スタッキング可能

著者 :
  • 河出書房新社
3.17
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本棚登録 : 1410
感想 : 199
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309021508

感想・レビュー・書評

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  • これは久しぶりにノンストップで声だして読んでしまった。
    物語の状況と自分の現状が近しかった事もあるけど、
    この時期この本に救われて瞬間があったはず。

  • ビルの中にいろんな会社が入っていて、多くの人たちが働いているけれど、どの会社も似たような人たちばかりで構成されていて、取り換え可能だと。
    だから、読んでいて、誰が誰だかわからなくなってもそれでいいのだろう。
    ビルのエレベーター表示を使うというアイデアは、おもしろい。

    でも...それで?

  • 小説+ブログ+ダイアリー!?、、枠にとらわれない各章。"シュールな気づき"は、細やかでもあり大雑把でもあり、笑えるアジャストの表現もあり…確かに微妙にずれて重なっていく感覚。嵌まる人は嵌まるのだろうけど、自分的には少々辛かったなぁ。

  • よく分からない本と紹介され手に取った本。なるほどと妙に納得。だがなぜかクセになる読了感。

  • 「スタッキング可能」ではそんなにつよくは感じないが、「マーガレットは植える」「もうすぐ結婚する女」では、徹底して主語(あるいは語り手)が、ややこしい一般名詞や記号にされているために、語り手が現在立っている場所がどこなのか、話が進むにつれわからなくなってくる。
    エッシャーのだまし絵を見せられているような、複雑な建物のなかをぐるぐる歩かされているような…、少しずつ微妙に、読み手が文脈からとらえている物語の位相を、物語の側が故意にずらしてくるような、不可思議なきもちわるさがある。このひとは小説でストーリーを展開したいのではなく、まるで手品師のように、そのきもちわるさ、微妙なズレの違和感をこそ読み手に伝えたく思っているのではなかろうか。

  • オフィスでは常に血が流れているっていう書き方がシュールでよかった

  • 【収録作品】スタッキング可能/ウォータープルーフ嘘ばっかり!/マーガレットは植える/ウォータープルーフ嘘ばっかり!/もうすぐ結婚する女/ウォータープルーフ嘘ばっかりじゃない!

  • 松田青子の『英子の森』を読んだら、また『スタッキング可能』を読みたくなって、こんどは、てっぺんから収録順に読んだ。いちばん最初は表題作だ。

    『わたし』が覚える違和感が記されているところで、あー、わかる、わかる、わかる!!!と思う。『わたし』が「死んでもなりたくない」と思ったその気持ちに、私も覚えがある。『わたし』が「そうしない女がいることを体現してやると心に決めた」のと似たような気持ちを、私もしっかりと抱いていたことがある。私より10歳下の松田青子も、こんな気持ちを感じていたのだろうか、と思う。

    そして、「うっじゃうじゃ」いるのは、あまり変わってないのだろうと、正直がっかりする。

    ▼一度気になりだすと、違和感はどこまでもついて来た。『わたし』がいくら年をとっても、どこに行っても。
     学生時代の夏合宿の夜、『わたし』がオセロで勝つと、負けず嫌いだなあと言った同じサークルに属していた男。どうして普通にオセロをしていただけで、そしておまえに勝っただけで、負けず嫌いになるのか。おまえがオセロ弱いだけだろ。お好み焼き屋で、『わたし』が率先して取り分けないと、えっ女のくせに取り分けないなんてびっくりしたと言った、同じゼミに属していた男。論外。そいつの一言に普通に意見を言おうとしただけなのに、まあまあ、怒らない、ムキにならないとなだめてこようとしたバイト先の男。女が言い返すとは、自分と違う意見を返そうとするとはつゆとも想定したことがない男。そういう女が全員怒っているように見える男。それでむしろムキになってるのはそっちだろとツッコミたくなるほどつっかかってくる男。妙にボディタッチが多く接近度が高い男。どこにでもいた。似たようなのがどこにでも。

     『わたし』はその度に、あーあ、と思った。がっかりした。そう、本当に、心の底から、がっかりした。そういう毎日の中で、相手に合わせてみたり、合わせきれなかったりで、中途半端にその場その場の対応をしながら時を過ごすのは、その場しのぎで生きていくのは、なんだかとてもみじめで心もとないような気がした。自分にずっと嘘をつき続けているみたいだった。ちゃんと地面の上を歩いていないように感じた。

     『わたし』はいつか自分はがっかりしない男の人に出会えるんだろうかと想像してみた。望み薄だな。だってこんなにうじゃうじゃいるんだもん。うっじゃうじゃ。…(略)
     『わたし』は絶望した。終わってる、この世界、終わってる、と思った。
     笑顔がかわいい。えくぼがかわいい。天然でかわいい。やさしい。
     男たちが好きな女のナイスポイントをあげつらうたびに、『わたし』はそんな女になりたくないと思った。死んでもなりたくない。 …(略)
     …それが当たり前だとどこでそう思ったのか知るよしもないが当たり前だと思い込んでいる男たち、そいつらに合わせてるんだかそうじゃないのかわかんないけど同じ思い込みの中にいる女たちの中で、そうしない女がいることを体現してやると心に決めた。これは戦いだと『わたし』は思った。(pp.16-18、「スタッキング可能」)

    2度目に読んでも、私はやはり、ここのところを書き写す。

    (二読:2014年11月19日了)
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    3月初めに買った雑誌『SIGHT』の冬号掲載の「ブック・オブ・ザ・イヤー2013」で、斎藤美奈子と高橋源一郎が「文芸編」で語ってる中に、「労働疎外の2冊」としてこの『スタッキング可能』と『工場』(「穴」で芥川賞をとった人の作)がとりあげられていた(斎藤選)。

    表題作がちょっと分かりにくいので、先に他のを読んだほうがいいと書いてあったのにしたがって、「ウォータープルーフ嘘ばっかり!」という漫才のような散文詩のような小説3本を先に読んで、そのあと他の2本「もうすぐ結婚する女」と「マーガレットは植える」を読んで、最後に表題作「スタッキング可能」を読む。

    「ウォータープルーフ嘘ばっかり!」の3本は、平田俊子の散文詩を思わせるところがあった。表題作を含むあとの3本は、姫野カオルコか山崎ナオコーラか津村記久子かという感じで、ちょっとフェミのツッコミ入ってる風な、氷河期世代風な…小説だった。

    「もうすぐ結婚する女」は、フツーの小説であれば固有名詞が入るところを、一括で指定して「もうすぐ結婚する女」に置換したような、読んでいるとふしぎなリズムのようなものを感じる文体になっていた。平田俊子の『(お)もろい夫婦』に入ってる詩のようでもあった。

    「スタッキング可能」は、とあるオフィスビルの各階での会話やら内なるココロの声やら人間模様が錯綜して、どんだけ登場人物出てくるねんと思ったが、『SIGHT』の案内によるとABCD…と出てくる人物は階は違えどほぼ同じ人間像のようなのだった(A山さんとA川さんは同じとか)。伏せ字の固有名詞のように出てくるB山やらB田といった名前は、まさに記号で、読んでいると、階の違う(=別の)オフィスであっても似たような人が似たような会話をしてんねんなーということが、だんだん分かってくる。

    そんなオフィスで働いてる女=『わたし』の違和感やがっかり感やうんざり感に、わかる~と思った。「そうしない女がいることを体現してやると心に決めた」とか「絶対それが普通だって思わない」とか、めっちゃわかる。

    ▼…それがはじまりだった。終わりのない違和感のはじまりの日だった。
     一度気になりだすと、違和感はどこまでもついて来た。『わたし』がいくら年をとっても、どこに行っても。
    …(略)…どこにでもいた。似たようなのがどこにでも。
     『わたし』はその度に、あーあ、と思った。がっかりした。そう、本当に、心の底から、がっかりした。(pp.16-17、「スタッキング可能」)

    ▼『わたし』はいつか自分はがっかりしない男の人に出会えるんだろうかと想像してみた。望み薄だな。だってこんなにうじゃうじゃいるんだもん。うっじゃうじゃ。…(略)…
     『わたし』は絶望した。終わってる、この世界、終わってる、と思った。
     笑顔がかわいい。えくぼがかわいい。天然でかわいい。家庭的でいい。やさしい。
     男たちが好きな女のナイスポイントをあげつらうたびに、『わたし』はそんな女になりたくないと思った。死んでもなりたくない。
     …(略)それが当たり前だとどこでそう思ったのか知るよしもないが当たり前だと思い込んでいる男たち、そいつらに合わせてるんだかそうじゃないのかわかんないけど同じ思い込みの中にいる女たちの中で、そうしない女がいることを体現してやると心に決めた。これは戦いだと『わたし』は思った。(pp.17-18、「スタッキング可能」)

    ▼どうしてただここにいられないの。どうしてずっと女だって、自分は女だって意識させられないといけないの。どうして仕事と関係ないところで、いつも居心地が悪い思いをしないといけないの。どうしてそれ含めて仕事みたいな部分があるの。どうしてありがたく思わないといけないの。少しもありがたくねえよ。
     『わたし』は絶対それが普通だって思わない。『わたし』は絶対おもねらない。だまってずっと、おかしいって、馬鹿じゃねえのおまえらって、心の中でくさし続けてみせる。頭の中にあるデスノートに名前を書き続けてみせる。だって誰かがおかしいと思ったから、いろんな場所でいろんな人が同じように思ったから、声に出した人だけじゃなくて、声に出せなかったとしても思い続けた人がいたから、たくさんいたから、たった20年ぐらいでこんなに違うんでしょ。だから思いつづける。(pp.88-89、「スタッキング可能」)

    この人の新作『英子の森』も読んでみたいと思ったが、あいにく近くの本屋にはなかった。それで、とりあえずこの人が初めて翻訳したという『はじまりのはじまりのはじまりのおわり』を図書館で借りてみた。

    著者の名前は「あおこ」とよむ。

    ※誤字か?
    「もうすぐ結婚する女」の途中、私が会いにいったら、もうすぐ結婚する女がマスクをしていて、それで顔の全体を把握することが難しい…という箇所がある。

    ▼驚いたことに、もうすぐ結婚する女はマスクをしていた。もうすぐ結婚する女の顔下半分は、マスクに覆われていて顔の全体を把握することが難しい。…(略)…もしかしたら口の動きだけで私に何かを伝えようとしていた可能性はあるが、いかんせんもうすぐ結婚する女はマスクをしていたので、私が読心術を取得していたとしても役には立たなかっただろう。(pp.162-163)

    ここに読心術とあるが、マスクで見えなかった口元を見ての読【唇】術と書きたかったのではないか?誤字か?

    (一読:2014年4月22日了)

  • ちょっといいところもあるが、基本的に不可解。

  • 面白かった。

    マーガレットは植える ってもしかして
    そういうことなのかな?

    ウォータープルーフもヒートテックもいいな。
    「コトコト」もいいなー。

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著者プロフィール

作家、翻訳家。著書に、小説『スタッキング可能』『英子の森』(河出書房新社)、『おばちゃんたちのいるところ』(中央公論新社)など。2019年、『ワイルドフラワーの見えない一年』(河出書房新社)収録の短篇「女が死ぬ」がシャーリィ・ジャクスン賞候補に。訳書に、カレン・ラッセル『狼少女たちの聖ルーシー寮』『レモン畑の吸血鬼』、アメリア・グレイ『AM/PM』(いずれも河出書房新社)など。

「2020年 『彼女の体とその他の断片』 で使われていた紹介文から引用しています。」

松田青子の作品

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