- Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309206141
作品紹介・あらすじ
雪降りしきるプラハの古書店で、菫色の装丁がほどこされた本を手に取った"私"。この世のものではない文字で綴られたその古書に誘われ、"もうひとつの街"に足を踏み入れる。硝子の像の地下儀式、魚の祭典、ジャングルと化した図書館、そして突如現れる、悪魔のような動物たち-。幻想的で奇異な光景を目のあたりにし、私は、だんだんとその街に魅了されていく…。世界がいまもっとも注目するチェコ作家の代表作。
感想・レビュー・書評
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読み初めはものすごく読みづらい。世界観が分かってからはページターナー。読み終えて数年経ってからもふと思い出して、また読みたいなあと思うことが時々ある。
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タイトルも著者名も記されていない
菫色のビロード張りの本を買った〈私〉は、その日から
プラハに薄衣のように覆い被さる「もうひとつの街」の
存在を認識し始めた……
という幻想小説。
何故だろうか、物凄く好みのストーリーのはずなのに、
事前の期待値が高過ぎたせいか、
どうにも入り込めなかった。
面白くないわけではないのだけど、何かが違う。
当たり前の風景に〈異物〉が混入してくる様子は
諸星大二郎『栞と紙魚子』や『あもくん』にも似て、
無気味かつ愉快なのだけど。
一つ気づいたのは、主人公(語り手)が
悩んだり苦しんだりしていないところが要因なのかな、と。
でも、虚心坦懐に向き合わなければ
「もうひとつの街」は新たな住人を
迎えてくれないそうなので、
主人公は正しい姿勢で
取るべきルートに沿って動いた――と言える。
残念、私は仲間に入れてもらえそうもない(笑)。 -
プラハの街のそこかしこから「もうひとつの街」にするりと入り込んでしれっと戻ってくるところが新鮮。スキーリフトと小さいヘラジカの章が楽しかった。そして舞台のプラハの魅力がじわじわ伝わってくる。プラハの居酒屋でビールを飲みたくなる。
本書を楽しんだ人には『黄金時代』もおすすめ。よりなめらかな話運びと豊かな奇想を楽しめる。再会できるモチーフもあり。 -
サメのシーンにものすごい既視感を覚えたのが謎だったが、訳者あとがきを読んで納得した。『21世紀東欧SFファンタスチカ傑作集・時間はだれも待ってくれない』に一部収録されていたからか。
大筋はとてもシンプルなのに、比喩というか表現が過剰なせいでずいぶんと読みにくい話になっている。それが魅力でもあるのだが、おかげで読後の疲労感が半端なかった。ストーリーを楽しみたい人にはおススメしないが、描写の面白さを味わいたい人はチャレンジしてみてもよいかもしれない。ちなみに自分は途中から、油断すると目が滑るようになった(笑)。 -
『時間はだれも待ってくれない』に抄訳が掲載されていたもの。
SFというより幻想小説に近く、『時間〜』のタイトルにもなっていた『ファンタスチカ』という概念が何となく理解できたような気がする。-
「SFというより幻想小説に近く」
東欧っぽい。と言う風に片付けちゃダメかな?
しかし東京創元社じゃなく、 河出書房新社から出るとはねぇ~「SFというより幻想小説に近く」
東欧っぽい。と言う風に片付けちゃダメかな?
しかし東京創元社じゃなく、 河出書房新社から出るとはねぇ~2013/02/25
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こういう文章を読む自分に酔うという行為がもう出来なくなっており非常に読むのが辛かった。思春期までに読んでおくのがいいかも
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「この世界の境界は遠くにあるわけでも、地平線や深淵でひろがっているわけでもなく、ごく身近な場所で、かすかな光をそっと放っている」
世界の秘密をのぞいているみたいだった。めくるめく夢をみていたような。残酷で甘美な情景に酔いしれ、ときに可笑しくて可愛い戯れに虜になる。ここで彼らは、彼らのルールで言葉を紡ぐ。それは美しく奇妙な詩だった。
彼もわたしもこの街に本に、どんどんと融けていって、あべこべなのに紙一重であるというわたしたちの内面の矛盾を優しく笑ってくれていたようなここち。恐怖や悲しみは、あるいは悦楽だったのかと、愉快な気持ちになった。メビウスの輪のうえで踊りましょ。未来を解き放って。魂の解放だ。
さぁてあしたは、蒼い鳥たちのさかまく木立のなかにある先割れスプーンをこわがる猿が怒りに任せて捏ねくりまわした切り株のなかで上映される七色のドーナッツのそれぞれの穴の行方についての映画をかりとりにいきます。あれ、あなた、なんだかおかしくなってきてますよ。?? 「言語の論理的分析による形而上学の克服」?。なんだかもう、あっちの暗がりが、愉しくなってきたわ。そしてわたしたちはわたしちだけの宇宙をこの穹に描くのだ。
言葉や文章や文字列は日本語だと漢字の意味とカタチが邪魔をして、"向こう側" になかなか行きづらいのかなとおもったけど、漢字をみていると起こるゲシュタルト崩壊のその先に、なにかが在るのかもしれない(?)。原文(原文、!!)で読んだら(読めたら)、きっとおもしろくて素敵でもっと魅惑的だったろうな、なんてこともおもった。
「人生は、ジャングルにいる、いまわの際の若い神をめぐる猥褻な神話という終わることのない余興のなかで、ほとんど気づかれることのない脇役となるのだ」
「どこに行くのだって。おまえさんが中心を探せば探すほど、中心から遠ざかっているんだよ。中心を探すのをやめたとき、中心のことを忘れたとき、おまえさんは中心から二度と離れることはない。」
「だって、ぼくたちは現実を必要とするほど鈍くはないだろう…」
「だが、自分が狂ったのか、それまでの人生のあいだわからずにいた宇宙の謎を理解したのか、おまえさんにはわからんだろう」
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雪の降るある日、立ち寄った古書店で手にした本は見たこともない字が書かれていた。この現実の裏側にあるもうひとつの街への入り口は、市電の鉄路の先であったり、夜の駅であったり、あるいは図書館の奥であったり。作家の筆はときに思弁的だが、脳内で映像を再現しながら読んでいると、ひそやかな敵意を秘めたほの暗い世界に触れてぞくぞくする。手描きのアニメで映像化希望。
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雪降る街の古書店で、濃い菫色の装丁をした本を見つけるところから物語は始まる。この世のものではないらしい見たことのない文字で綴られた本は、不思議な「もうひとつの街」を見ることになる。今の世界とは異なる世界、そこへ主人公は接近を試みていく。内容は幻想的で、何が起こっているのかさえよくわからない。なのでとても難解だった。