マリー・アントワネットの宮廷画家---ルイーズ・ヴィジェ・ルブランの生涯
- 河出書房新社 (2011年2月4日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309225388
作品紹介・あらすじ
マリー・アントワネットに愛され、その華麗なる肖像画のほぼすべてを手がけ、数々の貴人たちを描き続けた稀代の肖像画家。革命のパリを生き抜き、ヨーロッパを放浪した一人の女性の生涯を鮮やかに描き出す、本邦初の傑作評伝。
感想・レビュー・書評
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大変良い本でした。
あの、マリーアントワネットの肖像画は知っていましたが、画家がどんな方かなんて考えたこともなかったのでした。
目次にある通り、マリー・アントワネットの宮廷画家になるまでの軌跡、そのあと、フランス革命でパリを出て、イタリア、サンクトペテルブルクへ放浪の旅。そして、帰郷。という構成になっています。
彼女の人格や人生を追うことで、あのロココのキラキラが、もっと確固とした気持ちで描かれていることを知りました。 -
意外と神経質な女性。
革命と言う心の傷がさらに彼女の神経を過敏にさせた。 -
インターネットがない昔、入手した人物を中心にまとめられた「西洋絵画史WHO’S WHO―カラー版」を擦り切れるほどみたなかで、女性の画家がほとんどいなかった。女流画家は掲載されているその前後の画家(時代と作風が近似している構成)に比べても完成度がとても高くみえる。それなのに、日本では十分に紹介されておらず、資料も少なかったので当時はよくわからなかった。
本作は、"ルブラン"と名前を覚えていた、マリー・アントワネットが紹介されるときには必ず出てくる肖像画を描いた女流画家ルイーズの生涯を追っている。
15歳までに肖像画家として身を立てている。そこからフランス革命あたりまではいろいろあったが、順風満帆。亡命の旅があまりにも過酷。馬車の揺れはひどいものだろうし、死体が放置されているような宿に泊まらなければいけないようなこともあったらしい[p203]。それにもかかわらず、フランスにもどったあともロンドンにも行ったし、スイスにも行った。激動の時代の真っただ中で生活して、過酷な移動やわずらわしい人間関係もあったにもかかわらず、圧倒的な完成度の高い作品を数多く残せたのは驚異だ。娘との関係などで憂鬱症になったときに質が落ちたりはしたが、気持ちをしっかり切り替えて仕事に集中できる生活を確保できる能力があったらしい。朝から夕暮れまで休みなく描いた[p199]が、早寝早起きは苦手だった[p237]。また、お金を稼ぐこともしっかり意識していた[209の手紙]。変化の激しい時代背景がなかったら、退屈な物語になってしまうぐらい、作品同様、人物もバランスがとれていたようだ。夭折もせず、87歳まで生きた。 -
マリー・アントワネットの宮廷画家であったルイーズ・ヴィジェ・ルブランの生涯を書いた一冊。フランス革命の影響を受け彼女は娘を連れてヨーロッパを放浪する。絵を描くという彼女の武器を強みにたくましく生きていく姿は、同じ女性として感じることが多い。いつの時代も強くたくましい女性はたくさんの人の憧れになるが、彼女もまたそういう一人だと思った。
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マリーアントワネットの宮廷画家として、フランス革命を目の当りにし、その後亡命、筆一つで国々を渡って生き抜いた女性画家の生涯。
マンガ「ベルサイユのバラ」で馴染んだ人物たちの、本当の姿(肖像画)が見られて嬉しい一面も。
フランス革命の生々しさは恐ろしく、貴族目線で見ているのでよけい残酷窮まりない印象。一生を通し上流階級の人とだけ交流してきた画家さんですが、作品になんらかの暗喩や風刺を含まない(と思われる)点において、そのままの人物を見られてかえって良かったのかも、と思ったり。
実物を見に行きたくなりました。 -
「さすらうロココの女流画家」
18世紀フランス、マリー・アントワネットの信頼を得てその最も有名な肖像画を描いた美貌の宮廷画家ルイーズ・ヴィジェ・ルブラン。敬愛する王妃の運命に悲痛な思いを抱きながらも、革命の嵐を逃れてヨーロッパ各地をさすらい、その先々の宮廷で肖像画家としてもてはやされた。彼女自身が遺した「回想録」をもとに語られるその生涯。
かの名作『ベルサイユのばら』の中で、アントワネットの肖像画を描いている最中に絵の具をばらばらと落としてしまったところ「どうぞそのままで。おなかがそんなに大きくなっているんですもの。かがんではいけません。絵の具は私が拾いましょう」(うろ覚え…)というアントワネットの言葉にうるうる感激するルブラン夫人って場面があった。
このエピソードは本書の中にも書かれていて、池田理代子先生、ルブランの「回想録」も読んでいたのだろうな。改めて池田先生のすごさを感じる…いや、そういう話ではないのだが。
女性でありながら画の才能に恵まれ、モデルを実物以上に美しく(?!)描くことでヨーロッパ各地の王族・貴族からひっぱりだことなったルイーズ。しかしその私生活はといえば、放蕩者で借金まみれの夫の尻拭いをしながら、絵筆一本で生活を支え一人娘のジュリーを育てる。おまけにフランス革命が勃発すると、ベルサイユの宮廷画家であったことから身の危険を感じたルイーズは農婦に身をやつし娘を連れてパリを脱出、ヨーロッパ各国を流離うことになる。
回想録にはその苛酷な逃亡生活についても触れられており、母一人娘一人もちろん辛かったには違いないのだが、何故だろう、そういう中でもイタリアやオーストリア、ロシアといった国を巡りながら様々なものや人、彼女が見聞することになんとなくはしゃいでいる感じが拭い去れないのは。
モデルとなった各国の貴人たちの、歴史の教科書や百科事典からは到底知り得ない横顔も興味深く読めるのだが、なんといっても回想録ならではの本人のエピソードが生々しく秀逸。
ローマで住居探しをするのだが、水汲みポンプの騒音や鼠の一団に大暴れされるなど、なかなか安住の住処が見つからない。ようやくみつけたと思った住まいも、寝台に横たわると頭の上で梁をかじるいも虫の音が―。
12年ぶりにナポレオンの治世となったフランスに帰郷し、断頭台の露と消えた懐かしい人々の運命に涙しつつ、ルイーズは一人ヴェルサイユを訪れた。絵画ギャラリーなど歩き回るうちに、ルイーズがいることに気づかない守衛に全ての扉を施錠されパニくるルイーズ。ようやく助け出されたときの感想が「死ぬほどお腹がすいていた」って…。
ロココの貴婦人というイメージからは想像もつかぬ記録の数々、あくまでも美しいいくつもの自画像。間違いない。この人はきっと自分が大好きだ。
辛いことも悲しいこともあったに違いないが、それをそうと感じさせないバイタリティーといったらいいか、最終的には彼女の人生の全てがその宝物となったのだろう―そう思えたなら、同時に彼女から生きる勇気をもらえる。 -
激動のフランス革命期を生きた女流画家ルイーズ・ルブランを通して見る激動の時代。彼女の亡命生活を通して別の視点からヨーロッパ激動期を感じることができる。
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立ち読み:2011/5/3
[図書館]
読了:2012/8/7
う~ん。「ルイーズはあれをした。これをした。夫にこんな手紙を出した。」…事実だけが羅列してあって、それが彼女の人生にどのような影響を与えたのか、彼女の思考が、同時代の女性と比べてどうであったからそうした行動をとったのか、などといった、深いところまでの言及は全くと言っていいほどない。
「がんばって調べました」感はあるのだが、読んでも感銘を受けない。レポートを読んでいるみたいで、本としては面白くない。
どうしても、中野京子氏の著作と比較してしまう。 -
まもなく開催される「ヴィジェ・ルブラン展」と時期を合わせて刊行。未入手のため感想は後日。