狼少女たちの聖ルーシー寮

  • 河出書房新社
3.00
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本棚登録 : 340
感想 : 33
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309206547

作品紹介・あらすじ

制服を着せられた狼少女たち。
ワニとレスリングする少女。雪の宮殿を守るイエティ婦人。
ミノタウロスは西部を目指し、海賊の子孫は雪山で歌う……。

スティーヴン・キング絶賛!
ファンタジー、ホラー、現実と非現実の境目を跳躍する、カレン・ラッセル初短篇集
摩訶不思議で奇妙、孤独で可笑しい10の物語。


★不協和音を奏でるイメージがページから飛び出しては読者をさらう。 「タイムズ」

★エイミー・ベンダー、ジュディ・バドニッツ、ケリー・リンクに続く、新しい世代の書き手! 「パウエルズ・ブックス」

★大胆不敵なラッセル独自の作風に最高にワクワクさせられる。 「ガーディアン」

★目がくらむほど独創的。 「メトロ」

★本当に摩訶不思議で奇妙な設定! 「デイリー・メール」


カレン・ラッセルは、明るく絶望を語ることのできる作家だ。奇想天外な設定もただ奇をてらっているのではなく、人間が持つ可笑しさや哀しさを増幅させるために選択されており、とても正しいと感じる。彼女のはじめての作品集である本書を翻訳することが叶い、心の底からうれしく思う。 ――松田青子(「訳者あとがき」より)

感想・レビュー・書評

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  • 表紙に魅せられて。少年少女時代の切なさややるせなさをポップで不思議に描く。想像力が追いつかない話もあり残念。『星座観察者の夏休みの犯罪記録』『西に向かう子ども達の回想録』『海のうえ』『事件ナンバー00/422の概要』が印象的。

  • 松田青子さん訳であることと、かわいいけど毒っ気がある表紙に惹かれて購入。

    奇想天外でファンタジーな設定なのに、自分の子供時代が生々しく思い出される。
    登場する子供たちの焦りを伴った強烈な孤独感、初めて取り返しのつかないことをしてしまった時感じる痛み、自立しようとする時の、家族に対する疎ましい気持ちと、そう感じてしまうこと自体の切なさなんかは、確かに経験したことがあるものだからだと思う。
    幽霊が見えるゴーグルを手に入れた少年や、父がミノタウロスである少年や、巨大な貝殻に閉じ込められた少女に共感する日が来るとは。

    「星座観察者の夏休みの犯罪記録」「西に向かう子供たちの回想録」「狼少女たちの聖ルーシー寮」が特に好き。

    • ロッキーさん
      わたしの本棚から興味を持ってくださったとは、嬉しいです!!
      確かにわたしも、これはどういうこと…?と思った部分はあった気がしますが(笑)、楽...
      わたしの本棚から興味を持ってくださったとは、嬉しいです!!
      確かにわたしも、これはどういうこと…?と思った部分はあった気がしますが(笑)、楽しんでいただけてよかったです。
      111108さんレビューから、「シェトランド四重奏」シリーズや「自由研究には向かない殺人」シリーズなど気になっているのですが、なかなか図書館に一巻がなく…。買っちゃおうかなとも思っています!
      2023/09/27
    • 111108さん
      ロッキーさん、コメントありがとうございます♪

      「シェトランド四重奏」も「自由研究には向かない殺人」もどちらもおすすめですよ!でも全く雰囲気...
      ロッキーさん、コメントありがとうございます♪

      「シェトランド四重奏」も「自由研究には向かない殺人」もどちらもおすすめですよ!でも全く雰囲気違いますけどね。
      「自由研究」シリーズは図書館で常に予約状態だったので諦めて買ってしまいました。「シェトランド」シリーズは、ちょっとブーム去った後?なのか、図書館で借りやすくて助かってます。ロッキーさんの感想楽しみ!早く買っちゃえば?なんて助言したくなります(笑)
      2023/09/27
    • ロッキーさん
      「シェトランド」シリーズは、タイミングによっては借りられそうですが、「自由研究」シリーズの方はまだまだかかりそうですよね…。
      強力な助言!(...
      「シェトランド」シリーズは、タイミングによっては借りられそうですが、「自由研究」シリーズの方はまだまだかかりそうですよね…。
      強力な助言!(笑)これはかなりの後押しです。多分買っちゃいます!
      2023/09/27
  • アヴァ鰐と格闘:鰐園少女→「スワンプランディア」
    西に向かう:父親はミノタウルス,ゴール不明
    狼少女:狼少女を人間に矯正し,適応できない者を排除する不条理な世界。何故か歪な感じが人間社会に当てはまる。

  • 装丁イラストと、松田青子さんの翻訳というので興味を惹かれて手に取りました。どれも少年少女を主人公にした短編集。子供たちは基本的に辛い目にあっており(孤独や喪失)そこから抜け出すために戦ったりもがいたりしているのだけど、設定がぶっとんでいるあまりファンタジーのように錯覚することで、その生きづらさは読者には少し緩和されポップな印象すら残す、不思議な作風でとても好きでした。

    いちばん好きだったのは表題作「狼少女たちの聖ルーシー寮」この「狼少女」読む前は嘘つき少女の比喩のことかと思っていたら、実際にはそのものずばり、狼人間の娘たち。狼として育てられた彼女たち(※男の子には青少年のための聖ルーシー寮があります)を人間らしくするために、聖ルーシー寮のシスターたちは厳しく教育、主人公の姉は要領良く人間化するも皆の嫌われ者、一方末の妹はいつまでたっても狼としてふるまう問題児。狼少女ならずとも思春期の少女たちが教育によって牙を抜かれ無個性な優等生として「生きやすさ」を追求せざるを得ない姿は現代的かも。

    インパクトがあったのは「西に向かう子どもたちの回想録」西部開拓の夢をもって農地を売り馬車ならぬ牛車で旅立ったいくつもの家族たち、主人公の少年の父親はなぜかミノタウロスでなので、自分自身で馬車を引いてゆく。ミノタウロスであるがゆえに差別や偏見にさらされつつも、逞しい父を尊敬する息子、しかし旅は過酷で…。お父さんがミノタウロスという設定のインパクトもさながら、少年の父親に対するなんとも複雑な感情がとてもよく表現されていて胸が詰まる。

    自分たちが目を離した隙に海で幼い妹を死なせてしまった兄弟が彼女を探す「オリビア探し」は切なかった。乱暴者の兄が実は自分以上に傷ついていたことに弟が気づくくだりがとてもいい。

    どの短編もテーマパークや、何かしら特殊な場所を舞台にしているのもファンタジー的な要素を醸し出している要因かも。「アヴァ、ワニと格闘する」の舞台になるのは湿地のワニ園<スワンプランディア!>(※このスワンプランディアをタイトルにした長編もあるらしい)、「夢見障害者のためのZ・Z睡眠矯正キャンプ」はタイトル通り、睡眠障害のある子供たちを矯正するキャンプが舞台、「貝殻の街」もその名の通り巨大な貝殻の中に入ったりして遊べる貝殻のテーマパーク、「イエティ婦人と人工雪の宮殿」も、スケートリンクや<ブリザード>というアトラクションのあるテーマパーク。

    「海のうえ」は収録策で唯一老人が主人公だけれど、彼は「アヴァ、ワニと格闘する」のアヴァ&オッシー姉妹のおじいちゃんソウトゥース・ビッグツリーで、廃船を改造した<海のうえの老人ホーム>で暮らしている。ところどころ他の作品でも登場人物がかぶっているので、とくに連作ではないが「町もの」の一種として読むこともできる。たぶんカレン・ラッセルの脳内にはこの町の地図があるのだろうな。他の作品も読みたい。

    ※収録
    アヴァ、ワニと格闘する/オリビア探し/夢見障害者のためのZ・Z睡眠矯正キャンプ/星座観察者の夏休みの犯罪記録/西に向かう子どもたちの回想録/イエティ婦人と人工雪の宮殿/貝殻の街/海のうえ/事件ナンバー00/422の概要/狼少女たちの聖ルーシー寮

  • もっとも絶望的な瞬間に物語の幕が下りる

  • とてもシュールな短編ばかりなのだけど、自分の過去を切り開かれているように、読みながらずきずきと痛みを感じた。
    ファンタジックな物語という入れ物、現実的な感情という中身のバランスが上手いのだと思う。
    作者の想像力は、驚くべき広さと深さだ。
    他の作品も読んでみたい。

  • 幼児後期から前思春期の世代を主人公にした短篇集。まだ自我がわずかに芽生える頃の視点で描かれているため、とっても新感覚だった。児童書のような綺麗に消毒された世界ではなく、生の匂いや声を感じた。ページをめくりながら自分の児童の頃へ潜っていき、忘れていたことを沢山思い出した。この時期に「置き去り」にされるのは、孤独というより死と同義語のような恐怖を感じた。依存に近い執着、大人への外見偏向のシビアな見方、偏見、本能的、意地悪、計算高さなど子供の負の部分もあますところなく描かれていてどこか悲しく怖い。好みが分かれるところだが読んで良かった。新しい短篇集も刊行予定。まだまだいくらでも変化していくような伸びしろのある若い作家で楽しみ。

  • 『スタッキング可能』『英子の森』の松田青子さんが手がけられた翻訳書ということで、出版時から楽しみにしていたのだけれど、時間がなくて読むのをずるずる先延ばしにしていた本。このたび、やっと読むことができた。

    子供と子供、または子供と大人の関係を描いた短編集。孤立した場所やグループ内での子供同士のざらついた関係や、大人へ抱いていた信頼感からの絶望といった、ネガティブな部類の感情がじわじわリアルに描かれている。嫌だと思っていても引力のある人物にあらがえずに引きずられていくさまには、ひりひりくるようなつらさがある。そしてその感情の舞台が、孤島でたった一つしかない、家族経営のぼろっちいアミューズメントパークだったり、今ひとつ意図のわからない矯正施設といったビザールな空間と、人外の存在っぽい登場人物。その中でネガティブな感情がぐるぐる回ってあたりを吹き飛ばすほど強大になったり、失速してよどんでいく様子は、ダークファンタジーっぽくもあり、普通に鬱小説っぽくもある。

    個人的には、「星座観察者の夏休みの記録」「西に向かう子どもたちの回想録」「イエティ婦人と人工雪の宮殿」のあたりが、抜けられない計画に抵抗を感じつつもあらがえない、人間の子どもとしてリアルな感覚と、アルミホイルでぐるぐる巻きの人物やミノタウロスのお父さん、怪しいお店の正体不明の女主人といった、もののけ的な存在との関係性が面白かった。表題作「狼少女たちの聖ルーシー寮」は、タイトルずばりそのもののお話だが、適応 or not 適応という点において、恐ろしくリアルな『おおかみこどもの雨と雪』じゃないかと思う。しかもラストの1行がこの作品集の中でベストワンだと思うくらい、素晴らしくて残酷。

    鬱展開の小説に子供のイノセント(にみえる)な感情をオンして、軽く仕上げているのが小賢しいと思わないこともないものの、そこがただ変にグロテスクな要素と表現だけの小説になることを救っているようにも思うので、結局は作者・ラッセルの術にはまって最後まで読んでしまったのだと思う。個人的な好き嫌いでいえば、「うーん、あんまり好きじゃない」と答える素材と展開なんだけれど。

    松田青子さんの翻訳はオーソドックスで、奇をてらったところはない印象を持ったけれど、松田さんがお書きになる小説に通じるものをたくさん感じるから、やはり訳がうまくはまっているんだと思う。で、この☆の数。

  • 表題作に胸をしめつけられた。

  • 期待していた分、うーーん。という感じであった。期待値からすると★2のやや辛口判定。装丁は名久井直子さんでやはり素敵だと思う。

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著者プロフィール

1981年、フロリダ州マイアミ生まれ。2006年に短編集 St. Lucy's Home for Girls Raised by Wolves が出版され、The New Yorker や Granta 誌上で注目すべき若手作家に選ばれる。最初の長編小説である『スワンプランディア!』はニューヨーク・タイムズの2011年のベスト10に選ばれ、2012年度のピューリッツァー賞フィクション部門の最終候補となるなど全米で絶賛され、各国語への翻訳も進んでいる。

「2013年 『スワンプランディア!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

カレン・ラッセルの作品

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