シェイクスピア&カンパニー書店の優しき日々

  • 河出書房新社
3.62
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本棚登録 : 575
感想 : 63
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  • Amazon.co.jp ・本 (309ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309205403

作品紹介・あらすじ

パリ、セーヌ左岸の、ただで泊まれる本屋。ジョイスの『ユリシーズ』を生みだした伝説の書店の精神を受け継ぐ二代目シェイクスピア・アンド・カンパニーは、貧しい作家や詩人たちに食事とベッドを提供する避難所だった。ヘンリー・ミラー、アナイス・ニン、ギンズバーグらも集ったこの店に、偶然住み着くこととなった元新聞記者がつづる、本好きにはこたえられない世にもまれな書店の物語。

感想・レビュー・書評

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  • パリにある二代目『シェイクスピア・アンド・カンパニー』はただの書店ではなく、書棚の間にベッドが点在し、貧しい芸術家や旅人が無料で泊まれる避難所でもあった。ここに実際住み着いたカナダの新聞記者がその当時のことを綴ったのが本書である。私は子供の頃書店にタタミ一畳分間借りして暮らすのが夢だったので控えめに言って最高だと思った。

    ここに泊まる多くは足元を揺るがす経済的な不安定と高みにある夢・理想の両方を抱えている。若者が愛や理想を語るとき、なんだか青春めいて輝くけれど、歳を重ねるにつれ足元の不安定が人生において比重を増してくる。だから読んでいてボヘミアンじみた生活を送る住民たちはみんな破滅するんじゃないかと心配した。そんなことはなかった!
    成功と失敗の二色では描けないそれぞれの人生をみんな送っている。シェイクスピア・アンド・カンパニーに居ても、そこを出ても人生は続く。
    この不思議な書店を経営してきたジョージ。彼のコミュニストでロマンチストで気難しくて少年のような人柄も魅力的だが、彼のモットーがまた素敵。
    ——見知らぬ人に冷たくするな、変装した天使かもしれないから

  • フランスらしい、愛に溢れた物語でした。
    こんな素晴らしい書店、本好きならば誰もがときめくのではないでしょうか。衛生状態を考えると怖気づいてしまいますけれど、それも含めてごちゃごちゃした感じもまたこの書店の魅力なのかもしれません。
    出てくる人みんなが個性的すぎて、誰にスポットをあてても面白い。語り手の目線から描き出される変わり者のみんなが凄くキラキラしていて、キュートなんですよね。元ジャーナリストの冷静な目線で描かれてるのにとてもドラマチック。
    中でも一番魅力的なのは書店の主人であるジョージで、ラストは感動してしまいました。愛の絆って純粋に素敵。
    途中はごちゃごちゃしたままどうなっちゃうんだろう、と思っていたんですけど、素敵なラストで読後は胸がいっぱいになりました。
    実写のドキュメンタリーもあるそうなのですが、映画化とかして欲しいなあ。というか、文庫化でもしてもっと読まれた方がいい作品だと思いました。

  • この書店行ってみたいか?と自分に問うても、行ってみたいとは思わない。書店の客同士は多少よそよそしいほうがいいな、というのが私の意見だから。
    でも、書棚の横にベットがあるのは魅力的。
    図書館に寝泊まりするのが夢だから。

  • 実在する書店、実際に起こった話なのに、どこかフィクションのような、夢物語のような気がするのは、シェイクスピア&カンパニーという場所が非日常にあふれているからなんだろうな。

    この非日常というのは、派手なイベントやディズニーランドのように誰かが作ったものではなく、書店の経営者ジョージと新旧入り乱れた宿泊者たちの化学変化で起こるドタバタや恋物語、作品を作り上げる情熱のこと。あまりのエネルギー量に、作者のジェレミーもそうなったように、長くいると精力を使い果たし疲れ果ててしまう。だけど人生に強烈な痕跡を残す。

    自分が住人になることは天地がひっくり返ってもなさそうだが、1度は訪れてみたいと思う。

    パリに行きたい理由が1つ増えた。

  • こういう場所が実際にあるのだなあ・・・と素直に驚く。創作の中に出てきそうな書店とそこに集う人達。

    セーヌ河をはさんでノートルダム大聖堂の向いに存在するという「シェイクスピア&カンパニー書店」。自身、頑張って行こうと思えば行けないこともない、というのが不思議に思えてならない。「本当にこの本屋あるんですよね?」と何度か読みながら問うているような気がする。

    店主ジョージが変わり者。明晰だったり、時に癇癪を起したり。読んでいて阿川弘之『志賀直哉』を少し思い出す。志賀直哉もそういえば粋で癇癪持ちのじいちゃんである。実際、側にいたらどうだろう? 私はジョージに気に入られるだろうか、とか思ったりする。

    エピソードがぽっと出ては消え、の繰り返しでやや散漫な印象もあったが、ラストはすっきりしている。このラストを著者自身一番書きたかったのではないかと思う。

    教訓的な本ではないと思うけれど、ジョージのようにとりあえず門を広く開いておくのが大事なのかもしれないなと思った。合う人は合うし、合わなければそこから去っていくだけ。でも門を開いておかない事には大事な出会いを逃すのかもしれない。誰でも受け入れていろいろドタバタするところもあるだろうけど、トータルで見れば悪くない人生なんじゃないかと。

  • 本棚のあいだにたくさんのベッドが置いてある「流れ者ホテル」という顔を持つ書店。
    こんな書店があるなんて知らなかった。
    パリってすごい。

    日曜日の朝はみんなでパンケーキを食べるとか、朗読会とか、とにかく楽しそう。
    この風変わりな書店とそこでしか得られないだろう毎日への愛が率直に描かれている。
    もちろん現状に対する不満も未来への不安もあるけれど。

    何よりこの本はラストが素晴らしい。優しい結末にほっとした。
    もちろん現実はこれ以降も続くけれど。

    • 花鳥風月さん
      こんにちは
      この本もかなり面白そうですね。
      takanatsuさんの本棚は気になるアイテムが多いです。
      「宇宙兄弟」とかも最近気になる…
      ち...
      こんにちは
      この本もかなり面白そうですね。
      takanatsuさんの本棚は気になるアイテムが多いです。
      「宇宙兄弟」とかも最近気になる…
      ちょこちょこ訪問させてもらってます。お邪魔しました。
      2011/10/08
  • なんとも個性的で人間くさくてゴチャゴチャで..
    そのうち行ってみたいなぁ
    今はどんな風になってるんだろう
    面白かった

  • 210517*読了
    「住める本屋」と聞くと、本好きにはたまらないはず。
    フランス・パリ、ノートルダム大聖堂の近くにあり、セーヌ川左岸にある書店「シェイクスピア&カンパニー」には、小説家や詩人など作家や作家の卵が何人も住んでいます。

    カナダの犯罪記者である著者さんが、とあることがきっかけで、この書店に住むことになり、創業者であるジョージさんや、住民たちとの交流、そしてワイルドな日々が描かれています。
    私も本屋さんに住みたい!とは思うけれど、なんせこの書店は古いし、ベッドやキッチンは清潔じゃないし、シャワーも使えないしで、ちょっと、いやかなり抵抗がある…。
    お金がない中でなんとか生きているので、食事は粗末だし、行きつけのカフェバーのトイレでシャワーするなんてことも…。
    そんなハードな日々に辟易としながらも、この居場所を守るために行動する住民たちのエピソードがいい。
    そして、ジョージの人柄!
    気分屋でややこしい性格だけれど、何歳になっても恋する心を持っていたり、離れて暮らす娘さんを思っていたりと、放っておけない可愛らしさがある。
    なんと、当時で86歳!それでもこんなに精力的に生きていけるのは憧れるなぁ。

    この本の著者の方はこの本を書かれた時はもう書店には住んでいないのだけれど、きっと人生において、シェイクスピア&カンパニーで過ごした日々っていうのは大きな転換点になったであろうし、人生における宝物のような日々だったろうと思います。

    そして図書館でこの本を借りた頃にたまたま購入した「世界の美しい本屋さん」という写真付きで世界の本屋さんを紹介してくれている本にもシェイクスピア&カンパニーが載っていて、読み終わった後に見てみると、確かに本棚に囲まれた店内にベッドがあって、「本当に普通にベッドがあるんや…」と衝撃を受けました。
    今は娘さんのシルヴィアさんが跡を継がれていて、こちらの本では美しいシルヴィアさんの写真も載っています。

    さらに、最近借りた「世界の書店を旅する」という少し難しめのノンフィクションにも、初代のシェイクスピア&カンパニーについてと、2代目である現在のお店(この本で描かれているのは実は2代目なんです。)のお話が書かれていて、シンクロを感じました。

    今度パリに行く機会があったら、絶対に行きたい場所です。

    日本ってなかなか、ここまでの風変りだったり、歴史ある書店がないなぁ。
    建物の構造やアンティークを重んじる文化がヨーロッパの方が強いことに関係しているのだろうか。
    100年、そしてそれ以上、何代にもわたって続く書店って憧れます。
    そこは言うなれば、書店というよりも、たくさんの人の人生がつまった繋がりの場所。
    そんな場所を作りたいし、そんな場所を応援したい。

  • はー、楽しかった。
    実は私が読みたかったのこっちじゃなくて、ガートルード・スタインやフィッツジェラルドが出入りしていた初代のシェイクスピア&カンパニー書店だったのだけど…

    いわば2代目ともいえるこの書店のジョージ・ホイットマンという店主のなんとも魅力的なこと!!

    著者が書店で過ごした日々のエッセイでもあるけれど、ジョージの伝記のようでもある。

    「見知らぬ人に冷たくするな 変装した天使かもしれないから」
    「ノートルダムを見るとね、この店はあの教会の別館なんだって気が時々するんだ。あちら側にうまく適応できない人間のための場所なんだよ」

    社会主義こそ人間の本来の姿と、誰もを受け入れ、盗まれても差し出せというジョージ。彼の書店は実は行くあてのない作家や詩人たちの宿泊の場でもあるんですね、暖かいスープがいつもあり、お茶会で訪れた人々をもてなす。
    中でも、5年以上も地下の古書室に住みついている詩人のサイモンとのエピソードは最高。
    ゴッホみたいに生前は売れない詩人だって自分のことを言ってるけれど、本当に素晴らしい詩を書いてる、みたい。

    作者は犯罪を専門にした新聞記者だったことから、人への目線が他の誰よりも鋭かったのでしょうか。書店の日々を本にして、成功しているだなんて、ほかの人たちはさぞ妬ましかったでしょうねー。

    はーっ
    ほんとにいつか行ってみたい。

  • ファンタジーのようなドキュメンタリー。
    このような場所が、今現在のわたしと地続きにあることがたまらなく不思議です。

    わたしがもし、フランスへ行くことがあったとして、押し寄せる観光客のひとりとしてシェイクスピアアンドカンパニー書店を訪れる可能性はあるものの、住人にはなれそうもない。衛生面が不安すぎる。

    書棚の間のベッドには惹かれるけれど。

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著者プロフィール

1971年カナダ生まれ。作家、ジャーナリスト。99年パリに渡り、シェイクスピア・アンド・カンパニー書店に滞在した経験をもとに本書を執筆。他に『ギロチンが落ちた日』など。フランス、マルセイユ在住。

「2020年 『シェイクスピア&カンパニー書店の優しき日々』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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