一○一教室

著者 :
  • 河出書房新社
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感想 : 51
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  • Amazon.co.jp ・本 (385ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309025032

感想・レビュー・書評

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  • 初似鳥鶏。
    ふう、ダーク系が好みとはいえ、なんでこれを選んでしまったのか。
    若者、高校生達への暴力シーンは、読むのも厳しい。

    カリスマ教育者が作った全寮制一貫高校。
    その地域の権力者であり体罰を容認する教育者。
    その学校へ入学した者は、生活態度が改まり、偏差値も高い。マスコミにも積極的に登場する。
    保護者に信奉者も多い。
    教育カルトの悲劇の側面の一作かと。
    教育者は体罰の必要性を説く。
    描かれるのは、心身への暴力。
    体罰という暴力が子供達を服従させる。
    自殺と不審死の元生徒を調べ始めて、徐々に異様さがわかり始める。
    構成が面白くてどういう結末を迎えるのか、緊張感が続く。
    誇大表現ではあるけれど、現実にも似通った事件があったなと思う。そして、自分の子供が手に負えない親達は、そこにわずかでも期待をしてしまうんだろうね。

  • 閉鎖空間で厳しい指導。
    うーむ、耐えられそうにない。せめて他人より抜きん出たいと思わせるのが目的!?

  • 市立高校シリーズがとても面白かったので、未読の似鳥作品を読んでいくことにして、これを。表紙を見て(この方の表紙、結構見るけど何となく苦手)、市立高校シリーズとは違う雰囲気だろうとは思ったが、ここまでとは…。

    読み出してすぐ不穏な雰囲気に腰がひけた。でも似鳥鶏さんだからね、いやな気になるだけってことはないはずと読んでいったら、どんどん生々しくつらい展開になってくる。うわあ、参ったなあと思いつつ、それでも夢中になって一気読みしてしまった。この感じ、そう、宮部みゆき作品を読んでる時に似てるような。

    何が苦しいといって、軍隊のような学校に入れられた生徒たちが、理不尽な暴力を受ける中で、弱肉強食そのものの社会を作っていってしまうありさまが、とことんリアルに描かれていることだ。こういう場に放り込まれたら、おそらく誰もがこうなる。あの市立高校で(いろいろ事件は起こるにしろ)生き生きと高校生活をすごす葉山君たちだって、こうなる。恐ろしい。

    ここまで酷くはないにしても(と思いたい)、弱い立場の者に力を行使することに快感を覚え、しかもそれを理屈で正当化するような人間や組織は、現実にも間違いなくある。他の作品にも垣間見える、そうしたことへの憤りが、ここでは噴出しているのだと思った。

    蛇足。ここで描かれる男子たちの寮生活がおぞましいことといったら強烈だが、女子たちのについては、いやこんなもんじゃないでしょ!と思ってしまった。ここはやっぱり男性の想像力の及ばないところかなと、僭越ながら感じたのでした。

  • とりあえず…で手に取った本だったけど、一気読み。嫌だ~と思いつつ、読んでしまう。

  • 吐き気がするほど恐ろしい。
    テンポよく進むので、読みたくないのにページが進む。
    実名で出ているような教育機関もあって、問題になったのにまたいつの間にか再開していたり…氷山の一角であり、あってはいけないことが、やっぱり起こっているのだと思う。

    でもここに子どもを預ける親の気持ちとは…

  • いとこの突然死に疑問を持つ拓也と相棒の沙雪が、全寮制の私立恭心学園の実態に迫る。
    小川くんと山口さんパートの話はかなり強烈。体罰と徹底した管理を容認する学校もだし、寮の中での生徒たち同士のやりとりも。

    松田の主張に対して納得できる部分もないわけではないが、ここまで極端な主張を突き通したうえに、暴力と恐怖で服従させても何も解決はしないと思う。戦時中の軍隊とかこんな感じだったんだろうか…

    特に怖いと思ったのは、佐川くん親の回想シーンと、それに付随する実際に起きてる周りの親や世間のやりとり。

    この話では、とりあえず小川くんと山口さんにとってはハッピーエンドで終わったけど、松田の信念は結局変わらないし、それに心酔する親も一定数いて同じことが繰り返される現実がある、っていう意味では後味の悪い終わり方だなぁと。

  • 収容所のような学校で、徹底に管理される学生たち。教育者、親の「信念」、そこに子供たち当人がいないのが怖い。

    実際にこんな学校があるかもしれない、それも怖い。

  • 市図書館にて。

    フィクションとしては愉快じゃない。現実の方がもっと愉快じゃない。

  • スパルタ教育の学校を舞台にした社会派ミステリなのか。
    期待と違ってシリアスで現実にもありそうな怖さがあった。軽快さは無く読むのが辛い。

  • スパルタ教育を行う高校の話。
    体罰が常習化し、軍隊並みに規制をされている生徒たち。
    そういった学校に入れたいと思う親に対する警鐘を鳴らす作品。

    柔道部の練習中に死亡した従弟の死について調べていくうちにその学園の特異性がだんだんと明らかになっていく。
    物語は主に「現在その学校に通う生徒」「従弟の死の真相を解明しようとする青年」「学園長へのインタビュー」の三つの視点により展開していく。
    体罰により苦しむ生徒の視点は本当に息苦しい。青年が早くこの少年たちを助けてくれないか祈るようにしてページを読んでいた。合間合間に学園長の「体罰というのは悪いものではない。成長に必要なものだ」というインタビューが入るのがまた不気味。

    ネタバレですが

    最期、101教室という拷問部屋に連れて行かれた少年を青年がやっと助けに入り、少年と青年が出会った時にはほっとした。
    でもタイトルにもある101教室。本文ではラストにしか出てこない。もう少しネタフリというか、伏線があってもいいんじゃないかな~と思ったり。でもタイトルにあるからこそのその教室が登場しない不気味さというのもあるのかな?
    そして学園が週刊誌により報道され、その後学園長やその他体罰死を引き起こした先生が捕まることになる。学園も閉鎖だったか改善されることになるのだが…
    そこでラストショッキングな事実が。
    以下、超ネタバレです!



    小説冒頭から時折組み込まれていた学園長インタビュー。これが実は事件後、新たな学園を作ったことに対するものだった!
    大きな事件になりながらも、やっぱりそういった厳しい学園に子どもを入れたいという歪んだ親はいつの時代にも決していなくならないという…。愛情、支配、教育。現実にもあった戸塚ヨットスクールの話も思いだし、ぞっとしてしまう。
    でもエピローグでは学園を無事転校できた少年少女のその後(付き合っているらしい)が、彼らを助けてくれた青年の結婚式に参列するために出かけるという幸せなエピソードで締めくくられていて、後味はそんなに悪くなかった。
    でももう二度とは読みたくないかなぁ~。

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著者プロフィール

1981年千葉県生まれ。2006年『理由あって冬に出る』で第16回鮎川哲也賞に佳作入選しデビュー。「市立高校」シリーズ、「戦力外捜査官」シリーズ、「楓ヶ丘動物園」シリーズなどの人気シリーズの他に『難事件カフェ』『迫りくる自分』『きみのために青く光る』『シャーロック・ホームズの不均衡』『レジまでの推理~本屋さんの名探偵~』『101教室』『彼女の色に届くまで』『100億人のヨリコさん』『名探偵誕生』『叙述トリック短編集』『そこにいるのに』『目を見て話せない』『生まれつきの花 警視庁花人犯罪対策班』などがある。

「2023年 『育休刑事 (諸事情により育休延長中)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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