いまファンタジーにできること

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制作 : 谷垣 暁美 
  • 河出書房新社 (2011年8月20日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (210ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309205717

いまファンタジーにできることの感想・レビュー・書評

  • ファンタジーと言うと魔法使いや竜などが出てきて戦う空想だけの世界というイメージが強い。しかしこの本を読み進めるとファンタジーとは、善と悪の戦いを描くだけでなく善と悪の違いがわかる方法を教えてくれる貴重な宝物かも知れないと感じさせてくれる。

  • Le Guin氏のファンタジー論考。

    と〜〜〜っても参考になりました。「そうだよねぇ、うんうん」「なるほど。目からうろこだ」・・・・などなどと思いながら、あっという間に読んじゃいました。

    Le Guinはファンタジー作家だけど、ご自身は非情にvoracious readerでリアリズム作品もきちんと読み、文学理論も踏まえた上で語っていらっしゃるので説得力がある。

    谷垣暁美氏の訳もとってもよいのです。

    読みたい本リストが増えちゃった。

    原典も入手する予定。

  • あの有名ファンタジー・ゲドシリーズの作者が、自身のファンタジー観に基づきながら、時に作家として、時に評論家として、「ファンタジー」の在り方について語っている本。ファンタジーの一部として、「動物物語」の在り方にも多く言及されている。
    とはいえ、結構主観的に好きに語っている感じなので、学術書っていうよりはエッセイとか新書レベルの評論って感じかな?
    私はゲドシリーズ自体は全く読んだことがないので、この方の作風とかも知らず…。
    なので、内容の説得力がいかほどかは判断しきれないのだけど、その中でも強く同意できる箇所は、「ファンタジーだからこそ、深く細かく世界観を作り込むべき」とかなんとかの部分。
    「ファンタジーは空想で子供向けの娯楽なんだから適当に魔法や不思議生物を出しとけばオッケー」と思っている人もいるかもしれない。
    確かにそうやって「簡単に」書かれたファンタジーもあるんだと思う。
    しかし実は、「ファンタジーだからこそ、細心の注意を払いながら、どこまでも現実的に創り上げられるべき」なんだろう。
    現実的というのは何も幻想の否定を意味するのではない。幻想が存在するひとつの世界を創造するならば、その幻想が確かにその世界には存在しているんだと感じさせるだけの説得力が必要ということ。リアルな魔法を描くほど、そのファンタジー世界は存在感を増していくということ。
    それは、すでに作者と作品と読者の間で常識が共有されている「この世界」を舞台にしたどんなジャンルよりも難しいものなんじゃないかな。
    現代においてはファンタジー作品も随分人気が出て、評価もされているけれど、後世に残るほどの「世界」は、まだ一握りしか創造されてないんだろう。

  • 魔法を使っていい。
    ドラゴンだって存在していい。
    動物と話をしてもいい。

    物語になってさえいればね。

  • 21ページに引用されているシルヴィア・タウンゼンド・ウォーナーの詩は、一見はっとさせられるが、誰もが共感し得る2面性を持っているように感じる。

    現実は小説よりも奇なり、というが小説(とりわけ動物物語についての考察があるが)は現実よりもリアリズムが要求される。調査書・レポートから課題を読み取り、未来を設計する力は場数によってある程度身に付く。しかし、現実を思い通りに出来ない以上、ファンタジーによる想像する力・イメージさせる力は決して蔑ろにすべきではない。

    「メッセージについてのメッセージ」を読んでいて、全てに意図と理由を求める人に対して感じていたモヤモヤの理由が分かった気がする。

    あと、個人的に江戸川乱歩の小説観(?)をふと思い出した。小説と現実を混同することは小説を書かない人の言葉といえるのではないかと思う。

  • 『ゲド戦記』作者の評論集を翻訳したものです。講演も含まれます。ファンタジーは子供だけのものではないと強調しているのが印象的でした。私自身、ファンタジーの日本での扱われ方に疑問を感じており、これを読んで少し勇気をもらったように思います。物語を「紡ぎ、語る」ことの大切さを、あらためて噛みしめました。

  • 古今東西のファンタジーを挙げて論評しつつ、ファンタジーの効用と役割について語る。
    ファンタジーは小さな子どものためのものだと文学の括りから外して語ろうとする世の批評家を、バッサリ斬っている。以前に「夜の言葉」のほうを読んである程度女史の辛口に耐性がついていたので、今度は平静な心持ちで読めた。
    恥ずかしながら、挙げられているファンタジ‐作品に知らないタイトルが多数あったため、あまりぴんとこない箇所もあったけれど(これは自分の勉強不足の問題)、動物たちを描く小説に対する考察など、興味深かった。読んでみたいタイトルがいくつかあったのであとでチェックするつもりだけれど、邦訳されているといいなあ。

  • 「ゲド戦記」の著者によるいろんな機会に行った講演、スピーチを集めたもの。わかりやすくて、彼女の作品世界への入門書としても読める。それよりも、あっと驚くおまけがついている。これがなかなかユーモラスでよい。

  • ル=グウィン『いまファンタジーにできること』河出書房、読了。『ゲド戦記』の著者がファンタジーの力を緻密に論証する。ゆっくり育つ子供たちの持つ「センス・オブ・ワンダー」(カーソン)は、あらゆる慣習・規範・立場(サンカーラ)から自由にする。そこから本当の見え方が出て来る。お勧め★4

  • 「ファンタジーの細かい設定不足を指摘すると怒る人がいるが、現実とは違うファンタジーだからこそ、きちんと設定説明をしてくれないと混乱する」という意見には超納得。
    今まで誰に言っても小うるさいヤツと思われてきた(と推測)ので、グウィンのような巨匠に言ってもらえてかなり嬉しい。

    あと、「『ハリーポッター』シリーズを、「とんでもなく新しく楽しいファンタジーだ「」と思うのは、
    その人たちが今まで本を読んで来なかった証明だ」と言うのもかなり共感できた(『ハリーポッター』は好きですが、「とんでもなく新しいか」と問われるとその答えはYESではないと思う。

  • ゲド戦記を書いたアーシュラのエッセイ集。
    ハリー=ポッターのヒットをうらやむ気持ちとかも正直に書かれていて好感が持てる。
    物語ることの深淵さについて考えさせられる。

  • ル=グウィンはちょっと苦手で小説はあまり読んでないが、これは読みやすい。ファンタジーとは何か?について、はじめてわかった気がする。

    ファンタジーには「本物の竜」がでてくる。それは映画の竜とはちがって、本当にあなたを殺すことができる。彼らは宝石をもっていて、竜と格闘すれば、手に入れることができる。それは「知恵」という宝石だ。

    知恵は容易には手に入らない。森のなかにはあなたを惑わせる魔術師もいる。

    ファンタジーは善と悪の戦いを描くものではない。善と悪の違いがわかる方法を教えるものだ。

    アメリカ人は戦闘にとりつかれていて、「人生の戦い」やら「善と悪の戦い」を強調するが、それは常にいんちきな比喩であり、聞こえのよい表現で暴力を是認し、思考を停止させるためのものにすぎない。

    つまりは、人はよく生きるためには、ビジネス書ではなく、また教訓話ではなく、ファンタジーを、そしてこの本を読むべきなのである。

  • ル=グウィンさん大好きである。
    とゆーわけで手にしたわけだが・・・・・。

    多分半分も分かってない気がする。
    なーんとなく、は分かるんだけど・・・・。
    でてくる過去の作品について、とか
    それらに対する批評家の意見、とか。
    イマイチ知識としても殆ど知らないし、実感としても分からないことが多く・・・。
    でもル=グウィンさんが、とても真摯にファンタジーというものに
    向き合っているのはすごく感じられた。

    ただ私としては結局自分が好きか嫌いか、
    おもしろいか、おもしろくないか、ただそれだけなんだけど。

  • ファンタジーはある程度のリアリティがないと成り立たない。

  •  ファンタジーというジャンルをこよなく愛し書き続けている著者による、講演やエッセイをまとめた本。

     ル=グウィンと言うと、学生の頃にSF『闇の左手』を読んでよくわからず、アニメ化された『ゲド戦記』を見てまたよくわからず、自分の中で評価が定まっていない作家だったが、本書を読んで本当にファンタジーを愛している作家であり、愛すべき一読者であることがわかった。

     著者は、ファンタジーというジャンルがこれまで不当に見下され続けてきたことに憤り、「はっきり言えば紋切り型で、模倣的でさえある作品」なのにハリー・ポッターシリーズが評価されている事実に驚き、「登場人物たちが白人で、中世っぽい時代に生き、善と悪の戦いを戦っている」という前提で成り立っている粗製濫造ファンタジーにいらいらしている。
     ある意味、ファンタジーというジャンルに入れ込みすぎ、という気がしないでもないが、著者の視点は意外にも狭窄的にならず、様々な観点から上手に読者をリードしている。ファンタジーの延長線上として、動物と人間の関わりについて書かれた動物文学(原作の『バンビ』など)や、ティーンエイジャー向けの小説が果たす役割、物語が持つメッセージ性について書かれた章はとても興味深かった。

  • ル=グウィンの文学に関するエッセイや講演をまとめたもの。
     大きく分けて、ファンタジー論・動物文学論・YA論。どれも、そうそう、そう言ってほしかったんだ、と納得でした。
     ハリー・ポッターのあの大ブームは何なのか。イギリスには、もっと素敵なファンタジーがいっぱいあるのに、なんでハリー・ポッターがあんなに騒がれるのか。疑問符の山だったのが、ル=グウィンの切り口にすっきりした。
     動物文学の分析も、納得。そして、その読書量にも感動。

     やっぱりすごいなあ。

     そして「イシ」を書いたシオドーラ・クローバーの娘だという事を、初めて知った!!

  • たいていの人はファンタジーを書かない。ファンタジーを読む。
    ル=グウィンは書く側として「できること」を語り,それを読む側は,ほぉそんなこともファンタジーはできるのかと感心しながら読み進めるのだけれど,読み終えると,自分はどうしてファンタジーを読むのかが見えてくる。

    ル=グウィンは一貫してファンタジーはファンタジーのためにあると主張する。フロイトやユングその他の理論の具現であったり,社会的なり政治的なり何なりのメッセージを隠す容れ物であったりするものでは断固ないと何度も言い切る。
    ファンタジーの世界はその世界として閉じた系でないと読み手を混乱させるとも。閉じたというと語弊があるかな,一貫性というほうがいいかな。なぜなら,ファンタジーを読む人は,竜や一角獣やしゃべる動物が登場しさえすれば満足するのではなく,何が登場しようがファンタジーが物語らしくあることをこそ望んでいるから。

    この2つにはすごく共感しながら読んだ。絵本や物語を心理学的見地から評論することに対しては,自分の理論の万民に口当たりの良い宣伝材料としてファンタジーを利用しているのだろうと思っていたし,力強いファンタジーと白けてしまうそれがあると感じていた。

    ただ,この本の最大の迫力は,自分が産みだしているものを客観視できるル=グウィンの地に足付いた自己分析力だと思う。

  • ファンタジーにかんする物が集められている。私は「内なる荒野」と「子どもの本の動物たち」が面白かったです。特に、シルヴィア・タウンゼンド・ヴォーナーの詩については瞠目しました。

  • 「メッセージについてのメッセージ」は、
    実に素晴らしい文章。

    物語とメッセージの関係をこんなに簡潔に、
    わかりやすく書いている物はないのでは。

  • 荻原規子さんのブログで紹介されていたので。

  • ル=グィンがブックフェアなどで行った講演や、ファンタジーについての論評を集めた本。
    動物擬人化ものに対しての論評は結構辛口。というか、どんな前人についても割と辛口。
    個人的にはゲド戦記シリーズ全6冊の成り立ちについての文が興味深かった。
    あと、『バンビ』の原作がそんなに素晴らしいものだとは知らなかった。ディズニーのもよく知らないけど。そのうち原作を読んでみたい。

  • ファンタジー文学の書き手自らが語った、ファンタジーに関する考察。気づかされることが多かった。気になるのはページ数のわりに値段が高いことで、200ページ未満の本ならソフトカバーで1400円くらいにしていただけるとなおうれしい。

  • 著者の作家という立場に留まらない視点、時代の変遷に沿った意見に、自分はやはりファンタジーとリアリズムを切り離して考えていた部分が多々あったと反省(>_<)

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