母と弟。彼らから逃れたはずの奈津子だが、突然、夫が不治の病になる。だがそれは完き幸運だった……

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