- Amazon.co.jp ・本 (544ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309207186
感想・レビュー・書評
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すいさんの感想文を見て、読んでみたくなりました。2020.8.8 夕。7chocolateさんの感想 好きです。8.9夜。
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りまのさん8月8日 スニーカーを洗った。8月8日 スニーカーを洗った。2020/08/08
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りまのさん7chocolateさんて、しにくい。ななさん、かナナさんで、良いですか ?本棚のセンスいいですね。りまのより。7chocolateさんて、しにくい。ななさん、かナナさんで、良いですか ?本棚のセンスいいですね。りまのより。2020/08/09
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著者はナイジェリア人。アメリカに留学し、学位・修士号を取得しつつ、精力的に作品を発表して注目を浴びる。現在はナイジェリアに軸足を置き、アメリカとナイジェリアを行き来しながら、自身の創作に励み、若い才能の発掘支援に力を注いでいる。
本作は530ページ弱、2段組の大作である。
ナイジェリアとアメリカ、そしてときにイギリスを舞台とし、十数年にわたる出来事を、ときに時系列を行き来しながら綴っていく。
人種や階級、偏見やスノビズムといった、センシティブな視点も含むが、全編の根底に流れるのは、一組の男女の「純愛」と言ってもよい関係性で、これが物語を牽引していく。そういう意味では壮大なメロドラマである。
一方は、人目を引く美人であり、聡明で率直なイフェメル。もう一方は、誠実で堅実かつ穏やかなオビンゼ。ナイジェリアのハイスクール時代に出会った2人は、一目惚れのように惹かれ合い、大学時代を恋人同士として過ごした。若い頃からアメリカに憧れていたのはオビンゼの方だったが、たまたまイフェメルの方が先にアメリカに留学するチャンスを掴み、渡航する。オビンゼもこれに続くはずだったが、運悪く、9.11の直後で、若い外国人男性がアメリカ行きのビザを入手するのは極端に困難だった。オビンゼは仕方なくイギリスを目指す。
すんなり渡米できたイフェメルだったが、生活は必ずしも順風満帆ではなく、生活費を工面するのに苦労する。ときには屈辱的な仕事に手を染め、鬱病のような状態に陥る。心に傷を抱えたまま、オビンゼに自分から背を向け、互いの連絡は途絶えてしまう。
苦しい日々を過ごしながらも、イフェメルの冷静な観察眼は曇っておらず、自身の体験をブログとして綴り始める。アメリカで黒人として暮らすこと。非アメリカ黒人から見たアメリカ黒人。皆が見て見ぬふりをしているレイシズムの例。辛辣だが、新鮮な視点で、的を射たブログは徐々に人気を集め、彼女はそれで生計を立てられるようになる。
アメリカに行く道が拓けるかもしれないとイギリスに渡ったオビンゼは、滞在のためのビザを入手することが出来ず、金を払って偽装結婚をするために苦闘する。トイレ掃除の最下辺の仕事を経験し、イギリスで何とか生き延びようとする同郷人たちの暮らしを垣間見、他人の名前を借りて幾分ましな仕事に就く。何とか金を貯めて結婚にこぎ着ける直前、ことが露見し、強制送還されてしまう。
ナイジェリアに戻った彼はしばらく鬱々としていたが、ふとした幸運で、国の「有力者」と知り合い、富裕層への道をひた走ることになる。
別々の道を歩み、それぞれの恋愛体験も重ねてきた2人は、時を経て、ナイジェリアで再会を果たす。いまだ強く惹かれ遭うことに気付くが、互いの時を埋めることは出来るのか。
「第三世界」から見た英米の描写が非常に鮮やかである。現代のナイジェリアの若者にとって、旧宗主国であるイギリスと、現在の大国であるアメリカとを天秤に掛ければ、アメリカの方がより好ましく感じられるのではなかろうか。そんな「揺らぎ」が、ところどころに象徴的に言及される、多くの英米作家やその作品にも窺えるようでもある。「アメリカーナ」はアメリカかぶれを指す。
現在では、ある意味、外国への敷居は低くなっており、自国から飛び出すことは可能だ。だが、行った先ではその国のルールがあり、たとえ自国でエリートであったとしても、底辺の暮らしを味わうことも往々にしてある。
自分の価値観が通用しない中で抱える深い孤独感や絶望は、立場が違っても、多くの人々の共感を呼ぶところだろう。
イフェメルもオビンゼも一度はどん底まで落ち込んでいく。だがその後の展開は、おとぎ話のように幸運が転げ込み、いささかあっけにとられるほどだ。
これが作品構成上の「脆さ」「粗さ」なのか、それとも、規範自体が揺らいでおり、それゆえに激変しやすい現実社会を本当に映しているのか、判断に迷うところだが、少なくとも、すべての人が同じ程度に幸運であることはあり得まい。このあたりは個人的にはやや興ざめしたところか。
ただ、その途上で2人が味わう「ここに属していない」感覚は痛切に響く。
激動する社会の中で、自分が自分である「拠り所」を人はいったいどこに求めるものなのだろうか。
ナイジェリア社会の描写もまた秀逸である。
軍事勢力の将軍に寵愛されたイフェメルの叔母、ウジェが、聡明な女性から、将軍の威光を笠に着るようになり、将軍急死後は凋落するさまはリアリティに満ちている。
現代ナイジェリアの音楽やビジネスシーンの描写も興味深い。詰まるところ、それぞれの国にはそれぞれの文化や暮らしがあるわけで、ときにアメリカかぶれがいたとしても、すべてがアメリカ中心で回るわけではないのだ。
著者アディーチェは短編の名手でもあるが、本作も各シーンを切り取るとそれだけで短編小説になりそうな部分も多い。短編集『明日は遠すぎて』の1篇「シーリング」は、まさに本作にそのまま取り込まれている。
主人公イフェメルの観察力の鋭さは、もちろん、アディーチェ自身のものを彷彿とさせる。強靱な精神力と開放的な明るさを秘め、同時に、鋭い刃を持っているがゆえの繊細さも併せ持つ、しなやかな書き手である。
重量級だが読み通させる魅力を持つ1冊である。 -
時間がかかったー。
最初は知らない世界を読むことがとても面白かったけど、哲学的な会話が多かったりで、休み休み読んだ感じです。
私にはちょっと難しかったけど、アメリカに住んでいる人種のことを少し知ることができて良かった。 -
人種のこと、肌の色のこと、なまりや性差のこと、好みや価値観など。
遠い国のニュースから、身近なところまで、世界はたくさんの「違い」で出来ていて、自分の小さな世界から一歩踏み出すごとに、その「違い」とたくさん出会うことになる。
でも、その「違い」に「間違い」があることなんて殆ど無くて、それでも人間はその「違い」ゆえに時々「間違い」をおかす。
相手と「違う」部分を否定したり、馬鹿にしたり、拒絶したり。人と「違う」自分を卑下したり、無視したり、傲慢になったり。
その「違い」を「違い」のまま受け止めて、受け入れて、なおかつ自分は自分であると信じて生きることが、何故こうも難しいのだろう。
そんなことを考えながら読みました。 -
ナイジェリア人の視点から社会、文化、人種、人々の生活を観察し、感じ、考察している面白い小説。
私たちは同じものを見ていても同じようには見ていない。
同じように見ていたとしても同じ面を見ていない。
だからこそ色々な人の物語に耳を傾けることが重要で、それが私たちのこころを豊かにし、狭い偏った思考の檻から解放してくれるんだと思う。
そして、この本はそんな貴重な物語のひとつ。 -
「自分が黒人だと思ったことはなくて、アメリカに来て初めて黒人になった。」
ナイジェリアから勉強をしに渡米したイフェメルを中心に、黒人と白人、アメリカ外から来た黒人とアメリカにずっと住んでいる黒人、欧米から帰国したナイジェリア人とナイジェリアにずっと住んでいるナイジェリア人、といった対比の中で人種、経済、ジェンダー等、様々な問題を浮かび上がらせている。
正直なところ、重苦しい話なのだろうなと覚悟しながら読んだのだけど、キャラクター作りが見事で、どの人物もコミカルな味付けがされており(キンバリーが突出していると思う)、テンポよく読めた。
面白かった…。
しかし、浮き彫りになる問題はとてもシビア。
“Black lives matter”の重みを改めて感じた。
バラク・オバマ氏の大統領選が絡むのだけど、彼が当選することではなく、まず毎日彼が無事でいる(殺されていない)ことを確認した、というエピソードが突き刺さる。
ミシェル・オバマ氏の「マイ・ストーリー」でも命の危険を感じていたとは書かれていたけれど、すぐ近くにいるわけではない、一般の黒人市民もあり得ることとして頭に浮かんでしまうんだな…。
また読み返したい作品。
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2020/08/08
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2020/08/08
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2020/08/08
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めっちゃ分厚い。しかも文字びっしりで1ページ二段。。
でも読み出したら止まらなかった。この作家さん自身が魅力的。 -
アメリカで初めて、「黒人」になったイフェメル。その視点の斬新さ、鮮やかさ、鋭さに圧倒された。イフェメルを知る事で、自分の視点が常に「欧米からみた人種理解・問題」であったことに気づいた。
アフリカに、「黒人」はいない。
なんて素敵なんだろうと思う。
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2022.03.16読了。
今年11冊目。