昨夜のカレー、明日のパン

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著者 : 木皿泉
  • 河出書房新社 (2013年4月19日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309021768

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昨夜のカレー、明日のパンの感想・レビュー・書評

  • 木皿泉さんは、生きるのがちょっぴり下手な人。。。
    人々が忙しく行き交う大通りからふっと逸れて、いつのまにか土手を降り
    川沿いをふらふら歩いているような人を描かせたら天下一品!

    『野ブタ。をプロデュース』の野ブタ、『セクシーボイスアンドロボ』の三日坊主。
    個人的には『Q10』の、病気で留年して入院生活を送る久保くんが忘れられません。

    初の小説となるこの本にも
    夫を喪って何年も経ち、新しく好きな人ができても
    義父とのゆるゆるした日常を手放すのはなんだかめんどくさいと思ってしまうテツコ。
    たまに薀蓄のある素敵なひと言を口にするのに、いかにもな悪女に引っかかって
    お金を騙し盗られても、しばらく気づかないで右往左往するギフ。
    見ず知らずの子どもを心配して貯めていた結婚資金をはたき
    名刺の裏に書きなぐった「魔法のカード」まで一緒に手渡してしまう岩井。
    笑顔を作れなくなって仕事をやめた、元キャビンアテンダント。
    顔面神経痛で、いつもヘラヘラして見えるようになってしまって信用を失い、
    仕事をやめた、元お医者さん。
    怪我で正座できなくなって(以下同)。。。元お坊さん。
    などなど、不器用で、滑稽で、でもいとおしい人たちの物語が
    生き生きと綴られています。

    中でも特に、『パワースポット』での
    CAなのに笑えなくなって、毎日仏頂面で空を眺めているせいで
    ギフとテツコに「ムムム」とあだ名をつけられた宝と
    同じように図らずも仕事を辞めねばならなかった元医者、元僧侶トリオの
    あっけらかんとした未来予想図と
    『魔法のカード』での、分厚い札束でも救えなかった少女を救う、即席の魔法のカード。
    フォアグラを乗っけたステーキで、もりもりエネルギーを充填するのではなく
    おばあちゃんが漬けた梅干しをひとつ入れたおかゆで
    じわじわ心も身体もあたためるような心地よさに包まれます。

    昨夜のカレーを食べてまったりしていたところにおつかいを言い渡され
    しぶしぶ明日のパンを買いに出た少年が
    明日のパンのように、明日のパン以上に未来を照らす、大切なものに出会う最終話。
    それまでの小さな物語がはずかしそうに手をつないで
    「これでいいよね? これでもよかったんだよね?」と語りかけてくるようで
    思わず「うんうん」と頷きたくなってしまうのです。

  • 最後の最後で、タイトルの理由を知る。
    なるほど、そう来たか!うーん、素敵♪
    読み終わった後におなかがポカポカしてくるような感覚。
    この本の暖かさ優しさが体の隅々までしみじみと染み渡る。
    うん、元気が出てきた。
    明日からまた頑張れそうだ。

    図らずもこの本の前に読んだ山田詠美の作品とテーマは重なっていた。
    大事な人を亡くした後をどう生きるか。
    一見重いテーマのように見えるが、この本には暗さはみじんもない。
    28歳で亡くなった一樹、その妻のテツコ、父のギフ、そして3人にかかわる人たち。
    それぞれのエピソードに死の影がちらついてはいるが、悲しさはそこにはない。
    むしろおかしみがある。

    身近な大事な人を失って、途方に暮れて悲しむばかりが人生ではない。
    生きている限り前に進まなければならない。
    それは決して死者を忘れるわけではない。
    決して忘れない。忘れないけれども前に進む。
    そうすればきっと新しい未来が開ける。
    そんなメッセージを感じた。

    ああ、いい作品だったな。
    木皿さん、有名な脚本家らしいけれどまったく知らなかった。
    たまたま図書館の新刊コーナーに並んでいて、ブクログ仲間さんの素敵なレビューを思い出し手に取ってみた。
    誰も借りてない、一番乗り。
    この本が私を待っていてくれたのか。
    運命的だな、とひとりごちだりして・・・。

  • ぼんやりと生きている。
    何のためにとか、どうなりたいとかあまり考えず、毎日毎日楽しみなことを指折り数えて、時には「ここまでは頑張って生きよう」なんて決意しながら。

    人生設計という言葉がある。
    何年後にどうなっていたいかを考えて今から準備するべき、らしい。
    職場の人と話していると「どうなりたいの?」とよく聞かれる。
    例えば、管理者になりたいとか、プログラマになりたいとか、そういう回答を求めているのかな…?と思うが、別にどうこうという希望はないのです。
    穏やかに生きていられればいい。

    ただ、「希望がない」と言う時の罪悪感は何だろう?
    私はダメな人間だと思わされるあの瞬間の雰囲気。
    成長のない人間というレッテルを貼るかのような視線。
    あぁ…息が詰まる。

    キャリアアップするべく勉強すること。
    老後のことを考えてお金を貯めること。
    未来のことを考えて今を生きている人は眩しい。
    でも、同じようにすることを想像すると私は息が苦しくなってしまう。
    社会の流れに置いて行かれないように、前や周りを見て歩幅を調整しているように見てしまう私はひねくれているのかもしれない。

    そして、「私は私」と言い切るだけの強さがない自分にうんざりしてしまう。
    置いて行かれるのが怖いのは同じなのです。
    むしろ誰よりも怖がっているのです。情けない。

    この物語の中の人達は私と同じとても無力な存在だと思った。
    苛立ち、泣いて、笑って、少し先の未来に怯えてもいる。

    だけど、とても、とても優しいのです。
    弱いし、失敗するし、落ち込むし、迷惑をかけるし、嘘もつく。
    でも、優しい。本当に優しい。

    緩やかな毎日の中で少しずつ変わっていく自分自身を感じて生きること。
    永遠に続くわけではないこの時間を慈しむこと。
    パッと見には大きな変化が見えないそんな生活にも成長はある。
    成長という言葉が相応しくなければ、ただ変化と言ってもいい。

    岩井さんが毎日会社で働いて貯めたお金を魔法のカードの魔法に変えてしまったような、そんな人生。
    騙されたら辛いし、痛いし、きっと馬鹿な行いなのだろう。
    でも私はそんな人生が愛おしい。

    確実な幸せや安定をつかんでほしいと願ってくれている人達にごめんなさい。
    勧めてもらう道が私には確実なものだと思えない。
    テツコとギフと岩井さんの過ごす時間の流れに身を置きたいと願ってしまうのです。

  • 今朝、NHKの「あまちゃん」を見ていたら、
    20年ほど前、家を出て東京に旅立つ日に母親が駅に見送りに来てくれなかったことを、
    今になっても「母親から認められなかった」と感じているキョンキョンが、
    「実は鉄橋の下から大漁旗を振って見送っていたんだよ。」と
    その当時を知る人から教えられ、絶句しているシーンに出くわした。
    キョンキョン、よかったね。
    当時、自分の目で見ることができたなら一番よかったけれど
    それでも今、知ることができて本当によかった。
    教えてくれた人がいて、ようやくその日の2人がつながったんだなぁと思った。


    TVドラマの人気脚本家の作品ということで、とても楽しみにしていた本です。
    「野ブタ。をプロデュース」も「Q10」も見ていたので。
    どちらも旬のアイドルが出演するということで見始めたけれど、
    とてもよかった。
    何気ない一言にずいぶん泣かされた。
    押しつけられた感動ではまったくなく、見入っているうちに涙がすーっと流れるような。
    人の寂しさ、無常感、相手を思う気持ち、友人、親子の情。
    見終わったあとに、余韻が残るドラマだった。


    それと比べると、ずい分抑えられているなあと思う。
    淡々と穏やかな筆致で描かれているが、印象に残る言葉はもちろん多い。

    「無駄ってものがなかったなら、人は辛くて寂しくて、やってられないのかもしれない」(P151)
    「動くことは生きること。生きることは動くこと」(P236)
    「この世に、損も得もありません」(P236)

    7年前に亡くなった一樹の嫁のテツコと、一樹の父のギフは今も同居を続けていて、
    親子のような、同志のような、友人のような・・・。
    7年たって当時の深い悲しみからは解き放たれているように見えるけれど、
    時折寂しさとともになくした人をが思い出される。
    2人につながる人たちが一樹との別れで感じた寂しさや後悔と、
    その後の彼のいなくなった暮らしぶりを描いていく。
    そこには目に見える、またはまだ気づかない繋がりがある。

    人がつながっていく話は希望が持てる。
    人との別れがあっても、穏やかで明るい気持ちが湧いてくる。
    それでも、先のキョンキョンではないけれど、
    つながらない気持ち、気づかないままの気持ちのなんと多いことか。
    本やドラマでは、すれ違いや誤解の場面を見るたびに歯がゆい気持ちになるけれど、
    現実には気づいていないだけで、そんな事ばっかりなんだろうね。
    近すぎて見えないことも多そうだし。
    もうちょっと目を凝らして、人の気持ちに思いに馳せないと、
    もったいないなと思った朝の出来事でした。

  • 25歳の若さで
    この世を去った一樹。

    結婚からたった二年で遺されてしまった
    一樹の妻のテツコ28歳。

    そんなテツコと
    7年経った今でも一緒に暮らし続ける
    一樹の父で気象予報士のギフ。


    「すいか」「野ブタ。をプロデュース」「セクシーボイスアンドロボ」「Q10」など
    数々のテレビドラマの名作を生んだ人気脚本家、木皿泉による
    家族の再生を描いた
    初の連作長編小説。


    今年読んだ小説の中で文句ナシの一等賞。

    さすがと言おうか
    なんと言おうか
    タイトルからしてもう
    秀逸過ぎます。
    (ちゃ〜んと意味があるのですよ)



    心の名言集にストックしておきたい
    含蓄あるセリフの数々。

    会話がとにかく軽妙で
    脱力感たっぷりで面白いし、

    手の甲に忘れないように書いた「ガス代」や
    顔面神経痛で
    いつもニヤニヤしてしまう産婦人科医など
    リアリティ溢れるエピソードの数々は
    木皿さんの観察眼の賜物だろうし、

    容易に風景が浮かび上がる文章は
    極めて映像的だし、
    (傷ついた者たちで作るパワースポットという名の小さな惣菜屋がありありと浮かんできました)

    さすが名脚本家!
    初めての小説らしいけど
    いやはや脱帽です。


    読みながら
    どこか懐かしさを感じでいたけど、
    なるほど
    コレは昭和のホームドラマの匂いなんやって
    腑に落ちました。


    ある日突然、笑うことができなくなった
    一樹の幼なじみの女性、ムムム(タカラ)や
    甘いものが好きで
    ちょっと変わり者の
    テツコの恋人・岩井、
    凛とした山ガールの「師匠」など

    傷を抱えながらも
    心のやりとりを決しておろそかにしない
    血の通った登場人物たちに
    どれだけハートを持っていかれたことか。


    誰かの死や悲しい記憶を人は抱えて
    変わることを繰り返しながら生きていくし、
    そのことだけが人を救ってくれる。


    忘れず
    とらわれず生き続けていれば、
    亡くなった人の
    笑顔を見る時が必ず来る。

    哀しみにも終わりはあるんですよね。


    何かにとらわれ
    立ちすくんでしまいそうになった時は
    この小説を思い出そう。

    あなたを照らす
    三日月の光になってくれる、
    あたたかで
    普遍的な強さを持った小説です。


    ギフさん、俺も
    ドボドボのウスターソースにひたして食べる焼売
    大好きですよ(笑)

  • ギフ(義父)と二人で暮らすテツコ。
    夫の一樹は、結婚2年で25歳の若さで亡くなった。
    あまりに早い別れを受け入れかねたまま、一樹と結婚したという事実を軸に、穏やかな暮らしを重ねる日々。
    それが7年にもなるのだが‥
    テツコには付き合っている男性も出来たが、結婚は考えられない。

    一家の隣人、一樹の従弟など、一樹をめぐって思わぬ話が展開します。ドラマチックというのではないけど、ささやかできらっと心に残るような。
    一樹の母・夕子ももう亡くなっています。
    穏やかなギフは暮らしやすい相手だが、彼も完璧な人間というわけじゃなかったんですね。
    夕子の視点、一樹の視点からの話も含めた、短編連作のような形。
    こういうの、好きです。

    軽くなりすぎず重くなりすぎない現実味と、はかなさ、切なさ。
    人が関わり合い思い合い、完璧ではない道行きをふと寄り添わせていく‥
    悲しみを抱えつつ、しだいに解けてゆく心。
    最後に持ってこられた出会いのすがすがしさが印象に残ります。
    ほっとするような温かみがありました。

  • また一人、大切にしたい、読み続けたい作家に出逢えた。
    テツコ、ギフ、岩井、そして一樹。
    時間を行ったり来たりしながら、気づきたいコトに気づかせてくれました。
    とても良い小説でした。

    ムムム
    ふっと楽になれる…そんな気がした物語でした

    パワースポット
    悲しいとか辛いとかじゃない「助けて」
    近しい人の死に直面したときの言葉をもらった気がした

    山ガール
    大切な温かいものを掴めそうな気がした

    虎尾
    曖昧だけど確たる信を得られそうな気がした

    魔法のカード
    求めていたものが在ると気がつく。それは幸せなことなんだな、そんな気がした

    夕子
    たんたんと紡がれる言葉に、しずかに積み重なる幸せと哀しみが同居していた。そんな気がした。

    男子会
    時が流れた。必要な時間が流れた。
    「人は変わってゆくんだよ。それは、とても過酷なことだと思う。でもね、でも同時に、そのことだけが人を救ってくれるのよ」
    とてもよくわかる。そんな気がした。

    一樹
    「動くことは生きること。生きることは動くこと。」
    深く刻まれた気がした。

    良かった。木皿泉さんの本に出会えてよかったです。
    木皿泉さんの二作目が楽しみです。

    私の本棚にまた一冊並ぶ本ができました。

  • 失った者の記憶を抱え生きる人々の、日常生活を描いた連作短編です。

    若くして夫を亡くしたテツコと、夫の父で妻に先立たれたギフ。
    ひとつ屋根の下に暮らす2人の日常は、微妙なバランスの上に成り立っているようです。
    どこかで「このままではいけない」と思いつつも、今の暮らしを壊すこともできない。
    それでも日常はまわり、ゆるゆると変わっていくものがある…
    私たちの日常は小さな変化の連続であることを意識させられる物語でした。

    木皿泉というのが、脚本家夫婦のペンネームであることは初めて知りました。
    夫婦で、嫁と義父の物語を作る…というのは、どんな感じだったのでしょう。
    創作現場を覗いてみたい気持ちになりました。

  • この話好きだなぁ。
    表紙もタイトルも、なんかいい感じ。

    TVドラマの脚本家夫婦の処女小説とのことで、これも構成がとても巧くてすぐ連ドラにできそう。
    「すいか」や「野ブタ」「Q10」とか、割とおもしろく見てました。

    読み始めは、余白が多いなぁとか、ところどころのカタカナ使いがアレだなぁとか、雑念まじりで読んでいました。
    でも、物語が進んで絡んできたら、それぞれの気持ちのやり場や持ちようが見えてきて、いろいろ分かってくるとねー。
    みんなみんな、不器用で一生懸命でとても愛おしい。
    岩井さんなんて最初あちゃーと思ったけど、最後すごい好きになってた。

    「虎尾」あたりから後半は泣けて泣けて。
    その中にもクスッと笑えるところや、チャーミングなところがあって。
    何気ない一言が、ものすごく深くて。
    よくある「喪失と再生」の物語ですが、底にあるメッセージがシンプルで力強く伝わってきます。
    広がり方も、終わり方も、じわーっと悲しくて切なくてやさしくてよかった。

  • 一樹が死んで7年経った今もギフ(義父)とギフの家で暮らしているテツコ。
    二人の関係は熟年夫婦のようにのんびり心地よい。
    ふたりの間には暗黙のルールがあって、線引きをしているのもいい。
    そんなふたりが周りの人達を癒し、また周りの人達から癒されながら生きていく。
    そんなある日、岩井がテツコにプロポーズをした。
    ギフとテツコの関係はどうなるのか…

    ギフとテツコも最初からこんな関係ではなかったような気がする。
    暮らしというものがあるあの家で生活することによって、愛する者を亡くした者同士、遺された者同士の間に不思議な絆が育っていったのではないだろうか。
    そこにはきっと亡くなった一樹も一緒にいた。
    ギフとテツコ、失くす痛みを知っているだけにお互いが相手を残していくことが出来なくなってしまったのではないか。
    愛する人を失くす気持ちはどこまで辛いのだろうか。

    一つ一つの章で心に響く言葉があり、はっとさせられた。
    特に気に入ったのは、「動くことは生きること。生きることは動くこと。」
    そうだよね。幸せだよなぁって思った。

    最後の章で『昨夜のカレー、明日のパン』という言葉が出てきたときに、一樹のあの言葉が活きてくる!

    「魔法のカード」の章は苦手。ダークな心を持った私はイラっとしてしまった。
    一番好きなのは「夕子」頷きながら読んだ。

    生きるということ、暮らすということをふんわりと教えてくれる物語。
    ゆるゆるしたい人にはオススメ、ドキドキハラハラしたい人には物足りないかも。

  • 気になる書名で、ずっと読みたいと思っていて、ようやく手に取れた。

    それで、『ムムム』を読みながら、ギフと岩井さんの人間性に「こんなひといたら惚れる!」ときゃわきゃわ興奮した。

    で、木皿泉ってだれだっ!と気になり巻末の著者紹介みたいなとこ読んだら、「すいか」の脚本家さんだったーー!!

    うわー、そりゃ、好きなはずだ。うん。この世界観、たまりません。


    思わず勢いでブクログにやってきてしまった、さぁ続きを読もう。

    ***

    読了。

    生活の匂いのする、すてきな話だった。

    亡くした夫の義父と暮らすテツコの話、なんて言うとしんみりした内容のように聞こえるけど、すごくふわんとしてて、それこそ焼きたてのパンみたいにあったかい話でした。

    また読む。きっと次に読むときには、違うことを思う。

  • 亡くなった夫、一樹の古い家にギフと暮らすテツコ。
    一樹の幼馴染で隣に暮らすタカラ。
    一樹に憧れる従兄弟のトラオ。
    テツコの彼氏の岩井。
    一樹の母、夕子。

    ぼんやりとした不安。喪失感。
    なのに、人が交差することで少しづつそれが埋まっていくよう。
    「オレたちってさ、生死を共にしてんだよなぁ」
    「オレたちって、誰?」
    「同じ星に生まれたオレたちだよ」

    現在、過去、未来と時間軸が微妙に前後して、登場人物たちをあちこちから照らす。
    パワースポットの三人は新井素子の怪盗を思い出した。走れない泥棒、殺せない殺し屋、あとなんだっけ。

    どの人も、詐欺師ですら悪人とは思えず。男性陣のすっとぼけた空気がたまらない。
    ギフ、銀杏食べすぎ。秘密大きすぎ。
    いくつなんだろ。現役ですなー。
    そんなふうにフフフと笑っていたら、
    あ、ラストで持っていかれた。
    思わず息をとめてしまった。
    すべてがタイトルにこもってたか。

    「動くことは生きること。生きることは動くこと」
    「この世に、損も得もありません。」

    「本当にあったことでも、いずれは記憶の中で、曖昧になってゆくだろう。本当かどうかなんて、どうでもいい気がした。そういう記憶をまといながら、どこへ行くのかわからないけど、オレはゆるやかに変化してゆくのだ。それでいいじゃないか。」

    最後にパッと鮮やかに色がついたようだった。
    また最初から読んだら、こちらの喪失感が大きそう。

  • 木皿泉、という方は脚本家2人の協同ネームで、ご夫婦なのだそう。

    ギフとテツコを軸にした短編集なのだが、7年前に病で亡くなったギフの息子でテツコの夫である 一樹の存在が、さまざまな立場から語られる。
    一樹だけではなく、ギフの妻 夕子も死者として登場する。
    最近の日常の中ではあまり感じない 死を 抱きかかえるように共に暮らす生活は なにか 滋養のあるもののように感じられる。

    夕子がギフと結婚した経緯が良い。
    傍目にはきっと引っ込み思案で大人しいだけに見えるであろう夕子が、実に爽やかでキッパリとした感覚・価値観を持っていることに感銘を受ける。

    2014本屋大賞2位

  • 七年前、二十五才という若さであっけなく亡くなってしまった一樹。
    結婚からたった二年で遺されてしまった嫁テツコと、一緒に暮らし続ける一樹の父、ギフは、まわりの人々とともに、ゆるゆると彼の死を受け入れていく。(帯より引用)

    これ、すごいすきです。
    いい。すごくいい。

    テーマは重たいはずなのに、ふんわり柔らかくて、ぽかぽかしていて。不思議な空気。ゆるゆるだ。言葉の魔法だ。

    それから、ギフ。
    ギフ、ずるい。
    ギフ、かわいすぎる。

    ギフは小日向文世だな!と決めて読んでたら、倍愛おしくて。笑

    どのお話もとても素敵だけど、私はギフが家出してテツコの恋人岩井くんの家に転がり込むお話がいちばんすきです。

    彼らはギフの家で三人で暮らしていくのかなあ。いくんだろうなあ。いってほしいなあ。

    そして、映像化する際はギフ役をコヒさんに!お願いします!土下座

  • ドラマ『すいか』などの脚本をした木皿泉さんの初めての小説。疲れたときに読みたい一冊。

    これと言った大事件が起きるわけではない。謎解き要素もない。

    台詞が多くてさらっと読めてしまうが、軽いとは思わない。

    登場人物の話すことばの一つひとつが木皿さんのメッセージなのかなと。

    好き嫌いが分かれる作風だと思うが、個人的は大好きな作品。

  • 初めて木皿さんの存在を知った。今流行ってて波にのってしまった感じ。

    でもやっぱりいいですね。ほんわかしてて。
    ほんわかしてるけど、それぞれがやっぱり人生を悩んでて、
    全てがだらけ過ぎてるわけじゃなく。
    その間合いがすんごく惹かれた。
    登場人物がみんな魅力的だし。
    岩井さん、優しくて憎めない奴で好きだな~

    タイトルはそういう事だったのかと、最後に知る。
    これからも木皿さんの作品読んでみたい。

  • 生きていくってことはいろんな細々したことに毎日、慎重にそして大胆に向き合ってゆくことなんだなぁ。
    一人の死の周りの人たちの連作短編集。

    時系列にもなっていないし、直で接点があるようで微妙なつながりの人も登場しますが、それはそれで気付きに気付いて楽しい。(変な表現(*^^)v)

    私は『夕子』がよかったけれど、ジンとくるところはひと様々でいいのでしょうね。

  • 良かった。とにかく今の私のは良かった。
    特にギフとタカラが「くたくたにまるまで生きる」と言い合うシーン、
    泣けて、泣けて涙が止まらなくなり
    声を上げて泣いてしまった。

    ああ、こんな風につながっているのかと、
    最後のページを惜しみながら閉じて今、
    再び、泣いている。

    落ち着いたら、もう一度、読み直し、考えてみるつもり。

  • 登場人物がみんな魅力的。「とにかく手元に置いておきたい」という一冊に出会った感じ。読み始めてあっという間に引き込まれ、気づいたら身も心も軽くなっているような、素晴らしい小説でした。言葉で表現するのは難しいけど、こういう生き方したいなぁと感じます。普段普通に使ってる言葉でも、一言一言がこの本の中ではとても丁寧で、じんわり心に沁みる感じがした。

  • 【要旨】悲しいのに、幸せな気持ちにもなれるのだ―。七年前、二十五才という若さであっけなく亡くなってしまった一樹。結婚からたった二年で遺されてしまった嫁テツコと、一緒に暮らし続ける一樹の父・ギフは、まわりの人々とともにゆるゆると彼の死を受け入れていく。なにげない日々の中にちりばめられた、「コトバ」の力がじんわり心にしみてくる人気脚本家がはじめて綴った連作長編小説。

    連作短編集
    「ムムム」・・・笑わなくなった隣の宝さんの話題
    「パワースポット」・・・タカラが笑わなくなった理由
    「山ガール」・・・山ガールと山登り
    「虎尾」・・・従兄弟の虎尾と一樹の車
    「魔法のカード」・・・小学生に騙された岩井さんの3枚の魔法のカード
    「夕子」・・・涙が止まらない夕子の話
    「男子会」・・・突如家出して岩井の家に転がり込んだギフの話し
    「一樹」・・・昨夜のカレー、明日のパン

    ギフが魅力的。テツコさんの淡々とした感じいいなぁ。一樹とテツコさんの話しもっと読みたかった。
    岩井さん、夕子さん、虎尾みんな最後は魅力的に感じるから不思議。
    大げさなことが起きるわけじゃなく、淡々とした日常のやり取りなんだけれど、何とも言えない暖かな気持ちになる、そんな1冊。
    こういう本はどこがどういい!と勧めるのが一番難しいけれど、感性の合う人には、凄く心に残る本だと思う。
    有名脚本家の小説第1段らしい、、、今後も書いてくれるかな?期待大。

  • 2015.09.09.読了

    とっても心温まるお話。
    今読んで良かったのか、
    良くなかったのか。

    テツコさんも ギフも 岩井さんも
    とても人間味の溢れる素敵な人たち。

    重苦しい題材のはずだけど、
    何があっても時間は過ぎて行って
    段々色々な関係も変わっていく。

  • ドラマを先に見たのですが、一味違った良さがありました。原作に遊び心を加えたようなドラマでは登場人物たちが相手を思いやる姿に心があたたまり、小説を読むとあのセリフの裏にはこんな物語があったのかと納得。セットで大切にしたいと思える作品です。

  • 夫亡き後、二人で暮らすテツコと義父、そしてその周囲の人たちを主人公に進む8編の連作短編集。
    テツコと義父、二人の距離感がなんとも言えず良い。作中通して漂うゆるく柔らかい空気も心地よく、温かい読後感。不器用な登場人物たちみんな愛おしい。

  • 静かなお話、という読後感。
    悲しみを共有し、ギフと共に生きている主人公。
    前に進めて、良かった。
    題名の意味が最後に分かるところが、
    特に好きでした。

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昨夜のカレー、明日のパンの作品紹介

人気脚本家、木皿泉のはじめてのる連作短編小説『昨夜のカレー、明日のパン』は、第11回本屋大賞 第2位に輝き、2014年10月には仲里依紗主演でドラマ化されました。
主人公のテツコは、19歳で結婚し2年後に夫が病死してしまいます。家族でありながら血のつながらない義父との関係を軸に二人の周りの人々を丁寧に描いています。彼らの日常はどこか温かく、読者をしあせな気持ちにしてくれます。

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