地球礁

  • 河出書房新社
3.19
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本棚登録 : 73
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (257ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309203645

作品紹介・あらすじ

アイルランドの大ボラ吹きの血と頑迷なまでのカソリックの信仰が生み出した奇想天外な語り部ラファティのマジック・リアリズムの世界。

感想・レビュー・書評

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  • 『第四の館』が面白かったものの、どうも分からない感触があって、本作を再読してみることにした。

    プーカ人のデュランティ家の人々は地球アレルギーに悩まされていた。地球生まれの子どもたちはなんとか適応していたものの、病に侵される危機を乗り越えるため、残りの全ての人を殺す計画を思い立つ。いや家族の年長者のプーカ人も殺害の対象に含まれるのだけれど。

     すっかり内容を忘れていた(苦笑)。ラファティらしいユーモアたっぷりで語られる疎外された一家の話としても読める。疎外された人々、というテーマは宇宙人以外にも超能力者などのパターンがあり、いわゆる宇宙人といえなさそうなプーカ人だが全体的にもSFのフォーマットを踏襲しているように思われる。一方ヘンリー・デュランティが殺人の容疑で捕えられ逃げ出し、追われるというクライムノベル的な要素は発表年代の近い『第四の館』と共通するものがあるように思われる。本作では世界と孤独な家族の関係が描かれるが、世界全体が語られるような『第四の館』に比べるとスケールは小さい。しかしシンプルであり分、本作の方が読み易くすんなり入ってくる感じがあり、そこは好き好きだろう。
     解説にもあるが、ラファティは海そして船が好きなのだなあということを感じた。子どもたちが船に乗って出発する胸躍るシーンは、本作中の白眉といえる。これまた解説からだが、プーカ人の病はEarth sicknessで「地球酔い」とも訳せるようで、その辺りにも船好きが出ている気がする。
     ちなみに本作もまた登場人物が非常に多い。自分が以前ラファティにつまづいた一つの理由はそれで、たしかに登場人物たちは十二分に個性的なんだけどそれでも手に余るぐらい多くて展開の意外さと相まって話が見えなくなったりするんだよな。

  • 初めて読んだラファティ作品。
    そもそもラファティの作品を見かけること自体がなかったので、古本屋で見つけて即購入。
    変わった作品を書く人ということは知っていたが、思った以上に変な作品。
    SFなのか、ミステリなのか、冒険小説なのか。
    訳者あとがきでの、
    "ラファティはSFの枠を超えた存在だ、と一言言えばいい。だが、問題はそこでSFからはみ出したとして、どこにも持っていく先がない、ということである"
    という表現が、あまりにも的確だと感じた。
    不思議な魅力のある一冊。

  • 見た目はホブゴブリン(沼地に出現する悪鬼)のプーカ族の家族が、ダッサイ地球にやってきた話。地球アレルギーで親達は衰退してきたが、ここで産まれた子供達は元気。あとがきを読むと、アイルランド人でありながらアメリカアイオワで産まれた自分と家族を投影したとしか思えない。となると、物語そのものよりも作家本人にむくむく興味がわいてきて、他の作品はよ!という感じになる。話はねー、雰囲気はわちゃわちゃしてワクワク読めるが、内容はわかりにくい。世界観の作り方が自然でうまい。幽霊も含め死の概念の線引きがゆるいのかな。

  • 2017/3/13読了

  • R.A.ラファティの作品を読むのはこれが初めて。

    最近は短編小説ばかり読んでいたので、最後まで読みきれるか心配しつつ、本を開いたのだが、予想以上に面白く、二日とかからずに読み終えてしまった。

    なんだかとてもヘンテコな物語で、読みながら次々と疑問が出てくるのだが、最後にはそんなことはどうでもよくなる。

    一応SFに分類されてはいるが、SFらしさはあまりない。でも続きが気になって、ページをめくる手が止まらなくなる、不思議な中毒性をもつ話だった。

  • 【選書者コメント】まじめな顔してホラを吹く。

  • 昨年11月の「昔には帰れない」に続いて3月に「蛇の卵」、4月に「第4の館」と、
    ついにラファティブーム到来か?? アメリカでは全短篇全集が出るらしいし…。
    これは読まなきゃと思ったけど、2冊が本棚で積読になったままであることを思い出した。
    「地球礁」と「宇宙舟歌」、どちらも、最初の1章で挫折したまま。

    ラファティって、物語としてギリギリなところでバランスを保っているので、
    長編になるとどーも読みにくいんだもん。
    と、渋々ながら、GWを機会に「地球礁」を取り出して読み直してみる。

    んんん?
    (これはおもしろい…)
    ではないか。

    と池波正太郎風に思ってしまった。
    最初のとっつきにくさを超えるとぐぐっと物語に引き込まれる。

    地球にやってきたブーカ人(あるいはアイルランド人?)のデュラン家。
    その7人の子ども(うち一人は死んでいる)が、地球人を皆殺しにするために旅に出る。
    武器は詠むと人を殺すことができるバカーハッハ詩。
    無邪気な残酷さと馬鹿馬鹿しさが、ごちゃっごちゃ、ぐちゃぐちゃと話を撒き散らす。
    それが、後半になって、生活保護と農業補助金詐欺を巡る殺人と隠匿と生臭い話になり、
    血なまぐさいノワールへとガラッと変わる。
    そうなると、前半の話の印象も違ってくる。貧しい移民家族のアメリカでの疎外感の話?

    神話的とかマジックリアリズムという言葉では説明しきれないなんとも不思議な話。メタ法螺話?
    思い出したのは、「やし酒のみ」とフラナリー・オコナーの短篇。
    ラファティ爺さんがわからなくなってきた。

    読み終わった後、アンソールの「陰謀」を使った表紙に妙に納得。

  •  ラファティおじさんの短編集。楽しみだ。とにかく、九百人のお祖母さん、つぎの岩につづくの二作しか読んでいない。あまり好みではない作家さんだ。

     して今回もダメだった。ここのところ読み手が悪いのだろうが、どれも乗り切れずに流している。流れを変えないといけない。

  • ラファティの作品を読むと、変わり者と世間とのコミュニケーションギャップを描いたものが多いように思う。本作は異星人と思われる主人公たちの冒険を描いているが、異星人と地球人とのコミュニケーションギャップは、そのまま前述したことに当てはまらないだろうか。ラファティの作品はすべて本当のことしか書いていないのだとか。とするとますますそうとしか考えられない。最後の会話もそんな感じ。
    変わり者に勇気を与える小説。

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