ヘヴン・アイズ

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制作 : David Almond  金原 瑞人 
  • 河出書房新社 (2003年6月20日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309203843

ヘヴン・アイズの感想・レビュー・書評

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  • 『肩甲骨は翼のなごり』が衝撃的だったアーモンドの作品。

    こちらも『肩甲骨――』同様、独特の幻想的な世界。
    光と影、昼の世界と夜の世界、そのコントラストが美しい。
    影は濃く暗い場所に手招きして怖ろしいが、夜の世界はどこまでも優しく幻想的に魅力的に描かれる。

    エリンとジャニュアリーは孤児院ホワイト・ゲートのこども。
    責任者のモーリーンのことが嫌いで、何度か脱走の経験あり。
    今回はジャニュアリーが作った筏で川を下る脱走計画をたて、年下のマウスも加わり、3人で出航する。
    ところが出航して間もなく、筏は泥のたまった場所に座礁。そこはブラック・ミドゥン(黒い泥沼)と呼ばれる廃工場地帯の一画だった。
    そこで水かきのある可愛らしい女の子と、彼女と暮らす老人グランパと出会う。
    女の子の名前は「ヘヴンアイズ」。

    水かきのあるヘヴンアイズに周りの子どもも大人も驚いたりしない。見た目の奇異さよりも、ヘヴンアイズの純真さ善良さが、接した人にすぐわかるからかな。

    エリンがママを感じ、見て、会話する場面の数々、聖人がグランパを連れて川に帰っていくところ、など幻想的な場面はたくさんあるけれど、印象深かったのは帰りの筏の上で「人々の目にみえる世界に戻ってきた」とエリンが感じるところ。
    本当にそれまでは「幽霊」である人々には見えてなかったのかもしれないな、なんて。

    モーリーンは、最初のほうは善意という名の押し付けばかり感じられるが、最終章での彼女は違う。
    悪気がないのはもちろん、こどもたちのことを思う気持ちは本物のよう。方向性が大人目線すぎて押し付けになってしまい、そこにエリンは反発してしまうのだろうけど。
    最後は、お互い心が近づきつつある、今までと違う、と感じたエリン。
    物語では描かれていないその後の世界で、少しずつわかりあえているといいなと思った。

  • デイヴィッド・アーモンドの本を見つけると、内容を確かめることもなくすぐ買ってしまいます。ジャンルとしては児童文学に分類されているようですが、彼の作り出す物語を子供だけに独占させるわけにはいきませんからね。
    孤児院を抜け出し、手作りの筏に乗って旅に出た3人の子供たち。語り手のエリンは幼いころ親を亡くしたみなし児です。あとの2人は、物心つかないうちに親に捨てられた男の子。川を下って彼らがたどり着いたのは、真っ黒な泥が溜まったブラック・ミドゥン。その川岸はかつていろんな工場が立ち並んでいた場所で、いまはどの建物も廃墟となっていました。そこで出会ったのが、グランパと呼ばれる頭の壊れた歳老いた警備員と、愛らしい小さな女の子。2人は朽ち果てた印刷工場跡で暮らしていました。少女は、世の中のどんな苦しみや悲しみからも天国を見出せる目を持っていることから、ヘヴンアイズと呼ばれていました。素直で人なつっこく、とても可愛らしい女の子なのですが、その手足には水かきがついていました。ブラック・ミドゥンで穴を掘り続ける管理人と、外の世界をまったく知らない幼い少女。2人はいったい何者なのでしょう?警備員グランパは、泥の中に何を探し求めているのでしょう?2人の築き上げた世界と、3人の子供たちが持ち込んだ現実が溶け合っていきます。泥の中に埋まった、悲しみと奇跡の美しい物語。
    ひとは誰しも〝傷を負った子供〟なのかもしれませんね。ぼくらは小さい。世界はこんなにも広いのに。世界は悲しみに満ちている。けれど世界には奇跡があふれている。

  • 神秘的な世界観。キャラが全員可愛い。ヘヴンアイズの独特な話し方が物凄く好きだ。エリン・ローの「私達って何で私達なんだろう、最悪だよね」は私の中で名科白。

  • 孤児院を筏で脱走したエリンとジャニュアリーとマウス。黒い泥の湿地帯で座礁。そこへ、小さな女の子が表れる。ヘヴンアイズとなのる女の子は、工場の跡地に管理人のグランパと二人で暮らしている。ここはいったいどこなのか。二人はいったい何者なのか。
    エリンとジャニュアリーは謎をといてゆく。

    アーモンドの作品は、なんでこんなに美しく切ないのあなあ。

  • 施設から抜け出した子供たちが不思議な女の子と老人に出会う。

    空想とも現実ともとれるようなつかみ所のない話が続いて、明白に謎解きだったりストーリーがあるわけではないので、その独特の世界観を楽しむことができなければ疲れるかと。
    ただ、その世界観が子供が夢見るキラキラしたような、それでいて表紙のイラストが象徴するような不確かで怪しいような雰囲気で、そのなかでグランパとヘブンアイズの秘密が明かされるところはぐっときた。

    児童文学らしい設定やストーリーだけど、その描き方は大人の批評家が好みそうな、作者がいろんな賞を受賞してるのが分かるような描き方。

  • 孤児院を脱走した三人の子供は筏で川を下り、泥の地『ブラック・ミドゥン』へ辿り着く。
    そこで出会ったのは水かきを持ち、世の中の悲しみや苦しみのなかから天国をみいだすような美しい目を持つ少女ヘブンアイズと彼女の保護者のような管理人グランパ。

    世界を知らないヘブンアイズと彼女の幸福を願って世界から離すグランパ。二人の生活の中へ世界からやって来た傷付いた子供達。
    何て奇妙な取り合わせだろう。
    年老いたグランパは忘れてしまう記憶を補填するように日誌に小さな字で日常を書き続け、明るい月の夜には泥を掘ってヘブンアイズの『宝物』を探し続ける。『宝物』は彼女の家族、若しくは遥か昔に泥に眠った『聖者』なのか、その両方なのか。
    ブラック・ミドゥンでの奇妙な暮らしに反発する年長の少年がヘブンアイズの秘密を見付け、年少の少年は泥から聖者を発見し、少女はこの地での暮らしの終わりを知って皆に告げる。
    グランパは亡くなり、聖者と共に魂は川に消え、脱走した三人の子供は四人の子供になって孤児院へ帰る。

    世界からヘブンアイズを守ろうとしたグランパの行動が正しかったのか、とか孤児院を脱走した三人と孤児院を管理する女性モーリーンのどちらが正しいのか、とか真剣に考え出すとこの物語は小さくなってしまう。
    この、死者と生者が密かに交流し、夢と現がはっきりとしないアーモンド独特の、彼でしか書けないであろう切なくて美しい世界をそのまま受け入れてじっくりと味わうのが一番の読み方なのだと思う。

    子供達は冒険をし、世界を知り、泣き、笑い、喧嘩をして、仲直りをして…そうして大人になっていくのだ。
    願わくばアンナ・メイと呼ばれて成長するヘブンアイズに今の綺麗な心のままでいて欲しい。
    そして、すべての子供達に幸せな未来が訪れればいい、と思う。

  • 「肩甲骨は翼のなごり」を書いた人、なので期待大、だったのだが、
    全くそれを裏切られなかった。
    いやー素晴らしい。
    なにかなー、実際にはちょっと先に脱走しただけ、なんだけど、
    確かに違う世界にいってたような感じ。
    雰囲気がある作品。表紙の色合いもとても綺麗。
    そんな劇的な展開があるわけでもないんだが、目がはなせない、
    とゆーか、いい緊張感がずっとある感じ。
    最後に戻る前に筏に文字を刻み込むシーンがイチバン好き。
    「この世のはてまでいっしょに行ける友達を」
    うーん、胸にくるねえ。これは子どものころに一度読みたかったなあ。
    いいお話、だ。うん。

    モーリーンに対するエリンの態度が、理解はできるんだけど、
    どっちかってゆーと自分がモーリーンに近いから、ちとツライ、とゆーか、
    わあ、痛いなあっと思っていたんだが、最後ヘブンに救われたので
    よかった。あのまんま突き放さないでくれた展開に感謝。ありがとー。

    自分が小さい、取るに足らない存在のようで、目の前の世界が
    怖くてたまらなかったり、自分にできないことなんてなんにもないような
    、怖いものなんてなんにもないような気がしたり、
    そんな正反対の気持ちをもったままゆらゆらゆれながら、進んだり、戻ったり。生きてるってそんなことの繰り返し。
    だけど、こーゆーお話と出会えると、まあ、それでもいいのかなあっと思ったり。

    好きだなー、この話。

  • ヘブンアイズとグランパの関係は,不可解なのにやさしくて,愛おしく感じました。
    エリンのママへの思いに胸が苦しくなりました。
    終わりには,少し希望が持てたように思います。

  • あたし・エリンとジャニュアリー、マウス。
    3人で金曜の夜に孤児院を脱走して筏に乗り込んで、川を下ってたどり着いたのは『黒い泥沼(ブラック・ミドゥン)』だった。
    沼から這い上がったところで出会った女の子の名前はヘブンアイズ。
    世の中のあらゆる苦しみの中に天国をみいだすことのできる目をもつ子。
    彼女は沼のほとりにある、今は廃屋になった印刷工場の管理人・グランパに泥の中から掘り出されたって言ってる。

    黒い黒いその泥のなかには、まだヘブンアイズの宝物……たくさんの秘密と哀しみ、それから、聖人が埋まっていた。

    これはあたしたちの物語のほんの一部。信じようと信じまいと、すべてほんとうのことなんだ。

  • 孤児院で生活をしている3人の子供たちが、自由を求めて筏に乗り込み脱走。
    3人は、その冒険の旅で不思議な女の子と老人に出会う。

    楽しくてワクワクするような冒険話でも、夢いっぱいのファンタジーでもなくて、すごい感動することもなく読み終わったのに、読んだ後は優しい気持ちになる、ちょっと不思議な感覚の物語。

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ヘヴン・アイズの作品紹介

自由を求めて孤児院を抜け出し、筏に乗り込んだ3人の子どもたち。川を下ってたどり着いたのは、真っ黒な泥が広がるブラック・ミドゥン。そこには、両手に水かきのある女の子と奇妙な老人が、二人きりで暮らしていた。黒い黒いその泥のなかには、たくさんの秘密と悲しみと、「奇跡」が埋まっていた…。月の明るいその晩に、あたしたちは、ヘヴンアイズを見つけた-カーネギー賞、ウィットブレッド賞受賞作家、『肩胛骨は翼のなごり』の著者が放つ、待望の新作!やさしく美しく純粋な、冒険の物語。

ヘヴン・アイズの単行本(ソフトカバー)

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