完本 天の蛇---ニコライ・ネフスキーの生涯 (KAWADEルネサンス)

著者 :
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 27
感想 : 2
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  • Amazon.co.jp ・本 (372ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309225432

作品紹介・あらすじ

ロシア人ニコライ・ネフスキーは1915年に来日、十四年間の日本滞在中に、オシラ神・アイヌ語・宮古方言などの日本民俗・言語・文化研究に大きな業績を残し、1929年、革命後の故国に帰り、西夏語研究などに前人未踏の境地を拓いた。しかし、無惨にも、彼の学問とは無縁の「国家叛逆罪」という無実の罪によって、日本人の妻イソとともにいわゆる「粛正」の犠牲となった。ライフワークともいえる永年の調査・研究をもとに、この悲劇の天才の学問と生涯を感動的に描き出す。ロシアの地で消された天才言語学者の、生涯を追ったノンフィクション。大佛次郎賞受賞。その後の「死の真相」解明を増補し、完本として復刊。

感想・レビュー・書評

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  • 同じくネフスキーの生涯をとりあげた、
    「月と不死」にも寄稿していた著者の作品。
    本自体の著者は違うものの、
    続編と言えよう。

    あまり深く考えず、
    行き当たりばったりに本を選んでいる私としては、
    この順番で読むことができたのは幸いだ。

    より細かに、
    特にソ連に戻ってからの消息が知ることができたのは良かったが、
    同時に辛くもあった。
    もっと研究を続けたかっただろうに。

    若子さんのことは、驚き。

  • ロシア出身の言語学者・民俗学者であるニコライ・ネフスキーの生涯を追った一冊。

    ネフスキーといえば、柳田國男、折口信夫らの盟友であり、日本民俗学草創期に大きな足跡を残しています。一般には、月と若返りの水の伝承を追った名著『月と不死』(平凡社東洋文庫)で知られていましょう。

    本書は、日本への留学から日本民俗学への貢献、そして学問そのものを基礎づけたとまで言われる西夏語研究に至るまで、ネフスキーの生涯を丁寧に追っています。資料的に貴重な記述が多いのは無論のこと、敬愛に溢れた文体がとにかく素晴らしい。ネフスキーの人柄と学問への真摯さが、出会った人々に例外なく強い影響を与えていたことがよくわかります。

    ロシア帝国からソ連へと変じた故国に戻った後、秘密警察の手により悲劇的な死を遂げたネフスキー。しかしその学問的業績は今もって高く評価されています。そして本書によって読者は学者ネフスキーに、それ以上に人間ネフスキーに触れることが出来るでしょう。

    紛れもない名著。お勧めします。

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著者プロフィール

加藤九祚(かとう・きゅうぞう)
1922年5月、韓国慶尚北道生まれ。人類学者。創価大学、国立民族学博物館名誉教授。山口県宇部市立上宇部小学校、私立長門工業学校を卒業後、宇部鉄工所工員や小学校代用教員をつとめ、高等学校入学者検定試験を経て、1943年上智大学予科を仮卒業。翌年入隊、派遣先の旧満州東南部の敦化で敗戦を迎え、ソ連軍の捕虜となる。抑留中は東部シベリアの収容所を転々とし、1950年、引揚船で帰国。1953年、上智大学文学部ドイツ文学科を卒業、平凡社に入社。その後、上智大学の非常勤講師などを経て、1975年から86年まで国立民族博物館教授。1998年以降、ウズベキスタン科学アカデミー考古学研究所と共同で、テルメズ郊外でクシャン時代の仏教遺跡の発掘を開始。2016年9月、ウズベキスタンで発掘調査中に倒れ、搬送されたテルメズの病院で逝去。享年94。
著書に『シベリアの歴史』(紀伊國屋書店)『ユーラシア文明の旅』(中公文庫)、『天の蛇──ニコライ・ネフスキーの生涯』(河出書房新社、大佛次郎賞受賞)、『シルクロードの古代都市 アムダリヤの遺跡の旅』(岩波新書)、2001年より年に一度刊行した『アイハヌム──加藤九祚一人雑誌』ほかがある。
※近著に『アイハヌム 加藤九祚追悼号』(平凡社、2020年6月中旬刊行予定)。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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