僕はロボットごしの君に恋をする

著者 :
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 991
感想 : 81
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309026107

感想・レビュー・書評

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  • 本作は山田悠介氏によるSFラブストーリー。山田悠介氏の本を読むのは2001年発表の彼のデビュー作であり、ミリオンセラーになった『リアル鬼ごっこ』以来。
    『リアル鬼ごっこ』は会話文が多く、周囲描写が少ないイメージがあったが、本作でもその異常に読みやすい文体は変わっていない。

    本作の舞台は、3回目の東京オリンピックを開催しようとしている2060年。ロボットが当たり前に社会に浸透し、コンビニのレジ業務などをごく普通に行っている未来社会。
    主人公の「大沢武」は、通常のロボットとはレベルの異なる外見上は全く人間と変わらない遠隔操作型ロボットを研究しているAIロボット研究所のプロジェクトメンバーであり、高性能AIロボットを操る「操作官」として、社会の治安維持を業務として働く28歳の男性だ。
    そこへテロ予告が入り、武の操作するAIロボット「4号」は、総合スポーツメーカー・アテナ社へテロ対策の警備員として派遣される。アテナ社には、武の初恋の女性である「天野咲」が営業担当として勤務していた。
    ちびでさえない武とは違い、4号の外見は180センチを超える高身長とがっしりとした体格、そしてさわやかなイケメン。4号は成り行き上、咲のボディーガードのような仕事をするようになる。
    4号と行動を共にするにつれ咲は、4号こと「佐藤翼」に惹かれていくようになる。当然、咲は翼がロボットであることも『中の人』が武であることも知らなかった。

    本作は、「本当の自分ではない外見をした自分が、好きな相手から愛される矛盾」を描いている。このテーマはテレビドラマや映画にもなった『ハンサム☆スーツ』などのように古くからあるテーマで、ブサメンがイケメンに変身する物語の変形版だ。

    本作は人間そっくりのロボットを登場させる為だけに今から約40年後の2060年という時代を設定しているが、人間そっくりのロボットや自動運転の自動車が登場する以外はほぼ今の時代背景と変わっている描写はない。
    サイエンスフィクションとしての科学的リアリティさはほぼ無いので、この小説に実現可能な近未来的設定を期待してはいけない。あくまでも先ほど述べたテーマを楽しむのがこの本の楽しみ方だ。
    最後には、あっと驚くどんでん返しが仕掛けてあるので、そこは楽しんでもらいたい。

    この本を読んでいて感じたのは「人はどこまでロボットを愛せるようになるのか?」ということだ。
    この小説の咲が恋した4号のように、外見は完全に人間と同じ、そして会話もできる(実際の会話は操作者の武がしている)となれば、これはもうほぼ人間であると言って良いので恋愛対象として全く問題はない。

    では逆に、人はロボットの外見や内面からどこまで人間的要素が無くなったら「人間はロボットを愛せなくなる」のだろうか。
    バーチャルアイドルである「初音ミク」と結婚式を挙げたという男性の話は聞いたことはあるが(実際、初音ミクはAIでもロボットでもないが・・・)、Pepper君やASIMOと結婚した人がいるという話は聞いたことがない。やはり、人間は相手の外見には相当重きを置いているのだろう。しかし、犬型ロボットのaiboを本当のペットとして愛情を注いでいる人はたくさんいる。

    つまり、人間型ロボットへの愛情に対しては人型の外見にかなりの高レベルを求めるが、人型以外のロボットに対してはそのレベルはぐっと下がる。なかにはお掃除ロボットであるルンバをペットのように扱っている人もいると聞いたことがある。

    自分の場合はどうだろう?どこまで精巧なロボットだったら『人』として愛せるだろうか。
    もう僕は40代だし、僕が生きている間に人間と見分けがつかないほどのロボットが開発されるとは思わないが、今の10代の人達にとっては、それはもしかしたら現実になるかもしれない。
    こういうことを想像するのは無駄なことかもしれないが、「こういうことを想像する」ことができるからこそ、SFを読むことは楽しいのだ。

    あ、いま、思いついた!恩田陸の『消滅 VANISHING POINT』に出てくる高性能AIヒューマノイドのキャスリンだったら愛せる!キャスリンは可愛いよ。うん。可愛い(笑)。

  • 普段は内気だけど、ロボットを経由することでカッコイイ自分で居られるという表現は、切ないですが、なんだか共感できました。


    物語の舞台は未来の東京です。
    ここまで、劇的な事件は起こらないにしろ、近い事件は近い未来に起こるかもしれないと感じ、少しファンになりました。

  • 2060年、人型ロボットを使った極秘プロジェクトが進められている。ロボットを動かす健、ロボットを開発する幼馴染の陽一郎。健は陽一郎の妹に恋しているが、ロボットを通してしか咲を見守ることができない。一方、咲はロボットに恋心を抱くが、そんな中、テロが起きる…。最後の方に、実はこうでした! があるけれど、展開といい、設定といい、終始、健の浅はかな行動にイライラし、あまり期待はしていなかったけれど深いものは味わえないだろうと思い、もう読み進めるのはやめようかと思った。いやしかし読んでみたんだけれど。これもまた未来を予測する一つのストーリーかなと思ってさ。アニメにはいいんでないかしら。AIが感情をもったら怖い、しかし、このストーリーのように悲しい思いもすることも出てくるでしょうね。AIについてももう少し踏み込んだ内容が欲しかったなあ、技術的にも感情についても。

  • 2060年3度目のオリンピック開催が迫る東京で、人間型ロボットを使った国家的極秘プロジェクトが進んでいた。プロジェクトメンバーの健は、幼なじみで同僚の陽一郎とともに極秘プロジェクトに関わるのだが、テロ予告が出されたのが思いを寄せる陽一郎の妹、さきの勤める会社だった。
    咲を守ろうと奮闘する健だが、テロの主犯の核心に迫った時に明かされる真実とは、


    ロボット研究が進むことで、全く人間とかわらないロボットが出来上がるが、ふつうに生活している中では明かされない
    ただ、禁じ手とされているロボットに感情を搭載させること。それを実行した結末が本作には明かされる。
    犯人の視点と健の視点で会話がなされるが、伏線がわかりやすすぎで物語半ばで犯人がわかってしまったのは残念 笑
    ただ、ラストの真実は結構びっくり
    ハッピーエンドではない終わり方がちょっと中途半端だったけど、近未来の日本の姿を想像できるのは、面白かった。

  • 半世紀後の東京、人型ロボットの捜査官、健は愛する咲をテロから守れるか‥意外な展開で結末も衝撃的でした。さすがです!

  • ロボットがらみのボーイ・ミーツ・ガール。この手の作品は、ひねりは効かせていても同じような展開になるだんよな。

  • タイトルが気になって、図書館で借りてみた。
    この著者は、たぶん初だったと思う。

    あっさり系。
    会話と状況説明が淡々と続く感じ。
    小説になれるための入門としては良いのかも。
    アニメは楽しいのかもしれない。

    AIの小説は他に『クララとお日さま』を読んだけれど、腹に来る重さは違う。

  • きっと将来こういう恋も少なからずあるだろうなと思った。
    タイトルが表すのは物語の前半くらいまでかな。あとは全然変わってくるから。
    切ない恋が好きな人にはオススメ。

  • 以前のリアル鬼ごっこよりとても読みやすくなっててびっくりした。設定には突っ込みたいところが多々あるけれど、犯人はうすうす気付いていたけれど、その後のまさかの展開に最後は一気読みだった。

  • 近未来の話。予想をいい意味で裏切られた。
    さらっと読める。

著者プロフィール

大東文化大学文学部日本文学科講師。1984年大阪府生まれ。専門は環境文学。著書に『反復のレトリック―梨木香歩と石牟礼道子と』(水声社、2018)、論文に「「声音」を読む―石牟礼道子『水はみどろの宮』とその周辺」(『石牟礼道子を読む2―世界と文学を問う』東京大学東アジア藝文書院、2022)など。

「2023年 『石牟礼道子と〈古典〉の水脈』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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