- Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309203829
作品紹介・あらすじ
「パパのために、自分の夢をだめにしたくないの」。ママの声は小さかったけど、その言葉はヨアキムの胸を刺した。病院に入院しても、パパの心の病はなかなか快復しない。泣いてばかりのパパ。泣くことを教えて、と言うママ。北欧の厳しく美しい自然の中で紡がれる、おとなと子どもの物語。
感想・レビュー・書評
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前作【夜の鳥】の続編で、表紙も同じく酒井駒子が手がけている。
大人とはなんと理不尽に子供を傷つけてしまうのだろうと、そんなことを思う。
精神病院に入院して、退院しても家に帰らない父親。
そんな父親と母親が離婚するというのに、子供のヨアキムにはなにも相談されることはない。
夜の鳥の恐怖に脅え、疎外感をかみしめて辛い毎日を送るヨアキムがとても痛々しい。
救いは、案外手近にあったというのがいかにも子供の世界らしい。
友だちもまた、理不尽な苦しみの中にいて、辛い現実を生きていた。
そしてヨアキムはじょじょに、自分の気持ちを言葉で表すことが出来るようになっていくのだ。
ひとを苦しめるのはひとだけど、ひとを救うものも、ひとなんだね。
最後の数ページでは、ほとんど涙で見えなくなってしまった。
本当にごくかすかな希望ではあるけれど、ヨアキムは確かに成長していくのだ。
ひととの関わりの中で学び、成長し、強くなっていく。
いつの日か夜の鳥は、ヨアキムの前からいなくなることだろう。
そんな予感をはらみ、リアリティのあるラストを迎える。
トールモーの文章は相変わらず美しく、自然描写の巧みさも心に残る。
後書きにもあるが、「周囲の環境が個人の内面に引き起こす反応を克明に描いている」点に、ひきつけられずにいられない。
良い作品にめぐり逢えて、こちらとしても大満足だった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
やっぱり救いがなくて子どもって犠牲になるばかりだなあと思うんだけど、主人公のヨアキムが前作から今作の終わりまでで成長していって、それがちょっとだけ嬉しい。
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ついにおとさんは強制的に病院へ入院。ヨアキムは寂しいし不安だけど、ママの焦燥っぷりがさらにヨアキムにのしかかる。どうしたら元に戻れるのかと1日考え、座っていても授業なんて頭には入ってこない。おとさん退院してもやっぱり頑張らない。限界だから家を出ると。ううーん。ヨアキムの方が大人になりつつある。ヨアキムの父はなんで「卒業できない」んだろう。皆嫌なんだ。嫌だけど素直な自分の気持ちに嘘ついて、自分を裏切って前に進んでるのに。逆にそっちの方が楽なんだ。いわゆる、「流される人間」の方がさ。色々刺さる本。
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『夜の鳥』の続編。前半は前作よりどろどろしていて読んでいるだけで気分が滅入ったけど、後半から物事が前に進み初めてひと安心。
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パパはとうとう精神病院に入院した。ママは奨学金をもらって大学へ行くことを決めた。
パパが何かを怖がっていると、ヨアキムも怖くなってしまう。ママががっかりするときは、ヨアキムもがっかりしてしまう。
けれど明日にはきっと何もかも良くなる。きっと。童話みたいに──みんな幸せに暮らしたとさ──。
けれど、大人たちはみんな「そんなに単純じゃない」「いつも思い通りになるとは限らない」と言う。
ヨアキムは問い続ける。
ぼくたちはもう、3人にはもどれないの──?
北欧の厳しい自然と、どこか疎外感のある人間関係の中で、ヨアキムは成長し、同時に少しずつ何かが変わっていく。『夜の鳥』続編。
緊張感のある子供の世界の力関係がすごくリアルだと思います。逃げようがない分、大人のそれより辛いから尚更です。 -
孤立したアパートや町に最後の悲しい結果から光がさした ヨアキムの前向きな発想はとっても素敵だと思いました
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憧れと幸福に希望を願ってはいけなかったのか。