ラジオラジオラジオ!

著者 :
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 329
感想 : 43
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  • Amazon.co.jp ・本 (188ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309024738

感想・レビュー・書評

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  • こっちを向いてほしいけど、向いてもらえない。読んでいるあいだずっと、もどかしい、しんどい感覚がありました。

    ラジオは少しやってみたいけど、やってみたくないような。SNSみたい。不特定多数に聞こえるところに、どうして声を置くんだろう、って。この感想も。

  • 舞台は2000年初め。東京に憧れる女子高生の華菜が、いずれ上京してテレビ局で働くという夢の足掛かりの為、地元ラジオ局のパーソナリティーとして、友人の智香と番組を担当している。
    「ラジオ」とタイトルにあるだけに、ワクワクと番組作りに奮闘する、高揚感に溢れた内容なのかなと思っていたが、加藤さんらしく、10代特有の青臭さや背伸びっぷりが印象的だった。高3ということもあり、進路を意識するにつれ、少しずつ相方の智香との距離が生まれてくる。焦る華菜だが、距離は広がるばかり。
    迷走する華菜の頭でっかちっぷりが如何にも地方の高校生という感じで、自分にもいろいろ思い当たることもあり、アイタタタ…でした。いつも加藤さんの小説を読むと、心のあちこちを引っ掻かれる。今はいい大人だから、華菜の行いをたしなめたくなる気持ちにもなるけど、この年代の頃を思い出すと、コッ恥ずかしくなるくらい周囲が見えないんだよなぁ…。でも、様々な経験をして一皮むけた華菜がどんな番組作りをするか、興味あります。
    短篇が多い加藤さんだけど、中篇もなかなかいいですね。もっと中篇~長篇の作品も読みたいなと思いました。そして、加藤さんのラジオ番組も是非聴きたいと思う。成長した華菜の姿を重ねてしまいそうだなぁ。
    同時収録の短編「青と赤の物語」、ちょっとファンタジーな舞台設定が新鮮でした。ドキッとするけど、是非ティーンに読んでほしい内容。

  • 『ラジオラジオラジオ!』と『赤と青の物語』の2編が収録されています。

    表題作は、ローカルのFMラジオのパーソナリティーを務める女子高生、華菜のお話。
    華菜は東京に憧れていていつかはマスコミ関係の仕事をしたいと思っている。
    その足掛かりに友達の智香を誘ってパーソナリティーに応募。
    週一でラジオをすることに。

    ただ高3で受験生ということもあり、智香がラジオから抜けたいと言い出す。
    華菜は人と違う人間だってことに重きを置いてるというか個性的と思われたいって欲望がつよくてわりと他人に興味がない。

    そんな中、友人のアヤちゃんがフラれたことをラジオで話したことで露呈していく。

    大人の友人である、なつねえさんと付き合うのも実は自分のため。
    自分本意だということに気づいた華菜。

    高校生のときってこういう自己顕示欲みたいなもの、たしかにあるかもなーと思った。
    なんか痛い。少しひりひりした。

    でも初めて生放送でやったラジオは好感が持てたかな。

    この経験を通して華菜が成長するといいなーと感じたラスト。


    『赤と青の物語』は物語が禁止されまったくない時代に育った中学生の赤と青のお話。
    赤と青というのはあだ名のようなもので、赤が女の子、青が男の子。

    いつも図鑑を図書館で読んでいた二人。
    青が図書館の地下には物語があると知り、ふたりは夜の図書館へ忍び込む。

    そこで見つけた物語を貪るように読むふたりはネガティブなことを考え、それを実行しようとしていたのをやめることを決意する。

    物語の持つ力というのは、本当にあると思う。
    勇気付けられたり、元気をもらったり。
    フィクションの世界に救われることはあるから、物語がない世界なんて本当に考えられないし、そんな世界嫌だなーと思った。

    物語のおかけで、前向きになれた二人はすごく素敵でした◎
    読み終わった後、ほっこりと温かい気持ちになりました。

  • 2001年、私は高3ではないが地方の学生だった。街灯がないわけじゃないけど田舎は夜本当に暗いので、夜は必ずお母さんが車で送迎してくれてた。そんなことまで思い出した。
    自分勝手といえないまでも、この年代は自分から見える所までが、自分の世界のすべてである。そして違う土地に行けば、詳細は分からないけど絶対に未来の遠くの方まで行くことができ、ここに留まる人とは違う何かになれると思い込んでる。読んでいる途中、最近まで全く忘れていたどうでもいい学生の時のこととか思い出してしまってちょっと苦しくなるくらい、それくらい手に取るように主人公の環境が分かった。

    青と赤の物語も、とてもシンプルでいいなと思った。物語には「自分が感じている、誰にも話したことのない、言葉では表現できないように思っていた気持ち」が書かれている。物語の世界にハマる理由・物語から学べる理由が端的に書かれている。

  • 高校時代に放送局とか入って、やってみたかった企画が実はこのラジオDJでした。
    その頃のことを思い出し、やってみたかったと改めて感じました。
    ちょっと興味があったりしてオモシロかったです。

  • 東京に憧れる地方都市の女子高生カナ。特別になりたい、みんなと違う感性をもちたい、という気持ちからクラスで一番仲のいい智香を誘ってラジオパーソナリティに応募し、みごと採用。本物の場所にいる本物の人に見つけてもらいたいと願う気持ちとは裏腹に、ラジオはなかなかリスナーもつかず、智香もどんどんやる気を失っていくのが手にとるようにわかり、どんどん空回り。別の中のいい子の失恋話を実名までだしてラジオで語ったり、ほぼ唯一のリスナーの書店員のお姉さんに甘えたり、ラジオ局の取締役にテレビとラジオは別物でどちらが劣ってることもなくより受け手に深く寄り添える場所なのだと諭されたり。ある時、自分があまりに自分のことしか見えてない、身勝手…ということに気づく幼さ。けれどそこから少しずつでも…と。2014年に発表されて、舞台が2001年、道具立てにノスタルジーを感じる。またはっきりとは書かれないが、びっくりドンキーがあって公立の教育大学があって、特急で大都市まで一時間半という描写から、旭川が舞台なのかな、と想像。

  • 地元ラジオ局で番組をもつ高校3年生のカナとトモ。進路決定を目前に二人の未来への夢はすれ違い始めて…せつなさ120%の青春小説。
    :
    「ラジオと女子高生」に興味がわいて手に取った本です。YAの書棚にありました。

    高校生の時ってこんな風に物事を考えていたのかなぁと。もどかしさを感じつつ、高校生の自分を思い出せないまま読み終わっちゃいました(笑)

    個人的にはこの後の「青と赤の物語」の方が好みでしたᐢ͈ᵕᐢ͈

  • 図書館で何となく手に取った本。自分のことしか見えてなかったと気づいた主人公が一人でラジオ生放送に向かう。
    私は私の水槽の中にいる。一緒に泳いでないということかなぁ。でもいくつになっても、結婚しても、結局は自分の人生だから自分の水槽が基本で、たまに水槽から出て一緒に泳いだり流されたり傷つけあったりしながら生きてくんだよなぁと思った。最後の一人ラジオはもう少しなんかエピソードがあってもいいのかぁと思った。
    むしろ個人的には青と赤の物語が好き。物語が禁止された世界で物語を知るという、不思議な世界観。もっと膨らませて、そのあとどうなったのか、物語をどう取り戻していくのか、青と赤はそのあとどうするのかとか、すげぇ気になった。
    ということで、ラジオは2だけど、青と赤は3ということで。

  • 「私は私の水槽の中にいる」
    まわりが見えた瞬間の鮮やかさがとても印象的だった。

    「共感できないけど、理解はしたい」これ、改めて沁みた。みんな違うから。でも、違うことは悪ではないし、同じことが正解ではないから。

  • 表題作「ラジオラジオラジオ!」と「赤と青の物語」の2篇。
    前者は自分が前にツイキャスでラジオっぽいの配信してた時の気持ちを思い出した。有名になりたいという気持ちよりも誰かに聞いてほしいなあ!って気持ち。久しぶりにまたそういうのやってみたいなあ……。
    後者は物語自体が無い時代に物語自体と出会った少年少女の話。すごい共感できる。小説が、物語が無かったらきっと今頃死んでたかもしれない。自分は幸せだと思った。

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著者プロフィール

1983年、北海道生まれ。歌人・小説家。立教大学文学部日本文学科卒業。2001年、短歌集『ハッピーアイスクリーム』で高校生歌人としてデビュー。2009年、『ハニー ビター ハニー』で小説家としてデビュー。その他、詩やエッセイなど様々な分野で活躍。著書に『あかねさす――新古今恋物語』『真夜中の果物』『こぼれ落ちて季節は』『この街でわたしたちは』『消えていく日に』『そして旅にいる』『マッチング!』などがある。

「2023年 『この場所であなたの名前を呼んだ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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