冥土めぐり

著者 :
  • 河出書房新社
2.92
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本棚登録 : 1306
感想 : 261
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  • Amazon.co.jp ・本 (156ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309021225

感想・レビュー・書評

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  • 最近、純文学を受け付けなくなってしまった…。心が、耕されることを全く望んでなくて、他人の過剰な表現意欲についていけなくなってしまっている。もっとサービスしてほしい。俺を楽しませてくれ!と仕事の反動で感じるようになってしまった。こちらから本や作者に寄り添うような読み方が、いつの間にか出来なくなってしまった。これはこれで、受け入れないとな。心が荒んでいるのか、それとも満たされているのか。いずれにせよ、純文学は食傷気味です。多分、本の評価も、純粋な評価とはほど遠い、日記のような評価になっています。参考にしないこと。

  • 表題作の冒頭で、病を患う夫を見つめる主人公の女性の視線がなんだか怖かった。
    その視線はとても無感動で冷めていて、嘲りのようなものも含まれているような気がしたから。

    読み進めていくとそうではないと分かったけれど、力のある作家さんだという印象です。

  • 表題の「冥土めぐり」の主人公は、冒頭で死をどこかに意識しているような様子がありましたが、病気の夫と旅行をし、過去を回想し、隣にいる夫の生きざまを思い起こしてようやく死を意識する原因を作った“家族”を拒絶する一歩を踏みだします。趣味の悪いカーディガンを「着なくてもいいんだ」と、唐突に気付く場面は思わず頷いてしまいました。
    やらなきゃだめだ、と思っていたことが唐突に「あれ、違うんだ」と気付く瞬間ってあると思います。

    99の接吻に関しては……主人公に感情移入出来なくて。言葉の選び方や文章の書きかたは結構好みでした。

  • 息苦しさ半端ない。旦那すごい!

  • たとえば、こんなことを思い出す…
    幼少のころ、缶詰がうちにくるとうれしくて、家族中がときめいた。
    父親は家族全員を集め、おもむろに缶切りを手にして、
    全員均等に分けた…みかん一粒の差もないように正確に…

    高熱が続いたある日、父親はボクに突然、
    缶詰食べるか? って訊いた…ボクは怖くなった…
    缶詰ひとりで食べさせるくらい重症なのか…って思った。
    人は冷たくされるとさびしいけれど、やさしくされると怖くなる。

    ひとりで生活をはじめたとき…念願だった、缶詰一気食いをやった。
    ひとりで、ぜ~んぶ一度に食べきるのが夢だった…なのに、
    ぜんぜんときめかなかった…夢はかなうと夢でなくなるの?
    かくも人の心は理不尽にできてるんだろうな…

    おそらく本作は、そうした人の気持ちの理不尽さをベースに
    それでも敬虔に生きることの素晴らしさを伝えようと
    しているのかもしれないけれど…だめでした…
    ボクには、さっぱりわかりません。登場人物すべて理解不能…

    身障の夫を支える妻と、その対極にある実の母、弟の構図…
    それがあまりにも図式的で心情移入できなかったんです。
    妻のトラウマになっている性的ないやがらせも、ここでは
    実際どんなものであったのか想像することさえできませんでした。

    芥川賞選考委員の選評もすべて読んだけど、
    なんだか、とってつけたような、そしてもってまわったのばっか…
    頓珍漢な石原慎太郎の選評さえ懐かしく思えちゃいました。
    唯一、そうだなぁ…って思えた一行は…川上弘美さんです!

    -なんだかよくわからないのに、この小説はとても切実だった。

  • 心情描写がとても巧み。ですが登場する人物に全く共感出来なかったです…

  • 私が未熟なんだろうけど、この作品においての『冥土』がなにか、よく分からなかった。(私が今まで読んだ)この人の作品には母と娘の関係が必ず出てきて、自分と娘を分離できない(別の人間だと認識できない)母親と、そんな母親から離れたいのに離れられない娘の関係がこの人のテーマなんだろうな、と思った。

  • 過去から逃れようとしながらも、彼女自身も母や弟の虚飾の政界にこだわっているように見えるところや、自身の受け身の姿勢が招く不幸に犠牲者然として浸っているところにげっぞりさせられる。母や弟の呪縛から彼女を解放した夫を無能視している感じも好きになれない。

  • 「冥土めぐり」
    自分の不幸と他人の悪意にからめとられて動けない家族の殻に、不幸にも悪意にも鈍感な人間が穴をあけられたのか。母弟が人としてだめすぎて苛々する。
    「99の接吻」
    下町で暮らす4姉妹の話。優雅で艶っぽい。浮世離れした感じで進むのだけど、姉妹の話というのはちょいちょい共感がもてる。

  • うーん、なんだか凄まじかった…内容的にはつまらないとは全然思わないけれど、再読はしないかなぁ…ということで、★2つ。
    2編が収録されていて、そのうち1編が芥川賞を受賞した「冥土めぐり」。金持ちだった過去から抜け出せず、借金を重ね、主人公に美人局のようなことをさせながら、己れのプライドや生活レベルを維持しようとする母と弟。かなり過酷な状況だけれど、私には、思考停止状態に陥ってしまったかのような主人公に共感したり理解したりできなかった。幼い頃からこんなふうに精神的に虐げられて育つと、自己を確立し状況を打破しようとする気概を持つことは難しいのだろうか…と、そればかりが気になってしまった。
    もう1編はかなりエロティックだった。女性ばかりの家族で築き上げた完結した世界に、「よそもの」たる男性(異分子)が混入してくることによって起こる変化をじっと見つめる主人公。姉たちを異常なまでに愛する主人公。自己に内包してしまっているのか、自己が内包されてしまっているのか…

著者プロフィール

1976年生まれ。1999年、「二匹」で第35回文藝賞を受賞しデビュー。2004年、『白バラ四姉妹殺人事件』で第17回三島由紀夫賞候補、2005年『六〇〇〇度の愛』で三島由紀夫賞受賞。2006年「ナンバーワン・コンストラクション」で第135回芥川賞候補。2007年『ピカルディーの三度』で野間文芸新人賞受賞。2009年「女の庭」で第140回芥川賞候補、『ゼロの王国』で第5回絲山賞を受賞。2010年『その暁のぬるさ』で第143回芥川賞候補。

「2011年 『小説家の饒舌 12のトーク・セッション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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