憤死

著者 :
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 1284
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  • Amazon.co.jp ・本 (170ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309021690

作品紹介・あらすじ

「命をかけてた恋が、終わっちゃったの! 」失恋して自殺未遂したと噂される女友達。
見舞いに行った私に、彼女が語った恋の真相とは!?

綿矢りさの新たな魅力あふれる初の連作短篇集。

感想・レビュー・書評

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  • 表紙を開くと目に入るリボンのペーパー。
    紙もの好きにはたまらない。
    カバーをとると別の楽しみもある。

    このピンクのかわいらしい包装紙の柄は
    意外と綿矢さんのイメージにしっくりくる。
    (意外に、というのはわたしのなかで
    綿矢さんはかわいいイメージよりもきれいなイメージなので)

    プロローグのようにみえる「おとな」という作品に
    小さく驚き、読み返す。
    このまま一冊続いていくのかと思ったら
    まったく別の作品だった。

    どことなく推理小説っぽい。
    え、なに、どうなるの?と
    手に汗握るような感覚と似たようなものがあった。

    トイレの懺悔室なんて
    恐くなりました。
    (タイトルからして怖いけど)

  • どこにでも、意地悪な人はいる。

    年端もいかない少女に向けた興味本位の悪意、懺悔という形を取った恐ろしい告白と甘い餌で他者をコントロールする悪意、成金で自己陶酔の激しい不美人な同級生を観察し続ける悪意、人生ゲームに倣い、少年たちに将来陥る危機を予言する悪意。

    「世にも奇妙な物語」のように、どこか不気味で歪な短編集。

  • めちゃくちゃ良い!!
    表題作の憤死好き。
    拗らせ系女子2人とも客観的には嫌な奴ってかんじだけど、一生懸命で可愛らしい。特に佳穂は姫系な感じのところとうちに秘めた豪快さのようなものとの対比がよく伝わってきた。人の裏と表の表現が読者にもそのまま伝わってくるような言葉選びはさすがとしか言いようがない。

  • 短編集。
    「トイレの懺悔室」はゾッとしたし、「憤死」はこれぞ綿矢りさ!な女の子の話だし、なかなか面白かったです。短編なので読みやすいですし。
    「人生ゲーム」も私は好きでした。最後の方なんてちょっとグッと来てしまったし。
    でもやっぱり綿谷りさには性格のひんまがった女の子を沢山書いてほしいです。

  •  初・綿矢りさ。4つの連作短編集。冒頭の「おとな」を除いて、いずれの作品も小学校高学年〜中学校という時期のエピソードを大人になった主人公が振り返る形式で描かれる。人生において記憶に強く残っている人間関係やエピソードは誰にでもあるわけだが、その記憶の中の人物像と、それを回想している今の現実とのずれに焦点が当たっていて面白い。
     自分の思っている「他人の人物像」って、記憶の曖昧さと裏腹に「こういう人」という思い込みは強固だったりする。そして「憤死」のように、学生時代の個性的なキャラがさらにパワーアップしているなんてこともある。女性が主人公の「憤死」は、そういう意味で綿谷さんらしさ全開の悪意と皮肉に満ちた、それでいて嫌みじゃないむしろ爽快なストーリーで、これが彼女の真骨頂なんじゃないでしょうか。まあ、彼女自身の外見のアイドル性と作風のギャップにそのままマッチしてるし。
     一方で、男性が主人公の2作は、ホラー要素満載で、そのまま「世にも奇妙な物語」になりそう。「人生ゲーム」の世界観は結構好き。でももう一歩かな。

  • 2011年から2012年にかけて発表された四つの短編が収められている。
    最初の超短編「おとな」と「人生ゲーム」は初読。
    「トイレの懺悔室」と表題にもなっている「憤死」は文芸誌ですでに読んだものだ。

    「おとな」は小説というよりも作者自身の子ども時代の記憶に関するエッセイ風だ。

    「トイレの懺悔室」は綿矢さん初めてのホラー系作品。
    これは率直に言うとそれほど面白さを感じなかった。

    「憤死」は、以前雑誌で読んだ時は失望感を覚えた記憶があるのだが、
    あらためて読み直したら結構面白い。
    子ども時代から自分をお姫様と勝手に思っている友人とその後の再会。
    その友人は、毎度お馴染み綿矢りさ特有の勘違い精神分裂少女。
    そこでの友人の会話に対する表現。
    P94:様々な分野の自慢話を流暢に数珠つなぎして披露する彼女は、まるで自慢の露天商だった。
    この比喩はまさに綿矢節だ。

    「人生ゲーム」は、私の時代には一世を風靡した子どものボードゲームである「人生ゲーム」を題材にした、
    これもSFというかミニホラーというか、ちょっと変わった物語。

    四作品ともそれぞれ趣の異なった短編集。
    ところどころで、綿矢さん独特のオリジナリティ溢れる比喩と表現が楽しめる作品である。

  • 大学生のとき、知り合ったばかりの女の子が
    「ボニファティウス8世って、憤死したんだよ。怒って死ぬってすごくない!?」と興奮気味に言っていて、
    今も仲良い彼女に薦められて読みました。笑

    表題作の「憤死」は、「あー、こうゆう女の子たちいるだろうなぁ・・・程度の差はあれ」
    と思いながら読みました。
    人間の醜い心を少しユーモアを交えながら描写するのがうまいなぁ、といつも思う。

    「トイレの懺悔室」はちょっと怖くて、
    「人生ゲーム」も怖いんだけど、興味深かったです。

  • さすが!って叫びたくなる短編集。
    まず装丁。表紙がかわいい。まるっこいピンクの文字ででかでかとタイトル『憤死』。憤死ってあの世界史でやったやつ?どういうこと?て興味をもって1ページ、なんと中身は灰色!綺麗とは言い難い灰色の次にこれでもかと可愛くされた1枚。本の魅力はここにあるんだよなあ。

    **ネタバレ**
    ・おとな
    女流作家ならではの虚構と現実を曖昧にしてぞっとさせちゃう掌編。よくある感じの話ではあるものこのページ数でこんなに気持ち悪さを与えられるのはすごい。引き返すならいまだよ?って囁かれているかのような…。
    ・トイレの懺悔室
    ★5の原因。いや~これだけならホラーのアンソロジーに入れてもよさそうです。描写がじんわりしてリアルで怖い。匂いや湿気を感じそうになるほど。すごく続きが読みたいけれどここで切れてるからおもしろいというジレンマ。
    ・憤死
    可愛い。表題作だけあって綿矢りさっぽい。ふと笑みがこぼれます。
    ・人生ゲーム
    おお、最後がこれか。綺麗にまとめてる感じだけど生臭さは控えめで物足りない。7年付き合った彼氏と別れてすぐ結婚できるなんてうらやましい(そこじゃない)。人生ゲームやりたくなる!

  • おとな
    トイレの懺悔室
    憤死
    人生ゲーム


    装丁を見て、いつものような痛い女子のお話かと思っていたら、ホラーというかファンタジーというか、世にも奇妙な物語にありそうなお話でした。

    この中だったら、やっぱり憤死が一番好きです。
    女版スネ夫を冷静に見守る主人公。
    最初は復讐?と思ったけれど、いい具合に裏切られました。
    久しぶりに再会した佳穂の格好が痛々しいけれど、指摘できず、意図してのものなのだと気づいて行く様子とか、三階から飛び降りるシーンを想像するところ(しかも、ちゃんと着地する)とか。こんな風に、あんまりにも突き抜けられちゃうと、惹かれてしまう…のだろうか。

  • かわいくてユニークな装丁と「人生最大の恋に破れた」的なキャッチコピーから想像する内容からは、かなり斜め上をいっていた表題作でした。ほかの2編に比べるとそれでもまだ「作者らしい」といえるお話かもしれませんが。読んでいて、こういう話も書くんだと意外にも感じました。

    表題作は、まさに憤死という言葉に相当するやるせない憤りをただただ自分に向かわせた女性のたくましさ、傍若無人さが、ここまでいくともうすがすがしいくらいで、敬愛をいだく主人公とかなり同調しました。
    もうある意味、素敵。隣にずっとはいてほしくありませんが・・・!

    「トイレの懺悔室」と「人生ゲーム」ともに、後味がよろしくない、ホラーめいたお話。とくに前者は人のいやな恐ろしさに満ちていて、ぞっとする感じがしました。

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著者プロフィール

小説家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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