きみのために棘を生やすの

  • 河出書房新社
3.54
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本棚登録 : 428
感想 : 57
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  • Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309022963

感想・レビュー・書評

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  • “君”のために生やした男女それぞれの“棘”が、読み手の心にも刺さっていくアンソロジー集。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    窪美澄さん目当てで図書館で借りたのですが、すでに単行本で読んだことのあるお話でしたが(「朧月夜のスーヴェニア」)、戦時中の!燃えさかるひとときの恋を抱え続け、それを支えにして現代まで生きる主人公の姿がとても好きだったので、二度読みしてしまいました。

    他の4編も短編とは思えない濃厚さ、なかなかの“棘”っぷりに、圧倒されました。
    どのお話も性描写がなかなか生々しいので、そういう部分がニガテな方は、少々面食らってしまうかもしれないので注意です。

    きっと、この世の中にはこんな“棘”が、今この瞬間もそっと生えているのかもしれない…と思いながら、おおっぴらに語られることのない人間の部分をほんのすこしだけ、知った気になりつつ、本を閉じました。

  • 戦地に行った許嫁を裏切って、空襲の襲うなか他の男との関係を持った若き記憶。―窪美澄
    女たらしと周りに言われながも飄々とするなかで唯一嫌いだと言ってきた女。―千早茜

    発情して無精卵を生む文鳥とうまくいかない恋愛の連続。―彩瀬まる

    奪われることだけに快楽を得るから、過ちを繰り返す日々。―花房観音
    芸能界で、光り輝く前のたまごたちをついばむ衣装さんの欲望。―宮木あや子

    お、おうって感じ。
    棘を生やして、盾にして時にしたたかに強く、生きる女。

    千早さんのが一番きみのために棘を生やすって感じだった。)^o^(

  • 女性作家が女性の為に書き下ろした、匂いたつ珠玉の恋愛官能アンソロジー。
    窪美澄、千早茜、彩瀬まる、宮木あや子、花房観音、みんな好きな作家だった。

    テーマが「略奪愛」ということで、横恋慕や心変わりなど、ほんの少し脇道にそれた恋愛が描かれています。
    なかでも印象的だったのは彩瀬まるさんの「かわいいごっこ」。
    ぬいぐるみみたいにかわいい小鳥が、うさぎが、生き物(寧ろナマモノ)だと気づいた時の、あの生々しさよ!
    それは女の子にもあてはまるんだよなぁ…。色んな意味で揺さぶられる内容でした。

  • 窪さんの名前とタイトルに惹かれて。読後に後からテーマが略奪愛だったと知る。どの作品も見事に痛々しくて文体も揺れなくて、短編集なのにじっくりと一作一作読めた。特にかわいいごっこ、卵を産む鳥と孤独感を混ぜるとは思わなかったし、結局は何も手に入らないことに気づくあたりが何故かリアル。

  • 女性作家5人による略奪愛を描いたアンソロジー。タイトルにある女の棘に男達が翻弄される様が生々しくたまりません。この作品に登場するどの男にも共感しながら読了。毒や棘のある作家さんばかりのお話は面白かった。

  • どのお話も良かった。粒揃い。
    毒は強いけれど闇が深くないのも良いです。恋愛小説にキュンを必要としてないのでこの空気が落ち着きます。
    好きな女性作家さんばかりだけれど、女性視点の話ばかりではなくて男性が主人公のお話があるのもバランスが取れていていい。
    経験するとキツそうなお話ばかりだけど、この感覚はわからなくもないと思うので恋愛ってこういうもんだな…となるのはもう若くないです。

  • もっと厭らしい感じの作品ばかりかと思っていましたが、下品さはなかった。
    二作がなかでも突出してよかった。

    「朧月夜のスーヴェニア」窪美澄
    どんな意地の悪いばあさんの話かと思いきや、読み終わった頃にはすっかりしんみりしてしまった。戦時中は実際にこんな叶わぬ恋や愛する人との死別も沢山あったのだろうなぁと思い、ノンフィクションのように感じた。本作が一番ドキドキした。

    「かわいいごっこ」綾瀬まる
    弘樹とこのまま上手くいくのかと思いきや、、すれ違い、あっけない別れをした時は自分が若菜に感情移入していることに気づいた。
    男性の自分では決断ができない、人任せな感じ、すごく経験がある。それ故でもあります。
    ラストの文鳥のツンデレっぷりにもっていかれました。

  • 帯によると略奪をテーマにした官能アンソロジー。
    今話題の豪華なメンバーによるものです。略奪と聞くと「奪い取る」イメージが強かったのですが、この作品は、自分が生きていくために、生きる上に、本能のまま行動しているという感じでした。窪美登さんと花房観音さんの作品はぞくぞくっときました。
    女性のための官能といえばいいのか、そこまできわどくあるわけではなかったので、読みやすかったです。

  • 千早さん目当てでしたが、「略奪愛」がテーマのアンソロジー、しかも5人中3人がR-18文学賞受賞、他の2人も泉鏡花賞や団鬼六賞受賞者…ツワモノぞろいですがなー(^^;;
    結論から言うと、文章も内容も非常に芳醇&濃厚で、とてもよかったです(*^_^*)
    恋愛モノも女同士のドロドロも苦手だけれど、このアンソロジーにはそれらの要素はほとんどなく、正々堂々いっそ清々しいまでの官能さがあるのみ!
    一歩間違えば「アブナイ女」ばかり?いえいえ、これぞ女の生きる道。なんかもう、すごい爽快な読了感でした(*^-゜)b
    文庫化したら購入したい。
    お気に入りの千早さん、宮木さんはもちろん、初読みの窪美澄さん、彩瀬まるさん、花房観音さん、全ての作品が良質でした。
    甲乙つけがたいけれど、「それからのこと」がベストかな。「かわいいごっこ」「蛇瓜とルチル」もいい。
    朧月夜のスーヴェニア/窪美澄
    おばあちゃんだって女なんです
    夏のうらはら/千早茜
    狭い町での不倫ごっこ。嫌いは嫌いじゃないんです。
    かわいいごっこ/彩瀬まる
    文鳥なんかに負けないぞ。
    それからのこと/花房観音
    その瞬間だけのために女は生きているのです。
    蛇瓜とルチル/宮木あや子
    出ました鉄板アイドルもの!すっかり市民権。

  • 今、人気の女性作家陣5人による恋愛と官能を織り交ぜたアンソロジー。窪美澄の『朧月夜のスーヴェニア』は時代が違えど、私自身も同じような恋愛をしていたので感情移入をしてしまい、読みながら辛くなってしまった。いろいろな事情で愛する人とずっと一緒に過ごす事が出来ない苦しみというのは計り知れない。その人が良いわけで他人では埋める事が出来ない。とても切ない。窪美澄の作品ってやっぱりいいなと思った。他の作家の作品も良かったのだが窪美澄を読んだ後という事もあり、他作品があまり心に響かず。

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著者プロフィール

1986年千葉県生まれ。2010年「花に眩む」で「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞しデビュー。16年『やがて海へと届く』で野間文芸新人賞候補、17年『くちなし』で直木賞候補、19年『森があふれる』で織田作之助賞候補に。著書に『あのひとは蜘蛛を潰せない』『骨を彩る』『川のほとりで羽化するぼくら』『新しい星』『かんむり』など。

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