- Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309025117
感想・レビュー・書評
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丸山正樹さんの2作目らしい。
「デフ・ヴォイス」シリーズを読み続けていたが、他の作品があることを知らなかった。
早速、図書館に予約。
居所不明児童。最近マスコミなどでも取り上げられているが、初めて知った時は、現代日本でそんな事があるのか、とにわかには信じられなかった。
以前読んだ「貌なし」は、無国籍者の問題を取り上げたミステリーだったが、この本ともリンクするところがある。
格差が広がり、かつては存在したコミュニティも崩壊しつつある現代、社会の隙間からこぼれ落ちてしまう子どもたちを受けとめるしくみは、まだまだ確立せず、追いつかない。
正直、読んでいて辛く、苦い思いしか湧き上がってこないのだが、それでも自分たちがつくっている社会なのだから、少なくとも知る必要があると思うのだ。
そこから先、何が自分に出来るのか。いや、何も出来ないのかもしれないけれど、アンテナをはり続ようと思う。
「デフ・ヴォイス」もそうだったけれど、断片的なメディアと違い、一つの物語として伝えてくれる本の力を感じた。
しかし、丸山正樹さんの書く主人公(男性)は、いつも子どもをもつことに否定的なのは何故なのだろうか…。
2020.2.15詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ずん…と大きな石が胸に残るような内容だった。社会派の小説。
居所不明児童という言葉。以前ニュースで聞いて恐ろしく思ったが、忘れていた。
自分も含め誰もが自分自身と周りで精一杯である。そのせいで、虐待されたり、捨てられたり、犯罪に手を染めさせられたり…本来大人が守るべきはずの子供が、最低な親と、無関心な大人たちのせいで、生き残るために生きている。
家族関係で心に闇を抱えた主人公の恋人が妊娠し、葛藤する。罪滅ぼしのように、教師をしている恋人の、居所不明の教え子を探す。その中で、さまざまな境遇の人と出会っていく。
直の抱える悩みは、他の人に比べたら大したことない。それほど他の人が壮絶すぎる。ただ、悩みに貴賎なし。直が自分の苦しみと向き合っていく様が良かった。 -
居所不明児童を扱った作品。
この作者の作品は、テーマは重めなのだがとても読みやすく、すぐに世界に入っていける。
カメラマンの直は、教師である恋人祥子の教え子で行方不明の少女さちを探すことになる。
直と一緒に私自身も少女の行方を追いながら、様々な角度から子供の命について考えさせられている作品。
ただし、主人公が直接の関係者ではない設定のために、熱く感情的に読者へ訴えるのではない。
その描き方、作風もまた好きです。 -
居所不明児童。
親が子供を虐待、放置してしまうことや、産み捨ててしまうこと。
考えさせられる内容だった。
物語でしたが、ノンフィクションに近い内容なのだと思った。
たまたま、
ケーキの切れない非行少年たち→
i(西加奈子)→
漂う子 読んだのだけれど、
すっごく考えさせられた。
我が子たちが元気に笑って生きていけますように。そして大人になっても背中に家族を感じ、出来ることなら新しい家族も迎えて笑顔で生きていけますように。 -
「デフ・ヴォイス」シリーズの作者の作品。
今回はタイトルにもあるように
行方不明になった子どもの話でした。
うーん、題材はいいと思うので
もう少し踏み込んで作り上げて欲しかったかな。
カメラマンの二木と教師の祥子。
2人の過去もそうだし、子どもを作る作らないの
背景も少し浅い気がしました。
(あくまでも個人の感想です、あ、分かってるかw) -
6冊目の丸山正樹さん。丸山さんの新刊『キッズ・アー・オールライト』がこちらの本と繋がっているらしいので、読んでおかねば!というのと、最近子どもたちを取り巻く社会問題をテーマとした小説をいくつか読んでいて、ぜひこちらも…と思い、手に取りました。
32歳の直は勤めていた写真館が潰れ、フリーで撮影の仕事を請け負いながらなんとか食いつなぐ日々を送っていた。恋人の祥子は三つ年上の小学校教師で、ある日、父親とともに行方不明となった祥子の教え子・紗智を探すため、わずかな手がかりをたどり名古屋へ向かうことに…。
丸山さんの小説はいつも現代社会のあまり知られていない、でも確かに存在する問題にスポットを当てていて、今作で扱われているのは居所不明児童、棄児、虐待、ホームレス、援助交際、ストリートチルドレンなどなど…。
テーマは重いんですが、とても読みやすく、どうしても先が気になる!という訳ではないのに、ぐいぐいと読まされてしまいました。簡単には解決できない問題ばかりですが、まずは知ることが大事ですよね。
子どもを持つこと、親になること、親と子の在り方を改めて考えさせられます。
「血はもうとっくに入れ替わった。今の俺は、細胞から全部俺のもんだ」(201頁)
負の連鎖が断ち切られますように、と願わずにはいられません。
ちょっとだけですが、何森刑事が出てきて嬉しくなっちゃいました。刑事何森の新しいシリーズも始まったようですね!そちらも読める日を楽しみにしてます。 -
2021/09/27予約
『居所不明児童』という知られにくい真実にスポットを当てた作品。
主人公の直は子どもを持ちたくない。なのに恋人は妊娠してしまう。
かつての居所不明児童出身のしばりやウサギが子どもを持ちたくない育てたくないのは、理解できるが、直の場合の理由がわからない。
親に期待された子、あまりされなかった子、親のレール通りに進んだ子、そうでなかった子、それぞれに言い分も感情もあるだろうが、なんともモヤモヤする。
反対にそりゃそうなるわ、と納得いくのは、
情緒障害児短期治療施設、出身の2人が夫婦になること。NPO の河原とその妻。
読んでいて、どこかで読んだことあると既視感を持ったが、さいごの参考文献をみてわかった。
石川結貴の子どもの無縁社会や、消えた子どもたち、鈴木大介の援デリの少女たち、を読んだからだった。
それをピースにしてお話に散りばめたのか、と。
丸山正樹氏らしくない作品だと感じた。 -
社会から光をあてられることなく、育ちに必要な最低限のものをも与えられずに、日々を紡いていく子どもたち。作者が使命を感じるように、この作品を世に出そうとする姿勢は大切だと思う。ただ、それを小説という枠に入れたのはどうだろう。「可哀そうな子どもたちのショーケース」の印象で、ちょっと上から目線を感じるのは私だけ?ノンフィクションとして、何かを訴えたほうがよかったのではないかな。
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重い話だし、どうしてそんなにみんなあっさり協力的なんだろう?というご都合主義っぽさがなくもないけど、
日本が抱える矛盾や問題に、エンタメを使って切り込んでいく姿勢が素晴らしいと思う。
「居所不明児童」と呼ばれる、住民票も抹消されどの調査の対象にもなることのない児童が日本に100名以上存在するとは衝撃。
他にも未成年の売春や、児童虐待、養子や中絶、児童ポルノなど、さまざまな問題が取り上げられていて、実際新聞で目にした覚えのある事件について言及されていたりするので、この小説の中にあるいくつかは、事実か、ほとんど事実に基づいているのだと思う。
不本意ながら居所不明児童の行方を追うことになった主人公自身も決して熱血漢などではなくて矛盾や弱さを抱えているところもリアルだった。
世に出るべくして出た小説なんだなと思う。