銀河の通信所

著者 :
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 333
感想 : 22
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  • Amazon.co.jp ・本 (261ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309025971

感想・レビュー・書評

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  • 時空を超えて存在する「銀河通信社」の日曜版に〈賢治さんの百話〉という記事が連載されており、そこからの抜粋という形をとっている。

    銀河通信社では「故人の意識をとらえる通信システム」を擁しており、賢治さんにゆかりのある、あるいは賢治さんの作品世界の中に住む人たちにお話を伺うという形で、取材を行ったのが〈賢治さんの百話〉である。
    その中で、作品・心象スケッチが書かれた背景などを探る。
    賢治の時代の東北地方の歴史、また、彼が予言した未来…つまり戦後や現代の事情なども合わせて描かれる。

    賢治さんというのは、宮沢賢治のこと。
    長野まゆみ氏の、賢治に対する愛情と、考察と薀蓄、深い理解と妄想にあふれた本作である。
    なんだかよく分らないところも多いのが、賢治作品と似ているような。
    とにかく素晴らしい労作だ。


    趣味で賢治の研究をしていたという文学者の北原百秋(“白秋”ではない)氏、乗り鉄で有名、小説家の内田白閒(“百閒”ではない)氏には賢治と鉄道の話なども伺う。

    なお、多くの記事の聞き手となった、銀河通信社速記取材班の児手川清治氏は、現在の河出書房新社の前身である成美堂にお勤めだったということだ。
    故人である。

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    賢治作品、童話は読んでいるが、詩集は少し敷居が高く、未読だ。
    でもこんな風に紹介されると、美しい言葉で編まれているのだな、と思う。
    がんばって読んでみたい。

  • 長野まゆみ最新作。
    宮沢賢治とその作品が主軸になっているが、他にも実在の人物や現実に起きたエピソードが絡み合っている、ユニークな構成。随所に挿入される引用文も様々。この辺りは宮沢賢治ファンならより楽しめるのかもしれない。

  • 銀河の通信所と接続すると、賢治さんの生きた時代からの通信が届けられる。
    それこそ銀河鉄道の父がみた、生身の賢治さんをよく知る人たちからの賢治さんの評伝が。
    インタビューを試みてくれるのは、銀河通信所の速記記者。そして、インタビューされるのは、ある時は物語の中の人物であったり、詩の中の情景描写であったり。
    賢治さんを語る彼らの話は、とても生身の賢治さんであり、とても儚い銀河の彼方からの通信。
    時空を超えた銀河通信が届けてくれる物語は、賢治さんを愛する人の心を静かに満たしてくれる。
    わたしは、とても静かにこの作品を気に入った。

  • 銀河通信社の児手川清治さんが賢治さんゆかりの人々にお話を訊く〈賢治さんの百話〉(^^)不思議で楽しく面白い♪できれば一話から百話まで購読したかったよ(^^;)あ~また花巻や遠野に行きたいな~(*´-`)宮沢賢治作品も読みたくなった!多分どこかに蔵書があるはず(-_-;)

  • 『光は粒、そして波……』好きな歌の歌詞に出てくる言葉です。この響きが素敵で、つい口ずさんでしまいます。とてもロマンティックな響きだと思うんです。科学と歌や詩、絵画のような芸術には見えない絆があるんだと。
    そんなときに、ある人物を語る上でこの言葉に出会いました。
    その名は宮沢賢治。
    彼は電波にとても興味を持っていました。賢治の時代にはアインシュタインの仮説をふまえて「光は粒子である」との方向へ傾きつつありました。それでも彼は「光は粒子であり、波である」ということを心象でとらえていました。賢治にとってことばの一文字を粒子とするなら、その集合系である詩は波だったようです。『春と修羅』の詩の一部には視覚的な波がつくりだされていました。
    また画家ゴッホも光に対する感受性は飛び抜けており波打つ糸杉もうずまく日輪も絵の具という粒子によって描いた光の波のようです。
    この2人には何だか交差する運命のようなものを感じてとても興味深いです。
    賢治ゆかりのひとびとが語ってくれるのは、彼の描く世界を形作ったものたちについて。今宵銀河の果てから届いてきますよ。

  • 宮沢賢治の周りの人物などにインタビューをして書いた(という体の)お話。よう書いたわ。

  • 宮沢賢治作品が好きなので、興味深く読みました。
    彼の生きた時代のことが少しは分かったような気がします。
    ただ、急いで読んだせいもあって、頭の中であまり整理できなかった…。また、いつか、ゆっくり読んで整理したいです。

  • 賢治とゴッホの親和性。これは、賢治と長野まゆみフリーク以外は読み解くのが難しい作品かも。頑張りました。

  • ほんとに宮沢賢治好きなんやな…というのは伝わるし、やりたいことも言いたいこともまあ分かるし興味深い内容やけど、面白くはなかった。引用されてる作品はマニアックなのが多いし、知ってて当然、でも若い人は知らないでしょうねっていう口調だし、たくさんキャラクター出てくる割には全員長野まゆみだった。稲垣さんの短編小説というやつも、長野まゆみらしいなとは思ったけどタルホっぽいとは思わなかった。
    でも作者が楽しんでるのは伝わってくるし、雰囲気はとてもよくて、長野まゆみ好きならこれこそ!て感じなので、読んで損だったということはない。

    宮沢賢治は何冊か持ってるけどほぼ全部積んでるから読まねばなあ。ポラーノの広場が入っとる文庫どこにあるんやろ。実家かな。

  • 宮沢賢治とゴッホの関連性、特にゴッホがテオに宛てた手紙(P64~)の内容と銀河鉄道の夜の相似性はこの本を読まなければ私は知り得なかったので、その点だけでも読んだ価値があった。

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著者プロフィール

長野まゆみ(ながの・まゆみ)東京都生まれ。一九八八年「少年アリス」で第25回文藝賞を受賞しデビュー。二〇一五年『冥途あり』で第四三回泉鏡花文学賞、第六八回野間文芸賞を受賞。『野ばら』『天体議会』『新世界』『テレヴィジョン・シティ』『超少年』『野川』『デカルコマニア』『チマチマ記』『45°ここだけの話』『兄と弟、あるいは書物と燃える石』『フランダースの帽子』『銀河の通信所』『カムパネルラ版 銀河鉄道の夜』「左近の桜」シリーズなど著書多数。


「2022年 『ゴッホの犬と耳とひまわり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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