- Amazon.co.jp ・本 (181ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309022819
感想・レビュー・書評
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河出書房新社も新書を出しているとは気づかなかった。その名も「河出書房新社の新書」。装丁も含め、これだけ新書が出ている中でちょっと地味な存在だが、こんなんで棚を取れるのだろうか。ちょっと心配。
その地味なラインアップのひとつがこの本。神谷美恵子「人間を見つめて」。特に言うことはないが、飲み屋で昔の担任の先生に偶然に会って、あらためて諭される気分。特に目新しいことはない。でも、なんか忘れていたことを思い出させられた。気合いが入らないとき、これを読むと静かにギアが入るような感じか。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
人は動物脳を持っているし、新しい脳があるからこそ地球で色んな事が出来ているけど、所詮宇宙から見たらほんの一部でしかない。
そう思うと、私ごときが気にしすぎて考えすぎた所でどうにかなるわけじゃなないのにあれこれ思いこんでいる自分が恥ずかしくなりました。 -
「人間を越えるものを想定し、それに支えられているものとして、生命や人間や死を考えなくては、人間は安心して生きることができないものだ」 「判断力を養うには、まず出来合いの観念やおきまり文句を殺りくすることから始めなくてはならない」
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文系としても理系としても秀でている神谷美恵子さん、その言葉は優しく易しく深く、
寒くておなかがすいている時に飲む温かいスープのよう。
他の彼女の本同様、たびたび繰り返し読みたい本です。 -
2016.09.27
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ふせんだらけになってしまった。精神科医としての視線だけではなく人として人間の深いところを探究しわかりやすい言葉で表現されている。畏れ多くも価値観が驚くほど合致した文章を著書に発見できたのは星野道夫さんと神谷美恵子先生。
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優しさに溢れた、心にしみる哲学書。
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たまたま仕事帰りに立ち寄った本屋で見つけ、神谷美恵子が文庫で読めるとはという驚きとともに迷わず購入。
神谷美恵子は学生の時に「生きがいについて」を読んだ時の印象が強く残っている。青臭いとも受け取られがちな人生に関わる問題を恥ずかしげもなくそのまま受け止め、冷静な分析を加えていく、しかし、冷静である一方で泥臭く思い悩む姿も垣間見える。そんな印象。本の内容を覚えているというよりは、その文章にあらわれる雰囲気、人となり、力強さなどが強烈だ。神谷美恵子ほど力強い文章にはめったにお目にかかれない。
この本では、前著「生きがいについて」で客観的、分析的に見極めた「生きがい感」について、"人生というものを根底から問いなおすことなしに、ただ表面的にいきがいとうものをあげつらうことへの空しさ"を感じ、"前著で考えたりなかったところを考えてみる必要がある"としている。さらには、昨今の生きがい論へのアンチテーゼでもあると。
神谷美恵子がその考えをとりとめなく読者に語りかけてくるような本だ。文章は平易だが、読み手は著者とともに考えることになる。前著と比べれば重厚感はないが、内容は簡単ではない。何度でも読み、大切なことを考えることのできる良書だと思う。
第一章は生命にについて、そして人間に特有の条件について考える。第二章は"主体性"、"反抗心"、"欲望"、"生存競争"、"使命感"といったさまざまな観点から人間を捉えていく。神谷美恵子は決して読者を、また、自分を甘やかすことがない。現実をありのまま受け止め、それでも絶望することはなく、泥臭く考えていく。この狂人な思考力というか、考える体力とでもいいたくなる力はどこからくるのだろうか。
・自分が置かれた立場、制約の中で主体的に生きること。
・主観的に「生きがい感」を感じるか否かはそうたいした問題ではない-永遠の相のもとに-人生を捉えること
・人生は生存競争に振り回され、努力とかよい心がけだけで人間が幸福になれるとは限らない。
そして、第三章「人間をとりまくもの」では、"人間を超えたもの"を想定し、それに支えられたものとして、人間を捉えなければ人間は安定して生きられないと結論づける。存在してしまっていることを引き受けること、そして永遠の相のもとに自己の生を捉えることを-そのことの難しさを知りながら-説く。
われわれは何かをすることに意味を見出そうとし、ただあるということに満足できない。日常の忙しさにかまけて存在そのものに思いを巡らすことはない。われわれは現実を受け入れず、ああであったなら、こうであったならと考えてしまう。神谷美恵子の結論を本当の意味で理解することは簡単ではない。